お口のなかに白いカスのようなものがある・ヒリヒリした痛みがあるといった症状がある場合は、口腔カンジダ症を発症している可能性があります。
口腔カンジダ症とはカンジダ菌によって引き起こされる病気です。放置していると、食道粘膜や肺などに感染が広がるリスクがあるため、早期の治療が必要とされます。
今回の記事では、口腔カンジダ症の症状・痛み・治療法について詳しく解説します。
また、再発や予防も紹介しますので、気になる方はぜひ参考にしてください。
口腔カンジダ症の症状や痛み
- 口腔カンジダ症とはどのような病気ですか?
- 口腔カンジダ症とは、口腔内に存在するカンジダ菌によって起こる日和見感染症です。カンジダ属真菌は健康な人に日常的に存在する細菌で、通常はほかの菌と共存するためにある程度の数以上増えません。しかし、免疫力の低下や薬の服用などによってほかの菌とのバランスが崩れて、カンジダ菌が異常に増殖し口腔カンジダ症を発症します。口腔カンジダ症は経過および症状の違いによって、4型に分けられます。
- 急性偽膜性カンジダ症
- 急性萎縮性カンジダ症
- 慢性萎縮性(紅斑性)カンジダ症
- 慢性肥厚性カンジダ症
急性偽膜性カンジダ症は白苔が発生するタイプで、4型のなかでは発生頻度が少なくないそうです。急性萎縮性カンジダ症や慢性萎縮性(紅斑性)カンジダ症 は急性偽膜性よりも痛みを感じやすいものの、見た目で発症しているかわかりにくいため診断が難しいといわれています。また、慢性肥厚性カンジダ症は粘膜が厚く硬くなってしまうタイプで、4型のなかでは症状が少ないとされます。口腔カンジダ症は放置していると、治りにくく再発しやすくなるため、発症がわかった場合は早期の治療が望ましいです。
- 原因を教えてください。
- 口腔カンジダ症は主に免疫力低下や口腔内の環境悪化が原因で発症します。これまでは、糖尿病やがんなどの病気を発症している方が免疫力が低下し感染しやすいと考えられていました。しかし、近年では高齢者・ドライマウス・入れ歯などが原因となるケースもあるそうです。特に、高齢者の口腔カンジダ症は、高齢による免疫力低下や認知機能低下による口腔内の汚染によって引き起こされると考えられています。完治が難しく再発しやすいため、予防が重要とされます。なお、ドライマウスとはストレスや薬の副作用などにより、唾液の分泌量が減少し口腔内が乾燥する病気です。また、入れ歯はカンジダ菌が付着しやすいため、洗浄を怠ると口腔カンジダ症のリスクが高まります。さらに、抗菌薬を長期に服用することで口腔内の菌のバランスが崩れて、カンジダ菌が増殖し発症するケースもあるそうです。
どのような症状が出るのですか?
- どのような症状が出るのですか?
- 口腔カンジダ症の症状には、以下のようなものがあります。
- 白苔
- びらん
- 舌の痛み
- 味覚障害
- 粘膜の紅斑
急性萎縮性カンジダ症や慢性肥厚性カンジダ症に現れる白苔は、口腔粘膜に付着している灰白色もしくは乳白色の苔のようなものです。急性萎縮性カンジダ症の白苔は、ガーゼなどで拭うと剥がせますが、剥がすとびらんが伴う場合があります。一方で慢性肥厚性カンジダ症は剥がしにくく粘膜上皮が次第に厚くなります。舌の痛みが生じやすいのは、白苔が現れない急性萎縮性カンジダ症や慢性萎縮性(紅斑性)カンジダ症です。急性萎縮性カンジダ症や慢性萎縮性(紅斑性)カンジダ症は、舌表面に見られる粘膜の突起の舌乳頭が萎縮したり粘膜が赤くなる紅斑が起こり、舌がヒリヒリとした痛みを感じやすいとされます。また、味覚障害を発生するケースもあります。
- 口腔カンジダ症は痛みが出るのですか?
- 口腔カンジダ症になると痛みが出ます。白苔が認められる場合は、白苔を剥がした際に痛みが生じ、口角が腫れたり切れたりする場合は口角周辺に痛みが生じることがあります。また、舌がヒリヒリした痛みを感じるケースもあるそうです。口腔カンジダ症の患者さんは、口腔内の痛みで受診する方も少なくありません。
口腔カンジダ症の治療法
- 口腔カンジダ症が疑われる場合は何科を受診すればよいですか?
- 口腔カンジダ症が疑われる場合は口腔外科・耳鼻咽喉科で受診しましょう。口腔外科はお口の中・顎・顔面・顔面に隣接する組織に現れる病気を扱う診療科です。お口のなかで発生するがんなどさまざまな病気を治療します。スポーツや交通事故などによる外傷・顎や唾液腺などの外科的疾患・口腔粘膜や神経などの内科的疾患なども対応しています。また、耳鼻咽喉科でも口腔カンジダ症の検査が可能です。耳鼻咽喉科は口腔内だけでなく鼻・耳・喉など幅広く対応する診療科です。
- どのような検査が行われますか?
- まずは患者さんの口腔内の状態を確認し、白苔や紅斑などの口腔カンジダ症の症状が見られるか確認します。さらに、入れ歯の使用・年齢・ドライマウス・がんの治療など、口腔カンジダ症を発症しやすい因子があるかを見て総合的に診断します。その他には、顕微鏡検査・培養検査が行われるケースもあるそうです。顕微鏡検査は綿棒などで病変を拭いスライドガラスにのせ、染色して顕微鏡で観察する検査方法で、培養検査は口腔粘膜から菌を培養してカンジダ菌がどのくらい存在するかを調べる検査方法です。ただし、培養検査は結果が出るのに1週間程度かかります。口腔カンジダ症は早期治療が重要であるため、培養検査を推奨しない場合もあるでしょう。
- 治療法を教えてください。
- 口腔カンジダ症の治療法には基礎疾患の治療・抗真菌薬の服用・口腔ケアがあり、重症度によって治療法が異なります。口腔カンジダ症の患者さんは免疫力が低下しているケースが少なくありません。原因となる病気があれば、その病気の治療を行ったうえで抗真菌薬を服用します。一般的に治療に使用する抗真菌薬はうがい薬や塗り薬ですが、場合によっては内服薬を使用することもあるそうです。また、治療では口腔ケアも欠かせません。入れ歯を使用している場合は、入れ歯の洗浄の徹底により改善する可能性があります。毎日のうがい・歯磨きを徹底し、口腔内を清潔に保つことも大切です。
- 口腔カンジダ症に効く市販薬はありますか?
- 口腔カンジダ症の治療薬は市販で販売されていません。そのため、治療薬が必要な場合は医療機関で受診するようにしてください。医療機関で処方される主な薬は、以下が挙げられます。
- フロリードゲル
- イトリゾール
- ファンキゾン
ただし、これらの治療薬は併用が禁止されている薬があるため、別の病気がある場合は注意が必要です。
口腔カンジダ症の再発や予防
- 口腔カンジダ症は一度治っても再発する可能性がありますか?
- 口腔カンジダ症は一度治っても再発する可能性があります。特に高齢者は改善しても、口腔機能や生活環境など発症の原因を完全に排除することが難しく再発しやすいといわれています。繰り返し発症すると、難治性口腔カンジダ症に移行するため注意が必要です。そのため、治療では再発予防のために基礎疾患の治療や口腔ケアなどが重要です。
- 口腔カンジダ症を予防する方法を教えてください。
- 口腔カンジダ症を予防するためには、口腔ケアが大切です。毎日の歯磨きやうがいをして口腔内を清潔にしましょう。入れ歯はカンジダ菌が付着しやすいため、入れ歯専用の洗浄剤でしっかり洗浄することが重要です。また、口腔内が乾燥しやすい場合は保湿ジェルの使用やマスクの着用が有効とされます。特に、高齢者やがん患者さんは口腔内の清潔や保湿を徹底するようにしましょう。
編集部まとめ
口腔カンジダ症は、口腔内にカンジダ菌が異常に増加することで発症する病気です。
白苔や味覚障害、粘膜の紅斑などの症状が現れるほか、舌にヒリヒリとした痛みを感じることもあります。
口腔カンジダ症の治療では、基礎疾患の治療や抗真菌薬の服用を行います。また、再発防止のために口腔ケアも欠かせません。
高齢者やがん患者さんは、口腔機能が低下し口腔カンジダ症になりやすいため、毎日の歯磨きや入れ歯の洗浄などの徹底が大切です。
少しでも気になる症状があれば、口腔外科や耳鼻咽喉科で受診しましょう。
参考文献