奥歯が痛む、親知らずがうずく、親知らずの根元が腫れている気がする、なんだか違和感がある。そんなとき、自分で確認しようとしても、親知らずは鏡などを使っても直接見ることが難しいため、余計に気になってしまいますよね。
この記事では、親知らずの腫れや痛み、そして治療、治療後のケアなどについて、Q&A形式でご紹介します。
親知らずについて
- 親知らずとはどのような歯ですか?
- 赤ちゃんのときに生える歯とは違い、永久歯のなかで一番最後に生える歯で、一般的に20歳前後かそれ以降に生えることが多いため、親が知らないうちにはえる歯という意味で親知らずと呼ばれています。具体的には、前歯から数えて八番目の歯で、第三大臼歯や智歯などとも呼ばれています。
体の発育がある程度終わったところで生えてくるため、顎の形によってはしっかりとまっすぐ生えてこないことは珍しくなく、変な方向を向いていたり、変形したり、歯茎から出ないままの状態のこともあります。
- 親知らずが腫れたり痛むのはなぜですか?
- いくつか原因があります。
まず、むし歯になっているときです。親知らずもほかの歯と同様にむし歯になると痛みや歯茎の腫れなどが起こります。むし歯が進行すると、神経に達し、歯の根本の方から歯茎に伝わって炎症が起き、歯茎の痛みや腫れにつながります。
親知らずの場合は、歯が完全に歯肉から出ていない場合もあるため、むし歯の状態が確認しにくく、見た目では判断がつきにくいこともあります。次に考えられるのが、歯垢や歯石の詰まりによるものです。
特に親知らずは一番奥の歯ブラシが届きにくい場所にあるため、歯磨きなどできれいに保つことが難しく、歯垢が溜まりやすいところです。
歯垢が溜まると菌が繁殖し、その周辺の歯肉に炎症が生じ、腫れや痛みが起きます。
この状態が続くとむし歯や歯槽膿漏に進行してしまうため、早めの処置が必要です。歯根部の炎症によって痛みが生じる場合もあります。
むし歯がなくても、歯茎の隙間から雑菌が入ることで歯の根本や歯茎が炎症を起こして腫れ、痛みがでることがあります。その他にも、親知らずが成長するときに感じる痛みや腫れが原因の場合もあります。
親知らずが成長するときには、隣の奥歯と歯肉を押しのけるように生えてきますので、その際に奥歯が疼いたり、歯肉の腫れや痛みや痒みといった状態となります。
歯の生え方によってはまったく痛みなどが出ないこともありますし、歯が生えてしまえばおさまることも多いですが、親知らずの生え方によっては痛みが強くなっていくケースもありますので、気になる場合は早めに歯科医院で相談しましょう。
- 親知らずが腫れないことはありますか?
- 親知らずが成長するときに腫れる場合も、腫れない場合もあります。
親知らずの生え方がほかの歯とおなじようにまっすぐである場合、気がつかないうちに生えているので、腫れないことは珍しくありません。
ただ、現代人は食生活の変化などから顎が小さくなっているため、親知らずが生えてくるスペースが十分になく、まっすぐに正常な歯として親知らずが生えてくるケースよりも、斜めや横向きといった形で生えてきて、腫れや痛みにつながる可能性が高いといえるでしょう。なお、親知らずが生えてからしばらく経って、腫れなどがある場合は、むし歯や歯肉の炎症など、何らかのトラブルが発生していると考えられます。
親知らずを抜く前の腫れや痛みについて
- 親知らずの腫れや痛みを抑える方法はありますか?
- 腫れや痛みを抑えるには、まず可能な限り刺激をしないことです。
冷たすぎる飲み物や熱いもの、辛いものなどを食べるのを控えましょう。
また、体を温めると痛みが増す可能性がありますので、長風呂やスポーツ、サウナなどは控えましょう。
気になるからと、楊枝で突いたり、強く噛み締めるのも痛みをさらに感じやすくなる原因となりますのでやめましょう。
痛み止めの服用も効果的です。痛くて辛いときは、市販の鎮痛剤を服用しましょう。
- 痛みが軽減した場合は治療しなくても大丈夫ですか?
- 痛みが落ち着いたからといって、状態が良くなったとはいえません。放っておくと、またさらに悪化することもあるので、できる限り早く歯科を受診しましょう。
親知らずが横向きに生えてきてほかの歯を圧迫していることが原因による痛みの場合、抜歯するまで痛みが続いてしまいますので、無理に我慢をせず早急に抜歯してしまう方がよいでしょう。
- 親知らずは痛む前に抜いた方がいいですか?
- 痛みがない、歯磨きしやすい、食べ物が挟まりにくい、むし歯になっていない、などであれば、すぐに抜く必要はありません。
しかし、将来むし歯のリスクがあり、かつ親知らずが噛み合わせの関係で特に生活のなかで使われていない状態であれば、残しておく必要性がないため、抜いてしまっても問題はありません。
抜歯後の腫れを早く治す方法
- 親知らずの抜歯後は必ず腫れますか?
- 抜歯した箇所は多少の腫れが起こることがほとんどです。
軽い腫れの場合は2〜3日程度で引いていきます。
しかし、場合によっては頬の方まで腫れて顔がぷっくりと浮腫んだようになることもあります。この場合は1週間程痛みと腫れが続くこともあります。抜歯後の痛みや腫れが辛い場合は、抜歯をうけた歯科に連絡し、痛み止めの処方などもしてもらうとよいでしょう。
- 抜歯後の腫れを早く治すための方法はありますか?
- 抜歯後の腫れは場合によって人によって程度が違うため一概に対処法はいえないところですが、特に異常なく抜歯が成功した場合は、抜歯したその日は強くうがいしたり、抜歯した箇所の近くを歯磨きで磨かないようにして、食事後は軽く水を含んで濯ぐ程度にしましょう。抜歯後は抜歯した箇所から血が出てきますが、血を止めるために自然に血餅ができます。血餅は血液が固まった赤黒いゼリー状の物体で、自然の止血剤となっているので、これを無理にゆすいで洗い流してしまうと、なかなか血が止まらず、腫れや痛みの治りが遅くなってしまいます。
抜歯後1日くらいは抜歯した箇所を触らないようにして様子を見ましょう。また、歯科では抜歯後の処置として炎症や腫れを早く引くようにする薬をつけてもらうこともできます。希望する場合は抜歯する前に歯科医に相談しておきましょう。
- 腫れや痛みが強い場合はどのようにケアしたら良いでしょうか?
- 抜歯後の腫れや痛みが気になる場合は、我慢せずに歯科に連絡しましょう。炎症を抑える薬や鎮痛剤の処方をしてもらえることがあります。
歯科に行くまでの時間も痛くて辛いという場合は、市販の痛み止めなども使うとよいでしょう。
親知らずを抜歯するクリニック選びについて
- 親知らずの抜歯はどの歯科医院でもできますか?
- 横向きの親知らずなど、難しい親知らずの抜歯は、通常の歯科では対応できない場合があります。
こうした難しい親知らずの抜歯に対応できるのは口腔外科です。
口腔外科と歯科の両方を行っているクリニックもありますので、確認してみましょう。また、口腔外科でも、親知らずが大きすぎたり、生え方が特殊で抜くのが難しいなどの場合は、大学病院などの専門機関でないと抜歯ができないことがあります。
その場合はかかりつけの歯科や口腔外科で紹介状を書いてもらい、専門性の高い大学病院で抜歯してもらいましょう。
- 抜歯するクリニックを選ぶポイントはありますか?
- 日本口腔外科学会の口腔外科専門医や口腔外科認定医の資格は、口腔外科において一定の実績を持つ歯科医師であることを示すものです。
難しい親知らずの抜歯など、専門性の高い治療にたいしてもしっかりと経験を積み、適切な治療を行うために必要な技術を持った歯科医師である証となりますので、こうした資格をもつ歯科医師が担当してくれるクリニックを選ぶとよいでしょう。
編集部まとめ
親知らずの抜歯後はほとんどのケースで腫れが出ますが、安静に過ごすことや適度な冷却などの対応を心がければ、早く治すことができます。
治療を行う歯科医師の技術力などによっても腫れの程度などは異なりますので、日本口腔外科学会の口腔外科専門医資格を持つ歯科医師を選ぶなど、治療経験の裏付けをもつクリニックを選択することで、術後の腫れや痛みを軽減し、早く治すことができる治療につながります。
参考文献