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顎関節症

顎関節症はマウスピースで治せる?治療についての疑問も解決します

顎関節症 マウスピース

口を開けると顎の関節の音が鳴ったり、噛むときに痛みが発生したりする顎関節症は早めの治療がおすすめです。顎関節症の治療法の1つがマウスピースだと聞いたことがある人もいるでしょう。

しかし、顎関節症はマウスピースで治せるのでしょうか。また、治せるとしたら、どのような治療を行うのでしょうか。

本記事では、顎関節症はマウスピースで治せるのかどうかについて解説します。また、マウスピースによる治療についての疑問も解決します。

顎関節症について

問診

顎関節症とはどのような病気ですか?
顎関節症とは、顎の関節に不具合が生じる病気です。具体的には、次のような症状が現れます。

  • 口を開こうとすると顎関節や顎を動かす筋肉が痛む
  • 十分大きく口が開かない
  • 口の開け閉めをするときに顎関節の音がする

上記のうち、よく見受けられる症状は口の開け閉めをするときに顎関節の音がすることと、大きく口を開けられないことです。口が大きく開かなくなると、口を開けたり、食べ物を噛んだりするときに痛みも発生するケースが多いでしょう。
顎関節症による悩みには、硬い食べ物や大きい食べ物が食べにくかったり、顎の音が煩わしかったりすることなどが挙げられます。また、関節を作っている骨が変形して顎関節症の症状を引き起こすケースもあります。長年にわたって顎関節症が続いている人や高齢の人に見られる症状です。

顎関節症になる原因を教えてください。
顎関節症の原因は単一のものではなく、複数の要因が関係している場合が多いと考えられています。具体的には次のような要因です。

  • 歯並びや噛み合わせが悪いため顎関節に負担がかかる
  • 顎関節がもともと弱い
  • ストレス・不安などにより顎の周りの筋肉が緊張している
  • 転倒や事故などによる外傷
  • 日常生活での癖や習慣

日常生活での癖や習慣には、頬杖をつく・歯ぎしり・食いしばり・うつぶせ寝・上下の歯が接触しているなどが挙げられます。このような癖や習慣が顎に負担を与え、顎関節症の原因となっている可能性があります。
そのため、日常の癖や習慣を見直すだけで症状が緩和するケースも多いでしょう。なお、男女で顎関節症に悩むことが多いのは女性です。20代から50代で発症するケースが多いようです。

顎関節症を放置するとどうなりますか?
顎関節症は軽度なものから重度のものまであり、軽度な場合には自然治癒するケースもあります。ただし、重度の顎関節症を放置すると次のような結果になる場合があります。

  • 顎の形が変形する
  • 食事や会話に支障が出る
  • 偏頭痛やめまいが起こる
  • 顎が外れる
  • 精神的なストレスを抱える

顎関節症が重症化すると局所的な炎症にとどまらず、頸椎・仙骨の歪みなど全身症状に進行する場合もあります。
また、顎の骨を削る手術を行わなければならない場合もあるでしょう。早めに治療すれば、このような危険性を回避できる可能性があります。そのため、歯科医院で顎関節症の原因を検査し、治療を開始することが重要です。

顎関節症をマウスピースで治療できるケースと難しいケース

歯科での治療

顎関節症をマウスピースで改善できるケースについて教えてください。
歯並びや噛み合わせが原因で顎関節症が発生している場合、マウスピースによって症状を緩和・改善できる可能性があります。具体的には次のような症状です。

  • 開咬
  • 過蓋咬合
  • 交差咬合
  • 軽度の歯ぎしりや食いしばり

開咬は前歯に上下方向の隙間ができる状態で、奥歯に負担がかかるため、顎関節症を引き起こす要因になります。開咬の人は舌で前歯を押す癖を持っていることが多く、マウスピースによって癖を直し、顎への負担を軽減できます。
過蓋咬合は、奥歯で噛んだときの噛み合わせが深い状態です。マウスピースによって噛む力を分散させ、顎関節への負担を軽減できます。交差咬合は噛み合わせたときに上下のいずれかの歯がズレている状態です。
マウスピースによって顎にかかる負担を均等にするのに役立ちます。また、軽度の歯ぎしりや食いしばりもマウスピースが有効です。マウスピースによって歯のすり減りを予防したり、顎の位置を安定させたりして、顎関節への負担を軽減できます。

マウスピースで改善が難しいケースはありますか?
マウスピースによって顎関節症の改善をするのが困難なのは次のケースです。

  • 歯ぎしりや食いしばりが強い
  • 重度の顎関節症
  • 歯並びが原因ではない

歯ぎしりや食いしばりが強い場合は、マウスピースに穴が開いたり破損したりする可能性があります。そのような場合は筋肉の緊張をほぐすマッサージや噛み合わせを変えることなどが有効です。
また、顎関節症が重度な場合もマウスピースによる治療は難しいといえます。具体的には指1、2本分しか口が開かない・顎関節以外の部分にも痛みがある・発熱や耳鳴りなどがある場合などです。最後に、顎関節症の原因が歯並びではない場合もマウスピースでは改善が難しいでしょう。
ストレス・姿勢の悪さなど別の原因がある場合は、マウスピースで歯並びを整えるだけでは顎関節症の症状は改善しません。

マウスピース以外に顎関節症を治療する方法はありますか?
マウスピース以外で顎関節症を治療する方法には次のようなものがあります。

  • 生活指導
  • 理学療法
  • 薬物療法

生活指導は、日常生活の行動や癖に注意して症状の緩和を目指す治療です。具体的には、硬い食品や長時間の咀嚼をしない・頬杖を止める・姿勢をよくする・上下の歯を離す・ストレスを避けるなどの行動や癖です。
理学療法には物理療法と運動療法があります。物理療法は筋肉のマッサージ・低周波治療・レーザー照射などがあり、運動療法はストレッチ・顎の動きをよくする下顎可動化訓練・筋力増強訓練などが挙げられるでしょう。
また、顎関節や咀嚼筋の痛みがある場合は、薬物療法が用いられることもあります。薬物療法では症状に応じて消炎鎮痛薬が処方されます。

顎関節症のマウスピース治療について

マウスピース

顎関節症の治療に使われるマウスピースにはどのような種類がありますか?
顎関節症の治療に使われるマウスピースには、ナイトガードとスプリントがあります。ナイトガードは名前のとおり、夜に装着するマウスピースです。ナイトガードは上顎に装着し、睡眠中の歯ぎしりや食いしばりの力を弱め、歯や顎への負担を軽減します。
スプリントもナイトガード同様、プラスチック製のマウスピースで、顎関節症の症状の緩和を目的とした治療器具です。スプリントを装着することにより、食事の際に使う筋肉や顎の関節の緊張を和らげられます。
そのため筋肉のハリや痛みなど、顎関節症の症状の緩和に役立つでしょう。どのマウスピースがよいかは、歯科医師と相談のうえで決めるとよいでしょう。
マウスピースの装着時に痛みは出ますか?
マウスピースは装着後、顎に多少の痛みが出るケースがあります。しかし、多くは一時的なもので、しばらく装着すると慣れてきて痛みを感じなくなる場合が多いでしょう。
マウスピースを装着したときに痛みを感じる理由には、正しく装着できていない可能性もあります。マウスピースを装着するときには歯科医院で指導がありますので、正しい装着方法を守ることが重要です。
もし、正しい装着方法を守っても痛みが続く場合は歯科医院で相談しましょう。
マウスピースの装着で日常生活に影響は出ますか?
ナイトガードのように就寝中にのみ装着するマウスピースでは、日常生活への影響は少ないでしょう。日中に装着する場合は、喫煙やコーヒー・紅茶・赤ワインなどの色が付きやすい飲み物は避けましょう。
スプリントを外した後は歯ブラシで水洗いをしたり、入れ歯用洗剤を使用したりして清潔さを保ちます。また、熱に弱いため、60度以上の熱湯をかけないようにしましょう。
顎関節を安定させる目的で行うスプリント治療の場合、6ヵ月から1年程度の治療期間がかかることがあります。
顎関節症は市販のマウスピースでも改善できますか?
市販のマウスピースで顎関節症の治療を行うことはおすすめできません。市販のマウスピースを使用すると、完全に顎の状態に合わせることは難しく、顎関節とマウスピースにズレが発生するケースがあります。極端にズレている市販のマウスピースを無理に装着した場合、顎関節自体が不自然な形に変形する危険性もあります。
そもそも市販のマウスピースは顎関節症の治療を目的に作製されたものではありません。自分に合わないマウスピースを使用するとさらに顎関節症を悪化させる恐れがあるため、歯科医院で作製してもらうことがおすすめです。

編集部まとめ

マウスピースを持つ

本記事では、顎関節症はマウスピースで治せるのかどうかについて解説しました。マウスピースは顎関節症の治療で用いられますが、必ずしも顎関節症が治るとは限りません。

顎関節症の原因には、歯ぎしりや食いしばりだけでなく、ストレス・噛み合わせ・舌の癖などが関係している場合もあるからです。

とはいえ、マウスピースの治療により、顎関節への負担が軽減されて症状が緩和・改善するケースもあります。気になる人は歯科医院で症状を診察してもらい、相談してみましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝歯科医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝歯科医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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