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親知らず

親知らずの炎症は何が原因?治療法や自分でできる応急処置も解説します

親知らずの炎症は何が原因?治療法や自分でできる応急処置も解説しま

親知らずは口腔におけるトラブルメーカーとして有名です。それは親知らずが原因でその周りの歯茎が腫れたり、顎の骨に炎症反応が起こったりするためです。そんな親知らずによる炎症は何が原因で起こるのでしょうか。そして、親知らずとそのほかの永久歯とは何が違うのでしょうか。本記事では、親知らずの特徴や炎症の原因、自分でできる応急処置の方法などを詳しく解説します。親知らずで顎が腫れている人は、ぜひ参考にしてみてください。

親知らずとは

親知らずとは 親知らずは、第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)や智歯(ちし)と呼ばれる歯です。上下の奥歯の一番後ろに生えてくる歯で、多くの方が20代前後に生えそろいます。ひとつ手前の奥歯は第二大臼歯であることからもわかるように、実や親知らずも立派な永久歯の一種なのです。しかし、現代人の顎の骨は小さくなる傾向にあり、親知らずが生えるスペースが十分にないことが多いのが現状です。そのため、親知らずは歯並びが悪くなったり、斜めに生えてきたり、埋まったままだったりと、トラブルを引き起こしやすい歯なのです。

具体的には、親知らず特有の歯周疾患である智歯周囲炎(ちししゅういえん)や完全に埋まっている親知らずの周囲に現れる嚢胞、親知らずが手前の歯を圧迫して歯根を吸収させる現象などが主なトラブルとして挙げられます。また、歯磨きがしにくいことからむし歯になりやすく、放置するとむし歯が進行して歯髄まで到達し、激しい痛みを引き起こすこともあります。

親知らずの炎症が起こる原因と生え方

親知らずの炎症が起こる原因と生え方
親知らずは、生え方によっては炎症を起こしやすい歯です。ここでは、親知らずの炎症が起こる原因と、炎症を引き起こしやすい生え方についてお話しします。

原因

親知らずの炎症には、いくつかの原因が考えられます。代表的な原因について詳しく見ていきましょう。

・智歯周囲炎
智歯周囲炎は、親知らずの周囲の歯肉に炎症が起こる状態を指します。親知らずは奥歯の一番後ろに位置するため、歯ブラシが届きにくく、食べかすや歯垢が溜まりやすい環境にあります。この状態が続くと、歯周ポケットが深くなり、細菌が繁殖して歯肉の炎症を引き起こすのです。智歯周囲炎は、歯茎の腫れや痛み、出血などの症状が現れます。重症化すると、歯を支える骨が溶けて歯がグラグラするようになることもあります。

・親知らずのむし歯
親知らずは、歯ブラシが届きにくいため、むし歯になりやすい歯です。むし歯が進行すると、歯の内部の神経にまで達し、激しい痛みを引き起こします。また、むし歯が原因で歯髄まで炎症が広がり、歯髄炎を発症することもあります。歯髄炎は激しい痛みを伴う上、顔がはれたり発熱したりする全身症状を引き起こすこともあるので注意が必要です。

・嚢胞
親知らずの周囲には、嚢胞ができることがあります。嚢胞は、歯の形成過程で残った上皮組織が増殖してできる袋状の組織です。嚢胞は無症状で経過することが多いですが、大きくなると周囲の骨を圧迫し、痛みや腫れ、骨の溶解などの症状を引き起こします。嚢胞は自然に治ることはないため、外科的に取り除く必要があります。

・歯性感染症
上記の3つは、親知らずの炎症の根本的な原因となる病気ですが、そこからより広い範囲に波及する歯性感染症にも注意しなければなりません。例えば、顎骨骨髄炎(がっこつこつずいえん)や蜂窩織炎(ほうかしきえん)、上顎洞炎(じょうがくどうえん)などは、親知らずの炎症や細菌感染が周囲の組織にまで広がって発症することがある病気です。これらの病気にかかると、顎だけでなく、首の周りにまで炎症や腫れが見られるようになります

炎症が起こりやすい生え方

親知らずには、炎症が起こりやすい生え方と起こりにくい生え方があります。炎症が起こりやすい生え方は、親知らずが半分だけ生えていたり、斜めに傾いていたりする生え方です。これらは歯磨きがしにくく、磨き残しが多くなることから、むし歯や歯周病のリスクも自ずと上昇します。

真横に生えている親知らずは、手前の歯を圧迫して、歯根吸収や歯髄炎などを引き起こす可能性が高いです。真っすぐきれいに生えている親知らずは、そのほかの永久歯と同様、炎症が起こりにくい生え方といえるでしょう。また、上段でも取り上げたように、歯茎の中に完全に埋まっていて、口腔内に露出していない親知らずも炎症が起こりにくくなっていますが、含歯性嚢胞のリスクは伴います。

親知らずの炎症の症状

親知らずの炎症の症状 親知らずに炎症が起こると、さまざまな症状が現れます。代表的な症状として、痛みや腫れ、噛み合わせの悪化、開口障害などがあります。それぞれの症状について詳しく見ていきましょう。

痛みや腫れ

親知らずの炎症が起こると、まず痛みや腫れが現れます。痛みは、親知らずの周囲の歯茎や頬の内側に生じることが多いです。炎症が軽度の場合は、鈍い痛みや違和感程度ですが、炎症が進むと激しい痛みを感じるようになります。痛みのために食事が摂れなくなることもあるでしょう。腫れは、親知らずの周囲の歯茎から頬にかけて起こります。腫れが進むと、顔がゆがんで見えたり、口が開けにくくなったりします。

痛みや腫れは、親知らずの炎症を疑うサインです。これらの症状が現れたら、早めに歯科医院を受診しましょう。

噛み合わせが悪くなる

親知らずが原因で炎症が起こった場合、上下の歯の噛み合わせが悪くなることがあります。親知らずが歯周病やむし歯になっただけでどうして噛み合わせに異常が生じるのか、疑問に思う人もいることでしょう。これは親知らずの周囲の組織が腫れて、一時的に歯並び・噛み合わせにも乱れが生じるからです。もちろん、こうした症状は軽度の腫れでは認められませんが、親知らずの周囲が大きく腫れた場合には、食べ物が噛みにくくなる症状が生じ得ることも知っておきましょう。

開口障害

開口障害とは、何らかの理由で口が開きにくくなる症状です。顎関節症でよく見られる症状ですが、親知らずが原因で顎が腫れた場合にも口が開きにくくなることがあります。とくにこの症状は上の親知らずが腫れた場合に認められることが多いといえます。なぜなら炎症反応によって外側に圧迫された親知らずが、開口時に下顎の筋突起とぶつかりやすくなるからです。その他、親知らずの炎症によって咽頭付近まで大きく腫れた場合も開口時に痛みやひっかかりを伴うことで、口を開きにくくなるケースもあります。

親知らずの炎症の診断方法

親知らずの炎症の診断方法 親知らずの炎症が疑われる場合、歯科医師が詳しい検査を行い、適切な診断を下します。診断には、視診・触診、レントゲン検査、CT検査などが用いられます。それぞれの検査について詳しく見ていきましょう。

視診・触診

視診・触診は、親知らずの炎症の診断の基本です。歯科医師が目で見て、手で触れることで、炎症の有無や程度を判断します。視診では、親知らずの周囲の歯茎の色や腫れ具合、親知らずの生え方などをチェックします。歯茎が赤く腫れていたり、膿が出ていたりする場合は、炎症が疑われます。触診では、親知らずの周囲を指で触れて、腫れや痛みの有無を確認します。また、歯を軽くたたいて痛みが出るかどうかも確かめます。

視診・触診は、簡単で低侵襲な検査ですが、歯科医師の経験と知識が必要とされます。視診・触診だけでは、炎症の原因や進行度まで詳しく分からないこともあるため、必要に応じてほかの検査を組み合わせることが大切です。

レントゲン検査

レントゲンは、歯や骨をはじめとした硬組織の状態を把握するために撮影します。親知らずがむし歯になっていれば、むし歯の部分がレントゲン画像で透過像として見えますし、炎症によって骨が破壊されていれば、正常とは異なる形態がレントゲン画像から読み取れます。含歯性嚢胞のような疾患は、親知らずの周りが黒く抜けるような形で映し出されるため、レントゲン検査でも十分な情報が得られやすいです。

CT検査

親知らずの周りの炎症の状態をより詳しく、正確に把握するためには、歯科用CTによる撮影が必要となります。歯科用CTなら、親知らずはもちろん、その周りの骨や軟組織の状態も三次元的に確認できます。観察する位置や角度を任意に変更できるため、親知らずの炎症の原因となっている病気・異常の範囲や進行度まで評価することが可能です。

親知らずの炎症の応急処置

親知らずの炎症の応急処置 親知らずの炎症が起こると、激しい痛みや顎のはれなどの症状に悩まされることがあります。できるだけ早く歯科医院を受診することが大切ですが、すぐに受診できない場合は、家庭でできる応急処置を行いましょう。ここでは、親知らずの炎症の応急処置について詳しく説明します。

鎮痛剤

親知らずの炎症には、強い痛みを伴うことが多いです。ときには睡眠を阻害するほどの痛みが生じるため、鎮痛剤による応急的な対処が必要となります。鎮痛剤は、普段から風邪をひいたときなどに使っている市販のもので構いませんので、用法・用量を守った上で適切に服用してください。親知らずの炎症の原因にもよりますが、鎮痛剤を飲んだからといって症状が自然に消失していくことはまずありませんので、最終的には歯科を受診する必要があります。

冷却する

炎症反応が起こって腫れている部位には、冷やす処置が効果的です。顎が腫れている場合は、水で濡らしたタオルを顎に当てて、患部を冷却しましょう。親知らずの周りが腫れている場合も、基本的には同様の方法で冷却してください。歯茎をはじめとした口腔粘膜を氷などで直接的に冷やすと、患部の血流が悪くなり、より深刻な症状を引き起こしかねません。痛みや腫れが強いからといって、極端に冷やすことは生体にとって良くないことなのです。また、タオルで間接的に冷やす場合も長時間は行わず、腫れや痛みがある程度、軽減されたらやめるようにしましょう。

歯磨きの工夫

親知らずの炎症があっても歯磨きはきちんと行わなければなりません。親知らずの周りが腫れて、歯ブラシが当たると痛みを感じるかもしれませんが、症状が軽くなるまで歯磨きを怠っていたら口腔衛生状態が悪化してしまいます。その結果、細菌の繁殖が促され、親知らずの炎症や腫れがより強く出るようになるかもしれません。

そこで意識してほしいのが使用する歯ブラシと磨き方の工夫です。歯ブラシはやわらかめのものを使って、歯茎を刺激しないよう優しく、ていねいに磨くようにしてください。親知らずはもともと汚れがたまりやすいため、優しく磨いていると時間がかかってしまうかもしれませんが、それでも清潔にする意味はあります。また、電動歯ブラシを使用すると、手磨きよりも刺激が少なく、効果的に歯垢を除去できます。ただし、振動が強すぎると痛みを感じることがあるので、弱めのモードで使用しましょう。

うがい

親知らずが炎症を起こして腫れている場合に有効な対処法として、うがいが挙げられます。親知らずの周りが大きく腫れていて、痛みも強くなっているときは、やわらかい歯ブラシで優しく磨くことも難しくなるので、殺菌作用の期待できるマウスウォッシュでこまめにうがいをしましょう。マウスウォッシュなら、親知らずの周りにも隅々にまで殺菌成分が行き渡ります。ただ、これもあくまで応急処置であり、長く続けられるものではないため、できるだけ早く歯科を受診することが重要となります。

親知らずの炎症の治療

親知らずの炎症の治療 親知らずに炎症が起こった場合は、症状によって治療法が変わります。ここでは一般歯科でも広く行われている基本的な治療をご紹介します。

抗菌薬

親知らずの炎症が軽度の場合は、抗菌薬を使用して炎症を抑える治療が行われます。抗菌薬は、感染を引き起こしている細菌の繁殖を直接的に止めることができる薬剤なので、場合によっては大きな効果が見込めます。

抗菌薬の投与方法は、内服薬と点滴があります。内服薬は、歯科医院で処方されたお薬を自宅で服用します。1日3回、食後に服用するのが一般的です。点滴は、歯科医院や病院で行われます。抗菌薬を直接血管に投与するため、効果が早く現れます。重症の炎症や、全身疾患を持つ患者さんに適しています。

抗菌薬の治療期間は、炎症の程度によって異なります。軽度の炎症であれば、3日から1週間程度で治療が終了します。ただし、炎症が改善されない場合は、抗菌薬の変更や、ほかの治療法の検討が必要です。

抜歯

智歯周囲炎やむし歯などの治療が奏功せず、親知らずの保存が難しいと診断された場合は、抜歯が選択されます。歯茎や顎の炎症の根本的な原因となっている親知らずそのものを抜き取ることで、腫れや痛みなどの改善をはかります。ただし、親知らずやその周りに強い炎症反応が行っている状態で抜歯することはありません。なぜなら強い炎症反応が起こっていると、浸潤麻酔が効きにくくなるからです。痛みのコントロールができない状態で抜歯をするのはとても危険なことなので、抗菌薬や口腔内の洗浄などによって消炎を試みて、患部の状態が安定したら抜歯を実施します。

切開排膿(せっかいはいのう)

親知らずの炎症では、歯茎や顎に膿の塊ができることがあります。そのままの状態を放置していると、食事や歯磨きだけでなく、呼吸することすら困難になってしまう場合もあるので、切開排膿という処置を施します。膿の貯留によって大きく腫れた部分をメスで切開し、内容物を取り出します。施術後しばらくしてからまた膿が溜まってくることも珍しくないため、同様の処置を何度か繰り返したり、内容物が自然と排出されるような装置を取り付けたりすることもあります。

嚢胞の摘出

含歯性嚢胞が原因で親知らずに炎症が起こっているケースでは、外科的な方法で嚢胞を摘出しなければなりません。嚢胞の摘出は一般歯科で行うことが難しく、ほとんどのケースで大きな病院に設置されている口腔外科で実施することになります。もちろん、嚢胞の診断自体は、一般歯科でも可能です。

編集部まとめ

編集部まとめ 親知らずの炎症の原因と治療法、自分でできる応急処置について解説してきました。親知らずの炎症の主な原因は、智歯周囲炎やむし歯、嚢胞などで、生え方の悪い親知らずや完全に埋まっている親知らずでリスクが高くなっています。親知らずが腫れたら、まずは患部を冷やしたり、鎮痛剤を飲んだりして応急的に対処しましょう。根本的な治療は、歯科医院でなければ行えません。ケースに応じて、歯周病治療やむし歯治療、切開排膿といった処置を施し、それでも症状が改善されない場合は抜歯を選ぶことになります。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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