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親知らずが痛い原因は?対処法・放置するリスクを解説

親知らず 痛い

大人になってから生えてくる親知らずは、痛みを引き起こすケースが多い傾向にあります。なかには痛い原因がわからず、放置してしまう方もいるでしょう。

しかし親知らずの痛みを放置すると、口腔内のさまざまな問題が生じる可能性を高めてしまいます。そのようなリスクを避けるには適切な対処が重要です。

この記事では、親知らずが痛い原因を解説します。抜歯したほうがよいケースも取り上げているので、痛みに対処するうえでの参考にしてみてください。

親知らずが痛い原因は?

虫歯が痛そうな若い女性

親知らずとは奥歯を指す大臼歯の1つで、第3大臼歯または智歯(ちし)と呼ばれる歯のことです。大人になってから生えることから親知らずと呼ばれています。

すべての人に生える歯ではありませんが、生えてくるとさまざまな場面で痛みを引き起こしやすいです。なぜ痛みが生じるのか、主な3つの原因を取り上げます。

智歯周囲炎

親知らずの歯周組織に炎症が起こっているなら、智歯周囲炎と考えられるでしょう。主に親知らずが生える10代後半から生え終わりと思われる30代までに好発します。

親知らずと隣接する第2大臼歯の間に生まれる歯周ポケットで、口腔内常在菌のレンサ球菌・ブドウ球菌などから感染が起こるのが主な原因です。

また、咬合による歯肉の粘膜損傷も原因となりえます。上下の歯を噛み合わせた際に親知らず周辺の歯肉が傷付くと、患部が炎症を起こして痛みを生じさせます。

特徴は親知らずそのものには異常がなく、歯周組織にのみ炎症を起こす点です。急性の場合、痛みのほかに発赤・腫脹・開口障害などの症状も現れます。

細菌感染症は免疫力が低下しているときに生じやすく重症化もしやすいため、持病がある方あるいは体調を崩している方は特に注意が必要です。

親知らず自体のむし歯

口腔内に生じる痛みの要因は、主に炎症かむし歯(う蝕)に分けられます。むし歯は、エナメル質・セメント質・象牙質からなる歯の硬組織を破壊する疾患です。

歯周組織には炎症がないのに痛みを感じる場合は、親知らず自体がむし歯になっている可能性が高いです。第2大臼歯に隠れてむし歯が進行していると考えられます。

むし歯の痛みは状態によって異なります。冷たいものを飲んだときにしみるような痛みを感じたり、歯を叩くと響くような痛みを感じたりする傾向がみられます。

歯の硬組織は骨とは違い再生しないため、治療が不可欠です。放置していると病変が歯の内部にある神経組織(歯髄)にまでおよび、壊死に陥るケースもあります。

萌出の痛み

歯が生えることを萌出(ほうしゅつ)と呼びます。乳歯から永久歯への生え変わりの際に、痛み・かゆみを感じた経験がある方も少なくないでしょう。

親知らずが生える過程でも、歯茎または第2大臼歯を押して痛みが生じる場合があります。歯茎が傷付いて歯肉炎を発症するリスクも伴います。

生えるスペースが十分にあればしばらく断続的な痛みは続くものの、歯茎が膨らんで親知らずが出始めると痛みは小さくなるのが一般的です。

しかし、生えるスペースが不足していると無理に生えようとして押す力が強くなり、激しい痛みが長引いてしまいます。

親知らずが痛い場合の対処法

虫歯の男性

炎症が起こると、血管が拡張し神経を圧迫して痛みを生じさせます。そこで、炎症箇所を冷やし血管を収縮させれば痛みが和らぐ可能性があるでしょう。

ただし、親知らずのむし歯による痛みの場合は冷やすと痛みが増す恐れがあります。智歯周囲炎もしくは萌出による炎症がある場合に試してみてください。

また、痛みが我慢できないときには市販の痛み止めを服用するとよいでしょう。痛み止めも炎症による痛みを抑える効果があります。

痛みが軽度であれば、親知らずの周囲を丁寧に歯みがきしておくのもおすすめです。細菌感染による炎症が広がるのを防げます。

親知らずがたまに痛くなるだけなら受診はしなくて大丈夫?

頬に手を当てる女性

普段は気にならなくても、身体の不調あるいは疲労によりたまに親知らずが痛む場合もあります。その際には、痛みが消えるとそのまま放置するかもしれません。

しかし痛みが生じるのは、親知らずがむし歯になっているか歯周組織が炎症を起こしていて、体調の変化によって症状が悪化している状態と考えられます。

親知らずに痛みを感じたら、なるべく早く受診しましょう。受診によって、患者さん自身では気付けなかった炎症・疾患を発見できる可能性が高まります。

痛みが小さいうちに原因を突き止め対処できれば適切なケア方法も見つかるため、その後も痛みが生じる不安を避けられるでしょう。

親知らずを抜いたほうがよいケースは?

歯科治療を受ける女性

親知らずが生えてくると、抜歯をすすめられる場合があります。痛みを感じている場合は、なおさら抜歯して痛みの原因を取り除きたいと感じるでしょう。

とはいえ、自分の歯はなるべく抜歯せずに残しておきたいと思うのも当然です。ここからは抜歯するかを選択するうえで考慮したい5つのケースを解説します。

横向きに生えてしまっている場合

歯のX線写真

親知らずは生え出るスペースが狭いため、歯槽骨に対し斜めまたは横向きに生えやすい傾向にあります。特に日本人は顎の骨が小さく、真っ直ぐ生えにくいです。

横向きに生え第2大臼歯を圧迫し続けると、慢性的な痛みが生じます。萌出途中ですでに痛みがあれば、今後さらに痛みが増しほかの歯にも影響を与えかねません。

また、歯冠が一切見えていない埋伏歯(まいふくし)の患者さんも見受けられます。親知らず自体が目視できず、対処が遅れて重篤な炎症を起こすリスクがあります。

このようなリスクを避けるには抜くのが適切な処置となるでしょう。ただし非常に難しい手術のため、歯科医師・歯科医院の選択が重要です。

歯肉の炎症を繰り返す場合

親知らずによって歯肉・歯周組織の炎症が起きているのであれば、親知らずが存在する限り炎症を繰り返してしまいます。

智歯周囲炎は静かに進行し、いつの間にか重症化して顎骨・周囲軟組織まで炎症が波及します。栄養・睡眠不足または過労など体調不良により急性化しやすいです。

抜歯は炎症の再燃を防ぐ効果的な処置です。急性炎症が起きている際には、局所洗浄・抗菌薬の投与などの治療で消炎させてから抜歯を行います。

親知らず自体がむし歯になっている場合

親知らずは奥まった場所に位置しているため治療器具が届きにくく、むし歯治療が困難です。治療ができても、メンテナンスのしにくさから再発が多くなります。

むし歯が認められるものの治療ができない、あるいは今後もむし歯が発生すると予想される親知らずは、治療をせずに抜歯する場合があります。

むし歯を治療しないまま放置していると、歯髄・歯周組織まで感染が広がる危険性が高いです。むし歯が小さい段階でも抜歯しておくほうが被害を抑えられます。

手前の歯がむし歯になってしまった場合

虫歯 銀歯のイメージ

親知らずが斜めに生えていると、親知らずのみならず隣接する第2大臼歯も不潔域に入ります。正面からは見えない位置でむし歯が進行するケースが多いです。

第2大臼歯のむし歯が親知らずによるものであれば、むし歯の治療と合わせて再発防止のために親知らずを抜くのがよいです。歯周病の予防にもなるでしょう。

また、横向きに生えた親知らずが第2大臼歯と密着しともにむし歯になっている場合は、親知らずを抜かないと治療ができません。適切な治療のためにも抜歯が必要です。

食べ物が詰まりやすい場合

歯と歯の間に隙間があると、食べ物が詰まりやすくなります。鏡でチェックできる位置であれば入念にケアできますが、親知らずへの対処は難しいです。

親知らずの周辺には思いがけない隙間があり、食べ物が詰まりやすい傾向にあります。そして、食べ物が詰まったまま放置するとむし歯になる可能性が高いです。

セルフケアで対処するよりも、親知らず自体をなくして今後のむし歯・歯周病リスクを減らすほうが、大きな影響を未然に防げます。

親知らずを放置するリスク

待合室のソファに座る

親知らずを抜いたほうがよいケースに当てはまっていても、手術への不安があったり治療の時間が取れなかったりして放置してしまう方も多いでしょう。

しかし、親知らずを放置するとさまざまな問題を引き起こすリスクが高まります。考えられる5つのリスクを解説します。

歯みがきが行き届かずむし歯の原因になる

前述のとおり、親知らずはむし歯になりやすい箇所です。今まで歯が出ていなかったために意識が向けられず、みがき残してしまうケースがみられます。

また本人でも目視しにくく、丁寧にケアしたくても頬が邪魔をして歯ブラシの角度がつけにくい点も、みがき残しが生じやすい要因です。

歯垢(プラーク)にはむし歯の原因となる細菌が数多く存在するため、歯周治療では何よりもプラークコントロールが重要です。

痛みを感じていなくても、すでにむし歯が進行している場合もあります。歯みがきのしにくさを感じているなら、むし歯になる前に早めに対処するべきです。

歯周病の原因になる

デンタルミラー

歯周病とは智歯周囲炎をはじめ、細菌の感染により歯茎・歯周組織が赤く腫脹して痛みが生じたり、歯が抜け落ちたりする疾患を指します。

不潔な親知らずを放置していると、むし歯だけでなく歯周病リスクも高まります。歯肉の軽い炎症が重症化し、健康だった歯を失う恐れもあり危険です。

さらに、骨に埋まっている埋没歯の成分が袋状になる含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)も生じます。歯冠の一部を取り囲むように大きくなるのが特徴です。

一般的には無症状であり、むし歯・歯周病の治療でレントゲンを撮影する際に偶然発見されます。しかし放置すると、嚢胞が徐々に大きくなり感染を起こします。

また嚢胞内部に溜まった液体が顎の骨を溶かしていくため、発見したら摘出が必要です。しかし埋伏歯を抜歯していれば防げます。

口臭の原因になる

毎日歯みがきをしていても親知らず周辺が不潔なままであれば、溜まった食べかすまたは歯垢が口臭を引き起こします。むし歯・歯周病も口臭の要因となるでしょう。

口臭の原因物質は、口腔内に存在する硫化水素・メチルメルカプタン・ジメチルサルファイドの3種からなる、揮発性硫黄化合物(VSC)です。

歯周病の重篤度に応じてVSCの濃度は増し、口臭も強くなります。なかでも歯周病の患者さんではメチルメルカプタンが優位となり、生臭さを感じさせます。

低濃度でも生体組織に対する毒性があり、歯周病の病態をさらに悪化させる因子となりうるでしょう。口臭対策にも親知らずへの対処が欠かせません。

顎関節症の原因になる

フェイスライン 噛み合わせ

顎関節症は顎自体に原因があると思われがちですが、実際は歯の状態によって生じているケースのほうが多いです。特に埋伏歯が大きな原因となります。

そもそも下の親知らずは顎につながる歯の神経が通っていたり、歯自体が顎の骨と密着していたりと、顎関節に影響を与えやすい歯です。

埋伏していると咀嚼する際に用いる咬筋・内側翼突筋などの筋肉を刺激しやすくなり、下顎の異常運動を誘発すると考えられています。

さらに親知らずの生え方に問題があり咬合異常を起こしている場合にも、顎関節への負担が大きくなります。加えて、むし歯・歯周病から生じる可能性もあるでしょう。

顎関節症になると口を大きく開けにくく、痛み・異音が生じます。症状が軽度であれば生活に支障は少ないものの、手術が必要な程重症化するリスクも伴います。

親知らずを抜歯して顎関節症が治った患者さんもいるため、明らかに親知らずが原因であれば抜歯を検討するのがよいでしょう。

歯並びが悪くなることがある

親知らずが斜めもしくは横向きに生え第2大臼歯を前方に押すと、隣接する歯を連鎖的に押し出してしまい、全体の歯並びが悪くなる恐れがあります。

歯列矯正を行う際にも、親知らずによって再び歯並びが悪くなるのを予防するために、親知らずを抜歯するケースが多くみられます。

また、歯並びの変化により咬合異常も起こしやすいです。とはいえ、親知らずを抜歯したために咬合異常が生じる場合もあり、十分な検討が必要です。

親知らずを抜かなくてもいいケースもある?

鏡をチェックする男性

痛みを引き起こしている親知らずは抜歯を検討しますが、すべての親知らずを抜かなければならないとは限りません。

抜歯は術後の痛み・腫脹を引き起こします。生え方によっては手術で神経を損傷し知覚麻痺が生じる危険もあり、慎重な判断が求められます。

軽度の痛みが生じていても、親知らずが真っ直ぐに生え出ていて問題なく歯みがきができるのであれば抜く必要はありません。炎症への対症療法で経過観察します。

親知らずを残しておくメリットは、喪失した歯の移植歯として利用できる点です。正常かつ健康な親知らずは丁寧なケアを続けて守っていきましょう。

今ある親知らずを抜くかどうかの決定は、親知らずならびに周辺組織の状態を検査したうえで歯科医師とよく相談してから行ってください。

まとめ

悩む患者を診察する女性医師

この記事では親知らずが痛い原因・対処法を解説しました。親知らずが口腔内の状態を悪化させる可能性があるため、放置するのは危険です。

すでに慢性的な痛みを感じている場合は、早急に抜歯を行いましょう。一方、まだ痛みを感じていない場合ものちに炎症が起こるリスクがあります。

歯の健康を守るためには定期健診が重要です。痛みの有無に関わらず、3ヵ月に一度は歯科医院を受診し検査・クリーニングを受けるのがおすすめです。

またセルフケアでは親知らず周辺をみがき残さないよう、丁寧な歯みがきを心がけてください。親知らずを適切に対処してトラブルを防ぎましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坪光 玄義歯科医師(地挽歯科医院)

坪光 玄義歯科医師(地挽歯科医院)

鶴見大学歯学部 卒業 / 平成24年歯科医師免許証 取得 / 現在は地挽歯科医院、蕨にしき町歯科・口腔外科(いずれも非常勤)

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坪光 玄義歯科医師(地挽歯科医院)

鶴見大学歯学部 卒業 / 平成24年歯科医師免許証 取得 / 現在は地挽歯科医院、蕨にしき町歯科・口腔外科(いずれも非常勤)

  1. 口腔カンジダ症を放置するリスクは?症状・診断・治療方法も解説

  2. 口腔カンジダ症は何科を受診すればいい?原因・症状・治療法も解説

  3. 親知らずが横向きに生えている|放置すると危険?抜歯の必要性と注意点を解説

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