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親知らずを抜くメリットは?デメリットや抜くべきケースについても解説!

親知らずを抜くメリットは?デメリットや抜くべきケースについても解説!

口腔のトラブルメーカーともいわれている親知らず。いつかは抜かなければならないと不安に感じている人もいれば、もうすでに痛みが出て対処に困っている人もいることでしょう。親知らずは誰もが絶対に抜かなければならない歯ではないため、その判断は専門家である歯科医師に委ねる必要があります。ここではそんな親知らずを抜くメリットとデメリット、抜くべきケースと具体的な手順などを詳しく解説します。

親知らずの基本情報

親知らずの基本情報

親知らずとは

親知らずは20歳前後に生えてくる永久歯で、専門的には第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)や智歯(ちし)と呼ばれています。第二大臼歯が生えてくるのが12歳くらいなので、親知らずが生えてくるまでにはかなりの期間があります。そもそも親知らずが生えてこない場合もあるため、この歯の性質について一概に語ることは難しいです。

ただ、ひとつ強調しておきたいのは、親知らずも立派な天然歯の一つであるという点です。まっすぐ正常に生えている親知らずは、そのほかの永久歯と同様に機能することもあり、ケースによっては移植歯やブリッジの支台歯として活用できます。ですから、親知らずがトラブルばかり起こす“余計な歯”という認識は、必ずしも正しいとはいえません。その点も踏まえた上で、親知らずの特徴を学んでいきましょう。

親知らずの生え方の種類

親知らずの生え方や埋まり方は多様です。患者さんの歯並びや顎の骨の大きさ、形によってさまざまな生え方や埋まり方が考えられますが、一般的には以下の4つに分けられます。

◎真っすぐ正常に生えている
そのほかの永久歯と同様、真っすぐ正常に生えている親知らずもあります。正しい噛み合わせに関与している親知らずであれば抜歯する理由はなく、一生涯使い続けることも可能です。

◎半分だけ生えている
親知らずの歯冠が半分だけ萌出しているケースもよく見られます。専門的には「半埋伏」と呼ばれる状態で、噛み合わせに関与することはなく、清掃性も悪いです。こうした生え方の親知らずは、周囲の組織に悪影響を及ぼしやすいといえます。

◎斜めに生えている
斜めに生えている親知らずは、手前の歯を圧迫しやすいです。全体の歯並びや噛み合わせにも悪影響を及ぼすことが多いため、注意が必要です。

◎完全に埋まっている
歯茎の中に完全に埋まっている親知らずは、半分だけ埋まっているケースや斜めに生えているケースよりもトラブルを引き起こしにくいです。ただ、そうした完全埋伏の親知らずも、歯の周りに嚢胞(のうほう)ができたり手前の歯を圧迫して歯根を吸収させたりするリスクを伴うため、経過はしっかり診ていく必要があります。

親知らずが原因となる疾患

状態の悪い親知らずを放置していると、智歯周囲炎(ちししゅういえん)、むし歯、嚢胞、顎骨骨髄炎、蜂窩織炎(ほうかしきえん)などを誘発することがあるため注意が必要です。これらの疾患について、詳しく説明します。

◎智歯周囲炎
親知らず(智歯)の周りに炎症が起こる病気で、親知らず特有の歯周病といえます。歯磨きがしにくい生え方の親知らずで発症もしやすく、通常の歯周病より重症化しやすい点に注意しなければなりません。歯周病の治療を行ったとしても親知らずの清掃が難しい点は改善されないことから、すぐに再発するケースも珍しくありません。そのため智歯周囲炎を発症した親知らずには、抜歯が適応されやすいです。

◎むし歯
清掃性が悪い親知らずは、歯周病だけでなくむし歯にもかかりやすいです。智歯周囲炎と同様、再発のリスクが高いことから、時間をかけてむし歯治療を行うことはせず抜歯が第一選択となっても不思議ではありません。親知らずのむし歯を放置していると手前の歯にまで感染が広がってしまうので、早急に対処した方が良いでしょう。

◎嚢胞
埋伏している親知らずは、その周りを「嚢胞」という膜で覆われることがあります。そこに細菌感染が起こると歯茎や顎が大きく腫れ、強い痛みを伴います。親知らずで顎が大きく腫れている人を見かけることがありますが、それは嚢胞が原因であることが多いのです。

◎顎骨骨髄炎
親知らずの歯周病やむし歯、嚢胞などが重症化すると、顎の骨にまで細菌感染が広がり、骨髄炎を引き起こすことがあります。その結果、顎が大きく腫れたり激痛を伴ったりします。

◎蜂窩織炎
蜂窩織炎は、広範囲に炎症反応が波及する病気です。親知らずのむし歯や歯周病が原因となる可能性が十分にあります。

親知らずを抜くメリット

親知らずを抜くメリット

歯磨きがしやすくなる

正常に生えていない親知らずは、ほぼ間違いなく清掃性が悪いです。ほかの歯と同じようにブラッシングしていても、食べかすや歯垢、歯石がたまってしまいます。親知らずを抜くことで歯磨きがしやすくなり、口腔全体の衛生管理も行いやすくなります。

口臭が減る

親知らずに付着した歯垢や歯石は、細菌の温床となります。とくに歯周病菌はメチルメルカプタンという腐った玉ねぎのような臭いのガスを産生するため、口臭が強くなる原因となりやすいのです。清掃性の悪い親知らずを抜けば、歯垢や歯石の蓄積も防止できて口臭の改善につながります。

口内トラブルのリスクが下がる

親知らずは、手前の歯を圧迫して歯根を吸収する、全体の歯並びや噛み合わせの悪化、むし歯や歯周病の発症、嚢胞によって顎が腫れるなど、さまざまな口内トラブルを引き起こすリスクがあります。抜歯によって親知らず自体を取り除けば、そうした口内トラブルのリスクは大きく減少します。

親知らずを抜くデメリット

親知らずを抜くデメリット

一時的に痛みや腫れが生じる

親知らずの抜歯には一時的な痛みや腫れを伴うことがあります。なぜなら、抜歯するのは半埋伏や歯根が曲がっている親知らずが多いからです。こうした親知らずを抜歯するためには、歯茎をメスで切開するだけでなく顎の骨を削る処置も必須となります。さらに、歯根を複数に分割しなければ取り出せないこともあるので、抜歯後はしばらく顎の痛みや腫れが続きます。

ほかの組織を損傷するリスクがある

親知らずの周りには傷付けてはいけない血管や神経などの組織が分布しています。例えば下の親知らずのすぐ近くには下顎管(かがくかん)という管があり、その中に下歯槽神経(かしそうしんけい)と下歯槽動静脈(かしそうどうじょうみゃく)が通っているため、手術の際にそれらを損傷しないよう十分注意する必要があります。下歯槽神経を傷つけてしまうと、術後に口唇付近の麻痺が生じます。動脈を傷つけた場合は術中の大量出血を引き起こしかねません。親知らずの抜歯には少なからずそうしたリスクを伴います。

親知らずを利用した治療(自家歯牙移植)ができなくなる

上述したように親知らずも立派な永久歯の一つなので、さまざまな治療に活用できます。例えば、外傷やむし歯が原因で歯を失った場合は、自家歯牙移植の移植歯として親知らずを利用できることがあるのです。欠損部をブリッジで補う場合も、親知らずを支台歯として使えます。親知らずは天然歯としての役割を果たすケースがあり、患者さんにとって大きなメリットといえます。

親知らずを抜くべきケース

正常に生えている、手前の歯や周囲の組織に悪影響を及ぼしていない、歯磨きしやすい、むし歯や歯周病にかかっていない親知らずは、原則として抜く必要はありません。何か大きなトラブルが起こらない限り、抜かずに経過を見ていくことになります。一方、次に挙げるような症状が見られる親知らずは抜いた方が良いでしょう。

むし歯になっている

親知らずが中等度以上のむし歯になっている場合は、むし歯治療を行わずに抜歯を適応することが多いです。繰り返しますが、清掃性の悪い親知らずはむし歯の再発リスクが高いからです。放置していると手前の歯にむし歯がうつったり歯性感染症を引き起こしたりすることから、早期の抜歯も珍しくありません。

歯茎や頬を傷つけている

親知らずの生え方が悪くて歯茎や頬の内側の粘膜を傷つけている場合も、基本的には抜歯適応となります。そのような親知らずは噛み合わせに関与していない可能性も高いため、保存するメリットは極めて小さいといえます。

歯並びに影響している

生え方や埋まり方の悪い親知らずが全体の歯並びや噛み合わせに悪影響を及ぼしている場合は、適切な時期を見て抜歯に踏み切ります。歯列矯正を行っていても、親知らずの移動を治療計画に含めることはまずありません。矯正を始める前に親知らずを抜いて、残った歯をきれいに並べていくことになります。

親知らずを抜く手術

親知らずを抜く手術 親知らずに何らかのトラブルが起こり抜歯を余儀なくされた場合、どのような手術が行われるのでしょうか。ここでは親知らずを抜く手術の流れと時間、手術後の注意点を解説します。

親知らずを抜く手術の流れ

親知らずの抜歯は、以下の流れで進行します。

ステップ1:表面麻酔+局所麻酔
はじめに表面麻酔を施し、歯茎の感覚を麻痺させます。その上で局所麻酔を注射して、親知らずや周りの組織に痛みが生じないようにします。歯茎の中に埋まっている親知らずを抜く場合は、比較的作用の強い伝達麻酔を施すことも珍しくありません。

ステップ2:歯茎の切開と親知らずの脱臼
まっすぐ正常に生えている場合を除いて、歯茎をメスで切開する必要があります。完全に埋まっている親知らずでは、骨をドリルで削ったり歯根を分割したりといった処置を伴います。その後、親知らずを抜歯器具のヘーベルで脱臼させて、抜き取りやすいようにします。

ステップ3:親知らずの抜歯
ペンチのような形態の抜歯鉗子を使って、親知らずを抜き取ります。親知らずの形態によって、抜き取りやすさは大きく異なります。

ステップ4:抜歯窩(ばっしか)の洗浄・縫合
親知らずを抜くことができたら、抜歯によってできた穴(抜歯窩)を洗浄して、傷口を縫合します。

ステップ5:止血
縫合してからもしばらくは出血が続くため、清潔なガーゼを噛んで止血します。しばらく休んで体調に異常がなければ、そのまま帰宅できます。

ステップ6:抜糸・傷口の消毒
親知らずの抜歯から1週間程度経過したら、抜糸と傷口の消毒を行います。

親知らずを抜く手術にかかる時間

親知らずの抜歯手術にかかる時間は、抜歯の難易度によって変わります。

◎真っすぐ生えている場合
親知らずが真っすぐ正常に生えている場合、抜歯の難易度は低いです。外科処置に慣れている歯科医師であれば5分程度で処置を終えることができます。歯茎をメスで切開することもないため、傷の治りも比較的早いです。

◎半分くらい埋まっている場合
親知らずが半分くらい頭を出している半埋伏の場合、手術は5〜15分程度で終わります。歯茎をメスで切開する必要があるかどうかで、手術時間は大きく変わってくるのです。

◎完全に埋まっている場合
親知らずが完全に埋まっている場合は歯茎の切開や骨の切除などが必須となり、抜歯の難易度も高くなることから15〜30分程度の時間を要します。歯根を分割しなければならないケースでは、45〜60分程度かかることも珍しくありません。

親知らずを抜く手術後の注意事項

親知らずの抜歯後は、以下の点に注意しましょう。

◎全身の血行が良くなる行為を控える
激しい運動、飲酒、熱い湯船に浸かるなどの行為は、全身の血行が良くなって傷口が開く原因にもなるため控えるようにしてください。

◎傷口に刺激を与えない
親知らずの抜歯窩を舌でいじったり、歯ブラシを強く当てたりする行為も傷口を開く原因になります。また、熱いものや辛いものも傷口を刺激するため、抜歯から数日は控えるようにしましょう。

◎過度なうがいは避ける
親知らずの手術後に過度なうがいをすると抜歯窩にできたかさぶたが剥がれてしまい、傷の治りが遅れます。深刻なケースでは骨が露出してドライソケットという病気を引き起こすことから、傷の状態が安定するまでは強くうがいしないでください。ドライソケットになると、細菌感染も相まって激しい痛みに悩まされることになります。

◎口腔衛生状態を良好に保つ
親知らず抜歯後の過度なブラッシングやうがいは避けるべきですが、口腔衛生状態は良好に保つ必要があります。傷口以外の部位はきちんと歯磨きをして、細菌感染のリスクを抑えることが大切です。

編集部まとめ

親知らずは第三大臼歯という永久歯の一種ですが、生えてくる人と生えてこない人がいます。また、抜歯の要否も人によって異なるため、気になる場合は歯科を受診して精密検査を受けることをおすすめします。診断の結果、親知らずを抜くことを提案された場合は、抜歯に伴うメリットとデメリットを正しく理解しておきましょう。親知らずを抜いた後の注意点も知っておくことで、不要なトラブルを避けられます。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坪光 玄義歯科医師(地挽歯科医院)

坪光 玄義歯科医師(地挽歯科医院)

鶴見大学歯学部 卒業 / 平成24年歯科医師免許証 取得 / 現在は地挽歯科医院、蕨にしき町歯科・口腔外科(いずれも非常勤)

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鶴見大学歯学部 卒業 / 平成24年歯科医師免許証 取得 / 現在は地挽歯科医院、蕨にしき町歯科・口腔外科(いずれも非常勤)

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