「親知らずは抜歯しなければならない」そのようなイメージをお持ちではないでしょうか。ですが、埋まっている親知らずは、どのように治療すればよいのでしょう。
埋まっている親知らずは見かけ上、なんともないため放置してしまいがちです。しかし現時点で症状がなくても、治療をしなければならないケースもあります。
この記事では埋まっている親知らずの治療法や、症状を悪化させないための日常生活での対策法などを詳しく解説します。埋まっている親知らずがある人はぜひ参考にしてください。
埋まっている親知らずの状態や種類
- 親知らずが埋まっている場合とはどのような状態ですか?
- 親知らずが埋まっている場合とは、口の中に歯全体が露出していない状態を指します。
歯が完全に埋まってしまうこともあれば、少しだけ歯茎から顔を出すような中途半端な生え方をする親知らずも存在します。そのため、10代後半〜20代前半に生えるといわれる親知らずの存在に気付かない人も少なくありません。
- 埋まっている親知らずの種類を教えてください。
- 埋まっている親知らずの多くは以下の4種類です。
- まっすぐ垂直に生えた親知らず
- 斜めに生えた親知らず
- 横向きに生えた親知らず
- 逆さまに生えた親知らず
親知らずは上顎と下顎の左右で1本ずつ、合計4本生えるといわれています。しかし、生える方向や生える場所により、必ず4本揃うわけではありません。
まっすぐや斜めに生える場合は部分的に歯が見えることが多いですが、横向きや逆さまの方向に生えている場合は歯茎に埋もれてしまうため、親知らずが生えていることに気付かないことがあります。
そもそも親知らずが生えない人もいるため、見た目で判断すると親知らずが生えていることに気付かずに過ごすことになるかもしれません。また、親知らずは歯磨きがしづらいという理由から、放置するとむし歯や歯周病の原因になる可能性があります。
自分の親知らずが何本生えているか知るためには歯科医院で検査をして、歯茎が腫れるなどの炎症を起こす前に適切な処置をしてもらうことが大切です。
親知らずが埋まっている場合の治療法や治療費
- 親知らずが埋まっている場合の治療法を教えてください。
- 親知らずが埋まっていて、かつ治療が必要な場合は抜歯がほとんどです。抜歯しなければならない理由として、横向きや斜めを向いている親知らずは隣の歯に障害を与える可能性があるためです。
また、親知らずが部分的に歯茎から顔を出している状態では「不衛生になりやすい」という理由から、むし歯や炎症を起こす可能性があります。
親知らずが原因で炎症を起こす状態を智歯周囲炎といい、炎症が広がると顔が腫れたり口が開きにくくなったりするため、繰り返し症状がでる場合は抜歯をする必要があります。
しかし、親知らずが完全に埋まっている場合は別です。痛みや腫れがなく、かつ周りの歯や骨に悪い影響を与えない親知らずは抜歯する必要がありません。日頃から口の中を清潔に保ち、歯茎の腫れや炎症を起こさないようにしましょう。
- 埋没している親知らずはほかの親知らず治療とは違いがありますか?
- 埋没している親知らずとほかの親知らずでは、抜歯するまでの工程数が異なります。
ほかの歯と同様にまっすぐ正常に生えている親知らずの治療は、麻酔をきかせて引き抜くというシンプルな流れです。一方で埋没している親知らずでは、目に見えるように周りの歯肉を剥離する処置が加わります。
さらに顎の骨の中にまで埋没しているなら、骨を削る処置をする必要があります。埋没している親知らずは、生えている向きによって引き抜くのではなく、割って取り除く形になるでしょう。
埋没している親知らずは、ほかの親知らずよりも抜歯するまでの手間が増えてしまうため、難しい治療になると考えられます。
- 治療時にはどのような麻酔を使用しますか?
- 親知らずの麻酔方法は表面麻酔・浸潤麻酔・伝達麻酔などの局所麻酔が使われます。表面麻酔は歯茎に塗ることで、塗った表面の痛みを感じさせにくくする効果があります。
浸潤麻酔は歯肉に注射することで、表面麻酔よりも広範囲に麻酔を効かせることが可能です。表面麻酔を用いることで、注射による痛みを減少させる効果が期待されます。
なお、下顎の奥歯は麻酔が効きにくい場所といわれているので、伝達麻酔で口唇や舌を含む広い範囲に麻酔を効かせます。3つの麻酔により麻酔の持続時間が長く、かつ広範囲に作用するため、複雑な親知らずでも安心して治療を受けられるでしょう。
なお、持病がある人や親知らずの状態によっては、歯科医師の判断で全身麻酔での治療を行うことがあります。
- 親知らずが埋まっている場合の治療費は保険適用されますか?
- 治療費は保険適用されます。3割負担では、1,000円〜5,000円程度です。
親知らずの生え方によって処置内容が異なるため、横向きに生えたり、骨に埋まっていたりする親知らずは費用が高くなる傾向にあります。
歯科医師の診察とレントゲンなどの検査でおおよその費用が決まるため、費用が気になる方は事前に確認するとよいでしょう。
- 治療後に痛みが残ることはありますか?
- 治療後に痛みが残ることはあります。埋まっている親知らずを取り出す際、切開範囲が広くなると、術後に腫れがともなうためです。
腫れのピークは1〜3日間で、1〜2週間程度で消失していきます。そのため、術後に痛みを感じ始めたら早めに痛み止めを飲みましょう。痛み止めの効果がでるまでに時間がかかるため、本格的な痛みがでる前に薬を飲むことがポイントです。
また、喫煙は術後の治癒を遅らせるので、痛みが長引く可能性があります。激しい運動や長い時間の入浴、過度なアルコール摂取は血流がよくなり、出血などの原因になるため術後はシャワーで済ませて安静に過ごしましょう。
親知らずが埋まっている場合の対策
- 親知らずが埋まっている場合の生活上の対策はありますか?
- 親知らずの埋まり方で生活上の対策は異なります。まず、親知らずが完全に埋まっていない場合、むし歯や炎症を起こさないように歯と歯の間の隙間を清潔に保つ必要があります。
奥歯に生える親知らずは、歯磨きが届きづらく不衛生になりがちです。不衛生な状態が続くことで、親知らずの隣に生えている歯にまで影響を与える可能性があります。それゆえに日頃から歯磨きを徹底し、口腔トラブルを予防しましょう。
親知らずが完全に埋まっている場合では、緊急性はない場合もありますが、少しでも違和感があれば早めに歯科医院で診てもらうことが大切です。
また、放置してよい親知らずかどうかは歯科医師が判断するものであるため、自己判断での放置は避けましょう。定期的に歯科医院へ受診し、親知らずの状態を把握しておくことが、生活上の対策につながる行動といえるのではないでしょうか。
- 親知らずが埋まっている場合直ちに抜くべきですか?
- 直ちに抜くべきとは限りません。なぜなら、歯を抜く行為はリスクがつきものだからです。
たとえば、抜歯した後に腫れや痛みを引き起こして、日常生活に支障をきたすなどが挙げられます。また、長期的にみると、親知らずが将来的にほかの歯の代用品として用いられることがあります。
そのため、親知らずがあるからといって、直ちに抜く判断は時期尚早といえるでしょう。
親知らずは放置しておくと、むし歯や炎症を起こす原因になる可能性がありますが、歯科医院できちんと抜歯する必要があるか判断してもらうことで貴重な歯を失わずに済むかもしれません。
親知らずを直ちに抜くべきかどうかは、歯科医師が判断するため、気になる症状があれば近くの歯科医院に受診してください。
- 親知らずが埋まっているとほかの歯に疾患を引き起こすことはありますか?
- 親知らずが横向きに埋まっている場合、成長すると隣の歯に接触するため、歯の根が溶ける症状がでることがあります。歯の根にダメージを受けると、歯の機能が失われて将来的に歯を失うことになりかねません。
また、智歯周囲炎といわれる親知らず周辺の歯茎に炎症を起こす疾患が挙げられます。
親知らずは清掃がしづらい場所に生えますが、埋まっていれば清掃の難易度は跳ね上がります。歯茎が頻繁に腫れたり、炎症を起こしたりするのであれば歯科医師に相談しましょう。
編集部まとめ
この記事では、埋まっている親知らずの治療法や日常生活の対策法などを解説しました。
埋まっている親知らずは必ず抜かなければいけないわけではありません。
しかし、埋まっている親知らずが周りの歯にどのような影響を与えているのかは、見た目だけで判断するのは難しいでしょう。
違和感があれば早めに歯科医院へ受診するのはもちろんですが、定期的に親知らずの状態を確認し、日頃から口腔内を清潔に保つことが大切です。
一度、近くの歯科医院で親知らずがどのような状態であるか、確認してみてはいかがでしょうか。
参考文献