口が大きく開かない症状に悩んでいる方は、顎関節症の可能性があります。しかし、顎関節症以外にも考えられる病気はあるのでしょうか?
本記事では、顎関節症とは何か、どのように対処すれば良いのか、知識を深めて日常生活での不便を解消しましょう。
- 口が開かなくなる病気
- 顎関節症について
- 顎関節症は病院に行くべきなのか
口が開かない病気について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
口が開かないときに考えられる病気
- 顎関節症だと口が開きにくくなりますか?
- 顎関節症の症状の一つとして、口が開きにくくなることがあります。顎関節症は、顎関節や顎を動かす筋肉に炎症が生じる病気で、関節の動きが制限されるのが特徴です。
症状は、顎関節の不具合により口の開閉が難しくなることを意味し、時には顎関節の動きに伴うカクカクといった雑音が生じることもあります。さらに、顎の痛みが頭痛や耳痛といったほかの部位に放散することもあります。
- 顎骨骨髄炎・蜂窩織炎は口を開けづらいですか?
- 顎骨骨髄炎と蜂窩織炎は、それぞれ異なる病気ですが、いずれも口を開けにくくするという共通の症状を引き起こす可能性があります。【顎骨骨髄炎】
顎骨骨髄炎は、顎の骨内部の炎症によって発生します。この状態は通常、感染によって引き起こされ、特に歯科処置後や歯の感染症が原因となることが多いようです。
炎症により、しばしば発熱や全身の倦怠感が起こります。また、顔の腫れが生じることもありますが、これは顎骨骨髄炎の場合、目立つほどの腫れにはならないようです。
しかし、炎症が顎関節周辺に及ぶと、口の開け閉めに影響が出て、開口障害が生じる可能性があります。【蜂窩織炎】
蜂窩織炎は、細菌感染によって引き起こされ、急速に腫れや赤み、痛みを伴います。
蜂窩織炎は進行が速く、症状が急激に悪化することが特徴です。
脚に生じることが多いとされる疾患ですが、身体のどの部位にでも引き起る可能性があり、口腔内に生じた場合、広範囲に腫れやむくみが生じ、重症化すると口が開かなくなることが珍しくありません。
さらに、喉の痛みや唾液の飲み込み困難といった症状も伴い、最悪の場合は気道閉塞に至ることもあります。これらの症状が現れた場合、迅速な治療が必要です。
特に蜂窩織炎は、急激な進行により命を脅かす状況に至る可能性があります。治療は、感染の原因となる細菌に対する抗生物質の投与や、場合によっては外科的な介入が必要になることがあります。
また、顎骨骨髄炎の場合、感染源の除去や感染の広がりを抑えるための治療が行われます。
- 破傷風は口の開きにくさを感じますか?
- 破傷風は、「クロストリジウム・テタニ菌」による感染症であり、感染によって産生される毒素が筋肉の硬直を引き起こします。
破傷風の特徴的な症状の一つが「開口障害」、つまり口を開けることが困難になる状態です。顎周辺の筋肉が硬直することによって引き起こされます。破傷風の潜伏期間は、3日~3週間程度とされています。症状の初期段階である開口障害は、感染の初期兆候として現れます。顎や頸部の疲労感や外傷部分の硬直感と共に、破傷風の初期症状としてよく見られます。
症状が進行すると、口の開け難さはさらに悪化し、咀嚼(かみ砕くこと)や嚥下(飲み込むこと)にも影響を及ぼす可能性があります。
また、食事の摂取が困難になるだけでなく、栄養不足や脱水状態に陥るリスクも高まります。
そして、破傷風毒素はほかの筋肉群にも影響を及ぼすことがあり、これによって全身の筋肉硬直、呼吸困難、さらには命に関わる合併症を引き起こす可能性もあります。破傷風は適切な治療を受けない限り危険な状態に至る可能性があるため、外傷を負った際や上記のような症状が現れた場合には、迅速な医療対応が必要です。
予防策としては、破傷風ワクチンの接種が大切であり、特に外傷後の感染リスクが高い場合には、追加の免疫グロブリンの投与が考慮されることもあります。
- 口腔がんは口が開かなくなりますか?
- 口腔がんが進行すると、口が開かなくなることがあります。これは、がんが口の粘膜や周囲の組織に広がり、影響を及ぼすためです。
初期の口腔がんでは、粘膜の色の変化や、口内炎が良くなりにくい、しこりの出現などの症状が見られます。また、歯茎にがんが生じた場合、歯の支持組織への浸潤により歯のぐらつき、入れ歯が合わなくなることもあります。
がんが進行すると、粘膜のただれ、痛み、出血、そして口の開けにくさなどの症状が現れます。加えて、首のリンパ節への転移があると、首にしこりを感じることもあります。
口の中に違和感を感じた際には、鏡で確認し、気になる症状がある場合は、医療機関を早めに受診することが重要です。
顎関節症の場合
- 顎関節症の症状を詳しく教えてください
- 顎関節症は顎関節周辺にさまざまな症状を引き起こす疾患です。典型的な症状には、顎関節の痛みや不快感、噛む時の痛み、顎のだるさ、口の開閉時の音(カックン、コッキンといった音)などがあります。
また、口が開けにくい、スムーズに動かない、左右に動かしにくいなどの症状も見られます。上記の顎関節症の主な症状に加えて、顎周辺だけでなく全身に及ぶ副症状が現れることもあります。頭痛、首・肩・背中の痛み、腰痛、肩こりなどが含まれます。
耳の症状としてはめまい、耳鳴り、難聴が挙げられます。
また、眼の疲れや充血、涙目、鼻のつまり感、噛み合わせの不具合、歯や舌の痛み、味覚異常、口の渇き、嚥下困難、呼吸困難、四肢のしびれなども起こり得ます。
- 顎関節症の原因を教えてください
- 顎関節症の原因は単一ではなく、多因子によるものとされています。
主な原因としては、顎関節や顎を動かす筋肉の構造的弱さ、不良な咬合関係、精神的緊張の持続、外傷、そして日常的な習慣や行動が挙げられます。これらの要因が複合的に症状を引き起こすとされています。
また、顎関節症において、かみ合わせに関する問題が直接的な原因となるケースは稀といわれています。
- 顎関節症の治療法を教えてください
- 顎関節症の治療に関して、以下のようにまとめられます。【治療の原則】
- 可逆的な治療の重視:患者さんにダメージを残さない治療を選択することが重要で、(例えば、歯を削る、被せ物をする、歯列矯正など)は避けるべきです
- 非侵襲的なアプローチ:スプリント(マウスピース)、開口訓練、マッサージ、湿布、行動療法などの方法で症状を改善することが望ましいです
【歯科医院での治療】
- スプリント治療:上顎または下顎の歯列にフィットするプラスチック製の装置を使用し、夜間の無意識な噛みしめから顎関節や筋肉を保護します
- 鎮痛薬の投与:痛みが強い場合に限り、鎮痛薬を投与することがあります
近赤外線レーザーや電気刺激:筋肉の自動的な収縮を促し、血流を改善する方法があります - 2週間改善が見られない場合:顎関節症専門の医師へ紹介される可能性があります
【顎関節症の専門病院での治療】
- 個々の病態と病因の詳細な検討:病態に対する改善方法と病因に対する是正方法を同時に実施します
- 外科的治療の限定的使用:大部分は非外科的治療ですが、限られたケースで外科手術が選択されることもあります
【患者さん自身による家庭療法】
- セルフケアの重要性:症状の消失にはセルフケアが不可欠です
- 痛みの管理:食品に気をつける、開閉口の制限などが挙げられます
温湿布、マッサージ、訓練療法:症状が少し落ち着いた後に実施することが良いでしょう - 行動療法:無意識の行動や姿勢を是正することが症状改善に寄与します
顎関節症は病院に行くべきなのか
- 顎関節症のときはどの病院に行くべきですか?
- 顎関節症は、主に口の中や顎の関節周辺の組織に関連する問題であり、通常、歯科医師が診断を行います。そのため、症状がある場合はまず歯科医院を受診することが推奨されます。
歯科医院を選ぶ際は、特に顎関節症の治療に注力している医院を選ぶことが重要です。これには、医院の看板に「口腔外科」の表示がある場合や、ホームページなどで顎関節症の治療について言及している医院が含まれます。
初診は地域の歯科医院で行い、必要に応じて詳細な検査や専門的な治療が求められる重度のケースでは、そこから顎関節症専門の病院や大学病院への紹介を受けられます。
- 顎関節症を放置するとどうなりますか?
- 顎関節症の初期症状は、時に自然に回復することがあります。例えば、軽度の症状であれば、約2~3日の間に自然に改善することがあります。
しかし、この症状の自然回復は必ずしも保証されるものではありません。
顎関節症の症状が1週間以上続く場合、または日常生活に支障をきたすほどの症状がある場合は、歯科医院での受診が推奨されます。早期に適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、治療期間の長期化を避けることにつながります。
顎関節症と自己診断している場合でも、実際にはほかの病気の可能性もあるため、自己判断で放置することは避けるべきです。
症状が改善しない場合、特に自然に治癒しない別の病気である可能性も考慮し、医療機関での診断と治療を受けることが重要です。
編集部まとめ
ここまで口が開かない病気についてお伝えしてきました。
口が開かない病気の要点をまとめると以下の通りです。
- 口が開きにくくなるという症状は、顎関節症、顎骨骨髄炎、蜂窩織炎、破傷風、口腔がんなどさまざまな病気に関連している
- 顎関節症は、顎関節の痛みや不快感、噛む時の痛み、開閉時の音、口の開けにくさなどの症状を引き起こします。原因は多因子によるもので、構造的弱さ、咬合問題、精神的緊張、外傷など
- 顎関節症の場合、歯科医院を最初に受診し、特に顎関節症治療に特化した医院を選ぶことが望ましく、必要に応じて、専門の病院や大学病院へ紹介されることがある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。