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舌がんの原因とは?舌がんのリスク要因や予防方法、治療法を解説

舌がんの原因とは?舌がんのリスク要因や予防方法、治療法を解説

舌にできる悪性腫瘍の舌がんをご存じでしょうか。舌がんは、場合によっては生命に関わる可能性もある病気であり、原因を知って対策することや、早期発見のための対応を心がけることが大切です。
この記事では、舌がんの特徴や原因、予防法や治療法などについて解説します。

舌がんとは

舌がんとは

舌がんは、舌の前方3分の2の場所にできたがんのことです。
お口のなかにできるがんを口腔がんと呼びますが、舌がんは口腔がんの半数以上を占めます。 なお、がんとは悪性腫瘍とも呼ばれるもので、遺伝子の異常により、無秩序に増殖を続けてしまうという特徴を持つ細胞や、周囲の細胞を巻き込んでいったり(浸潤)、ほかの組織に転移したりするという特徴をもつ細胞のことです。
遺伝子の異常によって無秩序に増殖をする細胞でも、浸潤や転移が生じないものは良性腫瘍と呼ばれます。 舌がんはがんの一種であり、放置しているとがん細胞が増殖し、大きくなっていきます。また、舌がんは首のリンパ節などに転移しやすい性質があります。

舌がんの発生箇所

舌がんは、お口を大きく開いたとき、目に見える範囲の舌にできるがんです。
舌の中央部に舌がんが生じることは少なく、ほとんどは側縁部と呼ばれる舌の側面にできます。

中咽頭がんと舌がんの違い

舌がんと近い場所にできるがんに、中咽頭がんがあります。
中咽頭はのどの中央部分のことで、扁桃腺や舌根あたりの範囲を指します。
中咽頭がんと舌がんの違いはがんができる場所で、舌の前方3分の2のところにできるがんは舌がんと呼ばれ、それよりも奥側にできるものは中咽頭がんと呼ばれます。
ただし、明快な境界線があるわけではないため、どちらに該当するかは医師の診断によって決定します。

舌がんの診断方法

舌がんは、視診や触診による検査と、CTやMRIなどの画像検査、そして細胞を採取して直接観察する生検によって診断します。
視診や触診はがんの症状確認、画像検査はがんの大きさなどの判断、生検は悪性腫瘍か良性腫瘍化の判断といったように、それぞれ検査の役割が異なるため、どれか一つの検査だけ診断が行われるものではありません。

舌がんの特徴

舌がんは、初期段階では自覚症状が現れにくく、舌の表面がザラザラした状態になったり、白い斑点のようなものができたりといった程度の状態で生じます。 進行していくと潰瘍やしこりが現れるなどしますが、口内炎に似た症状であるため、舌がんだとは思わず放置してしまうこともあります。
口内炎であれば2週間以内には軽快していくため、口内炎がなかなか治らないという悩みから医療機関を受診し、舌がんが発覚するということもあります。 さらに病状が進行すると出血や口臭などを伴うこともあり、がんのサイズが大きくなると発音や食事にも支障が出るようになります。 また、舌がんは頸部リンパ節に転移しやすいという特徴があり、早い段階で転移が生じ、広い範囲の治療が必要になる場合があります。

舌がん以外の口腔がん

口腔がんができる場所は舌だけではありません。
舌がんの次に多いがんが歯茎のがんで、上顎の歯茎と下顎の歯茎を合わせると口腔がんの20%以上の割合を占めます。
その次に多いのが頬の粘膜や口腔底と呼ばれる舌の下側にある部分のがんで、それぞれ口腔がんの10%弱ほどとなっています。

舌がんの原因やリスク要因

舌がんの原因やリスク要因

舌がんを予防するためには、病気になる原因やリスク要因を知っておきましょう。

舌がんの原因

舌がんに限らず、悪性腫瘍の直接的な原因はまだ明らかになっていません。
遺伝子に傷ができて細胞の性質が変わってしまうと悪性腫瘍につながる可能性があることはわかっていますが、具体的にどのような状況で悪性腫瘍になるのかという原因については、判明していません。
ただし、過去の統計からがんを引き起こしやすいリスク要因は判明しているため、舌がんを予防するためには、リスク要因を避けることが大切です。

舌がんのリスク要因

舌がんのリスク要因はさまざまですが、そのなかでも特に影響が大きいものが喫煙と飲酒です。
それぞれがなぜがんの原因として影響しやすいのか解説します。

喫煙

舌がんを含む口腔がんにおいて、喫煙は特に大きなリスク要因とされています。
国立がん研究センターの発表した論文によると、現在喫煙者である方が口腔がんにかかるリスクは、非喫煙者の2.4倍になるとされています。また、1日の喫煙箱数と喫煙年数の積が60以上のグループの場合、は口腔がんのリスクが非喫煙者の5.2倍になるとされ、日常的に喫煙を続けていることが、舌がんなど口腔がんの大きな原因になることを示唆しています。
喫煙が舌がんのリスク要因になる理由は、タバコに含まれる有害物質が口腔内を刺激するほか、ニコチンなどの作用によって血流が悪化し、お口周りの細胞の代謝が悪くなることなどが考えられます。

飲酒

舌がんを含む口腔がんのリスク要因として、喫煙に次いで強いとされているものが飲酒の習慣です。
日常的に飲酒を行う方は、飲酒をしない方の2.2倍、週に300グラム以上のエタノールを摂取する方は3.8倍、口腔がんの罹患リスクがあるとされています。
飲酒もアルコールやアセトアルデヒドによる刺激があるほか、血流を阻害する原因になるため、舌がんに限らず、口腔環境を悪化させる要因にの一つです。 喫煙と飲酒を両方とも行う方はより舌がんのリスクが高まるとされ、男性の場合、喫煙をせず飲酒量が少ない方に比べ、喫煙の習慣があり飲酒量が多い(週に150グラム以上のエタノール摂取をする)方は口腔がんや咽頭がんの罹患リスクが4.1倍になったというデータもあります。

その他の要因

喫煙や飲酒だけではなく、舌に刺激が加わるような生活習慣などは、舌の細胞の増加を促進し、遺伝子異常を持った細胞が発生しやすくなる要因といえます。
不十分な歯磨きなどによってお口のなかが不衛生な状態であることや、お口に合っていない入れ歯、一部が尖った歯などが口腔がんの原因につながるとされ、特に舌がんの発生には、歯が関与しているケースが多いという報告もあります。
また、HPVウィルスへの感染なども舌がんのリスク要因となります。

舌がんを予防する方法

舌がんを予防する方法

舌がんを予防するためには、下記のような点に注意するとよいでしょう。

飲酒と喫煙を控える

舌がんを含む口腔がんのリスク要因である飲酒と喫煙を控えることは、舌がんを予防するためにとても大切です。
飲酒では高濃度のアルコールほど高いリスク要因となり、喫煙の場合は葉巻などがより高いリスク要因となりますので、どうしても飲酒や喫煙をやめられない場合は、こうした特にリスク要因が高いものだけでも避けるようにしましょう。

健康的な食生活

舌がんをはじめ、悪性腫瘍は身体の免疫力が低下していると発生しやすくなります。
栄養バランスの取れた健康的な食生活は、免疫力を高め身体の代謝を正常に保つために重要な役割を果たしますので、糖質や脂質などに偏った食事ではなく、タンパク質やビタミン、ミネラルまでバランスのよい食事を心がけましょう。

ストレスを避ける

ストレスは体内の血流を悪化させ、代謝機能を低下させるとともに免疫力を低下させる原因の一つです。
ストレスを自分から回避することは難しいかもしれませんが、適度な睡眠や趣味によるストレス発散などで、できる限りストレスをためないような生活を心がけましょう。

感染症の予防

近年の研究で、子宮頸がんなどの原因として知られるヒトパピローマウイルス(HPV)が舌がんの原因として関与していることがわかってきています。
HPV感染は性行為などによって生じるものであり、感染をしっかりと防ぐことが、舌がんの予防につながります。

適度な運動などの生活習慣

適度な運動など、健康増進につながる生活習慣は免疫力を向上させ、舌がんの予防につながります。
激しいトレーニングなどをする必要はありませんので、毎日30分間ウォーキングをするなど、身体をしっかりと動かす習慣を身に着けることが大切です。

定期的な歯科検診の受診

舌がんは歯による刺激やお口のなかの衛生状態などが原因の一つになります。
定期的な歯科検診を受けてお口のなかを清潔に保つと同時に、舌への刺激となっていないかを確認して必要なケアを受けることは、舌がんの予防につながります。
また、もし舌がんを発症していたとしても、定期的に歯科検診を受けていれば病気を早期発見しやすくなり、身体に負担の少ない治療での早期治療を行える可能性が高まります。
特に、歯科口腔外科の経験を持つ歯科医師であれば、舌がんを含む口腔がんをしっかり見わけてもらいやすいといえます。

舌がんの進行

舌がんの進行

舌がんは、初期段階では自覚症状が出にくく、気が付くと進行してしまっているという場合もある病気です。
舌がんが具体的にどのように進行していくのか、解説します。

初期症状

舌がんは、元々ある舌の細胞の一部に異変が生じて、周囲を巻き込みながら過剰に増殖していってしまう病気です。
そのため、細菌感染などによって発生する病気と異なり、炎症などが発生しにくく、初期段階では目立った症状が出ないケースが多いといえます。
場合により舌に赤や白の斑点が生じたり、舌が白っぽく変化したと感じることがありますが、明確に病気だとは気が付きにくいといえるでしょう。

現れやすい自覚症状

症状が少し進行してきた段階で現れやすい自覚症状は、舌の側面でのただれやしこりなどです。
ただし、しこりなどが現れても痛みなどは生じず、なんとなく硬い部分ができて気になるという程度のケースもあります。

症状が進行すると現れやすい自覚症状

舌がんが進行していくと、次第に舌を動かすときにしびれや違和感が生じるようになったり、会話をしにくくなったりといった自覚症状が現れます。
場合によっては、強い痛みなども感じることがあります。

勘違いしやすい疾患

舌がんを含め、口腔がんは口内炎と勘違いしやすい疾患です。なぜなら、お口のなかの腫れやただれ、そしてそれに伴う痛みなどは、すべて口内炎でも現れやすい症状であり、口内炎の方が経験者も多いためです。
実際に、口内炎がなかなか治らないからという理由で医療機関を受診したところ、実は口内炎ではなく舌がんであったことがわかるというケースも多いといわれています。
口内炎の場合、症状が出てから2週間ほどもすれば自然治癒することがほとんどですので、それ以上の期間が経過しても治らない口内炎があるというような場合は、早めに歯科口腔外科を受診するようにしましょう。

頸部リンパ節への転移が起こりやすい

頸部リンパ節という首にあるリンパ節は、お口からの距離が近いため、舌がんを含む口腔がんの転移が起こりやすい部位です。
舌がんの症状が初期に近い段階でも、頸部リンパ節への転移が発生してしまうことがあり、リンパ節への転移が起こると治療の難易度などが高くなってしまいます。

舌がんの治療法

舌がんの治療法

舌がんの治療は、下記のような治療法で行われます。

舌がんの切除

舌がんの治療の基本は、原発巣切除と呼ばれる手術で、悪性腫瘍ができている部分を外科的な処置で切除する方法によって行われます。
がん細胞は周囲の細胞に浸潤しながら拡大していくため、がん細胞がある部分をすべて切除することができれば、がんの拡大を防ぎ完治を目指すことが可能です。
原発巣切除は腫瘍よりも少し大きな範囲を切除する必要があり、小さながんでも数cmは切除が必要となるため、舌がんの場合は手術によって舌の半分または全体を切除するといったような手術が行われます。

頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)

頸部郭清術は、首のリンパ節を切除する手術です。
舌がんは頸部のリンパ節に転移しやすいため、転移が見つかった場合に頸部郭清術が行われるほか、転移が生じている可能性が高い場合に、予防的な対応として頸部郭清術を行うこともあります。

再建手術

原発巣切除で舌の一部または全部を切除してしまうと、食事や発音など、日常生活に重大な影響が生じます。
再建手術は身体のほかの部分から筋肉などを採取し、切除した組織を作り直すという治療で、切除した舌の代わりとなる組織を再建することで、日常生活を取り戻せるようにします。

その他の組織の切除手術

舌がんが進行すると、舌だけではなく顎などの部位にまで悪性腫瘍が広がってしまったり、場合によっては身体のほかの部位に転移してしまう可能性があります。
この場合は、舌だけではなく悪性腫瘍が存在している組織をすべて切除していき、がんの進行を食い止める治療が必要です。
ただし、血流にのって身体のさまざまな部位に転移してしまった場合、手術によるがんの除去が困難になるため、放射線治療など別の治療法を中心にがんを抑制する方法に切り替えることもあります。

薬物療法や放射線治療

抗がん剤や放射線を使用してがん細胞の成長を止めたり、がん細胞を破壊する治療が行われることがあります。
がんが残っている場合だけではなく、原発巣切除で舌がんを除去した後、転移などによる再発を防ぐために取り組む場合もあります。

まとめ

まとめ

舌がんを引き起こす直接的な原因はまだ完全に解明されていませんが、リスク要因として喫煙や飲酒、HPV感染などがあることがわかっているため、こうしたリスク要因を避けることが、舌がんの予防につながります。
ただし、どれだけ予防していても舌がんにかかってしまう可能性はあります。歯科口腔外科の経験を持つ歯科医師による定期検診などを受けるようにすると、万が一、舌がんになったとしても、早期発見と早期治療を受けやすくなりますので、歯科定期検診を受診することをおすすめします。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松浦 京之介歯科医師(歯科医)

松浦 京之介歯科医師(歯科医)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:2019年 福岡歯科大学卒業、2020年 広島大学病院研修修了、2020年 静岡県、神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務、2023年 医療法人高輪会にて勤務、2024年 合同会社House Call Agencyを起業 / 資格:歯科医師免許 / 所属学会:日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会

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