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親知らず

親知らず治療の適切なタイミングとは?親知らずの抜歯に適した年齢や放置するリスクについても解説!

親知らず治療の適切なタイミングとは?親知らずの抜歯に適した年齢や放置するリスクについても解説!

「親知らず」は、第三大臼歯という口の奥に遅れて生え始める歯です。親知らずは生えるときに問題が生じるケースがあります。親知らずの治療を行う適切なタイミングとはいつなのでしょうか。
本記事では親知らず治療の適切なタイミングについて以下の点を中心にご紹介します。

  • 親知らずについて
  • 親知らずの治療に適したタイミング
  • 親知らずを適したタイミングで抜歯するメリットとは

親知らず治療の適切なタイミングについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

親知らずとは

親知らずとは

親知らずとは、人が持つ歯の中で遅く発育する歯のことを指し、正式名称を「第三大臼歯」といいます。また、智歯(ちし)と呼ばれることもあります。
親知らずは、10代の後半から20代の前半にかけて生え始めるため、多くの場合、成人してから顔を出すことが多い傾向にあります。そのため、親にも気づかれないことから「親知らず」と呼ばれています。
親知らずは、正常な位置に生えない場合、歯並びを乱したり、隣接する歯にダメージを与えたりするケースがあるため、抜歯されることが多い傾向にあります。

親知らずの抜歯に適した年齢

親知らずの抜歯に適した年齢

親知らずの抜歯に適した年齢は、主に20歳前後が推奨されます。
ただし、親知らずが生えたとしても痛みやそのほかの問題がない場合は、必ずしも抜歯が必要ではなく、個々の状況や歯の状態を考慮して歯科医師が判断します。
そのため、親知らずが見え始めたら、早めに歯科医師の診断を受けることが重要です。適切な時期に適切な処置を行うことで、長期的に歯の健康を守ることに繋がります。

適したタイミングで親知らずを抜くメリット

適したタイミングで親知らずを抜くメリット

親知らずの治療には適した時期があるといわれています。
ここでは、具体的なメリットについて詳しく解説します。

抜歯の難易度

親知らずを適切なタイミングで抜くことのメリットとして、抜歯の難易度が低くなる点が挙げられます。
まず、20歳前後で抜歯を行う場合、顎の骨がまだ柔らかく、顎関節の機能も良好であるため、長時間口を開ける治療にも問題なく対応できることが多い傾向にあります。
また、この時期の親知らずは歯肉から見えている部分(歯冠)から先に形成されており、歯の根(歯根)が形成される前、もしくは形成途中のケースが多いため、抜歯の際に歯を支える骨や重要な神経が通る下顎管に損傷を与える可能性が低くなります。
30代以降の親知らずは、歯根が完全に成長しているケースが多く、抜歯の際に神経損傷といったリスクが増加し、手術の複雑さも高まります。

治癒能力が高い

親知らずを抜く適切なタイミングには、治癒能力が高い20歳前後が理想的です。この時期は免疫力が充実しており、抜歯後の回復も速いため、手術の負担が軽減されます。
親知らずは、傾斜して生えたり、骨に埋まってしまうことが多いため、抜歯時には周囲の組織や骨に損傷を与えるリスクがあります。しかし、20歳前後ではこれらのリスクを抑えながら処置を行うことが可能とされています。

また、20代での抜歯は、術後の腫れや痛みが少なく、短期間で治癒する傾向にあります。
逆に、年齢が進むにつれて自然治癒力は低下し、同じ抜歯がより大きな負担となり、回復期間も長引きやすい傾向にあります。

これらの治癒能力の差を理解し、早めの対応を検討することが、痛みや合併症を避け、健康な口内環境を保つ上で重要です。
これらの治癒能力の差を理解し、早めの対応を検討することが、痛みや合併症を避け、健康な口内環境を保つ上で重要です。

私生活への影響

親知らずは、適切なタイミングで抜歯を行うことによって、私生活に与える影響を抑えられます。 例えば、親知らずが腫れて痛みを引き起こした際、その痛みや腫れを抑えるために薬を服用したいと思っても、持病や妊娠中などで痛み止めや抗生物質が制限される場合があります。
このような状況下では、日常生活や仕事に支障をきたす可能性があります。 仕事で大切な予定がある時に痛みや腫れが起こり、思うように行動できなくなることも考えられます。

また、妊娠中はつわりなどの影響もあり歯のケアが難しく、親知らずの腫れが起こりやすい時期でもあります。そのため、妊娠中に親知らずが問題を引き起こすリスクも考慮する必要があります。
親知らずを計画的に抜いておくことで、予期せぬトラブルや不安を回避し、私生活や仕事におけるストレスを軽減します。
このことから、親知らずを適切なタイミングで抜くことは、未来の自分自身への投資ともいえます。

親知らずを放置するリスク

親知らずを放置するリスク

親知らずを放置することは、さまざまなリスクを孕んでいます。これらのリスクは、口腔の健康だけでなく、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。
親知らずを放置するリスクについて、以下に詳しく解説します。

むし歯になりやすい

親知らずは口腔内でも奥の方に位置し、その特殊な生え方から、むし歯のトラブルが起きやすい歯とされています。
その理由として、歯ブラシが届きにくい場所にあるため、適切なメンテナンスが難しく、歯垢が蓄積することで、むし歯が発生しやすくなります。
特に、親知らずが横や斜めに生えていたり、途中で止まっている場合、隣の歯と重なり合うことで歯磨きが不十分になりやすく、歯磨きがますます困難になります。さらに、治療器具を入れることが難しく、治療が複雑化します。

また、親知らずとその隣接する第二大臼歯の間には、食べかすや汚れがたまりやすい領域があります。このため、親知らずがむし歯になるだけでなく、周囲の歯にも影響を及ぼしてしまい、結果として両方の歯にむし歯が発生する可能性が高まります。
早期発見と抜歯を含む適切な治療やケアによって、親知らずによるむし歯の発生リスクを抑えましょう。

歯周病になりやすい

親知らず周囲には「智歯周囲炎」という親知らず特有の歯周病が発生しやすい傾向があります。
親知らずが横や斜めに生えていたり、半分だけ生えている場合は、さらに注意が必要で、細菌感染が起こり、歯茎や周囲の骨に炎症が生じ、口の開閉が困難になったり、腫れが生じたりする可能性があります。
この状態が悪化すると、入院や手術が必要になるケースもありますので、十分に注意する必要があります。

また、親知らずが中途半端に埋まっている場合は、歯磨きが十分に行えず、歯周病菌の繁殖が進みやすくなります。
定期的な歯科検診や適切な処置を行うことで、歯周病の予防と管理に努めましょう。

歯並びに影響が出る

親知らずが放置されると、歯並びに影響を与える可能性があります。親知らずはほかの永久歯が生えそろった後に後ろに生えてくるため、その大きさや生え方によっては、周囲の歯に圧力をかけ、周囲の歯を押してしまい歯並びの乱れを引き起こしてしまうのです。
また、親知らずが第二大臼歯に食い込むように生えると、第二大臼歯の歯根吸収を引き起こすおそれがあります。

歯根吸収が進行すると、親知らずだけでなく周囲の歯も影響を受け、歯並びの乱れが生じる可能性があります。 親知らずの放置は、痛みがないからといって軽視してはなりません。早めに歯医者を受診し、適切な処置を行うことが重要です。

顎関節症の原因となる

親知らずが生える過程で手前の歯が押されて歯並びが乱れることで、上下の歯の噛み合わせが悪くなる場合があります。
この歯のズレが顎関節に影響を与え、顎関節症を引き起こすリスクが高まります。

顎関節症は、顎の痛みや口の開閉障害、顎の雑音などの症状を引き起こし、日常生活に支障をきたすことがあります。
真っ直ぐに生え揃わなかった親知らずが周囲の歯に圧力をかけることで、顎関節に負担がかかります。

また、親知らずの放置は顎関節症を悪化させ、抜歯の治療後にも痛みや違和感が残る場合があります。その場合は、歯科医師へ相談をして、適切なケアを受けましょう。

全身への影響

親知らずの放置は、口腔内だけでなく全身の健康にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。
親知らずが生えている状態で炎症が起こると、周囲の歯茎や組織に感染が広がるリスクがあります。顎の下や頬が腫れ上がったり、感染歯性感染症の一例として、顎骨骨膜炎や蜂窩織炎が挙げられます。これらの感染症はむし歯や歯周病などが原因で細菌が周囲の組織に広がり、顎の骨や皮下組織に感染が及ぶ状態です。
顔全体の腫れや激しい痛み、口の開閉困難、高熱や全身の倦怠感などの症状が現れることがあります。これらの感染症は抗生物質による治療が必要であり、重症化すると頸部が腫れて呼吸困難などを引き起こすこともあるため、早期の適切な処置が重要です。
親知らずの放置は、これらの歯性感染症を引き起こすリスクを高めます。痛みや腫れなどの症状が現れた場合は、迅速に歯科医院を受診し、適切な治療を行うことが重要です。

親知らずを抜いたほうがいいケース

親知らずを抜いたほうがいいケース

親知らずがまっすぐに生えていれば、抜歯する必要はない場合もあります。 しかし、以下に解説する症状が起きているケースでは、速やかに歯科医院を受診し親知らずの抜歯を検討しましょう。

智歯(ちし)周囲炎を引き起こしている

親知らずを抜くべきケースの一つとして、智歯周囲炎が挙げられます。智歯周囲炎は、親知らずが生えている歯茎が腫れている状態を指し、根本的な解決策としては抜歯しかありません。
先述したように、親知らずが横向きや斜めに生えていると、歯と歯の間に隙間ができ、そこに汚れがたまりやすくなります。この不衛生な状態が続くと、免疫力が低下した際に細菌が繁殖し、智歯周囲炎が発生しやすくなります。

智歯周囲炎が重症化すると、口の開閉が困難になったり、痛みを伴う日常生活の支障が増える可能性があります。痛みや腫れがある場合は、早期に歯科医院を受診することが重要です。
歯医者では歯科用CTを用いて詳細な診断を行い、適切な治療法が提案されます。 智歯周囲炎を放置していると、歯を支える骨が溶けてくる可能性もあるため、繰り返す炎症がある場合は、抜歯が推奨されます。

親知らずがむし歯になっている

親知らずがむし歯になっている場合、抜歯が適切な選択肢とされます。親知らずは、むし歯になりやすい歯であることに加えて、むし歯治療しても再びむし歯になるリスクが高いという特徴を持っています。
親知らずのむし歯を放置し症状が進行すると、痛みや腫れが悪化するだけでなく、周囲の組織への感染や顎関節症などの合併症のリスクも高まるため、親知らずのむし歯を発見した場合は、速やかに歯科医院へ受診し対処しましょう。

親知らずの手前の歯がむし歯になっている

親知らずだけでなく、その手前の歯である第二大臼歯がむし歯になった場合も、親知らずを抜歯することが適切です。
手前の第二大臼歯がむし歯になってしまった場合は、治療の妨げとなる親知らずを抜歯することで、すみやかに第二大臼歯のむし歯を処置できるようになります。第二大臼歯まで悪化して治療不可能になる前に、早めの対処が重要です。

また、親知らずがまっすぐ生えていない場合、第二大臼歯との隣接面が塞がって汚れがたまりやすくなっていることが親知らずの手前の歯にむし歯が発生している原因となっている可能性があるため、第二大臼歯のむし歯リスクを下げるためにも抜歯は重要です。

親知らずが歯並びや噛み合わせに悪影響を与えている

親知らずが歯並びや噛み合わせに悪影響を与えている場合、抜歯が必要とされます。
親知らずが横向きや斜めに生えている場合は、手前の歯に後ろから押すような力がかかり、歯並びに悪影響を及ぼすことがあり、抜歯を検討するタイミングとなります。

また、歯列矯正の治療を行う前に、歯並びが乱れる原因となっている親知らずを抜歯することが必要です。
歯並びや噛み合わせに影響を与える親知らずが残っていると、治療後の状態が安定せず、再度歯並びが乱れる恐れがあります。
矯正後に元の歯並びに戻ろうとする力が働き、歯並びの乱れを引き起こす可能性があるのです。

親知らずの抜歯の流れと方法

親知らずの抜歯の流れと方法

これまで、親知らずの抜歯の重要性について述べてきました。
最後に、抜歯の流れとその方法について、以下に解説します。

抜歯の流れ

親知らずの抜歯は、正常に生えているケースでは15分から20分程度、複雑で難しいケースになると30分から1時間程度かかる場合もあります。
抜歯の流れは、以下の通りです。

  1. まず、麻酔を行い、患者さんが痛みを感じないようにします
  2. 歯茎を切開し、親知らずが埋まっている骨を削り(削合)ます
  3. 親知らずの頭部分(歯冠)と根部分(歯根)を分割します
  4. 分割した親知らずを抜きます
  5. 抜歯後、親知らずのあった位置の汚れを除去し、清掃します
  6. 場合によっては歯茎を縫合します
  7. 止血の処置を施します

親知らずの生え方や抜歯の難易度によって手順は異なります。また、抜歯後のケアや注意事項も重要ですので、指示に従ってください。

抜歯方法

親知らずの抜歯は、抜歯鉗子と呼ばれる特殊なペンチのような器具を使用して行います。抜歯の流れで述べたように、抜歯を行う前には必ず局所麻酔が施されます。 まっすぐに生えている親知らずの場合は、鉗子を使って歯を歯槽骨から脱臼させ、それを抜き取ります。
しかし、親知らずが斜めに生えていたり、埋まっている場合は手順が複雑になります。この場合、歯茎を切開して歯を露出させ、周囲の顎の骨を削ります。その後、歯の頭の部分と根の部分を分割し、順次抜去していきます。

また、親知らずの形や埋まり具合によって手順は異なる場合があります。長時間の麻酔が必要な場合や親知らずが神経や血管に触れるリスクがある場合などは、対応できる口腔外科での抜歯が推奨されます。

まとめ

まとめ

ここまで親知らず治療の適切なタイミングについてお伝えしてきました。親知らず治療の適切なタイミングの要点をまとめると以下の通りです。

  • 親知らずは、正式名称を「第三大臼歯」といい、10代の後半から20代の前半にかけて生え始める奥歯のこと
  • 親知らずの治療に適したタイミングは、主に20歳前後が推奨されている
  • 親知らずを適したタイミングで抜歯するメリットは、抜歯の難易度が下がる・治癒能力が高い年齢であること・私生活への影響を考慮することなどが点が挙げられる

ここまで述べたように、親知らずは、患者さんのライフスタイルや口腔状況によって、適切な治療の時期が異なってきます。それらを理解することで、ご自身の適切な治療のタイミングで治療を受け、健康な口腔環境を維持しましょう。

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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