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親知らずによる頭痛|頭痛が起きる原因や受診の目安について解説

親知らずによる頭痛|頭痛が起きる原因や受診の目安について解説

親知らずがある方のなかには、頭痛に苦しんでいる方もいます。親知らずと頭痛は無関係に思えますが、実は親知らずが頭痛を引き起こしている可能性があります。

単なる頭痛だと考えて放置すると、健康に悪影響を及ぼしかねません。親知らずと頭痛の両方に対して、適切な処置が必要です。

この記事では、親知らずと頭痛の関係を解説します。頭痛が起きる原因や受診の目安など、対処に役立つ情報をまとめているので参考にしてみてください。

親知らずによる頭痛が起こる原因

サラリーマン

親知らずとは、20歳前後から第2大臼歯の奥に生える第3大臼歯(智歯)のことです。正常に生えることは少なく、何かとトラブルを招きやすい歯でもあります。

親知らずが招くトラブルの1つが頭痛です。歯と頭は関係がないと思われがちですが、意外にも両者は密接に関わっています。

なぜ親知らずによる頭痛が起こるのか、主な3つの原因を取り上げます。親知らずがあり頭痛が続いている方は、ご自身の状態をチェックしてみてください。

むし歯や歯周病

親知らずは歯列の一番後ろに生えてきます。さらに現代人は顎が細く生え出るスペースが足りず、歯冠の一部しか出ない半埋伏歯の状態になる方も多くいます。

そのため、ほかの歯よりも清掃がしにくく不潔になりやすいのが特徴です。それにより親知らずや隣の第2大臼歯がむし歯や歯周病になりやすくなってしまいます。

むし歯や歯周病で歯の神経(歯髄)が痛むと、三叉神経を通じ頭痛が生じます。ただし軽いむし歯や歯周炎で頭痛が生じることはほとんどありません。

頭痛が起こる主な例は、むし歯が重症化して歯髄にまで達し歯髄炎を発症している場合です。つまり、頭痛が起きたときにはすでに重症と考えてよいでしょう。

また、むし歯の細菌が血液に乗って脳静脈に達すると稀に脳静脈血栓症を発症します。脳の炎症や血栓が、頭痛を起こしている可能性も考えられます。

歯肉の炎症

顎が痛い人

親知らずの不潔な状態が続くと、プラークに含まれる細菌に感染し歯肉が炎症を起こすでしょう。歯肉が赤く腫れて、場合によっては出血することもあります。

歯肉の腫れがひどく膿が溜まってくると痛みが強くなり、歯の神経周辺にある頭部の神経も刺激してしまい頭痛が生じやすいです。

また親知らずの付近には、鼻腔につながる副鼻腔のうち頬側に位置する上顎洞があります。歯肉の炎症を放置すると細菌が上顎洞に入り、歯性上顎洞炎を起こすでしょう。

上顎洞周囲の骨は上顎から頭蓋骨までつながっています。炎症で溜まった膿が周囲の神経や血管を圧迫すると、頭痛を引き起こすリスクが高いです。

噛み合わせ

頭痛は顎の筋肉が緊張していることでも引き起こされます。噛み合わせが悪いと顎の筋肉が均等に使われないため、片側が緊張状態になります。

親知らずはよく斜めや横に生えて隣接する歯を押すため、噛み合わせが悪くなりやすいです。そして偏った噛み方をすると、さらに噛み合わせが悪くなります。

特に咀嚼に関わる側頭筋は頭蓋骨の広範囲に付着しており、筋肉の緊張が頭に伝わりやすい部位です。筋肉が緊張すると頭部に運ばれるはずの血液が阻害されます。

これによって起こる頭痛を、筋緊張性頭痛と呼びます。噛み合わせから起こる頭痛は、後頭部・こめかみ・前頭部付近などに部分的に起こりやすいです。

親知らずの頭痛で受診する目安は?

カウンセリング

頭痛は今や日本人の4人に1人が抱えているといわれる国民病です。そのため、頭痛が起きただけでは受診しない方も少なくありません。

しかし親知らずによる頭痛を放置していると、大きな問題に発展しかねません。次の3つの症状がみられた場合には、なるべく早く医療機関を受診しましょう。

痛みを強く感じる

頭の痛みを強く感じ、日常生活に支障をきたす場合には受診が必要です。痛みの強さと頻度が増している場合、親知らずの状態も大変悪い可能性があります。

また、短時間の激しい頭痛は群発頭痛や三叉神経痛を起こしているとも考えられます。痛みによるストレスも大きく、感情面での影響も増していくでしょう。

高熱や発疹がみられる

熱がある人

頭痛に伴って高熱がみられる場合は親知らずに強い炎症が起き、歯肉やその周辺に膿が溜まって腫れの範囲も大きくなっている段階です。

炎症の範囲が広がった状態を頬部蜂窩織炎(きょうぶほうかしきえん)と呼びます。体温上昇とともに全身の倦怠感もみられるでしょう。

さらに皮膚や粘膜に発疹も生じている場合には、細菌感染によりアレルギー反応が生じていると考えられます。このような場合には、早急な対処が必要です。

吐き気や嘔吐がある

発熱は伴わないものの頭痛とともに吐き気や嘔吐が生じる場合には、親知らずを発端に脳に対して大きな影響が出ている可能性が高いです。

細菌やウイルスなどによる感染が脳や脊髄の表面にある髄膜にまで広がると、髄膜炎を引き起こします。髄膜炎の症状には、頭痛・吐き気・嘔吐などがあります。

親知らずの生え方やむし歯・歯周病によって、ほかの歯や周辺組織に負担がかかることで免疫力が低下している場合、髄膜炎にかかりやすいです。

親知らずの抜歯のメリット・デメリット

メリット・デメリット

頭痛の原因が親知らずにある場合、親知らずを抜歯すると症状が改善される可能性が高いです。しかし、親知らずの抜歯にはメリットもデメリットもあります。

十分検討せずに抜歯するかどうかを選択してしまうと、やがて後悔する結果になるかもしれません。知っておくべきメリット・デメリットを解説します。

メリット:口腔トラブルの減少

笑顔の練習

親知らずの抜歯によって得られるメリットは、親知らずが引き起こしてしまう口腔トラブル全般を避けやすくなる点です。

親知らずに伴う口腔トラブルは、主にケアの難しさによって生じます。第2大臼歯との間や歯肉に隠れた部分は丁寧に歯磨きをしても磨き残しが起こりやすいです。

しかし抜歯をすれば患者さん自身でもケアがしやすく、むし歯や歯周病を防ぎやすくなります。歯肉の炎症が起きても短期間で自然と治るでしょう。

また親知らずが斜めや横向きに生えていると、口内炎ができやすかったり噛み合わせが悪くなったりする場合もあります。

口腔トラブルは頭痛をはじめ全身症状を引き起こします。早い段階で抜歯しておけば、口腔トラブルを避けられ、その結果頭痛が出なくなる可能性が高まるでしょう。

デメリット:出血や神経麻痺

親知らずを抜歯する際には、出血や神経麻痺を起こすリスクが伴います。特に下顎の埋伏歯では、歯が骨の内部の神経や血管に近いケースがあります。

事前に入念な精密検査を行い、高度な設備と施術者の高い技術をもって施術をしなければ、抜歯時に神経や血管を傷付けてしまう危険性が高いです。

通常、抜歯後の出血は圧迫止血により30分程度で止まります。しかし血管を傷付けていると出血が止まりにくく、止まっても後出血を起こすでしょう。

抜歯後は傷口を治す際の炎症反応で頭痛が起こる場合があります。傷口が深いと頭痛がより強く長引くため、抜歯前よりも頭痛に悩まされるかもしれません。

また、抜歯後の下歯槽神経麻痺の発現率は0.4〜5.5%と報告されています。そして親知らずと下顎管が重複していると、2.9%麻痺が出現するとみられます。

ほとんどは数ヵ月で回復する一過性ですが、6ヵ月目でも何らかの症状を残すケースでは1〜2年後も完全回復に至らないとの報告もあり、注意が必要です。

このような手術に伴う危険性をしっかりと理解したうえで、現在悩まされている頭痛と天秤にかけて抜歯に踏み切るか否かを決定してください。

デメリット:智歯周囲炎

智歯周囲炎とは、親知らずの周囲の歯肉が炎症を起こす状態を指します。この炎症が顎や周辺組織にまで広がった場合、顔の腫れや開口障害を引き起こします。

智歯周囲炎は親知らずの細菌感染でも起こりますが、抜歯した際に滅菌・殺菌が不十分だと引き続き炎症が起こる恐れがあるでしょう。

手術自体の炎症反応で周辺組織が腫れて痛むこともあり、痛みが外に広がると頬が膨らんで智歯周囲炎と同様の症状が起こってしまいます。

智歯周囲炎により歯肉が炎症を起こすと、先述したとおり頭痛が起こるリスクが高まります。抜歯しても頭痛が改善されるとはいえません。

親知らずの頭痛は何科を受診する?

問診票

頭痛で初めて受診する方のなかには、何科を受診したらいいかわからない方もいるでしょう。特に親知らずが原因だと、どう対処すべきか悩むかもしれません。

親知らずによる頭痛が起きたら、主に次の2つの診療科の受診を検討してください。それぞれのポイントを解説します。

口腔外科

親知らずにむし歯や歯周病など炎症が発生しており、頭痛の原因が親知らずにある可能性が高い場合は、口腔外科を受診しましょう。

口腔外科では智歯周囲炎や埋伏歯をはじめ、親知らずに関連する疾患も幅広く扱っています。そのため、親知らずとその周辺組織の状態を詳しく検査できます。

これにより頭痛の原因が明確になり、より適切な治療を検討できるでしょう。必要であればすぐに患部の炎症への処置も受けられ、早いうちに症状を抑えられます。

脳神経外科

頭痛の症状が強く日常生活に支障がある場合には、脳神経外科を受診するのがよいでしょう。脳神経外科とは、脳・脊髄・神経などを専門的に扱う診療科です。

脳神経内科も診療内容はほぼ同じです。とはいえ頭痛には予想外の原因が潜んでいる危険もあるため、外科的処置も行える脳神経外科の受診をおすすめします。

親知らずへの対処はできないものの、感染が脳にまで達し脳静脈血栓症や髄膜炎などを併発している場合は、脳への治療を行い頭痛を改善できる可能性があります。

親知らずによる頭痛の対処法

頭痛

頭痛は周囲からはわかりづらいものの、本人にとってはつらい症状です。痛みが強いと日常生活に支障をきたす恐れもあり、迅速な対応が必要になります。

なるべく早く痛みを軽減するために、前もって対処法を知っておくのはよいことです。すぐに取り入れられる2つの対処法を紹介します。

痛み止めの内服

頭痛を抑える方法の1つは、痛み止めの内服です。痛みが生じているときに頓服として服用すれば、頭痛の原因となる親知らずの炎症を抑えられます。

歯科医院で一般的に処方されるのは、ロキソプロフェンナトリウムやアセトアミノフェンです。市販薬ではロキソニンやカロナールを選ぶとよいでしょう。

ロキソニンは痛みや発熱の原因物質が体内で作られるのを抑え、痛みを軽減します。カロナールは中枢神経に穏やかに作用し、炎症を抑制する効果をもつ薬です。

痛み止めの効果の大きさや持続時間は、痛みの強さや患者さんの感受性によって異なります。効果が切れて再び頭痛が起きたら、我慢せずに内服してください。

とはいえ、一度に多めに飲んでも効果は向上せず副作用のリスクも少なからずあるため、各痛み止めの用法用量をきちんと守って服用しましょう。

患部を冷やす

親知らずによる頭痛が強く出ているときは、炎症が悪化して患部が熱をもっているでしょう。そのため、炎症を起こしている患部を冷やすのも効果的です。

痛む側の頬を冷やすと盛んになっている血流が落ち着き、痛みや腫れを軽減させられます。広く冷やせるように水に濡らしたタオルを使うとよいでしょう。

より直接冷やしたい場合は、氷をお口に含むのもおすすめです。口内の粘膜全体を冷やせるため、広範囲に広がった炎症を効率的に抑えやすいです。

ただし、冷やしすぎると血流が悪くなって逆効果となり、状態が悪化しかねません。冷やしても頭痛が改善されなければただちに中止してください。

痛み止めを内服したり患部を冷やしたりしても頭痛が続く方は、早めに歯科医院を受診し患部の消毒や抗生物質の処方を受けて対処する必要があります。

親知らずが引き起こすほかの症状

口の中を見る男性

親知らずを放置していると、磨き残しやその後の炎症によって口臭が引き起こされます。親知らずのむし歯や歯周病も口臭の原因となるでしょう。

また、親知らずがあることでほかの歯もむし歯になるリスクが高まります。重症化すればその歯を抜歯しなくてはならなくなる可能性もあります。

さらに、親知らずにより噛み合わせのバランスが悪くなると身体のバランスも崩れ、首・肩の筋肉の緊張し血行不良になることから肩こりも起こりやすいです。

親知らずがあると見た目にも影響します。上顎の親知らずは頬骨に近く、下顎の親知らずはエラ部分に近いため、フェイスラインが気になる方もいるでしょう。

そして持病がある方や妊娠中の方は、親知らずによる痛みや腫れが生じても満足に痛み止め・抗生物質が飲めない点を、不安に感じるかもしれません。

これらの症状は親知らずの抜歯によって解決できる可能性があります。気になる点がある方は、歯科医院で親知らずの状態を調べてみるとよいでしょう。

まとめ

リラックスする女性

この記事では、親知らずによる頭痛の原因や受診に関する情報をまとめて解説しました。頭痛に悩んでいる方は、もしかしたら親知らずが原因かもしれません。

親知らずも頭痛も、放置していると生活のさまざまな場面に悪影響を与えてしまいます。放置せず、なるべく早急に適切な対応をするのが重要です。

ただし親知らずの抜歯にはリスクも伴うため、よく検討する必要があります。まずは一度医療機関を受診し、ご自身の身体の状態を調べてみてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

1979年東京歯科大学卒業、2004年東京歯科大学主任教授、2012年東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長、2020年東京歯科大学名誉教授

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