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親知らずが副鼻腔炎の原因になる?関係と治療法などを解説

親知らずが副鼻腔炎の原因になる?関係と治療法などを解説

鼻づまりや鼻水、顔の痛みなどを引き起こす副鼻腔炎。一般的には蓄膿症(ちくのうしょう)と呼ばれる病気で、発熱や倦怠感など、全身の症状に発展することもあるため注意が必要です。そんな副鼻腔炎は、親知らずが原因になりえることを知っていますか?ここでは親知らずと副鼻腔炎の関係や治療法、予防する方法などを詳しく解説をします。副鼻腔炎を発症していて、親知らずとの関係が疑われる場合は参考にしてみてください。

親知らずと副鼻腔炎の関係

親知らずと副鼻腔炎の関係 はじめに、副鼻腔炎の基礎知識と親知らずとの関係について解説します。

副鼻腔炎とは何ですか?
副鼻腔炎とは、鼻の奥に存在する副鼻腔という空洞に炎症が起こる病気です。副鼻腔は、前頭洞(ぜんとうどう)、篩骨洞(しこつどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)、上顎洞(じょうがくどう)の4つに分けられ、いずれかの場所で細菌やウイルスへの感染、アレルギー症状などが引き起こされると炎症反応が起こって副鼻腔炎を発症します。副鼻腔炎になると、以下のような症状が現れます。
  • 鼻づまり
  • 黄色くドロッとした鼻水が出る
  • 嗅覚障害
  • 額や頬、目の周りに痛みを感じる
  • 頭痛
  • 歯の痛み
  • 発熱
  • 倦怠感

副鼻腔炎の症状の強さや現れ方は、患者さんによって変わります。

親知らずが副鼻腔炎を引き起こす仕組みを教えてください
親知らずが原因で生じる副鼻腔炎は、主に上顎洞炎です。上の親知らずの直上に存在している上顎洞で炎症反応が起こります。具体的には、親知らずのむし歯や歯周病が重症化すると、近接している上顎洞へと炎症反応が波及して、副鼻腔炎の一種である上顎洞炎を引き起こすのです。

また、むし歯や歯周病、あるいは生え方が悪い親知らずを抜歯した際にも上顎洞炎を引き起こすことがあります。これは抜歯によってできた穴と上顎洞が交通してしまうことが主な原因です。つまり、口腔と副鼻腔がつながることで上顎洞に細菌感染が生じるのです。ちなみに、上顎洞炎の約10%が親知らずなどの歯が原因で生じる歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)といわれています。

下顎の親知らずと副鼻腔炎には関係がありますか?
下顎の親知らずは、上顎洞をはじめとした副鼻腔とは距離が離れており、副鼻腔炎の原因となることはほとんどありません。副鼻腔炎と直接的な関係があるのは、上顎の親知らずです。

親知らずが原因の副鼻腔炎を治療する方法

次に、親知らずのむし歯や歯周病などが原因で副鼻腔炎を発症した場合の治療法を解説します。

副鼻腔炎の治療に親知らずの抜歯は必要ですか?
親知らずが原因の副鼻腔炎では、多くのケースで抜歯が必要となります。特にむし歯や歯周病といった親知らずの細菌感染が原因で副鼻腔炎を発症している場合は、感染源を根本から取り除く必要があります。これが第一大臼歯や第二大臼歯であれば、時間をかけてむし歯治療や歯周病治療に注力するのですが、親知らずは生え方が悪いことが多く、再感染のリスクも高くなっているため、抜歯が優先されやすいです。親知らずの状態が良好で、治療も奏功するようであれば、副鼻腔炎の治療として抜歯をしないこともあります。
抗生物質や点滴だけで副鼻腔炎の治療を完結できますか?
副鼻腔炎の重症度が軽く、親知らずの状態もそれほど悪くないのであれば、抗生物質や点滴の投与で症状の改善が見込める場合もあります。しかし、薬物療法だけで副鼻腔炎の治療を完結するのは難しいです。とりわけ感染源が親知らずにある場合は、それを取り除かない限り副鼻腔炎が再発するリスクも高まります。
外科的な処置が必要になるのはどのような場合か教えてください
親知らずを抜歯しても副鼻腔炎が治らない場合は、外科的な処置を検討する必要性が出てきます。主にこれは親知らずの抜歯によって口腔と上顎洞が交通したケースに当てはまります。口腔内には無数の細菌が常在しているため、上顎洞に穴が空いているとその一部が侵入し続けるという状態になるからです。本来、親知らずの抜歯によってできた穴は、時間の経過とともに塞がっていくのですが、その穴が大きい場合はいつまで経っても塞がらず、副鼻腔炎の治癒を阻みます。こうしたケースでは、外科的な処置で上顎洞の鼻を塞ぎます。

親知らずの抜歯によって生じた副鼻腔炎が長期化および重症化しているケースでは、内視鏡下副鼻腔手術(ないしきょうかふくびくうしゅじゅつ)が必要となることがあります。専門的にはESS(Endoscopic Sinus Surgery)と呼ばれるもので、鼻から内視鏡を挿入して、炎症反応が起こっている上顎洞の粘膜やポリープを外科的に切除します。その後、膿の排出や上顎洞の洗浄などを行って手術は完了します。ESSは局所麻酔下で行われ、切開を加えることもないため、術中はもちろん、術後の痛みや腫れも軽く済みます。

親知らず抜歯後の副鼻腔炎を予防する方法

親知らず抜歯後の副鼻腔炎を予防する方法 このように、上顎の親知らずの抜歯には副鼻腔炎のリスクを伴うことから、施術後は十分な予防策を講じたいところです。

親知らず抜歯後に副鼻腔炎にならないためには何に気を付けたらいいですか?
上顎の親知らずを抜いた後は、以下の点に注意しましょう。

◎歯科医師の指示どおりに行動する

親知らず抜歯後の行動によって、副鼻腔炎のリスクは大きく変わります。その上でまず重要なのが傷口を刺激しないことです。親知らずの抜歯後は抜歯窩(ばっしか)と呼ばれる穴が空いているため、気になって舌で触りたくなるものですが、不要な刺激を加えるのは避けてください。繰り返しうがいをすると、抜歯窩にできた血餅が流れて治癒が遅れるので、抜歯後のうがいは最小限にとどめましょう。

硬い食べ物や熱い食べ物、辛い食べ物も患部を刺激することから避ける必要があります。また、親知らずの抜歯後に処方された薬は、歯科医師の指示どおりに服用するようにしてください。その他、激しい運動、飲酒、喫煙、熱い湯船に浸かるなどの行為も歯科医師から制限されますので、指示どおりに行動しましょう。

◎口腔内を清潔に保つ

親知らずの抜歯後の過度なうがいは避けるべきですが、口腔ケアはしっかり行う必要があります。抜歯した後だからといって、口腔ケアを控えているとお口のなかで細菌が繁殖して副鼻腔炎のリスクを高めます。親知らず抜歯後の歯磨きは傷口を刺激しないよう配慮しつつ、残りの歯は歯磨きを徹底してください。お口のなかに残りにくい食事を選ぶと、親知らず抜歯後の口腔ケアがしやすくなります。デンタルフロスや歯間ブラシなども傷口を避けながら上手に使っていきましょう。

親知らずを抜いた後に自宅でできる副鼻腔炎対策があれば教えてください
副鼻腔炎は、鼻への刺激によっても発症リスクが高まるため、呼吸が粗くなる行為は極力控えてください。自宅で安静に過ごすのが親知らず抜歯後の副鼻腔炎対策として重要となります。また、咳をする、鼻をすする、食べ物をすするなどの行為も傷口に大きな負担をかけるため、できるだけ避けるようにしましょう。鼻のとおりが悪い場合は、鼻うがいなどで鼻腔を洗浄するのもよいです。
日常生活でできる副鼻腔炎の予防方法はありますか?
バランスの取れた食事、十分な睡眠時間、ストレスをためないことを意識することで、親知らず抜歯後の副鼻腔炎を予防しやすくなります。副鼻腔炎は細菌感染症の一種なので、全身の健康状態が鍵を握ります。基本的には免疫力を正常に維持しやすい行動・習慣を心がけるようにしてください。

編集部まとめ

今回は、親知らずの抜歯後が副鼻腔炎の原因になる理由と治療法、効果的な予防方法について解説しました。上顎の親知らずは上顎洞という副鼻腔炎に近接しており、抜いた拍子に穴が空く、炎症反応が波及するなどの理由で副鼻腔炎を引き起こすことがあります。また、親知らずのむし歯や歯周病が原因で副鼻腔炎を発症することもあるため、この2つの関連性については正しく理解しておく必要があります。親知らずが原因の副鼻腔炎では、まず歯科医院で診察を受け、必要に応じて耳鼻咽喉科と連携しながら治療を進めて行くのがよいでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松浦 京之介歯科医師(歯科医)

松浦 京之介歯科医師(歯科医)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:2019年 福岡歯科大学卒業、2020年 広島大学病院研修修了、2020年 静岡県、神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務、2023年 医療法人高輪会にて勤務、2024年 合同会社House Call Agencyを起業 / 資格:歯科医師免許 / 所属学会:日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会

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