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口腔外科

軽度から重度に至るまで幅広い口腔粘膜疾患の症状について解説!

口腔粘膜疾患 症状

口の中に違和感や痛みを感じるそんな経験をしたことはありませんか?
症状が続いたり、再発したりする場合は口腔粘膜疾患の可能性があります。
本記事では、口腔粘膜疾患について以下の点を中心にご紹介します。

  • 口腔粘膜疾患とは
  • 口腔粘膜疾患の原因と治療法
  • 性感染症との関係

口腔粘膜疾患について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

口腔粘膜疾患とは

口腔粘膜疾患とは

口腔粘膜疾患は、口の中の粘膜に発生するさまざまな病状を指します。これには舌、歯肉、口蓋、頬などが含まれ、症状としては白色や赤色への変色、水疱形成、表面の凸凹や不整形、ヒリヒリする痛みなどが挙げられます。

これらの疾患は良性のものから悪性、あるいは悪性へと変化する可能性があるものまでさまざまです。口腔粘膜の健康は全身の健康状態を反映することもあり、これらの疾患の診断と治療は重要な意味を持ちます。

また、口腔粘膜疾患は、刺激により発生しやすいという性質があるため、定期的に医院を受診するなど日常生活での予防が大切です。

ほかにも口腔粘膜疾患は、その症状が唾液の保護作用や口腔内の常在菌、外部からの刺激などによって変化しやすい特徴を持っています。これにより、診断や原因特定が難しくなる場合があります。そのため、口の中に変化を感じたら、医師に相談することが推奨されます。

口腔粘膜疾患の具体的な症状

口腔粘膜疾患の具体的な症状

口腔粘膜疾患は、具体的にどのような症状が現れるのでしょうか? 以下で詳しく解説します。

白板症

白板症(はくばんしょう)とは、細胞の異常増殖によって粘膜上皮が肥厚し、その下の毛細血管が見えにくくなることで白く見える状態のことです。痛みを伴わないことが多いようですが、びらん(ただれ)を伴う場合にはものが当たると痛んだり食べ物がしみたりといった症状を引き起こすこともあります。

口腔粘膜のなかでも頬粘膜、舌、歯肉などに見られ、舌にできた場合は、悪性化するリスクが高く、口腔潜在的悪性疾患、すなわち前がん病(がんになる手前)の一つとされています。

白板症は、その見た目だけでなく、悪性腫瘍への進行可能性を考えると、注意が必要な疾患です。定期的な口腔検査を行い、異常を早期に発見することが、白板症によるリスクを減らすことにつながります。

紅板症

紅板症(こうばんしょう)、または紅色肥厚症(こうしょくひこうしょう)と呼ばれるこの病態は、舌、歯肉、そのほかの口腔粘膜に見られる鮮紅色の病変です。特徴としては、初期段階に見られる刺激痛です。

また、紅板症は50歳以上の高齢者に多く見られ、この年代の人々が全体の約80%を占めています。注目すべき点は、紅板症の約50%が悪性化するリスクを持つということです。このことから、紅板症は口腔内で発生する疾患の中でも、悪性転化の可能性が高いとされています。

紅板症の原因については、まだ詳しくは解明されていませんが、アルコールやタバコ、不良補綴物(合っていない被せ物)、ビタミンAやBの不足、加齢など、口の中の慢性的な刺激が関係していると考えられています。

口腔カンジダ症

口腔カンジダ症は、主にカンジダ・アルビカンスという真菌(いわゆるかび)によって引き起こされる口腔内の感染症です。この病気には急性型と慢性型があり、急性型では灰白色あるいは乳白色の白苔が粘膜表面に見られ、慢性型ではさらに複雑な症状が現れます。また、カンジダ菌による感染は唇の端に炎症が生じる口角炎を引き起こす原因になることもあります。

この真菌は口腔内の常在菌として存在しており、通常は人体の免疫システムとのバランスの中で共存しています。しかし、免疫力の低下や唾液量の減少、長期にわたる抗菌薬の使用などが原因でこのバランスが崩れると、カンジダ菌が過剰に増殖し、病原性を示すようになります。

症状には、痛みやヒリヒリする痛み、味覚の異常が含まれますが、無症状の場合もあります。また、白い斑点やぼこぼこした角質のようなものも見られ、歯ブラシで除去できますが、すぐに再発することも特徴です。

口腔カンジダ症は日和見感染の一つであり、健康な人では問題を引き起こさない弱い病原体が、免疫系が弱まった人において感染症を引き起こします。そのため、基礎疾患を持つ人や免疫機能が低下している人は、注意が必要です。

口腔カンジダ症の治療と予防には、定期的な口腔検査、口腔衛生の改善、そして必要に応じて医師の指示に従った薬の使用が欠かせません。なかでも、免疫系に影響を与える疾患を持つ人や、抗生物質を長期間使用している人は、このような感染症のリスクが高まるため、予防措置を講じることがさらに重要になります。

再発性アフタ

再発性アフタは、口内の軟部組織に痛みを伴う小さな潰瘍が形成される疾患で、小児期に始まりがちであり、生涯にわたって断続的に再発する特徴があります。また、患者さんの約80%が30歳未満で発症し、年齢とともに発作の頻度が減少し、症状が軽減する傾向にあります。

これらの潰瘍は直径が数mmから約1cm程度の楕円形で、灰白色や黄白色の偽膜に覆われ、周囲の組織に比べて赤みを帯びており、食べ物や歯ブラシなどが軽く触れただけで激痛を引き起こし、特定の食べ物による刺激でも不快感が増すことが特徴です。

原因としては明確に特定されていないものの、過度のストレス、栄養不足、そして免疫系の異常など、複数の要因が関係していると考えられています。

しかし再発性アフタは、自己治癒する傾向があり、約1〜2週間程度で自然に回復しますが、その痛みや不快感は日常生活に影響を及ぼすことがあります。

扁平苔癬

扁平苔癬(へんぺいたいせん)は、皮膚や粘膜に現れる慢性的な疾患です。また、角化性と炎症を伴う難治性の病変とされ、口腔内では頬粘膜によく見られますが、舌や口唇にも影響を及ぼすことがあります。

症状としては、白い粘膜の角化がレース状に現れ、周囲には発赤(一部が赤くなること)が見られることが特徴的です。さらにびらんや潰瘍を形成し、触れると痛みを感じることもあります。

扁平苔癬の原因については、詳しくは解明されていませんが、歯科用金属に対するアレルギー反応、遺伝、自己免疫疾患、ストレス、代謝障害などが関与していると考えられています。

治療にはうがい薬や副腎皮質ステロイド薬を含む軟膏の使用が推奨され、歯科用金属によるアレルギーが疑われる場合には、関連する充填物や冠の除去が検討されます。

扁平苔癬は、その再発性と治療の難しさから、患者さんにとって大きな負担となり得ます。治療は症状を緩和し、生活の質を改善することを目指しますが、根治療法はまだ確立されていません。

口腔乾燥症

口腔乾燥症は、唾液の分泌が不足することによって引き起こされる状態で、口内が異常に乾燥します。この症状は一時的な水分不足から、薬物の副作用、さらには重大な疾患に至るまで、さまざまな原因によって発生する可能性があります。

なかでも、長期間の脱水状態や、糖尿病、腎不全などの慢性的な疾患が原因で起こることもあれば、ストレスや体力の低下が引き金になる場合もあります。
また、抗ヒスタミン薬、制酸薬、降圧薬、向精神薬など、特定の薬剤の副作用として口腔乾燥症が現れることもあります。

口腔乾燥症の自覚症状には、口の渇き、粘り気の増加、発話や嚥下(えんげ)の困難、味覚異常、口内や舌の痛み、口臭、義歯の装着困難、唇のひび割れなどがあります。
これらの症状は、日常生活において不快感を引き起こすだけでなく、口腔内の健康状態にも悪影響を及ぼします。

唾液には、口腔内を清潔に保つ自浄作用、食べ物の消化を助ける消化作用、細菌の増殖を抑える抗菌作用、粘膜を保護する作用など、重要な役割があります。そのため、唾液の分泌量が減少すると、むし歯や歯周病、口腔カンジダ症などの口腔疾患のリスクが高まります。
さらに、シェーグレン症候群のように、唾液腺の分泌機能が障害される病気では、目の乾燥とともに口腔乾燥症が顕著に現れることがあります。
治療は、薬剤の副作用が原因であれば、医師と相談して薬剤の調整を行うこと、慢性疾患が背景にある場合はその治療を優先すること、また、日々の生活習慣の見直しや、水分摂取量の増加、うがい薬や唾液の分泌を促す薬の使用など、さまざまな方法で症状の緩和を図ります。

重要なのは、口腔乾燥症の原因となる要因を特定し、それに対処することです。 また、口腔衛生の維持に努めることで、二次的な口腔疾患の発生を防げるでしょう。

ウィルス性疾患

ウィルス性疾患は、人体に侵入したウイルスが原因で発生する疾患です。これらの疾患は、身体のさまざまな部位に影響を及ぼし、口腔内では独特の病変を引き起こすことがあります。

代表的なウィルス性疾患には、ヘルペス、帯状疱疹、ヘルパンギーナ、手足口病などがあります。これらの疾患は、小児に生じることが多いようですが、成人にも発症する場合があります。

ヘルペス性口内炎は、単純ヘルペスウイルスによる初感染であり、口腔粘膜に痛みを伴う多数の小さな潰瘍が生じます。全身症状としては発熱や倦怠感が見られることもあります。

帯状疱疹は、水痘ヘルペスウイルスが原因で、体調が悪化すると神経内で活性化し、痛みを伴う帯状の発疹を引き起こします。

手足口病は、主にコクサッキーA16ウイルスやエンテロウイルス71によって引き起こされ、口腔内にアフタ様病変と手足に小水疱があるのが特徴的なウイルス感染症です。

ヘルパンギーナは、A群コクサッキーウイルスによる感染症で、口腔の後方に小水疱が形成されることが特徴です。これらの疾患は夏に流行する傾向があります。

ウィルス性疾患の初期段階では唾液分泌の減少、飲み込みの困難、発熱、疼痛などの症状を緩和するため、痛み止めや炎症を抑える薬が使用されることがあります。

これらのウィルス性疾患は、免疫系が弱っている人において重篤な症状を引き起こす可能性があります。そのため、リスクが高い小児や免疫力が低下している人は、予防策を講じることが重要です。

ウィルス性疾患の予防には、手洗いなどの基本的な衛生管理から、必要に応じてワクチン接種まで、さまざまな方法があります。また、感染した場合には早期に医療機関を受診し、治療を受けることが、回復への近道となります。

口腔粘膜疾患の原因と治療法

口腔粘膜疾患の原因と治療法

上記では、主な口腔粘膜疾患を紹介しました。 では、どのようなことが原因で口腔粘膜疾患を発症するのでしょうか?治療法もあわせて解説します。

主な原因

口腔粘膜疾患は、刺激や、細菌、ウイルス、真菌による感染が原因となることが多いようです。さらに、アレルギー反応、遺伝的な先天異常、またはほかの全身疾患から派生する場合もあります。

具体的には、硬い食べ物による刺激や、入れ歯の不適合、あるいは一部の食品や薬剤に対する過敏反応により口腔粘膜に異常が生じることがあります。また、口腔内が不衛生である場合は、感染症のリスクを高めます。

これに加え糖尿病などの全身疾患も口腔粘膜の状態に影響を及ぼす可能性があると考えられています。

主な治療法

再発性アフタや扁平苔癬(へんぺいたいせん)、水疱破裂後のびらん・潰瘍などの症例では、局所に作用する副腎皮質ステロイド薬の使用が主な治療です。これには軟膏や噴霧剤が含まれ、痛みを軽減するためには、麻酔成分を含むうがい薬の併用も考慮されます。

一方、口腔カンジダ症やヘルペス性口内炎などの感染症に対しては、抗真菌剤や抗ウイルス剤による薬物治療が中心となります。治療は、患者さんの状態に応じて、内服薬やうがい薬といった形態で行われ、口腔乾燥症が伴う場合は、その治療も同時に進められます。

口腔乾燥症自体の治療に関しては、原因が特定できれば、その原因疾患の治療や、症状を引き起こしている薬剤の変更で改善が期待できます。

シェーグレン症候群などの自己免疫疾患が背景にある場合は、塩酸ピロカルピンや塩酸セビメリンなどの薬物療法が用いられます。加えて、唾液の分泌を促す治療、唾液腺のマッサージ、口腔内の保湿を目的としたジェルやスプレー、人工唾液、保湿装置などの使用が症状緩和のために推奨されます。

また治療においては、二次感染の予防という観点から口腔衛生の維持が重要なため、歯科衛生士による口腔衛生指導や、定期的な歯石除去、適切な歯磨き方法の指導が行われます。

性感染症との関係

性感染症との関係

性感染症(STI)は、性的接触によって伝播する病気であり、クラミジア感染症、ヘルペス感染症、HIV感染症などが代表的な例です。これらの感染症は、口腔粘膜を含む体の多くの部位に影響を及ぼすことがあり、性行為のみならず、オーラルセックスなどの行為を通じても感染する可能性があります。

クラミジア感染症は日本において症例の多いSTIの一つであり、多くの場合、感染しても自覚症状が乏しく、無症状のまま感染を広げるリスクがあります。男性では尿道炎や精巣上体炎、女性では子宮頸管炎が主な症状とされており、不妊症の原因となることもあります。

ヘルペス感染症は、単純ヘルペスウイルスによって引き起こされ、水疱や潰瘍などの特徴的な病変を生じます。初感染時には、歯肉炎や口内炎、咽頭炎が見られることが多いようです。

HIV感染症は、感染初期には発熱や倦怠感などの全身症状を示すことがあります。 無症候期を経てAIDS発症期に入ると、口腔粘膜の症状も現れることもあり、口腔カンジダ症や口腔毛様白板症、HIV関連歯肉炎・歯周炎などがその例です。
これらの性感染症は、口腔粘膜に現れる症状を通じて初めて発見されることも少なくありません。そのため、口腔粘膜に異常を感じた場合は、性感染症の可能性も考慮し、早期に医療機関を受診しましょう。

まとめ

まとめ

ここまで口腔粘膜疾患についてお伝えしてきました。
口腔粘膜疾患の要点をまとめると以下の通りです。

  • 口腔粘膜疾患は、口の中の粘膜に発生するさまざまな病状
  • 口腔粘膜疾患は、刺激により発生しやすいという性質がある
  • 性感染症(STI)は、性的接触によって伝播する病気であり、クラミジア感染症、ヘルペス感染症、HIV感染症などが代表的な例

少しでも口腔粘膜疾患で悩んでいる方のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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