多くの人が一度は口内炎を経験したことがあるのではないでしょうか。
しかし、口腔外科で口内炎を治療できることをご存じない方もいるでしょう。
ほとんどの口内炎は日常生活の改善・セルフケア・時間経過などで治癒しますが、ときには治りにくい口内炎ができたり、別の病気が隠れていたりする場合もあります。
口腔外科で治療したほうがいい口内炎とは、どのようなものなのでしょうか。
口腔外科で口内炎を治療するメリットは?
口内炎を口腔外科で診てもらう場合のメリットは、ほかの病気があるかどうか調べてもらえることです。
口内炎の種類・頻度・大きさ・個数などによっては、口腔ケア以外の治療を行う必要が出てきます。
一般の方では判別が難しいため、一度に口内炎がたくさんできたり、常に口内炎ができているような気がする場合は、口腔外科に相談するとよいでしょう。
近隣に口腔外科がない場合は、歯科医院や耳鼻咽喉科でも口内炎に関する相談ができるので、そちらを受診してください。
ほかに病気がない単純な口内炎の場合も、治癒までの期間が短くなる点はメリットといえるでしょう。
口内炎の種類
一口に口内炎といっても、さまざまな種類があります。特に多いのは以下の三種です。
- アフタ性口内炎
- ウイルス性口内炎
- カタル性口内炎
これらは、症状・見た目・できる場所がそれぞれ異なります。一つずつ特徴を説明しましょう。
アフタ性口内炎
一般的に口内炎の場合、アフタ性口内炎を指すことが多いでしょう。
アフタ性口内炎は、丸く白い形状をしていることが多く、よく見ると境目が赤く腫れています。お口の中を噛んだり切ったりした傷から起きることがあります。
ほかにもさまざまな発症原因があり、多くの人が経験する口内炎の一種です。
女性の場合は妊娠や月経異常の影響でアフタ性口内炎になる人もいます。
ウイルス性口内炎
何らかのウイルス感染によって起きる口内炎です。 はじめに小さな水ぶくれが口内にでき、それが破れると赤い潰瘍になります。そのまま進行すると潰瘍同士がつながって大きくなることもあります。
特に痛みが強い口内炎のため、不快に感じる方も多いでしょう。
また、小さな子どもの場合は、幼稚園や保育園を通してヘルペスやヘルパンギーナに感染した場合にウイルス性口内炎がみられます。
これらの病気は単なる夏風邪とみなされることも多いため、お子さんが通っている園で夏風邪が流行っていると聞いた場合は注意しておきましょう。
カタル性口内炎
物理的な刺激を主な原因として発症するため、舌の縁や歯肉にできやすいのがカタル性口内炎です。
酸味や塩気がしみることで気付く場合が多々あります。口腔粘膜の腫れや唾液の増加などもみられるため、そこから自覚する場合もあるでしょう。
口内炎の原因
口内炎にはさまざまな種類があるため、発生する原因も多種多様です。代表的な口内炎の原因を紹介します。
口腔内の不衛生
口内炎ができる原因として強く影響していると考えられているのが、口腔内の不衛生です。
毎日歯磨きをしていても磨き残しを完全に防ぐことは難しいため、歯間ブラシ・デンタルフロスなどで細かいところも清潔にする必要があります。
口内炎がよくできてしまう方は、歯磨きに加えてデンタルフロス・歯間ブラシ・マウスウォッシュなどを併用するとよいでしょう。
歯科医院専用の洗口液などもありますので、かかりつけのクリニックで取り扱っているかどうか確認してみてください。
免疫力低下
疲労の蓄積・睡眠不足などによって免疫力が下がることも、口内炎の原因です。疲労回復にはビタミン類が使われるため、次に述べる栄養不足とも関連します。
また、子どもや高齢者も免疫力が低くなりやすく、後述する口内の乾燥状態もよくみられるため、口内炎になりやすいといえます。
ほかには抗がん剤治療の副作用として現れる口内炎にも注意が必要です。放置すると口内炎の患部から細菌感染を起こすおそれも出てきます。がん治療中の方で心当たりがある場合は、早めに主治医へ相談してください。
栄養不足
ビタミンB2が不足すると、口腔内の粘膜や皮膚の再生が滞りやすくなります。そのため、小さな口内炎なのになかなか治らないということが起きるのです。
ビタミンB2は納豆・レバー・鶏卵などに多く含まれます。これらが苦手な方・あまり食べない方・アレルギーなどの理由で食べられない方は、ビタミンB2が配合されているサプリメントを利用するのも一案です。
ほかにビタミンB6・ビタミンA・ビタミンCも口内炎予防および治癒に効果的とされているため、マルチビタミンのサプリメントを利用するのも一案となります。
口内の傷・乾燥
食事中などにできた口内の傷がアフタ性口内炎やカタル性口内炎になることがあります。
また、体質や加齢によって唾液の量が減り、口内が乾燥しやすくなった場合も口内炎を起こす原因となります。マスクの着用やこまめな水分補給も、手軽な対処方法です。
また、小さな子どもの場合は、口唇閉鎖不全症にも注意を払っておくとよいでしょう。これは俗に、お口ポカンと呼ばれるものです。
口唇閉鎖不全症を放置しておくと口内炎だけでなく、むし歯・歯周病のほか、噛み合わせの異常やアレルギー発症にもつながるため、早いうちに対処しておきましょう。
また、糖尿病のようにお口の中が乾きやすくなる病気も口内炎の遠因となります。糖尿病患者さんは口内炎のほかにむし歯や歯周病なども起こしやすくなるため、口腔ケアが重要です。
アレルギー・過敏症
これまで紹介したもの以外に、歯科治療に使われている薬品や金属が口内炎の原因となっていることがあります。
薬品に対する体の過敏な反応が起きていたり、以前にむし歯の治療で金属のかぶせ物を使っている人がその金属を原因とするアレルギーが発生していたりなどのケースです。
今までアレルギーと診断されたことがない方は気付きにくい傾向にありますが、ほかに口内炎ができる原因が思い当たらない場合は、金属アレルギーの可能性を疑ってみてもよいでしょう。
口腔外科で相談したり、歯科でアレルギーの検査を受けたりなどでアレルギーの有無を明確にしておくと、今後の対策・防止にも役立ちます。
口内炎で受診するタイミング
口内炎は、十分な栄養と睡眠を心がけることで自然に完治するケースも珍しくありません。 しかし、ときには口腔外科や歯科での治療が必須となる場合もあります。
医療機関での治療が望ましい口内炎とは、どのようなものなのでしょうか。
短期間で何度も再発する
口内炎は身近な症状ですが、短期間で何度も再発する場合は注意が必要です。別の病気の一症状として口内炎が現れるケースがあるためです。
治りにくい口内炎をきっかけに医療機関を受診し、急性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病が発見されたケースがたびたびみられます。
また、物理的な刺激によって起きている口内炎の場合は、歯のかぶせものや入れ歯の調整が必要になることもあります。
該当する場合は早めに口腔外科を受診し、原因となっている病気や口内の状況を突き止め、適切な医療機関での処置・治療を開始しましょう。
会話や食事に支障がある
口内炎が引き起こすトラブルは、飲食や食事の際に痛みを感じることも含まれます。
アフタ性口内炎であれば数日で治癒するケースも珍しくありませんが、短期間でも痛みによる不快さはなかなか辛いでしょう。
特に舌や歯が触れやすい位置にできた口内炎は、痛みも感じやすくなります。食事や睡眠などに影響を来す場合もあるので、生活上で支障を感じるのであれば、口腔外科での治療を検討してもよいでしょう。
接客業など表情が重視される職業の方も、受診によって早めに治療するメリットがあるといえます。
口内炎が大きくなっている
一般的に口内炎は数日~3週間程度で治りますが、同じ口内炎が大きくなっている場合は注意が必要となります。一見口内炎に見えても、別の病気が原因になっている場合が考えられるためです。
例えば、尋常性天疱瘡や帯状疱疹が口の中にできた場合、口内炎のように見えることがあります。それぞれの病気に合った対処法を行わなければ治癒は難しいでしょう。
特に尋常性天疱瘡を放置すると生命の危険が出てくるため、ただの治りにくい口内炎と軽視せずに医療機関を受診することが重要です。
その他には、難治性口内炎と呼ばれるタイプの口内炎もあります。こちらは原因となる病気が見つからないにも関わらず、口内炎が大きくなったり痛みが増したりなどの症状が現れるものです。
塩気がしみるなど、日常生活での苦痛が強まることがあります。この場合もやはり口腔外科を受診し、正しく対処して苦痛を和らげましょう。
口内炎が同時に複数できる
口内炎が同時に複数できる場合も、ほかの疾患が隠れている可能性が考えられます。
一例を挙げると、指定難病の一つであるベーチェット病では、アフタ性口内炎に似た強い痛みを伴う潰瘍ができます。
ベーチェット病による潰瘍なのか、アフタ性口内炎なのかを一般の方が判別するのは難しいため、やはり口腔外科などで診察を受けたほうがよいでしょう。
また、お口の中をよく噛んで口内炎がたくさんできてしまう人の場合、不正咬合や顎関節症などが原因になっている場合があります。
ほかに口内炎を発生させる病気としては、潰瘍性大腸炎などが考えられます。
どの病気が原因になっているのかによって対処方法も変わってくるため、医療機関を受診し、医師の指示に正しく従いましょう。
ただれ・腫れ・しこりがある
お口の中に痛みを感じる何かができている場合、すべてが口内炎とは限りません。口腔内トラブルのなかには、一般の方では口内炎と鑑別が難しい症状や病気もあります。
口内炎と見分けがつきにくい病気として、口腔がん・舌がん・舌痛症などが考えられます。
がんと聞くと恐ろしく感じられるかもしれませんが、口腔がんや舌がんは患者さん本人が視認・自覚しやすいため、早期発見・早期治療がしやすい面もあります。
そのため、統計上の発生率は低いものの、ほかのがんと比べて生存率が高いがんです。
いずれの病気であっても、正しい治療をするためには口腔外科や歯科医院などの受診が重要です。いつもの口内炎と少し違うかもしれないと思った場合は、早めに医療機関で相談しましょう。
口内炎の治療法
口腔外科で口内炎の治療をする場合は、口内炎の種類によって主な対処法が変わってきます。代表的な治療法は以下のとおりです。
- アフタ性口内炎:ステロイド軟膏の塗布
- ウイルス性口内炎:抗ウイルス剤の投与
- カタル性口内炎:入れ歯の調整・塗り薬・外科的処置
これらは口内炎そのものに対する治療法です。
口内炎の原因となっている別の疾患がある場合・不正咬合などによって物理的に口内炎ができている場合には、このほかにそれぞれの病気や状態の治療も並行して行います。
口内炎の自宅でできる対処法
ドラッグストアなどで買える薬やオーラルケア製品でも、口内炎の応急処置ができます。口内炎の薬として軟膏タイプやパッチタイプのものが多く市販されているため、見たことがある方も多いのではないでしょうか。
薬を塗る・貼る前には、歯磨き・デンタルフロス・マウスウォッシュなどで口内の衛生環境を向上させておきましょう。歯を磨く際は、やわらかい歯ブラシを使うと新たな傷の予防や口内炎への刺激を減らすことが可能です。
また、うがい薬や洗口液なども口内衛生の向上につながり、治癒までの時間を短縮できます。十分な睡眠と栄養をとることも重要です。
なかなか医療機関へ行く時間が取れない場合は、これらの対処法で口内炎の改善を試みましょう。セルフケアを行っても治るまでに時間がかかると感じた場合は、あらためて口腔外科もしくは歯科の受診を検討してください。
まとめ
この記事では、口内炎の種類や予防策、口腔外科で治療するメリットを紹介しました。
白くて丸いアフタ性口内炎は身近な症状ですが、ほかの口内炎の種類・原因・ほかの病気との関連など、意外に感じられることも多かったかもしれません。
なかなか治らない・口内炎が大量にできてしまったなどの場合は一度口腔外科もしくは歯科に相談し、原因を調べてもらうとよいでしょう。
口内炎が症状の一つとして現れる病気にはベーチェット病、口内炎と間違えやすい病気には口腔がん・舌がん・舌痛症などがあります。糖尿病などによってお口の中が乾燥した結果として、口内炎が引き起こされていることも考えられます。
口内炎をきっかけにほかの病気が病気が見つかるケースもありますが、早期治療を始めるきっかけとして、前向きに治療していきましょう。
ほかに病気や原因がなかった場合は、栄養状態および睡眠時間の改善・口内衛生の向上などが口内炎の治癒を早めます。適切なセルフケアで、口内炎を防ぎましょう。
参考文献
- 口の粘膜が痛い・ヒリヒリする|公益社団法人 日本口腔外科学会
- 口の中の腫瘍|日本歯科医師会
- ヘルパンギーナについて|和歌山市感染症情報センター
- 3歳ごろから就学前まで|公益社団法人 日本小児歯科学会
- 口内炎の原因|一般社団法人 日本訪問歯科協会
- がん治療と口のケア -がん治療を乗り越えるために-|日本歯科医師会
- 糖尿病と口腔ケア|一般社団法人 日本訪問歯科協会
- 金属アレルギー|日本歯科医師会
- 急性骨髄性白血病治療時の口内炎に関する研究
- 難治性潰瘍性口内炎を契機に判明した急性リンパ性白血病の 1 例
- 義歯性口内炎とその予防法|一般社団法人 日本訪問歯科協会
- 口内炎から発見された尋常性天疱瘡の1例
- 口腔粘膜のみに限局性に発生した帯状疱疹の2例
- 難治性口腔潰瘍の4例
- ベーチェット病(指定難病56)|公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター
- 口腔がんを正しく理解して早期発見につとめましょう|公益社団法人 日本歯科衛生士会
- 舌がん 患者数(がん統計)|国立研究開発法人国立がん研究センター
- 口内炎への対処法