親知らずが横向きに生えていると、どのような問題があるでしょうか。
親も知らぬうちに生えてくるといわれる親知らずは、まっすぐきれいに生えず横向きに生えてくる場合も多く見られます。
横向きとなった親知らずはむし歯になりやすい・歯肉炎を起こしやすいなどのトラブルのほか、ほかの歯にも悪影響を与えたり歯並び全体が乱れる原因になったりと多くの危険があります。
しかし親知らずであっても歯を抜く行為には少なからずリスクが伴い、一度抜いてしまったら戻すことはできません。
この記事では横向きに生えた親知らずによる影響と抜歯の注意点を解説するので、対応について参考にしてみてください。
親知らずが横向きに生えている状態とは
- 横向きに生えた親知らずとはどのような状態を指しているのでしょうか?
- 横向きに生えた親知らずは、さまざまなトラブルの原因になりやすいです。親知らずが歯肉を押しのけて生えてくる際、歯肉に炎症が起こる智歯周囲炎は代表的な親知らずのトラブルになります。また第二大臼歯の奥で横向きになっている親知らずを歯ブラシで磨くのは難しく、汚れがたまってむし歯になりやすいため危険です。
親知らずがむし歯になるだけでなく、親知らずと接触している第二大臼歯もむし歯になりやすくなるため、将来的に多くの歯を失ってしまうリスクになります。また横向きに生えてくる親知らずが第二大臼歯を押していると、前歯も含めた歯並び全体が乱れることがあります。
一度乱れた歯並びは、親知らずを抜いても自然には戻りません。さらに親知らずが第二大臼歯の根元に食い込んでくると、第二大臼歯の歯根が溶けて抜歯せざるを得なくなるケースもあります。
- 親知らずが横向きに生えてくる原因を教えてください。
- 親知らずが生えてくる年代は18~20歳くらいですが、このころにはすでにほかの歯が生え揃って骨格の成長も終わっているので、親知らずがまっすぐ生えてくる隙間がないためです。
隙間のないところに親知らずが無理やり生えてこようとするため、横向きになったり歯肉に埋まったままになったりするケースが多く見られます。現代人はやわらかいものを食べ慣れて顎が小さくなっているため、親知らずが横向きになるという説もあります。しかし3000年前の弥生時代の化石からも親知らずが横向きになったり欠損したりしている例が見られており、親知らずがまっすぐ生えないのは現代にはじまったことではありません。
- 横向きに生えた親知らずを放置すると危険ですか?
- 横向きに生えた親知らずは、さまざまなトラブルの原因になりやすいです。親知らずが歯肉を押しのけて生えてくる際、歯肉に炎症が起こる智歯周囲炎は代表的な親知らずのトラブルになります。また第二大臼歯の奥で横向きになっている親知らずを歯ブラシで磨くのは難しく、汚れがたまってむし歯になりやすいため危険です。
親知らずがむし歯になるだけでなく、親知らずと接触している第二大臼歯もむし歯になりやすくなるため、将来的に多くの歯を失ってしまうリスクになります。また横向きに生えてくる親知らずが第二大臼歯を押していると、前歯も含めた歯並び全体が乱れることがあります。一度乱れた歯並びは、親知らずを抜いても自然には戻りません。さらに親知らずが第二大臼歯の根元に食い込んでくると、第二大臼歯の歯根が溶けて抜歯せざるを得なくなるケースもあります。
横向きに生えた親知らずの抜歯について
- 痛みや日常生活に支障がなくても抜歯したほうがいいのでしょうか?
- 痛みや生活への支障がない場合は急いで抜歯する必要はありませんが、将来的にトラブルを起こす可能性が高いので抜歯したほうが無難です。
親知らずに歯肉が被っている場合は抜歯の前に歯肉の切開などを行うため、術後に頬が腫れやすくなります。このためしばらく人と会う予定がないときなどを見計らって、親知らずの抜歯を行う方も多いです。
ただし傾きが少ない親知らずの場合は、将来的に第二大臼歯を失ったときにブリッジや部分入れ歯の土台として使える可能性があります。歯科医と相談して親知らずを残すメリットがあるかどうかを、慎重に検討してください。
- 横向きに生えた親知らずの抜歯は難しいですか?
- 横向きになった親知らずは珍しい症例ではなく、横向きだから難手術になるわけではありません。歯の根元が複雑に枝分かれしていたり、横向きの親知らずが第二大臼歯の根元に深く食い込んでいたりする場合などは、難しい手術となります。このような場合は親知らずを少しずつ割りながら取り除いていくため、手術の時間も長く必要です。また下顎の歯を支える歯槽骨には、下歯槽神経という太い神経が通っています。
親知らずがこの神経と近い位置にある場合は、神経を刺激しないよう慎重に抜歯をしなければいけません。まっすぐ生えた親知らずを抜くのは10分程度で済みますが、横向きなど難易度の高い親知らずの場合は30分〜1時間ほどの手術になる場合もあります。
- 横向きに生えた親知らずは一度に何本かまとめて抜歯できますか?
- 横向きであっても、親知らずを何本かまとめて抜くことはできます。抜歯の際に局所麻酔を行うため、麻酔に耐えられると判断されれば4本まとめて抜歯も可能です。しかし横向きの親知らずは歯肉を切開して抜歯する場合も多く、術後に歯茎や頬が腫れる可能性が高いでしょう。
片側だけなら抜歯しなかったほうの歯で食事もできますが、両側を抜歯すると痛みがひくまで食事に苦労する場合もあります。まとめて抜歯すれば通院回数が少なく済むメリットはありますが、抜歯に伴うリスクなどの説明を十分に受けて慎重に判断してください。
- 横向きに生えた親知らずはどこで抜いてもらえますか?
- かかりつけの歯科医で抜いてもらえる場合もありますが、難易度が高い場合は口腔外科を紹介されて抜いてもらいます。外科的な治療を専門とする口腔外科は抜歯の専門家であり、大病院であれば毎日のように親知らずを抜いています。
難易度の高い症例であっても経験豊富な歯科医師が多く、失敗のリスクを抑えるのなら口腔外科で抜歯してもらうのがよいでしょう。一般の歯科医院でも口腔外科出身の歯科医が在籍していることもあるため、かかりつけの歯科医でまずは相談してみてください。
横向きに生えた親知らずを抜く際の注意点
- 抜歯の痛みはどれくらい続きますか?
- 抜歯に伴う痛みは、3〜4日で自然と治まっていくのが一般的です。手術中は麻酔が効いているので痛みは少なく、術後2〜3時間で麻酔が切れてくるので強い痛みを感じはじめるでしょう。痛みが強い場合は、処方された鎮痛剤を飲んでしのぐことになります。
抜歯直後は歯肉に大きな穴が空いている状態ですが、2〜3日後から歯肉の再生がはじまり1週間程度で穴は塞がります。1週間経っても痛みがひかない場合は傷口が炎症を起こしている可能性があるため、早めに歯科医院を受診するようにしてください。
- 抜歯後すぐに飲食しても大丈夫ですか?
- 抜歯直後は飲食をひかえ、口腔内に刺激を与えないようにしてください。傷口で血が固まって血餅を形成し2〜3時間で自然に出血が止まるので、その後は飲食をしても大丈夫です。
ただし過度なうがいなどをすると血餅が取れてしまうため、治癒が遅くなってしまいます。固いものや辛いものなどは傷口を刺激して強い痛みがでることがあるため、傷口が落ち着くまでは避けたほうがよいでしょう。
- 親知らずの抜歯後に避けたほうがよい行為があれば教えてください。
- 抜歯当日は血流が良くなる運動・長時間の入浴はひかえたほうが、血の止まりが早くなります。抜歯のストレスや麻酔の影響などで気分が悪くなる可能性があるため、なるべく安静にしておくのが無難です。
口腔内が不潔だと傷口に細菌感染が起こりやすくなるので歯磨きは必要ですが、歯ブラシが傷口に当たらないようにゆっくり歯磨きしてください。
編集部まとめ
横向きに生えた親知らずの影響や抜歯について、解説してきました。
親知らずはほかの歯が生え揃ってから遅れて生えてくるため、まっすぐきれいに生えることのほうが稀で、多少なりとも横向きになっているケースのほうが多いといわれています。
横向きとなった親知らずは歯磨きがしにくいことからむし歯になりやすく、むし歯の治療も難しいため抜歯になるケースが多くあります。
親知らずだけがむし歯になるのではなく、その手前の第二大臼歯までむし歯になりやすい・根元に食い込んで痛みやすいなどの問題も起きやすいため、第二大臼歯にダメージを与える前に抜歯したほうが無難です。
ただし横向きの程度によっては将来的に第二大臼歯を失ったときにブリッジの土台として使える可能性もあるため、親知らずを残すメリットがあるかどうかも歯科医師と相談してから抜歯するか判断するとよいでしょう。
参考文献