親知らずをはじめとする抜歯は外科的処置のため、どうしても出血を伴います。多くの場合、抜歯後しばらくすれば血は自然と止まりますが、なかには血が止まらず不安になる方もいるでしょう。
実は抜歯後に適切なケアを行うことで、回復を早め、出血を落ち着かせることができます。
この記事では、親知らず抜歯後に血が止まらない原因やその場合の対処法、抜歯後の注意点について詳しく解説しています。
ぜひ最後までお読みください。
親知らず抜歯後に血が止まらない原因
- 親知らず抜歯後はどのくらいで血が止まりますか?
- 親知らずの抜歯方法や抜歯後の状態、個人差にもよりますが、通常30分程で出血はおさまります。ただし抜歯した翌日くらいまでは、唾液に血が混ざっている状態が続くことがあります。
このため、お口全体に血の味が広がり、不快に感じてうがいをしたくなるかもしれません。しかし、うがいを頻繁に行うと止血を妨げるため、控えるようにしましょう。
- 親知らず抜歯後に血が止まらない原因は何ですか?
- 親知らず抜歯後に血が止まらない原因として、以下のようなことが考えられます。
- 抜歯後の圧迫止血がうまくできていない
- 歯の周囲にある不良肉芽組織(歯周病菌に感染し、炎症が起きている組織)が十分に取り除けていない
- もともと血が出やすい体質や持病がある
- 抗血栓薬(抗血小板薬・抗凝固薬)を服用している
- 抜歯によって歯を支える骨が折れたり、血管が損傷したりしている
抜歯後、丸めたガーゼを患部にあてて圧迫止血を行います。通常は30分程しっかり噛むことで止血できますが、ガーゼが適切な部分にあたっていないと血が止まらないことがあります。また血が出やすい体質として挙げられるのは、肝臓の疾患や白血病・血小板減少症などの血液疾患がある方です。
これらの持病や抗血栓薬の服用がある方は、抜歯前に歯科医師に伝えるようにしましょう。
- 抗凝固薬や抗血小板薬を内服していても親知らずの抜歯はできますか?
- 抗凝固薬や抗血小板薬などの抗血栓薬を服用したままでも、親知らずの抜歯は可能です。日本口腔外科学会などの複数の学会が共同でまとめた抗血栓療法を受ける患者さんの抜歯に関するガイドラインには、特定の例を除き抗血栓薬を内服したまま抜歯を行うべきと明記されています。抗血栓薬を内服している方は通常よりも血が止まりにくいことから、出血のリスクには注意が必要です。
しかし、圧迫・局所止血剤・縫合などの局所止血処置を行うことでほとんどの場合出血を止めることが可能です。ただし、複数の抗血栓薬を内服している方や薬の効果が強く、止血が困難と判断された場合抜歯を見送ることもあります。
また、出血のリスクが高いと考えられる場合は、口腔外科がある医療機関での入院が必要になることもあります。抗血栓薬を服用している方は歯科医師にその旨を伝えたうえで、抜歯が可能かどうか相談してみましょう。
- 親知らずを抜いた部分から再出血することはありますか?
- 親知らず抜歯後に再出血する可能性があり、その原因には以下が考えられます。
- 激しいうがいなどの刺激による血餅の脱落
- 血液凝固の影響
- 血管の損傷
- 感染や炎症
- 血圧の変動
抜歯後は骨がむき出しの状態になっていますが、その上に血の塊(血餅)を形成することで、傷口が保護され治癒が進みます。激しいうがいや食べ物が傷口に触れるなどの刺激は、血餅を剥がし、再出血させる行為です。また急な血圧の変動によって再出血する場合もあります。就寝時、頭が低い状態で寝ると患部の血圧があがり再出血のおそれがあるため、枕を2つ重ねて頭を高くして寝ることで出血しにくくなります。
また患部を下向きにする姿勢は避け、仰向けで寝るとよいでしょう。いずれの場合も、万が一出血してしまったら、ガーゼで圧迫止血を行います。
親知らず抜歯後に血が止まらないときの対処法
- 血が止まらないときに自分でできる対処法を教えてください。
- 抜歯後に血が止まらないときは、ガーゼによる圧迫止血を行います。まず手を洗い、手元を清潔にしましょう。次に清潔なガーゼを直径1cm程の硬い団子状に丸め、抜歯した部分にあてがい、しっかりと30分程噛みます。
それでも出血が続く場合は、新しいガーゼに交換し、再度しっかりと噛み続けます。ほとんどの方はこのガーゼによる圧迫止血で血が止まりますが、血が止まらない場合は以下の点を確認しましょう。- ガーゼの大きさが適切かどうか
- ガーゼが傷口にきちんとあたっているか
- 圧迫中にお口を緩めず、しっかりと噛み続けていたか
身体を横にする姿勢は、お口周りの血圧があがり、出血しやすくなります。圧迫止血を行う際は、椅子に座った姿勢で行うとよいでしょう。また、滅菌されたガーゼは歯科医院で貰えることがあるので、心配な方はあらかじめ貰っておくとよいです。手元に清潔なガーゼがない場合は、ティッシュで代用しましょう。
- 血が止まらないときに受診する目安を教えてください。
- ガーゼによる圧迫止血により出血が減り、唾液に血が少し混ざる程度になれば自宅で様子をみても大丈夫です。しかしお口いっぱいに血が出る、または血が止まらずに続く場合は、抜歯した歯科医院に連絡しましょう。
夜間の場合は夜間診療所に連絡し、状況を説明して、指示にしたがいます。
親知らず抜歯後の注意点
- 親知らず抜歯後にしっかり血を止めるにはどうしたらよいですか?
- 適切な方法でガーゼを使った圧迫止血を行いましょう。また後述する親知らず抜歯後に避けるべきポイントをしっかり守り、抜歯当日はできるだけ安静に過ごすことも大切です。抜歯の翌日くらいまで、唾液に血が少し混ざる程度の出血はよくみられますが、心配ありません。
- 親知らず抜歯後に避けた方がよいことはありますか?
- 親知らずを抜歯した当日は、以下の行為を避けることで回復を早め、合併症を防ぐことができます。
- 激しい運動
- 長時間のお風呂やサウナ
- 刺激物の摂取
- 歯ブラシや舌で患部を触ること
- 喫煙や飲酒
- 激しいうがい
- ストローの使用
血圧の変動は心臓への負荷がかかり、抜歯局所の血行不良を招いたり循環不全を引き起こしたりするリスクがあるため、このような生活行動をなるべく避けるべきといえます。喫煙や飲酒は傷口の治癒を遅らせ、感染リスクを高めるため、できれば1週間程度控えるのが望ましいでしょう。
激しいうがいやストローの使用により口腔内に陰圧がかかると、血餅が剥がれるおそれがあります。抜歯後は安静に過ごし、患部を刺激しないことが、早期回復につながります。
- 処方された薬はすべて飲まなければいけませんか?
- 抜歯後に歯科医院から抗生物質や痛み止めを処方されることがあります。痛み止めに関しては痛みがなくなったら、服用をやめても問題ありませんが、抗生物質は指示どおり最後まで飲み切る必要があります。
親知らずが生える箇所はもともと清掃しにくく、清潔を保ちづらいことから親知らず抜歯後は感染や炎症が起こるリスクが高いです。こうした抜歯後の感染や炎症を防ぎ、回復を助けるために抗生物質が処方されます。抗生物質は正しく服用することで効果を発揮するため、痛みがなくなったからといって自己判断で薬を中断してしまうと、抗生物質が効かない耐性菌が生まれるリスクが高まります。
どちらの薬も医師の指示に従って正しく服用しましょう。ただし服用後発疹やめまいなどの副作用が現れた場合は、服用を中止し、歯科医院に連絡を取ることが大切です。
- 親知らず抜歯後の食事で気を付けるべきことがあれば教えてください。
- 親知らず抜歯後2時間程度は麻酔が効いた状態であり、頬や舌を噛んでしまうことによる出血や熱い食べ物によるやけどのリスクがあるため、麻酔がきれてから食事をしましょう。抜歯当日や翌日は腫れや痛みを伴うことが少なくないため、やわらかくて食べやすいものが推奨されます。具体的にはゼリーやスープ、やわらかい麺やおじやなどです。
熱い飲食物やアルコール・辛いものなどの刺激物は、痛みや出血の原因となるため冷たいものあるいは常温のものを選びましょう。抜歯後3日程で、いつもどおりの食事がとれるようになりますが、刺激物は抜歯した箇所と反対側で食べるとよいです。
編集部まとめ
親知らず抜歯後に血が止まらない場合は、ガーゼでしっかりと圧迫止血を試みます。
抜歯後の出血は治癒のために必要な過程です。激しいうがいや患部への強い刺激は血餅を剥がしてしまい、治癒が遅れる原因となるので、避けましょう。
ただし、出血が長時間続く場合や気になる症状がある場合は、早めに歯科医師に相談することをおすすめします。
参考文献