口腔内に白い苔のようなものや赤い斑点が発生しているなどの経験はないでしょうか。それらの症状が見られる場合は口腔カンジダ症を発症している可能性があります。
口腔カンジダ症は日和見感染症であるため免疫力の低下などで発症することが多く、健康な方であればほとんど発症しないでしょう。しかし、いざ発症したときに何科を受診すればよいのか困ってしまう方も多いかもしれません。
そこで、この記事では口腔カンジダ症を発症したとき何科を受診すればいいかをはじめ、原因・症状・治療法も詳しく解説します。
口腔カンジダ症の原因や症状
- 口腔カンジダ症とはどのような病気ですか?
- 口腔カンジダ症は免疫力の低下などが原因で口腔内のカンジダ菌が増殖して発症する病気です。発症すると口腔内がヒリヒリと痛んだり味覚障害が起こる場合があります。また、口腔カンジダ症は口腔内に白苔や赤い斑点が現れることが特徴です。性別・年齢問わず誰にでも発症しますが、免疫力の低い乳幼児と高齢者に多く見られます。口腔カンジダ症は誤嚥性肺炎の原因の一つと考えられているため、発症した場合は放置せずに治療をしましょう。
- 口腔カンジダ症の原因を教えてください。
- 口腔カンジダ症は主に免疫力の低下と口腔内の環境悪化が原因で発症します。口腔カンジダ症のもとであるカンジダ菌自体は口腔内に一定数存在している菌です。しかし、免疫力の低下や口腔内の環境悪化が起こるとカンジダ菌が増殖して発症します。たとえば、抗がん剤治療を行うと副作用で免疫力の低下やドライマウスになり、口腔カンジダ症を発症しやすいです。ドライマウスになると唾液による自浄作用が働かずに菌が増えやすくなります。また、義歯を使用している方も注意が必要です。使用している義歯の洗浄が不十分だと表面で菌が増殖してしまい、そのまま使用すると口腔カンジダ症を発症しやすくなります。
- 口腔カンジダ症ではどのような症状が出るのですか?
- 口腔カンジダ症は4種類ありそれぞれ症状が異なるので詳しく説明します。
- 急性偽膜性口腔カンジダ症:口腔内に白苔が発生する症状です。偽膜性口腔カンジダ症で発生する白苔は拭うことで剥離する特徴があります。初期症状では痛みはありませんが、症状が重くなるとヒリヒリとした痛みが起こります。
- 慢性萎縮性口腔カンジダ症:口腔内に紅斑が出現する症状です。義歯を装着している方に多く見られ、紅斑は義歯に触れている部分に出現することが多いです。偽膜性口腔カンジダ症よりも痛みが強いといわれています。
- 急性萎縮性口腔カンジダ症:口腔内の粘膜や舌が赤く腫れる症状です。また、舌乳頭が萎縮して舌がツルツルとした状態になる特徴もあります。症状は舌や粘膜がヒリヒリと痛み、味覚障害も伴う場合があります。
- 慢性肥厚性口腔カンジダ症:口腔内に白苔が発生する症状です。急性偽膜性口腔カンジダ症が進行した状態で白苔が厚く剥がれにくい特徴があります。症状はヒリヒリとした痛みが起こりますが、痛みがない場合もあるようです。
- 口腔カンジダ症に罹患しやすい年齢層はありますか?
- 口腔カンジダ症を発症するのは60代以上の高齢者が多いといわれています。高齢者は基礎疾患のある方が多く、その治療薬によって免疫力が低下していたり口腔が乾きやすいため発症しやすいです。さらに、義歯の使用者も多いため口腔カンジダ症に罹りやすいといえます。高齢者のほかには生後間もない乳幼児も免疫機能が発達していないので口腔カンジダ症に罹りやすいです。哺乳瓶などお口につけるものを清潔にすることで発症リスクを低くできます。
口腔カンジダ症は何科を受診すればいい?
- 口腔カンジダ症が疑われる場合は何科を受診すればいいですか?
- 口腔カンジダ症が疑われるときは、口腔外科・耳鼻咽喉科を受診しましょう。口腔外科は外科とついているので手術などの治療がメインだと思うかもしれませんが、口腔の病気に対しての薬を使った治療も行います。 そのため口腔カンジダ症の検査や治療も可能です。また、耳鼻咽喉科でも同様に口腔カンジダ症の検査ができます。耳鼻咽喉科は口の中だけでなくその奥の喉や鼻・耳など幅広く取り扱っています。口腔カンジダ症も口の病気ですので問題なく受診・治療が可能です。
- 歯科医院で口腔カンジダ症の治療はできますか?
- 口腔カンジダ症は歯科医院での治療が可能です。実は歯科医師と口腔外科医の持つ基本のライセンスはどちらも歯科医師免許なので、歯科医院でも口腔カンジダの治療はできます。歯科医院では検査をして口腔カンジダであると判明したらうがい薬などが処方されます。検査や治療の流れは口腔外科や耳鼻咽喉科とあまり変わらないでしょう。ただし、歯科医院はあくまでもむし歯や歯周病など歯の周りに関する治療がメインです。そのため、歯科医院では詳しい検査ができないことや症状が重い場合は治療ができず別の病院を紹介される場合があります。歯科医院に行くときはホームページなどから口腔カンジダ症の治療ができるかどうか事前に確認するとよいでしょう。
- どのような検査が行われますか?
- まずは口腔内の状態を確認して白苔や紅斑などの口腔カンジダ症の症状が見られるか確認します。さらに患者さんが現在がん治療を受けているかなど、口腔カンジダ症を発症しやすいかどうかを見て総合的に判断されるでしょう。その検査で口腔カンジダ症だと断定できない場合は顕微鏡検査か培養検査が行われます。顕微鏡検査は患部を綿棒などで擦ってスライドガラスにのせ顕微鏡で観察する検査方法です。その中にカンジダ菌の菌糸が発見されれば、口腔カンジダ症を発症していると判断されます。培養検査は唾液や患部の粘膜から菌を培養してカンジダ菌がどの程度存在するかを調べる検査方法です。菌の数が多いと口腔カンジダ症の可能性が高いと判断されます。ただし培養には2日〜1週間程度かかるので検査結果はすぐにはでません。
- 口腔カンジダ症は自力で治せますか?
- 軽度の口腔カンジダ症であれば治療を受けなくとも口腔ケアを見直すことで治る場合があります。口腔ケアとは毎食後の歯磨き・毎日の義歯の洗浄・口腔内の保湿などです。しかし、口腔ケアで治るのはあくまで軽度の口腔カンジダ症の場合に限ります。治療が必要かどうかは自分で判断するのは難しいでしょう。自力で治せると思って病院に行かなかった結果、重症化してしまうということも考えられます。さらに中度以上の治療には抗真菌薬が必要になりますが、市販していないため治療するには病院で薬を処方してもらわなければなりません。個人輸入での入手は可能ですが、これらの薬はほかの薬との併用ができない場合や副作用が起こる場合もあります。そのため、正しい知識を持つ医師から説明を受けて処方してもらうことが望ましいです。
口腔カンジダ症の再発や予防方法
- 一度治っても再発の可能性はありますか?
- 口腔カンジダ症は再発する可能性があります。特に高齢者は持病の治療薬による免疫力の低下や義歯の使用者が多いなど、さまざまな要因があるため再発が多い傾向です。再発を繰り返す場合は1ヵ月程度の期間で発症していないか病院で確認することをおすすめします。早期発見をすることで治療にかかる時間も少なくなるでしょう。また、健康で口腔カンジダ症にかかりにくいはずの方が再発する場合は、HIVなどの免疫力が低下する病気の可能性があります。そのため一度医療機関を受診するした方がよいかもしれません。
- 口腔カンジダ症の予防方法を教えてください。
- 口腔カンジダ症を予防する方法は2つあります。1つ目はよい口腔環境を保つことです。食後の歯磨きを欠かさずに行い口腔内をきれいにしておくだけでも予防になります。義歯を使用している方は毎日洗浄をしましょう。義歯の洗浄はブラシによる洗浄と薬剤による洗浄の両方をすると効果的です。また、1万円程度で購入できる超音波洗浄機による洗浄も有効ですので、こちらを使用してみてもよいかもしれません。予防方法の2つ目は口腔内の保湿です。口腔内が乾いているとカンジダ菌が増殖しやすいので、ドライマウスの方は保湿を意識しましょう。保湿はヒノキチオールを含んだ口腔保湿剤がおすすめです。ヒノキチオールは抗菌作用があることが認められており、カンジダ菌の増殖を抑えられます。保湿剤だけでなく歯磨き粉もヒノキチオールを含んだものを使用すれば、さらに効果が見込めるかもしれません。
編集部まとめ
ここまで口腔カンジダ症で何科を受診すべきかをはじめ、口腔カンジダ症の原因・症状・治療法などを解説しましたがいかがだったでしょうか。
口腔カンジダ症は免疫力の低下や口腔内の環境悪化が原因で発症します。口腔カンジダ症は、急性偽膜性口腔カンジダ症・慢性萎縮性口腔カンジダ症・急性萎縮性口腔カンジダ症・慢性肥厚性口腔カンジダ症の4種類ありそれぞれ異なる特徴と症状があります。
発症が疑われるときは歯科・口腔外科・耳鼻咽喉科を受診しましょう。治療は抗真菌薬を使用して行いますが、口腔内の環境も重要ですので口腔ケアの指導も行われます。治療が完了しても再発の可能性があるため、口腔ケアは怠らないことが大切です。
また、口腔カンジダ症の予防では口腔内の保湿も行いましょう。口腔内が乾いていると菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。口腔内の保湿は抗菌作用のあるヒノキチオールを含んだ保湿剤がおすすめです。
口腔カンジダ症は治療すれば治りやすい病気ですので、発症しているかもと思ったら医療機関への受診をしましょう。
参考文献