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斜めに生えた親知らずは抜歯すべき?抜歯方法や放置するリスクについて解説します

斜めに生えた親知らずは抜歯すべき?抜歯方法や放置するリスクについて解説します

親知らずは、歯並びや噛み合わせを乱す原因になりやすいです。それは親知らずが斜めに生えてくることが少なくないからです。その他の歯は正常に生えているのにどうして親知らずだけ斜めに生えてくるのか、疑問に感じている人も少なくないでしょう。ここではそんな親知らずが斜めに生えてくる理由やその状態で放置するリスク、抜歯する方法などを詳しく解説します。斜めに生えている親知らずに悩んでいる人は参考にしてみてください。

親知らずが斜めに生えてくる理由

親知らずが斜めに生えてくる理由 はじめに、親知らずが斜めに生えてくる理由とそれに伴うリスクを解説します。

親知らずが斜めに生えてくるのはなぜですか?
親知らずが斜めに生えてくる根本的な理由はスペース不足です。私たちの永久歯は、親知らずを含めると全部で32本生えてきますが、顎の骨のサイズが小さいと、それらをすべてきれいに並べることが難しくなります。特に日本人は、食の欧米化によってあまり噛まずに飲み込めるものを好んで食べるようになったため、顎骨が十分に発育せず、スペースの不足も顕著になっています。ちなみに、親知らずは後に生えてくる永久歯なので、スペース不足の影響を一番受けやすくなっています。具体的には、前から7番目の歯(第二大臼歯)まで萌出した後の限られたスペースに生えてくるのが親知らずなのです。
親知らずが斜めに生えていることのリスクはありますか?
斜めに生えている親知らずには、以下に挙げるリスクを伴います。

【リスク1】むし歯や歯周病になりやすい
斜めに生えている親知らずは歯磨きしにくいです。親知らずに食べかすやプラークがたまると、細菌が繁殖してむし歯・歯周病リスクが上昇します。細菌の活動が活発化すると、口臭も強くなります。

【リスク2】智歯周囲炎を発症する
親知らず特有の歯周病を智歯周囲炎(ちししゅういえん)といいます。親知らずの周りの歯茎や歯槽骨に炎症が起こり、歯周組織の破壊が進むと同時に、強い痛みや腫れを伴います。親知らずの細菌感染は位置関係上、喉にまで波及することが少なくない点にも注意が必要です。実際、智歯周囲炎を悪化させると咽頭炎や喉頭炎を誘発する場合があります。

【リスク3】手前の歯がむし歯・歯周病になる
親知らずが不潔になり、むし歯や歯周病を発症すると、それが手前の歯である第二大臼歯にうつります。臨床では親知らずと第二大臼歯が接している面にむし歯がよく見られます。

【リスク4】頬の粘膜を噛んでしまう
親知らずが斜めに生えていることに加え、歯列の外側に位置しているようなケースでは誤咬(ごこう)が起こりやすいです。誤咬とは、口腔粘膜を誤って噛んでしまう症状で、親知らずの場合は、頬の内側の粘膜を噛みやすいです。誤咬が習慣化すると、口内炎も繰り返し発生するため、日常生活に支障をきたすケースも珍しくありません。

斜めに生えた親知らずを放置するリスク

斜めに生えた親知らずを放置するリスク 次に、斜めに生えた親知らずを抜かずに放置するリスクと、抜歯するメリットを解説します。

親知らずが斜めに生えているのですが、抜歯した方がよいですか?
親知らずが斜めに生えているという理由だけで、抜歯をすることはありません。斜めに生えた親知らずでもトラブルを起こしていないのであれば、無理に抜く必要はないのです。一方で、斜めに生えた親知らずに次のような症状が認められる場合は、抜歯した方がよいといえます。
  • 親知らずがむし歯になっている
  • 親知らずが歯周病になっている
  • 手前の歯がむし歯や歯周病になっている
  • 親知らずが手前の歯を圧迫している
  • 誤咬を繰り返している
  • 全体の歯並び、噛み合わせを乱している

こうした症状が認められる親知らずは、口腔全体の健康にまで悪影響を及ぼすため、早期に抜歯をした方がよいです。

斜めに生えた親知らずを抜歯するメリットは何ですか?
斜めに生えた親知らずを抜くと、次に挙げるメリットが得られます。

【メリット1】痛みや腫れから解放される
斜めに生えた親知らずでむし歯・歯周病を発症している場合は、抜歯することで痛みや腫れなどの症状から解放されます。これは患者さんにとってもっとも実感しやすい親知らずの抜歯のメリットといえます。

【メリット2】清掃性がよくなる
斜めに生えた親知らずがなくなることで、手前の歯も歯磨きもしやすくなります。その結果、細菌の繁殖が抑えられ、口臭も弱くなることでしょう。

【メリット3】歯並び・噛み合わせの悪化を防げる
斜めに生えた親知らずは、全体の歯並び・噛み合わせを乱す恐れがあるため、抜歯することでそのリスクを取り除けます。

斜めに生えた親知らずを放置するリスクについて教えてください。
斜めに生えた親知らずは、清掃性が悪いことから汚れがたまりやすく、むし歯や歯周病にかかりやすいです。手前の歯を圧迫して歯根を吸収させたり、全体の歯並び・噛み合わせを悪くしたりするリスクもあるため、放置せず適切な時期に抜いた方がよいといえます。もちろん、斜めに生えた親知らずでもトラブルの原因にならない場合は、放置していても問題ありません。

斜めに生えた親知らずの抜歯方法

続いては、斜めに生えた親知らずを抜く方法や抜歯にかかる時間、抜歯の注意点を解説します。

斜めに生えた親知らずの抜歯方法について教えてください。
斜めに生えた親知らずは、正常に生えている永久歯と同じように抜くことはできません。具体的には、次のような方法で抜歯をします。

STEP1:麻酔処置
ジェル状の薬剤を歯茎に塗布して、表面麻酔を施します。歯茎の感覚が麻痺したら、麻酔注射で局所麻酔薬を投与します。一般的な抜歯やむし歯治療では、浸潤麻酔(しんじゅんますい)という作用が弱めの麻酔を打つのですが、斜めに生えた親知らずの抜歯は、侵襲が強いことから、伝達麻酔(でんたつますい)という作用が強めの麻酔を打つケースが少なくないです。

STEP2:歯茎の切開
歯茎をメスで切開して、斜めに生えた親知らずの頭を出します。

STEP3:骨の削除
斜めに生えた親知らずは、その一部が骨に覆われていることから、骨の削除が必要となります。歯根が曲がっている場合は、ドリルで複数に分割します。

STEP4:親知らずの抜歯
親知らずを鉗子で抜き取ります。

STEP5:傷口の縫合・止血
親知らずを抜き取ったら、傷口を洗浄して縫合。その後はガーゼを15〜30分程度、噛むことで出血が止まります。

親知らずの抜歯にはどれくらいの時間がかかりますか?
斜めに生えた親知らずは、抜歯に歯茎の切開や骨の削除が伴うため、1本あたり30〜60分程度の時間がかかります。抜きやすい症例であれば、15分程度で処置が終わることもあります。
親知らずを抜歯する際の注意点は何ですか?
親知らずを抜いた後は、次の点に注意してください。

【注意点1】うがいはできる限り少なめにとどめる
親知らずの抜歯後に強くうがいをすると、傷口にできたかさぶたが剥がれてしまいます。その結果、骨がむき出しとなるドライソケットを発症することがあるため、術後のうがいはできる限り少なめにとどめましょう。

【注意点2】血行がよくなる行為は控える
激しい運動や飲酒、熱い湯船に浸かるなどの行為は、全身の血行をよくして、痛みや腫れ、出血を強めることになるため、可能な限り控えるようにしましょう。

【注意点3】患部を刺激しない
親知らずを抜いた部分は、外傷を負った状態と同じなので、指や舌で刺激しないようにしましょう。熱いものや辛いものも術後しばらくは控えた方がよいです。歯磨きは患部を避けるような形で行うようにしてください。

編集部まとめ

今回は、親知らずが斜めに生える原因やそれを放置するリスク、抜歯する方法・注意点などを解説しました。親知らずは主にスペース不足によって斜めに生えます。斜めに生えた親知らずは清掃性が悪く、むし歯や歯周病にかかりやすいです。周囲の歯を圧迫したり、全体の歯並び・噛み合わせを悪くしたりすることもあるため、十分な注意が必要です。そんなトラブルの原因となりうる親知らずは、歯科医師と相談したうえで、適切な時期に抜くとよいでしょう。斜めに生えた親知らずの抜歯方法は、本文の内容を参照してください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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