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扁平苔癬の原因は?症状・診断・治療法を解説

扁平苔癬の原因は?症状・診断・治療法を解説

口の中にできものができ、痛みを感じることで日常生活に支障を及ぼすことがあります。おいしい食べ物を楽しめないといった症状は、生活の質を低下させてしまうかもしれません。

扁平苔癬は口腔粘膜や舌にできるもので、痛みを伴う場合があります。そのため、病変や症状がある場合には適切な治療を受けることが大切です。

本記事では、扁平苔癬の原因や症状について解説します。また、扁平苔癬になった場合にはどのような治療がされるのか解説します。

扁平苔癬(へんぺいたいせん)の原因や症状

歯をきにする女性

扁平苔癬とはどのような病気ですか?
扁平苔癬(へんぺいたいせん)とは、皮膚や粘膜にできる炎症を伴う角化性の難治性炎症です。病変はレース状の白い粘膜の角化がみられ、周辺に赤みを伴います。その他にも、網状・斑状・丘状・線状・環状の白斑や、紅斑・びらん・潰瘍・水泡などが混在するなどさまざまです。刺激により痛みを感じたり、食物や水分がしみるといった症状が起こることも少なくありません。病態は時間経過とともに変化する場合もあります。
扁平苔癬は頬粘膜・舌・歯肉・口唇に生じ、両側あるいは複数の部位に生じることが多いです。また、口腔粘膜だけでなく、爪・手背・四肢・陰部といった皮膚に生じることもある病気です。口腔扁平苔癬を発症している方のうち約15%の方が、ほかの部位にも扁平苔が生じています。さまざまな部位に病変が生じ、日常生活に支障を及ぼすものを、重症型扁平苔癬と呼びます。
原因を教えてください。
扁平苔癬の原因は、はっきりとは明らかにされていません。しかし、歯科用金属によるアレルギー・遺伝的要因・免疫学的要因・ストレスなどの精神的要因・代謝障害などが関与しているのではないかと考えられています。歯科用金属によるアレルギーとは、歯科治療で使用した詰め物や被せ物にアレルギー反応が起こり、扁平苔癬を発症しているということです。
どのような症状が出るのですか?
扁平苔癬は、口腔粘膜の表面がわずかに盛り上がり、レース状の病変がみられる病気です。しかし、びらんや潰瘍を伴う場合には、痛みや食物がしみるといった症状があります。また出血・味覚異常・灼熱感などを伴うことも少なくありません。びらんや潰瘍による痛みは非常に強く、食事や歯磨きなど日常生活に支障を及ぼすことがあるかもしれません。扁平苔癬は40~50代の女性によくみられる病気です。
扁平苔癬で合併症が起こるケースはありますか?
扁平苔癬は、口腔粘膜以外の病変・ウイルス性肝炎・肺腺腫瘍といった合併症を起こす場合があります。扁平苔癬は口腔粘膜以外にも病変が生じる病気です。特によくみられるのが爪に生じる扁平苔癬です。その他、食道・咽頭・頭皮・膣や亀頭粘膜の外陰部などに病変が生じます。口腔以外の部位に扁平苔癬がある方の約30~70%は、口腔内にも扁平苔癬があるそうです。
扁平苔癬は、C型肝炎ウイルスに感染している方に多く発生すると報告されています。しかし、扁平苔癬とC型肝炎ウイルスとの関連や発症機序は明確にはされていません。また、胸腺腫瘍のある方の約1%に扁平苔癬があるといわれています。

扁平苔癬の診断や治療法

治療中

扁平苔癬が疑われる場合の診療科を教えてください。
扁平苔癬は口腔内だけでなく爪や四肢といった皮膚にも発症することがあります。皮膚に病変が生じた場合は、皮膚科を受診し適切な治療を受けるようにしましょう。しかし、皮膚の扁平苔癬がある場合には、口腔扁平苔癬も伴うケースが少なくありません。
皮膚に扁平苔癬が生じた場合には、口腔内の観察を行い、病変がないか確認するとよいでしょう。口腔内に病変を発見した場合には、かかりつけの歯科医院や口腔外科を受診しましょう。
扁平苔癬はどのように診断されますか?
扁平苔癬と診断するためには病理組織検査を行う必要があります。病理組織検査は、病変部位の組織を採取し、上皮下のリンパ球に帯状の浸潤がみられるかなどを調べるものです。検査結果と口腔内の所見から扁平苔癬の診断が行われます。扁平苔癬は、白板症やカンジダ症と似た症状が現れることがあります。そのため、検査を用いてほかの疾患と鑑別することはとても大切です。
治療法を教えてください。
扁平苔癬は原因が明らかにされていないため、治療法が確立されていません。そのため治療は対症療法がメインとなります。治療法には、口腔内を清潔に保つための口腔管理や薬剤の使用があります。口腔内が汚染された状態だと、口腔常在菌により二次感染を起こす場合があるため、口腔内を清潔に保つことは大切です。また、重度の歯周病は病変を悪化させる因子となるため、消毒効果のあるうがい薬を用いて予防することも大切です。
扁平苔癬は炎症が起こる疾患であるため、抗炎症作用のあるうがい薬を使用する場合もあるでしょう。扁平苔癬の一般的な治療はステロイドを含んだ軟膏の塗布です。ステロイドは血管収縮作用・抗炎症作用があり、炎症性の扁平苔癬には有効とされています。しかし、ステロイドの使用により、感染症の合併などの副作用が出現する場合もあります。薬剤を使用するときは医師の処方通りに使用するようにしましょう。
痛みを伴う場合には、痛みの緩和を目的として鎮痛剤が処方されることもあるでしょう。また、扁平苔癬の原因が歯科用金属によるアレルギーが疑われる場合にはアレルギー検査を行い、原因となった詰め物や被せ物を取り除く治療が必要です。

扁平苔癬の予防や予後

歯を気にする男性

扁平苔癬を予防する方法があれば教えてください。
扁平苔癬を予防するためには、口腔内の清潔を保つことと、健康を維持することが大切です。口腔内を清潔に保つことで、細菌の増殖を抑え感染や歯周病の予防になります。
食後は歯ブラシや歯間ブラシを使用し、口腔内の清潔を保つよう心がけましょう。また扁平苔癬の原因に、免疫学的要因や精神的要因があると考えられています。そのため、健康な身体や心を維持することは、自分でできる対策の1つといえるでしょう。
扁平苔癬の予後を教えてください。
扁平苔癬は難治性で、症状の改善と悪化を繰り返しやすい疾患です。そのため、長期間にわたり継続して経過を観察することが大切です。扁平苔癬は治療により改善がみられても、薬剤を中止すると再発を起こすことが多いとされています。
自然に軽快することもありますが、病変が消失しても、数ヵ月~数年後に再び病変が現れることがあります。そのため定期的に歯科医師の診察を受け、病変の早期発見に努めるようにしましょう。また、悪性化することは少ないといわれていますが、悪性化する可能性を考慮するという面でも経過観察が大切です。
扁平苔癬ががん化するケースはありますか?
扁平苔癬ががん化するケースはありますが、頻度は少ないものとされています。しかし、WHO(世界保健機構)は扁平苔癬も、口腔粘膜の潜在的悪性疾患と位置づけています。潜在的悪性疾患には白板症や紅板症があり、これらの病気と扁平苔癬は似た所見があるため、歯科医師による鑑別が欠かせません。
扁平苔癬はがん化する頻度は少ないものの、難治性で再発や悪化を繰り返しやすい疾患です。そのため、継続して病変の観察をする必要があります。定期的に歯科医師の診察を受けることで、万が一がん化しても早期に発見でき、治療を開始することができます。

編集部まとめ

自身のある女性
扁平苔癬は、口腔に炎症を伴う白色の角化病変ができる病気です。食事などの刺激で痛みや出血・味覚異常などの症状がみられます。

痛みなどの不快な症状は食事や日常生活へ支障を及ぼし、生活の質を下げてしまうこともあるでしょう。

扁平苔癬の原因は解明されておらず、難治性の慢性疾患です。また、治療により軽快がみられても再発や悪化を繰り返す場合も少なくありません。

扁平苔癬が疑われる場合には、歯科医師の診察を受け適切な治療を行いましょう。また、軽快した後は定期的に歯科医師の診察を受け、口腔内の観察を続けていくことが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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