親知らずの抜歯は一般的な歯科治療でありながら、多くの人が不安を感じるものですよね。なかでも、抜歯後に見られる症状や、治療部位が黒く見える理由は、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、主に以下の内容を解説します!
- 親知らずの抜歯後について
- 抜歯後のケアについて
- 抜歯後に起こる症状
親知らずの抜歯後についての正しい知識を持っていないと、抜歯部位の適切なケアを怠り、感染や炎症などの合併症を引き起こすリスクが高まります。また、痛みや腫れが長引いたり、治癒過程が遅れたりする可能性もあるので、本記事をご参考いただけると幸いです。ぜひ最後までお読みください。
親知らずの抜歯後について
- 抜歯後の穴はどれくらいで塞がりますか?
- 抜歯後、傷口を保護する血餅が形成されるのは約2日後とされています。そして血餅が新しい組織に置き換わり、歯茎で穴が表面的に閉じるまでには大体1ヵ月かかります。さらに、穴が塞がり、内部の組織が再生するまでには半年から1年程度の時間が必要といわれています。
ただし、抜歯部位が骨で埋まるとは限らず、個人差によって回復状況に違いが出ることがあります。
- 抜歯後の穴にある黒いものについて教えてください。
- 抜歯後に見られる黒い部分は、前述した血餅という血液が固まった塊です。親知らずの抜歯などで骨が一時的に露出すると、抜歯部位から出る血が空洞を満たし、血液が固まって血餅が形成されます。
血餅は、出血を止め、露出した骨を保護し、傷口の正常な治癒を助ける重要な役割を担っています。血餅が新しい組織に置き換わることで、抜歯部位は徐々に元の状態に戻ります。したがって、血餅が早期に取れてしまうと、痛みや治癒の遅れの原因となるため、触れたり取り除いたりしないようにしましょう。
- 抜歯後の穴にある白いものについて教えてください。
- 抜歯後の穴に見られる白いものは、治癒過程での正常な現象であり、新しい組織が形成されている証拠です。白いものは肉芽組織の一部であり、傷口が健康的に治癒しているサインと考えられています。
あるいは、白いものは骨の可能性もあります。繰り返しになりますが、抜歯後に血液が穴に溜まり、表面が血餅(かさぶた)となり、徐々に組織化する過程の一部と考えられます。もし指や舌、歯ブラシなどで血餅(かさぶた)を取ってしまうと、骨が見えたままの状態が続き、激しい痛みを引き起こすドライソケットという激しい痛みを引き起こす可能性があります。食べ物や飲み物、さらには空気に触れるだけでも痛みが増すことがあるので、ドライソケットになった場合は、歯科医院を受診し、医師の処置を受けましょう。
抜歯後のケアについて
- 歯磨きはしてもいいですか?
- 抜歯直後は、抜歯した側の歯磨きは避けることが推奨されます。理由は、歯ブラシの接触によって痛みが増したり、出血が悪化したりする可能性があるためです。痛みが許容範囲内であれば、抜歯した側とは反対の歯(例えば、右側の親知らずを抜いた場合は左側)の歯磨きは可能とされますが、この際にも口をすすぐ動作はできるだけ抑え、血餅を守ることが重要です。
翌日からは、痛みや腫れがなければ通常の歯磨きを再開しても構いませんが、抜歯部位に直接歯ブラシを当てるのは避け、周囲の清潔を保つことに集中しましょう。 抜歯部位への歯磨きは、抜歯から約1週間後に可能とされていますが、あくまで目安であり、個人の痛みの感じ方や腫れ、傷の治り具合によって異なります。そのため、具体的な時期や方法は、治療を行った歯科医師の指示に従いましょう。
- 食事はしてもいいですか?
- 抜歯後、親知らずを抜いた場合などは、最初の2~3時間は食事を避けることが推奨されています。麻酔が切れるまでの間、口内の感覚が正常ではないため、誤って噛み傷をつけたり、火傷をしたりするリスクがあるためです。
食事を再開する際は、やわらかくて刺激が少ない食品から始めることが大切です。初日はゼリーや雑炊などの流動食を選び、徐々に通常の食事へと移行していきましょう。 ただし、抜歯以外に歯や骨を削ったり、歯茎を切ったりした場合などは、通常の食事に戻すにはより長い時間が必要になることもあります。
また、アルコールや刺激物は避け、出血のリスクを抑えましょう。抜歯後の食事では、ビタミンやミネラルを豊富に含む食品を積極的に取り入れることで、傷の治癒の促進が期待できます。そして、ゼリーや雑炊など、流動性の高い食品の摂取が推奨されます。
しかし、麻酔が残っている場合があるため、熱い食べ物による火傷には注意が必要です。また、吸い込むタイプのゼリーは避けましょう。
次の日からは、やわらかい麺類や雑炊、ハンバーグなど、刺激が少ない食事を心がけましょう。また、抜歯部位に食べかすが入り込んだ場合は、無理に取り除こうとせず、患部に負担をかけない方法で対処するか、歯科医院で相談しましょう。抜歯後は、食べ物を噛む際に抜歯した側を避けることで、食べかすが入り込むのを防ぐことが可能とされます。食べかすが残っても、自然に傷が治る過程で問題なく処理されるため、過度に心配する必要はありません。
- 禁止事項はありますか?
- 抜歯後にはいくつか注意すべき禁止事項があります。
一つ目は、抜歯直後から数日間は、血餅が安定するまで激しいうがいを避けることです。また、出血が続く場合はガーゼで圧迫止血を試みてください。二つ目は、抜歯当日は血流を促進する運動や入浴、アルコールの摂取を控えることです。
運動や入浴などは出血を増やし、傷の治癒を遅らせる可能性があります。最後に、処方された抗生物質は指示されたとおりに服用し、薬剤耐性の発生や痛みの再発を防ぐことです。
抜歯後に起こる症状
- 合併症はありますか?
- 親知らずの抜歯後には、いくつかの合併症が発生する可能性があります。主な合併症は「ドライソケット」と「術後感染」です。
ドライソケットは、抜歯した部位に血餅が形成されず、骨が露出して痛みを引き起こす状態を指します。ドライソケットは、抜歯後3日目から5日目にかけて痛みが増すといわれ、1週間から10日間程度痛みが続くとされています。
一方、術後感染は、抜歯部位に細菌が侵入し、感染症を引き起こすものです。
上記の合併症は、単独で発生する場合もあれば、同時に発生する場合もあります。抜歯後に強い痛みが続く、腫れがひどい、発熱があるなどの症状が見られた場合は、速やかに担当医師に相談することが重要です。早期の対応により、重症化を防げます。
- 内出血はありますか?
- 抜歯後に内出血が発生する場合もあります。内出血は抜歯部位の周辺に見られることがあり、なかでも顔や口の周りの皮膚に発生して色素沈着を引き起こす可能性があります。
内出血は2週間程度で自然に解消するとされていますが、場合によっては1ヵ月以上持続する可能性もあります。内出血は抜歯による物理的な影響によるものであり、多くの場合、特別な治療を必要とせずに時間の経過とともに改善するといわれています。
編集部まとめ
ここまで親知らずの抜歯後に起こる症状についてお伝えしました。
要点をまとめると以下のとおりです。
- 親知らずの抜歯後の穴にある黒いものは血餅という血液が固まったかさぶたのようなもので、血餅が形成されるのは約2日後とされており、穴が閉じるまでには大体1ヵ月かかる。さらに、穴が塞がり、内部の組織が再生するまでには半年から1年程度の時間が必要
- 抜歯直後は、抜歯した側の歯磨きは避けることが推奨され、抜歯後最初の2~3時間は食事も避け、抜歯当日は激しいうがいや運動や入浴、アルコールの摂取も控えた方がよい
- 抜歯後は血餅が形成されず、骨が露出して痛みを引き起こすドライソケットや、抜歯部位に細菌が侵入し、感染症を引き起こす術後感染などの合併症が発生する可能性があり、内出血が発生する可能性もある
抜歯後に何か異変が見られた場合は、迅速に医師に相談しましょう。本記事が皆さんの一助となれば幸いです。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。