顎が痛くてお口を開けづらい・お口を開けると音がする・うまく食べ物が嚙めない・顔が歪んできたような違和感がある場合には、顎関節症を発症している可能性があります。
本記事にたどり着いた方は、上記の症状が当てはまるのではないでしょうか。
「顎関節症かもしれない」と考えたとき、気になるのは予防方法・原因・セルフケア・治療方法でしょう。症状の疑いがある方が気になる内容を、本記事では詳しく解説していきます。
歯科医院で相談する際の参考になれば幸いです。
顎関節症の原因や症状
- 顎関節症とはどのような病気ですか?
- 顎関節症とは、頭蓋骨と下顎の骨をつないでいる顎関節と顎を動かす咀嚼筋に起こる病気です。歯周病やむし歯に次いで発症リスクの高い歯科疾患ともいわれています。顎関節症の発症割合は男性に比べると女性の発症率が2〜4倍と高いことも特徴です。疫学調査の報告によると、顎に何らかの症状を訴えている方は全人口の7〜8割に上ると報告されています。顎に違和感を覚えたら、早い段階での受診がおすすめです。
- 顎関節症の原因を教えてください。
- 顎関節症を発症する原因には、まだ不明な点も少なくありません。しかし、発症につながると考えられている原因はいくつかあります。
- ストレス(環境因子)
- 個人的な特性(宿主因子)
- 日々の習慣(行動因子)
- 時間の蓄積(時間的因子)
個人的な特性とは、顎の筋力が弱い・筋肉の血液循環が悪いなどの体質的なことや、性格や心理的なパーソナリティが起因するものを指しています。日々の習慣や時間の蓄積につながることもあるため注意が必要です。たとえば、対人関係が苦手な女性に緊張状態で歯を食いしばってしまう癖がついており、なおかつ精神的ストレスで睡眠不振となっていたとしましょう。この状態が毎日の仕事で繰り返されると、顎関節症の原因で挙げられる4つの因子すべてに該当することになります。顎関節症に発展する原因は1つであるとは限りません。もし、上記の原因に当てはまるものがある場合には注意が必要です。
- 顎関節症とストレスは関係がありますか?
- ストレスは顎関節症に限らず、さまざまな病気に影響を及ぼすと考えられています。もし、日々の生活でストレスを感じているのであれば、早急にストレスを解消する方法を取り入れることが大切です。ストレスを抱えた状態を放置してしまうと、顎周りの筋肉が緊張して噛み合わせがアンバランスになる可能性は否定できません。また、ストレスから歯ぎしりを引き起こし、無理な力で顎関節に負担をかけることもあります。ご自身ではストレスに気付いていなくても、歯ぎしりや嚙み合わせがアンバランスだと感じる場合には、歯科医師へ相談することをおすすめします。
- 顎関節症ではどのような症状が出ますか?
- 顎関節症の主な症状は以下になります。
- 顎が痛い(顎関節痛・咀嚼筋痛)
- お口を開けづらい(開口障害)
- お口を開けると音がする(関節雑音)
- うまく食べ物が嚙めない(不正咬合)
- 顔が歪んできたような違和感(変形性顎関節症)
上記のように、症状には個人差があります。しかし、歯科医院で受診する患者さんのほとんどが顎が痛い(顎関節痛・咀嚼筋痛)と訴えていることも事実です。ほかにも、頭痛・めまい・鼻が詰まる・口が乾くなどの症状が現れることがあります。これらは副症状として現れる傾向にあるため、いくつか当てはまるのであればすぐに歯科医院に相談しましょう。
- 顎関節症のセルフチェック方法を教えてください。
- 顎関節症の疑いがある方は以下の方法を試してみましょう。
- お口を開けたり閉じたりするとカックンやコッキンといった音がするか
- お口に縦で指3本をそろえた状態で入るか
- お口を開けたり閉じたりするときに痛みがないか
- 硬いものを噛むと痛みやだるさを感じるか
音や痛みがある場合には顎関節症を発症しているリスクが高いといえます。音や痛みはなくても人差し指・中指・薬指を縦にそろえた状態でお口に入れられなければ、顎関節症を疑ってもよいでしょう。顎関節症は放置すると症状が悪化するため、定期的にセルフチェックを行うことがおすすめです。
顎関節症の予防方法
- 顎関節症の予防方法を教えてください。
- 顎関節症の原因でも先述しているとおり、顎関節症の発症につながる原因には生活習慣や個人的な特性が大きく影響すると考えられます。そのため、日常生活のなかで以下の状態に当てはまっていないかチェックしてみましょう。
- 頬杖をよくする
- 仕事で緊張状態になることが少なくない
- 長時間のデスクワークや単純作業がよくある生活
- 重たいものをよく運ぶ
- 楽器演奏
- 長時間の咀嚼
- 硬いものを好んで食べる
- 片方の歯で食べ物を噛む癖がある
- 姿勢が悪い
- 睡眠の質が悪い
- うつ伏せでの睡眠
上記の行動に当てはまっているのであれば、その状態を改善することで顎関節症の予防につながります。ほかにも、なるべくストレスを抱えないことや体の緊張状態をほぐすことも大切です。具体的にはお風呂にゆっくり浸かったり、アロマやストレッチで体の緊張をほぐしたり、猫背や片方の歯で噛む癖を治すなどの方法があります。ご自身で意識しやすいものから改善してきましょう。
- 顎関節のストレッチは予防に効果がありますか?
- 顎関節のストレッチはあくまでもリハビリテーション、いわゆる治療の一環として取り入れられます。顎関節症に対する筋伸展訓練と顎関節可動域訓練ではありますが、素人が予防目的に行うと顎が外れたり顎関節症を悪化させる危険性は否定できません。顎関節症のストレッチよりも、セルフチェックや普段の生活習慣を見直すことが大切です。顎関節のストレッチが気になる場合には、歯科医師の指示に従いましょう。
顎関節症のセルフケアや治療
- 顎関節症はセルフケアで改善できますか?
- 顎関節症はセルフケアだけで改善することは稀にあります。何もしなくても自然に治る場合やセルフケアで改善することもありますが、一時的に症状が改善することがほとんどです。適切な治療を受けないと、再発や症状の悪化を引き起こす可能性もあります。セルフケアは、あくまでも顎関節症を発症していない状態をキープするための方法であることに留意しましょう。顎関節症を放置してしまうと、再発リスクを高めたり症状の悪化を招いたりする原因になります。顎関節症の疑いがある場合には、治療を受けることを優先してください。
- 口腔外科を受診する目安を教えてください。
- 顎関節から音や痛みがある場合は、口腔外科で受診しましょう。また顎関節症のセルフチェックでお伝えした症状に該当する場合も、受診するタイミングです。ですが該当する症状がなくても顎に違和感を覚えたら、早期発見・早期治療のためにも口腔外科で受診することをおすすめします。
- 口腔外科ではどのような治療が行われますか?
- 口腔外科では、以下の治療を行うことが一般的です。
- 咬合調整
- スプリント療法
- 理学療法
- 薬物療法
歯並びが原因であれば入れ歯や被せ物で咬合調整を行います。スプリント療法はマウスピースを上顎と下顎に装着して、上下の噛み合わせが均等に接するよう修正する方法です。理学療法は筋肉のストレッチを行う運動療法と、筋肉のマッサージや低周波を顎に当てて治療する物理療法の2つがあります。物理療法は低周波以外にも、患部のレーザー照射やホットパックを使用して患部を温める方法があります。薬物療法は、顎関節の痛みを抑えるのに効果的な消炎鎮痛剤を処方する治療方法です。どの治療を受けるにしても、歯科医師の指示に従うことに留意してください。
編集部まとめ
今回は、顎関節症の予防方法・原因・セルフケア・治療方法を詳しくお伝えしていきました。
顎関節症は女性の発症率が高い一般的な歯科疾患です。まだまだ、発症原因には不明な点もありますが、生活習慣や個人的な特性から発症につながると考えられています。
顎関節症の予防方法で先述しているとおり、顎関節症の発症リスクを高めてしまう生活習慣に該当する方は、生活習慣やストレス改善を見直していきましょう。
セルフチェックはあくまでも、顎関節症を発症しているかを調べるための方法です。顎に違和感を覚えたら、口腔外科で受診することを心がけましょう。
症状が軽症なうちに、治療を受けることが大切です。
参考文献