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顎関節症

顎関節症と歯並びの関係性とは?顎関節症の治療法やよくある質問を解説します。

顎関節症と歯並びの関係性とは?顎関節症の治療法やよくある質問を解説します。

顎関節症は、顎の関節に痛みやこわばりを感じる疾患です。顎関節症の原因はさまざまですが、歯並びとの関連性にも注目が集まっています。本記事では、顎関節症と歯並びの関係性について解説するとともに、顎関節症の治療法やよくある質問にもお答えします。顎の痛みでお悩みの方は、ぜひ参考にご覧ください。

顎関節症と歯並びの関係性

顎関節症が原因で歯並びが悪くなることはありますか?
一般的に、顎関節症が直接的に歯並びを悪化させることはありません。しかし、顎関節症によって引き起こされる症状が間接的に歯並びに影響を与える可能性があります。たとえば、顎関節症によって片側での咀嚼(偏咀嚼)が習慣化すると、長期的には歯列に偏りが生じ、歯並びに悪影響を及ぼすことがあります。また、顎関節症の痛みを避けるために、無意識のうちに下顎を前方や側方に突き出した状態で過ごすことで、徐々に不正咬合が進行するケースもあります。ただし、これらは顎関節症が直接的な原因ではなく、あくまで二次的な影響として歯並びに変化が生じる可能性があるということです。
歯並びと顎関節症は関係がありますか?
歯並びと顎関節症には密接な関係があると考えられています。不正咬合(良くない歯並び・噛み合わせ)が顎関節症の発症や悪化に関与している可能性が指摘されています。たとえば、開咬(前歯が閉じない)や過蓋咬合(噛み合わせが深い)などの不正咬合では、顎関節に過度な負担がかかりやすく、顎関節症を引き起こすリスクが高まります。また、上顎前突(出っ歯)や非対称な咬合(顎の曲がり)なども、顎関節への負担を増大させる要因となり得ます。

一方で、顎関節症が原因で生じる悪習癖、たとえば歯ぎしりや食いしばりなどは、歯の摩耗や移動を引き起こし、結果として不正咬合を招く可能性もあります。

このように、歯並びと顎関節症は相互に関連し合っており、どちらが原因でどちらが結果というよりも、複合的な要因が絡み合って症状が悪化していくと理解されています。そのため、顎関節症の治療においては、歯列の状態も十分に考慮に入れる必要があるといえるでしょう。

顎関節症の治療法

顎関節症の治療法

顎関節症にはどのような治療法がありますか?
顎関節症の治療法は、重症度や原因に応じてさまざまなアプローチが用いられます。薬物療法では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、筋弛緩薬、抗うつ薬などを使用し、痛みや炎症を抑え、筋肉の緊張を和らげることができます。スプリント療法では、マウスピースを使用して歯の接触状態を調整し、顎関節への負担を軽減します。これは歯ぎしりや食いしばりによる影響を最小限に抑えるのに役立ちます。

歯科治療では、歯の削合(咬合調整)や補綴治療により、不適切な咬合状態を改善し、顎関節への負担を軽減します。行動療法ではストレス管理やリラクゼーションなどを通じて、顎関節症の症状を引き起こす習慣や行動を修正します。重度の顎関節症やほかの療法で効果が得られない場合には、関節鏡手術や開放手術といった外科的治療が検討されることもありますが、外科的介入が必要なケースはまれです。

マウスピース型矯正は、顎関節症の治療に効果がありますか?
マウスピース型矯正は、顎関節症の治療に一定の効果が期待できます。特に、不適切な咬合状態が顎関節症の原因や悪化要因となっている場合、マウスピース型矯正によって咬合を改善することで、顎関節への負担を軽減し、症状の緩和につなげることができます。マウスピースを用いることで、前歯の位置を調整し力の分散を図ったり、深い咬合を改善して顎関節への負担を減らしたり、歯列を調整しバランスの取れた咬合を目指したり、歯の接触状態を変化させて顎関節への影響を最小限に抑えることができます。

ただし、顎関節症の原因が咬合以外が要因(ストレス、外傷、関節リウマチなど)の場合や、重度の歯ぎしりや顎関節症状が存在する場合は、マウスピース型矯正単独での改善は難しいことがあります。また、顎変形症など、骨格的な問題が背景にある場合も、マウスピース型矯正の適用には慎重を要します。

顎関節症に関するよくある質問

顎関節症の自宅でできるケア方法はありますか?
顎関節症の症状を和らげるためには、セルフケアも重要な役割を果たします。まず、上下の歯を無意識に接触させる癖(TCH)に気付くことが大切です。この癖により、顎の筋肉が疲労し、関節に負担がかかります。意識して歯を離し、力を抜くよう心がけてください。

次に、開口訓練を試してみましょう。これは、顎の動きを良くし、筋肉のストレッチ効果を得るための練習です。親指と人差し指で上下の前歯を押し上げるように口を開く動作を、無理のない範囲で1日数回繰り返します。

また、顎周辺の筋肉をほぐすことも効果的です。手のひらや指で側頭部からほおにかけてマッサージをしたり、頬に空気を入れて膨らませたりすることで、筋肉の緊張を和らげられます。

顎関節症は遺伝しますか?
顎関節症と遺伝の関連性は低いとされています。たとえ家族に顎関節症の方が多くいたとしても、それが直接遺伝によるものとは限りません。顎関節症は先天的な要因よりも、個人の噛み合わせや顎関節の使い方、生活習慣などの後天的な要因に大きく影響されます。
したがって、顎関節症について遺伝的なリスクを心配する必要はありません。家族と似た食生活や生活環境であっても、一人ひとりの癖や骨格の違いによって、顎関節症のリスクは異なります。
顎関節症の痛みを和らげるための対処法はありますか?
まず、顎関節とその周囲の筋肉を安静にすることが大切です。無理に大きく口を開けたり、硬い食べ物を噛むことを避け、顎への負担を軽減しましょう。次に、市販の鎮痛剤を服用するのも一つの方法です。医療機関で処方されるものと同様の成分を含む鎮痛薬が薬局で購入できます。痛みが強い場合に適切に使用すると症状の緩和に期待が持てます。また、顎周辺の筋肉をマッサージしたり、痛みのない程度に患部を温めることも効果的です。優しくほぐすことで、筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減される場合があります。

ただし、これらの対処法はあくまで一時的な症状の緩和を目的としたものです。根本的な改善のためには、専門の医師による診断と治療が不可欠です。症状が継続する、あるいは悪化する場合は、早めに歯科医院を受診し、適切な治療を受けることをおすすめします。

顎関節症で手術をする必要はありますか?
顎関節症の治療において、手術が必要となるケースは限られています。多くの場合、セルフケアや理学療法、スプリント治療などの保存的な方法で症状の改善が見込まれるようです。

しかし、まれに難治性の顎関節症や、関節の変形が高度に進行した場合には、外科的な介入が検討されることがあります。具体的には、関節腔を洗浄する関節洗浄術、関節鏡を用いて癒着を剥離する手術、関節円板の整復や切除、人工関節への置換術などが挙げられます。
これらの手術は、全身麻酔下で数日間の入院が一般的です。手術による侵襲や、術後のリハビリテーションを考慮する必要があるため、手術を実施するかどうかは慎重に判断されます。

したがって、顎関節症と診断されたからといって、すぐに手術が必要になるわけではありません。まずは保存的な治療を十分に行い、効果を見極めることが重要です。症状の程度や治療への反応性によって、手術の必要性が個々のケースで検討されることになります。

編集部まとめ

編集部まとめ 顎関節症は、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性のある疾患であり、その原因は不適切な咬合や歯列不正、ストレス、悪習癖など多岐にわたります。症状の改善には、セルフケアと専門的な治療の両方が欠かせません。顎関節症は遺伝よりも後天的な要因の影響を大きく受けるため、私たち一人ひとりが生活習慣を見直し、顎関節症と向き合っていくことが重要です。顎の痛みや違和感に悩まされている方は、適切な治療とセルフケアを組み合わせることで、健康な顎関節を取り戻していきましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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