お口を動かすと顎からカクカクと音が鳴る症状に悩まされていませんか?その症状は実は顎関節症の典型的なもので、放置していると症状が悪化して口の開けにくさや動かしたときの痛みにつながったり、場合によっては頭痛や肩こりといった症状につながってしまうかもしれません。
顎から音が鳴るという方は、こちらの記事をぜひ参考にしてみてください。
顎から音が鳴る症状について
- お口を開ける時に音が鳴るのはなぜですか?
- お口を開けるときに顎のあたりからカクカクと音が鳴るのは、耳の前あたり、上顎の付け根の下顎頭という部分にある関節円板の位置にズレや変形が生じているためです。
関節円板は繊維が集まってできた骨よりやわらかい組織で、お口を開けるときに骨と骨の隙間でクッションの役割を果たし、関節円板が正常な状態にあると顎をスムーズに動かすことができます。
しかし、外傷や日常的な顎関節への負荷などが原因となって関節円板の位置がずれたり変形したりしてしまうと、逆に顎を動かす妨げとなる場合があります。典型的なトラブルの1つが顎関節円板前方転位といって、お口を閉じているときに関節円板が正常な位置より少し前に移動してしまうものです。
顎の関節はお口を大きく開いていくと下顎頭の位置が前方に移動し、関節隆起という出っ張りの下まで動いていきますが、関節円板の位置が前にズレると、クッションの働きが弱くなるため顎を動かした際に引っかかりができるようになります。
また、その状態でさらに大きくお口を開けていくと、下顎頭が関節隆起を乗り越える際に音が生じるようになり、耳のすぐ近くで音が生じるためカクカクと聞こえる状態となります。
この状態は顎関節症のⅢaタイプとなり、音が聞こえるだけであれば治療をする必要はないものの、症状が悪化するとお口を開けにくくなったり、お口を動かした際に痛みが生じるようになったりする場合があります。
- 顎関節症とはどのような症状ですか?
- 顎関節症は、お口の開きにくさ(開口障害)やお口を動かした際の痛み、そしてお口を大きく動かした際に顎から音が鳴る(関節雑音)といった症状が出ていて、ほかに明確な病名がつかない場合に診断される症状です。
- 顎から音が鳴る状態は放置しても大丈夫ですか?
- 顎からカクカクと音がなる状態は顎関節症の典型的な症状ですが、顎から音が鳴る以外の症状が出ていない場合については、基本的に日常生活に問題がないため、治療の必要はないとされています。
ただし、音を鳴らすことが癖になって繰り返してしまうと顎に負担がかかって症状を悪化させてしまい、開口障害や痛み、場合によっては頭痛などほかの部位へと症状が広がっていく可能性がありますので注意が必要です。
可能であれば顎関節症を専門的に診察している口腔外科で定期的な歯科検診を受けて、生活習慣の見直しなどによって症状を改善させていくとよいでしょう。
顎関節症の原因
- 顎関節症の原因を教えてください。
- 顎関節症はその症状が生じている主な原因によって大きくⅠ型からⅤ型の5つのタイプに分類され、上述の関節円板が変形したりズレたりすることで生じるⅢ型のほかに、筋肉の炎症などによって痛みが生じるⅠ型や、お口を動かす靱帯が捻挫状態となって痛みやお口の開けにくさを感じるⅡ型、加齢などによる骨の変形で症状が出るⅣ型があります。
Ⅴ型はⅠ~Ⅳに当てはまらないもので、例えば心理的な原因などで痛みを感じている場合などが該当します。
- 顎関節症のリスクを高める要因は何ですか?
- 顎関節症のリスクを高める要因について、以前は噛み合わせの悪さが主要因と考えられていましたが、現在では顎関節症はさまざまな要因の組み合わせにより発症するものとされています。
主な要因としては下記のようなものがあげられます。- 頬杖やうつ伏せ寝、机などに腕枕で寝るといった姿勢
- 歯ぎしりや食いしばり、TCH
- 爪を噛むなどの癖
- 硬いものの食べ過ぎや片側ばかりで食事を噛むこと
- 管楽器の演奏など口元に力のかかる動作
- スポーツなどにより顎への刺激
- 噛み合わせの悪さ
- 慢性的なストレス
こうした要因や、骨格や筋肉の状態といった体質が組み合わさることで、顎関節症が生じると考えられています。
- 自分で顎関節症か確認する方法はありますか?
- 顎関節症のセルフチェック方法は、まずは自覚症状として顎関節症の症状があるかどうかで判断します。
下記のいずれかに当てはまる場合は顎関節症の可能性があります。- お口を大きく開けようとしたときにカクカクやミシミシと音が鳴る
- お口を大きく(4cm程度、人差し指と中指と薬指の3本分)縦に開くことができない
- お口を動かすと耳の前方あたりやこめかみ辺りに痛みが出る
なお、顎関節症は上記のような症状があって、ほかの病名がつかない場合に診断されるため、正確な判断のためには口腔外科など専門的に治療を行っている医院の診察を受ける必要があります。
顎関節症の治療について
- 顎関節症を治療するためには何科を受診すればよいですか?
- 顎関節症は、口腔外科で専門的に治療が行われています。 口腔外科はお口の中の健康を全般的に対応する診療科で、口内炎や難しい親知らずの抜歯、口腔がんの治療などを専門的に扱います。
口腔内や顎といった範囲の解剖に関する知識を多く持つため、顎関節症についての適切な診断や治療を受けることができるでしょう。
- どのような方法で顎関節症を治療しますか?
- 顎関節症の治療はほとんどのケースで手術を行わない保存的治療によって行われます。
具体的には、まず患者さんそれぞれがどのような要因によって顎関節症の症状につながっているのかを問診やレントゲンによって診察し、生活指導などによってその要因となる行為を減らすようにして、少しずつ改善させていきます。
痛みが強い場合は痛み止めの処方や、専用の機器で筋肉をマッサージして痛みを軽減するといった治療が行われる場合もあります。
症状が進行して関節円板のズレや変形が大きくなってしまっている場合や、骨の変形が原因の場合は必要に応じて手術が行われることもありますが、早めに治療を開始すれば大がかりな治療は不要なことがほとんどですので、怖がらずにまずは一度口腔外科の受診をおすすめします。
- 顎関節症をすぐに治す方法はありますか?
- 筋肉や靱帯の炎症によって痛みが出ている場合、痛み止めの利用で症状を軽減させることが可能です。
ただし、顎関節症はほとんどの場合で1回治療を受ければすぐに治るというものではなく、生活習慣の見直しによって少しずつ改善させる必要があります。
症状が軽いうちであれば改善にかかる期間も短くすみやすいので、気になる方は早めの受診をしてみてはいかがでしょう。
顎関節症のセルフケアについて
- 顎から音が鳴る症状をセルフケアで改善することはできますか?
- 顎から音が鳴る顎関節症の症状は、原因となる行動を見直すことで少しずつ改善が期待できます。
具体的には、上述の顎関節症のリスクを高める要因としてあげた、頬杖やうつ伏せ寝といった行為や、食いしばりなどの改善、硬いものを食べ過ぎないなど生活の見直しを行うことで、少しずつ症状を軽減させていける可能性があります。
ただし、症状の改善にはある程度の期間が必要となりますし、自分自身がどういった要因で顎関節症になっているのかを正確に把握できていないと、ケアによる変化がなかなか表れずに改善を諦めてしまうかもしれません。
やはり、できれば一度口腔外科で専門的な診察を受け、効果的な改善方法を知ったうえでケアを行う方が、改善できるまでの期間も短く、継続しやすくなります。
- 顎関節症を予防するための方法はありますか?
- 顎関節症の予防についても、やはりリスクとなる要因を避けるように気を付けることが大切です。
また、何かしらの症状が出ているときに早く気が付くことができれば、症状が軽くすぐ治るうちに改善が可能になりますので、口腔外科での定期的な歯科検診をうけるようにすることも、予防として行える対策といえるでしょう。
編集部まとめ
お口を動かしたときに顎から音が鳴るのは、顎関節症の典型的な症状の1つです。
顎関節症はさまざまな要因によって引き起こされるため、治療を専門的に取り扱う口腔外科の診察をうけることで、適切なケアを行って早く改善することが可能となります。
参考文献