口内炎がなかなか治らず不安に感じたことはありませんか?口内炎はいろいろな方が経験する身近な症状ですが、原因や種類によっては適切なケアや治療が必要になることもあります。
口内炎が頻繁にできる、または長引く場合、免疫力の低下や栄養不足、さらには口腔がんやベーチェット病などの病気が関係している可能性もあります。
本記事では口内炎がなかなか治らない原因について以下の点を中心にご紹介します。
- 口内炎ができる3つの原因
- 歯科医院での口内炎の治療
- 口内炎のセルフケア
口内炎がなかなか治らない原因について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
口内炎とは
口内炎とは、お口のなかの粘膜に生じる炎症のことを指します。主に頬の内側に発生することが多いとされていますが、唇の裏側や舌、喉など、粘膜のある部位ならどこにでも起こる可能性があります。
症状は、痛みを伴う小さな炎症から、複数の炎症が広がり広範囲に及ぶ場合までさまざまです。なかでも、飲食時や会話時に痛みを感じることが多く、日常生活に影響を及ぼすこともあります。
口内炎ができる3つの原因
口内炎はどのような原因で生じるのでしょうか?以下で、3つの原因別に解説します。
免疫力が低下している
免疫力が低下すると口内炎ができやすくなります。なかでも、仕事の忙しさや睡眠不足が続く時期には、身体の防御機能が弱まり、ウイルス性口内炎を引き起こすことがあります。
ウイルス性口内炎の原因とされているのが”ヘルペスウイルス”です。このウイルスは体内で潜伏しており無害とされていますが、免疫力が低下すると活性化し、痛みを伴う口内炎として現れます。
この症状は休養や抗ウイルス薬で改善されますが、再発のリスクがあるため、十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけることが大切です。
お口の粘膜に傷がついた
口内炎は、お口の粘膜に傷がつき、そこから細菌が侵入することで発生することがあります。例えば、食事中に誤って頬や唇の粘膜を噛んでしまった後に噛んだ箇所に白い口内炎ができてしまうのは、この機械的損傷が原因です。
また、熱い食べ物による火傷や転倒による外傷も、同様に口内炎を引き起こす可能性があります。
このような傷が原因の場合、白い潰瘍が傷ついた部分に現れ、1週間程度で自然に治癒します。軽度の口内炎であれば、1週間程度で自然に治癒しますが、同じ場所に頻繁に口内炎ができる場合は、歯が尖っている、被せ物が合っていないなどの原因が隠れていることがあるため、一度歯科医院で相談することをおすすめします。
栄養のバランスが乱れている
栄養バランスの乱れも、口内炎の発生リスクを高めます。なかでもビタミンB群(B2・B6)が不足すると、粘膜の修復力が低下し、傷つきやすくなるだけでなく、免疫力も低下して口内炎ができやすくなります。
例えば、野菜不足や好き嫌いが多いまま食事を続けていると、必要な栄養素が十分に摂取できず、身体の抵抗力が弱まる可能性があります。
また、鉄分の不足も口内炎の原因になります。
鉄分は血液の酸素運搬や細胞の再生に必要な成分であり、不足すると粘膜の健康が損なわれ、炎症を起こしやすくなります。特に偏った食事や無理なダイエットが原因で鉄分が不足しがちな場合には注意が必要です。
したがって、粘膜を健康に保つためには、ビタミンB群を含む食品である豚肉や魚、大豆製品、緑黄色野菜、レバーや赤身の肉、ほうれん草、大豆製品など鉄分を含む食品を意識的に摂取することが大切です。
口内炎の主な種類
口内炎には、どのような種類があるのでしょうか。以下では、アフタ性口内炎、外傷性口内炎(カタル性口内炎)、ヘルペス性口内炎、カンジダ口内炎、アレルギー性口内炎について詳しく解説します。
アフタ性口内炎
アフタ性口内炎は、口の中を誤って噛んで粘膜が傷ついたり、疲労やストレスが原因で発生することが多いとされている口内炎です。白く円状の腫れができ、その周囲が赤く炎症を起こすのが特徴で、飲食時にしみるような激しい痛みを伴います。
1〜2週間程度で自然治癒しますが、痛みが強い場合にはステロイド剤の軟膏が用いられます。
ただし、アフタ性口内炎がベーチェット病の一症状である可能性もあるため注意が必要です。ベーチェット病は、口内炎に加え、結節性紅斑やぶどう膜炎、外陰部潰瘍などを主な症状とする全身性の炎症性疾患で、症状が再発と消失を繰り返します。
そのため、口内炎にお悩みの際は、適切な診断と治療を受けることが重要です。
外傷性口内炎(カタル性口内炎)
外傷性口内炎(カタル性口内炎)は、歯の被せ物が合わない、歯列矯正装置が粘膜に強く当たる、あるいは義歯が適切にフィットしていないことなどが原因で起こる口内炎です。
症状は、口腔内の粘膜が赤く腫れ、触れると痛みを感じることが多く、炎症が広がる場合もあります。
この口内炎は、原因となる刺激が継続する限り症状が改善しにくいため、歯科医院で該当部分の治療や調整を行うことが重要です。また、日常的にお口の清潔を保つことで症状の悪化を防ぐことも大切です。
ヘルペス性口内炎
ヘルペス性口内炎は、主に生後6ヶ月から3歳の乳幼児によく発症する感染症で、唾液や飛沫を介して単純ヘルペスウイルスに感染することが原因です。主な症状として、口内に水ぶくれができたり、舌や歯肉、唇が赤く腫れることが挙げられます。
また、39度前後の発熱や強い痛みが伴い、食事や水分摂取が困難になることもあり、脱水症状を引き起こすリスクがあります。このウイルスは一度感染すると体内に潜伏し、免疫力の低下時に再発することがあります。
なかでも、成人では体調不良や疲労時に再発することがありますが、乳幼児のように重症化するケースは少ないとされています。ヘルペス性口内炎は、早期の医療機関受診と十分な水分補給が重要です。
カンジダ口内炎
カンジダ性口内炎は、口腔内に常在するカンジダ菌が増殖して発症する真菌性の口内炎です。唇の裏側や頬の内側、上顎に白い膜ができ、白い膜をこすると赤く腫れた部分が露出するのが特徴です。初期には症状が軽いことが多いとされていますが、飲食時や歯ブラシに触れると痛みを伴うことがあります。
カンジダ菌は抗生物質が効かないため、抗真菌薬による治療が必要です。抵抗力の低下した状態で発症しやすく、主に乳幼児や高齢者、糖尿病や血液疾患を持つ方に多く見られ、感染が喉の奥まで進むと呼吸困難を招く恐れもあるため、早期に歯科医院や口腔外科を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
アレルギー性口内炎
アレルギー性口内炎は、何らかのアレルギー反応によって引き起こされる口内炎です。食べ物や薬剤、銀歯や義歯に使用される金属が主な原因とされています。症状は、頬の内側や唇、舌に白い潰瘍ができ、その周囲が赤く腫れ、痛みを伴うのが特徴です。
金属アレルギーが原因の場合、歯科医院で詰め物や義歯をメタルフリー素材に交換することで効果が期待できます。一方、食べ物や薬が原因の場合は、摂取を避けることで症状が緩和されます。
アレルゲンの診断にはパッチテストが有用で、金属アレルギーの場合は歯科医院や皮膚科、食物アレルギーの場合は内科やアレルギー科での検査が推奨されています。
なかなか治らない口内炎がある場合に考えられる病気
なかなか治らない口内炎があると不安になるかと思います。以下では、なかなか治らない口内炎がある場合に考えられる病気について解説します。
口腔がん
口腔がんは、舌や歯肉、口底など口腔内に発生するがんで、口内炎と見た目が似ている場合があります。しかし、口腔がんは自然治癒することはなく、2週間以上治らない潰瘍や1cm以上の大きな病変が特徴です。
さらに、境界が不明瞭で硬く、痛みを感じにくいことが多い傾向にあります。早期発見しやすいがんとされますが、進行すると治療が難しくなるため、長引く口内炎がある場合は早めに歯科や医療機関を受診し、生検などの検査を受けることが重要です。
ベーチェット病
ベーチェット病は、原因不明の自己免疫疾患で、免疫機能が自身の組織を攻撃し、全身に炎症を引き起こします。主な症状には、1cm以上の大きな口内炎、結節性紅斑、眼のぶどう膜炎、外陰部潰瘍があり、消失と再発を繰り返します。
アフタ性口内炎と誤認されることもありますが、ベーチェット病では症状が重篤化し、失明のリスクもあるため、口内炎が長期間治らない場合は早めの診察が重要です。
白血病や悪性リンパ腫など
白血病や悪性リンパ腫などの血液がんでは、免疫力が低下するため、ヘルペスウイルスの増殖により口内炎が発生しやすくなります。特徴として、3mm以下の小さな口内炎が同じ場所に複数でき、治っても再発を繰り返すことがあります。
また、微熱、鼻血、あざができやすいなどの症状が伴う場合もあります。そのため、1ヶ月の間に口内炎が何度も再発する場合は、早めに医療機関で診察を受けることが重要です。
フィステル
フィステルは、歯茎にできる白や赤の膨らみで、膿の出口となる病変です。一見ニキビや口内炎に似ていますが、痛みが少なく、同じ場所に繰り返し現れるのが特徴です。原因として、歯の根の炎症(根尖性歯周炎)や歯の破折が疑われます。
この状態を放置すると、歯周組織や骨が侵されるリスクが高まるため、早期の根管治療や場合によっては抜歯が必要です。そのため、見た目が似ている口内炎との違いに注意し、症状が続く場合は早めの受診をおすすめします。
歯科医院での口内炎の治療
上記では、口内炎の原因や種類について解説しましたが、口内炎は歯科医院でどのように治療が行われるのでしょうか?以下で解説します。
薬による治療
歯科医院での口内炎治療では、痛みを抑える鎮痛薬や炎症を和らげる塗り薬が用いられます。軟膏タイプの塗り薬は、患部に直接塗布して炎症を抑える効果が期待でき、ステロイド入りのものは即効性が期待できます。
ただし、ウイルス性口内炎には使用を避ける必要があります。また、口内炎に触れる刺激を軽減するため、貼り薬(パッチ薬)が処方されることもあります。
レーザー治療
歯科医院では、レーザー治療を用いた口内炎の治療が行われることがあります。炭酸ガスレーザーなどを患部に照射し、殺菌・消毒することで炎症を和らげ、治りを早める効果が期待できます。
レーザーによって口内炎を照射することで、痛みが軽減され、患部の回復が助けられます。また、レーザーは歯科治療全般で幅広く活用されており、安全性が高いとされているため、お子さんにも適切な治療法です。レーザー治療は、症状が重い場合や早期改善を目指したい場合に、歯科医院での相談をおすすめします。
口内炎のセルフケア
口内炎はセルフケアを行うことで改善する可能性もあります。ここでは、最後に、口内炎のセルフケア方法について解説します。
お口の清潔を保つ
まず、口内炎ができた際には、口腔内を清潔に保つことが重要です。食後に歯磨きを徹底し、汚れを溜めないようにすることが大切です。歯磨きの際には、やわらかい歯ブラシや低刺激の歯磨き粉を選ぶことで、粘膜を傷つけずにケアできます。
また、殺菌成分を含む洗口剤や塩水でうがいをするのも効果が期待できますが、使用後は水でお口をすすぎ、粘膜への負担を軽減することを心がけましょう。
もし、職場や学校で歯磨きが難しい場合でも、食後にうがいを習慣づけることで細菌の増殖を抑え、口内炎の悪化を防げるでしょう。
生活習慣を見直す
口内炎の改善には、生活習慣の見直しも欠かせません。まず、免疫力を高めるために、栄養バランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけましょう。なかでもビタミンB類は粘膜の修復を助け、ビタミンCは免疫機能を高めるため、これらを含む食品を積極的に摂取することが重要です。
加えて、鉄分を含む食品を積極的に摂取することが予防につながります。
また、偏食や忙しい生活で十分な栄養が取れない場合は、サプリメントでの補充も推奨されています。さらに、口内炎は疲労やストレスが原因となることも多いとされているため、規則正しい生活を送り、質のよい睡眠を確保することが大切です。
まとめ
ここまで口内炎がなかなか治らない原因についてお伝えしてきました。口内炎がなかなか治らない原因の要点をまとめると以下のとおりです。
- 口内炎の主な原因として、免疫力の低下、口内の粘膜への傷、栄養バランスの乱れが挙げられる
- 歯科医院での口内炎の治療には、痛みを抑える鎮痛薬や炎症を和らげる塗り薬やレザー治療が用いられる
- 口内炎ができたら、お口の清潔を保つ、生活習慣を見直すことが大切
口内炎は、免疫力低下、粘膜への傷、栄養バランスの乱れが主な原因となりますが、お口の清潔を保ち、生活習慣を見直すことで改善することもあります。
しかし、長引く場合や再発を繰り返す場合は早めに歯科医院を受診することが大切です。
これらの情報が少しでも口内炎について知りたい方のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。