親知らずは、放置すると、隣接する歯への影響や歯並びの乱れ、歯周病のリスクが高まることがあります。 本記事では親知らずは放置しても大丈夫なのかについて、以下の点を中心にご紹介します。
- 親知らずの役割
- 親知らずを放置するとどうなるか
- 親知らずと抜歯
親知らずは放置しても大丈夫なのかについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
親知らずの役割
- 親知らずとはどのような歯ですか?
- 親知らずは、大臼歯の最後尾に位置し、第三大臼歯とも呼ばれます。親知の名前は、知恵が身につく年齢に生えることから来ています。親知らずは大人の奥歯の最後尾に生えるため、歯列に余裕があれば問題ありませんが、定期的な歯科検診が重要です。しかし、親知らずは口腔内のスペースや生え方によって問題を引き起こすことがあるため、注意が必要です。
- 親知らずはなぜトラブルが多いのですか?
- 永久歯の中で最後に生える親知らずは、トラブルの原因となることがあります。その理由は、現代の食生活の変化にあります。昔は食品を加工せずに硬いものを噛むことが一般的で、発達した顎の骨に十分なスペースがあったため、正常に生えていました。
しかし、現代では食材の変化により顎の骨が未発達となり、親知らずが適切に生えるスペースが不足しています。そのため、親知らずが不正確な位置に生えることが多く、それが問題を引き起こす原因となっています。
このように、親知らずのトラブルは現代の食生活の変化と関連しており、適切なケアや必要に応じた抜歯が求められています。
親知らずを放置しておくと
- 親知らずを放置すると歯周病のリスクがありますか?
- 親知らずを放置すると、歯周病のリスクが高まります。親知らずが半分だけ頭を出した状態では、歯と歯の間に食べカスが溜まりやすく、歯磨きではなかなか取り除けません。これにより、食べカスが腐敗し、周囲の組織に炎症を引き起こす可能性があります。その結果、下顎智歯歯周炎が発症します。
親知らずと歯茎の間に食べカスが溜まる状況でも同様に炎症を引き起こしやすくなります。智歯周囲炎は、親知らずが原因で起こる歯肉・歯周組織の炎症であり、段階的に悪化していきます。
症状は腫れや痛みから始まり、口の開閉困難や顔の腫れ、発熱などの全身症状を伴うこともあります。特に体調が優れないときや免疫力が低下しているときには、重症化する傾向があります。
したがって、親知らずを放置すると進行し、場合によっては頬部蜂窩織炎を引き起こすこともあるため、早めに歯科医師の診察を受けることが重要です。
- 親知らずを放置すると顎関節症の原因になりますか?
- 親知らずの異常な生え方は、歯並びの乱れや咬み合わせの不均衡を引き起こし、それが顎関節症の原因になる可能性があります。例えば、親知らずが横向きや斜めに生えたり、歯茎に埋もれた状態で生えたりすると、正しい噛み合わせが崩れます。そのため、左右の顎で噛む負荷が偏り、顎関節に過度の負担がかかることがあります。
しかし、顎関節症の原因は、複数の要因が組み合わさることが一般的です。歯の不正咬合や顎の異常な動き、ストレス、外傷なども顎関節症の発症要因となります。
したがって、親知らずが顎関節症の原因になるケースもありますが、ほかの原因も考えられるため、顎関節症の症状がある場合は、歯科医師による適切な検査と診断が必要です。
- 親知らずが歯の噛み合わせに影響を与えることがありますか?
- 親知らずが歯の噛み合わせに影響を与えることがあります。歯列の最後に位置する親知らずが、正常に生えるスペースがない場合、隣の歯に圧迫をかけます。この圧迫により、歯並びが乱れ、歯列全体が押されて噛み合わせが悪くなることがあります。このような状況では、矯正治療の際に歯科医師が親知らずの抜歯をすすめることもあります。
しかし、親知らずが生えてきたからといって必ずしも歯並びに悪い影響が出るとは限りません。ただし、親知らずの向きや位置によっては、ほかの歯に圧迫をかけたり、乱れを引き起こしたりすることがあります。
したがって、親知らずが生えてきた場合には、その向きや位置を確認し、必要に応じて歯科医師と相談することが重要です。
親知らずと抜歯
- むし歯やトラブルになっていなくても抜歯した方がいいですか?
- 親知らずがむし歯やトラブルを起こしていなくても、抜歯を検討したほうがいい場合があります。特に、以下のケースに当てはまる場合、早めに歯科医院で相談し、抜歯を検討しましょう。
- 忙しい方やストレスを抱えている方: 突発的な炎症や腫れが起きた場合、治療を待たずして痛みを抑えることが難しくなります。特に、受験や仕事で忙しい人は、予期せぬトラブルによって日常生活に支障が出ることがあります。
- 結婚や妊娠を控えている女性: 妊娠中に抜歯や治療を行うことは胎児に影響を与える可能性があるため、事前に問題を解決しておくことが重要です。
親知らずが正常に生えている場合や、周囲の歯に影響を及ぼしていない場合は、そのまま残すこともあります。しかし、親知らずがむし歯になっていたり、周囲の歯に圧迫をかけていたりする場合は、抜歯を検討することが重要です。
- 親知らずを抜歯する手順を教えてください。
- 親知らずの抜歯は慎重な手順が必要です。親知らずの抜歯手順は以下の通りです。
- 状態確認: レントゲン撮影によって親知らずの状態や周囲の歯茎の状態を確認します。
- 麻酔: 抜歯する部分に局所麻酔を施し、痛みや出血を抑えます。まずは表面麻酔を行い、その後に注射麻酔を行います。
- 抜歯: 歯肉を切開し、歯肉をめくって周囲の歯槽骨を一部削ってから、抜歯器具を用いて歯を抜きます。抜歯した後は、抜歯した部位の不良な肉芽組織を除去し、清掃と洗浄を行います。必要に応じて止血剤を入れ、縫合します。
- 止血: 抜歯後はガーゼを噛んで圧迫止血し、しっかり止血されたらガーゼを外します。
- 抜歯後の説明: 抜歯した歯の状態や抜歯後の注意事項について説明し、患者さんの不安や質問に答えます。
- 抜歯後の消毒: 抜歯後、再度来院して抜歯部位の消毒や治癒状態の確認を行います。
抜歯手順は患者さんの状態や抜歯する歯の位置によって異なり、追加の処置が必要な場合もあるので、歯科医師の指示に従うことが大切です。
- 痛みや腫れが不安です……
- 抜歯後の痛みや腫れを軽減するためには、以下の注意点を守ることが重要です。
- 安静に過ごす: 抜歯後の数日間は身体を休め、激しい運動や長時間の立ちっぱなしを避けましょう。
- 処方された薬を服用する: 医師から処方された抗生物質や痛み止めを指示通りに服用し、痛みや炎症を抑えます。
- うがいを控える: 当日は傷口を刺激しないためにも、うがいを控えましょう。
- 傷口を触らない: 抜歯した箇所を触らず、口腔内の清潔を保つためにも手を遠ざけましょう。
- 飲酒や運動を控える: 血のめぐりを良くする行為やアルコールの摂取は、出血を増やす可能性があるため、当日は控えましょう。
- 喫煙を控える: タバコの煙やニコチンは傷口の治癒を妨げる可能性があるため、喫煙は控えましょう。
食事に関しては、抜歯後の数日間は特に注意が必要です。以下の食べ物は避けることをおすすめします。
- 熱いものや硬いもの: 傷口に刺激を与え、痛みや出血を増やす可能性があります。
- 味が濃いものや塩分が多いもの、スパイス系の辛いもの: 傷口の治癒を遅らせる可能性があるため、控えましょう。
このような注意点を守っていても、痛みや腫れが改善されない場合には、速やかに歯科医院を受診することが大切です。
- 全身麻酔で抜歯は可能ですか?
- 設備や環境が整っていれば、全身麻酔で抜歯ができますが、環境が整っている歯科医院は限られています。以下のケースでは、全身麻酔による抜歯が推奨されます。
- 歯医者さんが苦手な歯科治療恐怖症: 不安の軽減のために全身麻酔や鎮静法が採用される場合があります。
- 一気に4本抜歯したい: 4本同時抜歯の場合、入院して全身麻酔や静脈内鎮静法を利用することがあります。左右2本ずつに分けることも推奨されます。
- 埋伏歯や難抜歯の場合: 困難な抜歯の際には全身麻酔での処置が行われることもあります。
- 治療をしようとすると嘔吐しそうになる: 静脈内鎮静法が使用される場合がありますが、それでも抑えられない場合は全身麻酔が選択されることがあります。
- 血管や呼吸器疾患がある場合など: 全身麻酔や静脈内鎮静法を使用し、全身のモニタリングを行うことがあります。基礎疾患によっては入院が提案されることもあります。
全身麻酔による抜歯は、大学病院など限られた施設しか全身麻酔に対応できないため、事前に調査する必要があります。また、全身麻酔からの回復には時間がかかることを理解しておきましょう。
編集部まとめ
ここまで親知らずは放置しても大丈夫なのかについてお伝えしてきました。 親知らずは放置しても大丈夫なのかの要点をまとめると以下の通りです。
- 親知らずは最後に生える歯で、食生活の変化によりスペース不足がトラブルの原因によって起こるため、適切なケアが重要
- 親知らずの放置は歯周病や顎関節症の原因になったり、噛み合わせにも影響を与えたりする可能性があるため、早めに歯科医院を受診しよう
- 抜歯はむし歯やトラブル以外にも、忙しい方や結婚・妊娠を控えている女性などにも推奨されるが、抜歯前に抜歯手順や注意点を確認しておこう
親知らずに痛みや違和感を感じる方は、速やかに歯科医師に相談しましょう。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。