口唇ヘルペスは、唇やお口の周りに痛みを伴う水疱や潰瘍を生じさせ、見た目だけでなく、食事や会話にも支障をきたすため、多くの患者さんを悩ませています。
そして、ヘルペスウィルスは一度感染すると、体の中に潜伏し、免疫力が低下した際に再発することがあります。
「口唇ヘルペスって、ただの口内炎と何が違うの?」「一体どうやって感染するの?」「放置しても大丈夫?」「治療法はあるの?」などと疑問が尽きないのではないでしょうか。
この記事では、口唇ヘルペスの原因や症状、治療法、そして予防方法について詳しく解説していきます。 口唇ヘルペスは、適切な治療と予防を講じることで、症状の悪化を防ぎ、快適な日常生活を送ることができます。
ぜひ、この記事を参考に、口唇ヘルペスについて理解を深め、適切な対処法を身につけてください。
口唇ヘルペスについて
- 口唇ヘルペスとはどのような病気ですか?
- 口唇ヘルペスと一般的に呼ばれる病気は、口腔粘膜疾患の口内炎の一つで、ヘルペス性口内炎というウィルス性の口内炎のことを指します。
疱疹性歯肉口内炎とも呼ばれ、単純性ヘルペスウィルスの初感染で起こります。単純性ヘルペスウィルスに感染した場合、多くが無症状ですが、数パーセントの割合で症状が出ます。 症状の特徴として、お口の中や唇の周辺に多数の赤い口内炎ができます。歯肉や唇などにも赤いイボのようなものができて、痛みがあり、人によっては全身の発熱やだるさがあったり、口臭がすることがあります。 発赤の部分は食事や飲み物を飲んだときに痛みを感じたり、ものが触れると痛い場合もあれば、何もしなくても痛い場合もあります。
- 口唇ヘルペスと口内炎の違いを教えてください
- 口唇ヘルペスは口内炎の一つに分類されていますが、一般的にイメージされる口内炎と、口唇ヘルペスによる口内炎にはいくつかの違いがあります。
そもそも口内炎というのは口腔内にできる炎症を全般的に指す言葉であり、一般的にイメージされる通常の口内炎は、アフタ性口内炎と呼ばれるものです。
アフタ性口内炎は、ストレスや栄養不足、ホルモンバランス、免疫力低下、物理的な刺激などが原因となって生じるもので、白い潰瘍を中心に、赤く腫れあがったような状態となります。
アフタ性口内炎はお口の中の部分的に発赤が起こるのに対して、口唇ヘルペスはお口の中や唇、唇の周りに多数の発赤が起こるため、小さい腫れがたくさんできた場合は口唇ヘルペスを疑ってもよいでしょう。 また、通常の口内炎であれば、発赤した箇所だけが痛むという症状ですが、口唇ヘルペスの場合は発赤の痛みのほかに、発熱や全身の倦怠感、口臭など、お口の中だけでなく全身に症状が現れることがあります。 そしてもう一つの大きな違いが、口唇ヘルペスは他人に感染するリスクがあるということです。ヘルペスウイルスに感染した人が使用した食器やタオルなどが、粘膜に触れることで感染する可能性があります。感染してもほとんどの場合が無症状のため、感染しても気付きにくく、ヘルペスウィルスに感染した大人から乳幼児などに感染して、乳幼児に症状が現れるといったことも少なくありません。
- 口唇ヘルペスの原因を教えてください
- 口唇ヘルペスは単純ヘルペスウィルス(ヘルペスシンプレックスウイルス1型(HSV-1))の感染によって起こります。粘膜の接触で感染するため、唾液や病変部分の接触によって感染が広がります。
具体的には感染者が使用した食器やタオル、キス、性行為などが感染経路となります。
- 口唇ヘルペスにかかりやすいのはどのような人ですか?
- 口唇ヘルペスは誰しもが感染する可能性をもっています。
しかし、口唇ヘルペスが発症するのは、感染者の数パーセントです。
発症しやすいのは、生後6ヶ月以上の乳幼児や、大人でも免疫力が低下している場合です。
ヘルペスウィルスは成人でも半数以上が子どもの頃に感染しているといわれていて、そのままウィルスを持ち続けていて発症しないままの人もいますが、免疫力が弱い乳幼児や、免疫力が低下しているときに発症する人もいます。
そのため、生後6ヶ月以上の乳幼児や、そのほかは精神的に疲れていたり、睡眠不足や栄養不足などに陥っている人などは特に発症のリスクが高いといえます。
- 口唇ヘルペスにかかった場合の注意点を教えてください
- 口唇ヘルペスは発症中に最も感染を広げやすいため、まずは周囲の人への感染を最小限にすることに注意を払いましょう。 感染者の粘膜や、体液、病変部分に直接触れたり、間接的に触れたりしても感染のリスクがありますので、できるだけ人との接触をさけ、お口の中を清潔にし、マスクや手洗いなどでウィルスが付着するのを減らしましょう。
また、食器やタオルなどからも感染するため、ほかの人と同じものを共有したりしないようにしましょう。
もしも夫婦などで同時に感染してしまった場合は、一人ずつ治療をしているとお互いの間で感染が繰り返されてしまう可能性があるため、同時に治療を受けるようにしましょう。 口唇ヘルペスは口腔外科など診療を受けることが可能ですが、口腔外科を受診すると、薬の処方だけでなく、二次感染予防や全身的な管理についても指導を受けられることがあります。
また、痛みがひどく、食事を取るのも難しい場合は、点滴で栄養を補う場合もあります。症状が出ているときに無理をして出かけたり、仕事をしたりすると、体力を消耗して治癒が遅れるだけでなく、二次感染のリスクも高まりますので、注意しましょう。
口腔外科における口唇ヘルペスの治療について
- 口唇ヘルペスができたらどの診療科を受診すべきですか?
- 歯科口腔外科の受診をおすすめします。
歯科口腔外科は口内炎や口腔がんといった、口腔内の疾患に対しての専門的な診療を行っている診療科です。
口腔がんは口内炎症状と間違われやすいため、歯科口腔外科を受診することで、口腔がんの可能性なども踏まえたうえでの適切な治療が受けやすいといえます。
- 口腔外科では口唇ヘルペスをどのように治療しますか?
- 治療としては、まず薬の処方が行われます。
診断内容によりますが、抗ウィルス薬の投薬を基本として、痛みが強い場合は消炎剤や鎮痛剤を用いたり、全身の発熱がある場合は解熱剤を処方したり、口唇ヘルペスによる口内炎がひどくお口の中が荒れていたり臭ったりする場合はうがい薬やトローチなどで清潔にする処置を取ることもあります。 また、二次感染を防ぐための処置も行われます。抗菌薬の処方や、全身管理の指導など、治療中の過ごし方などについて指導されることもあります。
- 口唇ヘルペスは放置しておいても治りますか?
- 口唇ヘルペスの症状は、数日間から2週間程度といわれていますので、放置していても2週間以上たてば自然に治っていくでしょう。
ただし、痛みや疱瘡、荒れがひどい場合、痕が残ったりする可能性もありますので、口腔外科で適切な処置をしてもらうのがよいでしょう。
- 口唇ヘルペスをすぐに改善することはできますか?
- 症状の出方や身体の健康状態などによっても治癒するまでの時間が早いか遅いかは変わってきますが、やはり確実性が高いのは口腔外科を受診することです。
それに加えて、症状を悪化させないためにはお口の中を清潔にし、しっかりと栄養や睡眠をとってできるだけ生活を整えることが大切です。
口唇ヘルペスの症状がひどく、食事をとるのも辛い、よく眠れない、といった場合には、口腔外科で点滴や睡眠導入剤の処方などする場合もありますので、我慢せず早めに相談することをおすすめします。
まとめ
口唇ヘルペスは、症状は辛いですが決して珍しい感染症ではありませんので、症状が出たからといって気に病まずに、早く治すための適切な行動をとりましょう。
ポイントとして、まずは口腔外科を受診すること、次にお口の中を清潔に保つこと、そして、しっかり栄養や睡眠をとって免疫力をつけること、さらに、感染予防策を取ることを押さえておくとよいでしょう。
症状について何か気になることや、「もしかして自分は口唇ヘルペスでは?」といった不安感があれば、早めに口腔外科に相談し、不安を解消しましょう。
参考文献