顎関節症は、「口が開かない」「顎が痛い」など、日常生活に支障をきたす症状を呈します。また、そのまま放置していると症状が悪化する可能性もあります。
本記事では、顎関節症の代表的な治療法、手術が必要になるケース、そして予防法について解説します。
- 顎関節症の治療について
- 顎関節症の診断と診療科
- 顎関節症にならないために
ご自身の症状に合った治療法を見つけるために、ぜひ参考にしてください。
顎関節症の治療について
- 顎関節症の治療にはどのようなものがありますか?
- 顎関節症の治療には、さまざまな方法があります。
軽度の症状では自宅でのセルフケアが中心ですが、セルフケアを行う前や進行した症状がある場合は、医療機関での指導や治療を受けることが推奨されます。
主な治療法には、スプリント療法、薬物療法、理学療法が含まれ、顎の状態によっては顎関節腔内洗浄や外科手術などの外科的療法が選択されることもあります。
- 顎関節症で手術になる場合はありますか?
- はい、非外科的治療法で症状が改善されない重度のケースの場合、手術が必要になる場合があります。
手術にはいくつかの種類があり、顎関節の構造を改善するための開放的手術(オープンジョイントサージェリー)や、関節内の問題を診るための関節鏡手術(アーソロスコピー)などが含まれます。
開放的手術は、直接顎関節にアプローチするために皮膚を切開します。この手術は、関節の再構成や修復が必要な重度の症例に適用され、関節盤の再配置や破損した関節部分の修復を行います。
関節鏡手術は、小さな切開を介してカメラと手術器具を挿入し、関節内の問題を診断および治療します。この手術は負担が少ないので回復が速く、関節内の炎症の除去や関節盤の調整などが行われます。
- 顎関節症の治療にはどのくらいの期間が必要ですか?
- 顎関節症の治療期間は個々の症状の重さによって異なりますが、数ヶ月から数年に及ぶことがあります。
軽度の場合は自宅でのセルフケアだけでも改善することがありますが、より深刻な場合には治療が必要になります。
- 自宅で顎関節症の痛みを和らげる方法はありますか?
- 自宅で顎関節症の痛みを和らげる方法には、顎関節のストレッチ、顎周りの筋肉のマッサージ、生活習慣の見直し、精神的ストレスの緩和が含まれます。これらは日常生活で実践でき、顎関節症の症状を自己管理するのに役立ちます。
顎関節のストレッチについては、以下を参考にしてください。- ゆっくりと口を開ける動作を繰り返します。顎の動きを意識しながら、無理のない範囲で開閉します。
- 顎を左右に動かし、ゆっくりと横のストレッチを行います。これも痛みを感じない範囲で行ってください。
次に、顎周りの筋肉のマッサージです。
- 指の腹を使って、耳の前から始めて顎のラインに沿って下へ優しく圧をかけながらマッサージします。
- 顎の下の部分を優しく揉み解すことで、緊張が和らぎます。
このように、顎関節の柔軟性を向上させることで、痛みを軽減することが期待できます。無理をせず、自分の体に合った範囲で行ってください。
- 顎関節症は自然治癒しますか?
- 顎関節症の症状は、約7割の方が1年以内に自然治癒するといわれています。特に、軽度な症状の場合、安静にして様子をみることで自然に治癒するケースが多くあります。
しかし、軽度な症状であっても、放置すると悪化する可能性もあります。
- 顎関節症を放置するとどうなりますか?
- 顎関節症は、放置すると痛みや炎症が悪化し、関節音や開口障害を引き起こす可能性があります。
- 短期的な悪化:関節周囲の炎症が進行し、腫れや熱感、動きの制限が起こることがあります。開口障害も生じる可能性があり、食事や会話が困難になることがあります。また、顎を動かす際には「カクカク」や「ゴリゴリ」といった関節音が生じるようになる場合があります。
- 長期的な悪化:関節軟骨の摩耗や骨の変形を引き起こし、重篤な開口障害や顎関節脱臼を引き起こす可能性があります。さらに、顎関節の炎症が拡大し、難聴や頭痛を引き起こすことがあります。また、顎関節症による慢性的な痛みやストレスは、うつ病や不眠症などの全身症状を引き起こすことがあります。
顎関節症の診断と診療科
- 顎関節症は何科に行けばいいのでしょうか?
- 主に、顎関節症の診断と治療は歯科医院や歯科治療をメインとする病院で行われ、歯科口腔外科や顎顔面外科に相談するとよいでしょう。また、症状によっては耳鼻咽喉科や整形外科での診察も推奨される場合があります。
- 顎関節症の診断方法を教えてください。
- 顎関節症の診断方法には、いくつかの手順があります。
まず、最大開口量(患者さんが自然に最大限に口を開けられる距離)の測定と、強制開口(医師が手で助けてさらに口を開けさせたときの距離)を行い、開口量の違いを確認します。
次に、下顎頭の圧痛を診るため、圧痛点を押しながら患者さんに開口運動をしてもらいます。加えて、下顎頭の滑走を調べるために、手で下顎を支えながら動かして検査します。
ほかにも、咬筋の圧痛診査を行い、筋肉の硬さや痛みの有無をチェックします。必要に応じて、レントゲンやMRI(強い磁力と電波を用いて、体内の水素原子から発生する信号を画像化する方法)、CT(X線を回転させて体内の断層画像を撮影する方法)などの画像診断も行う場合があります。
顎関節症にならないために
- 顎関節症になりやすい生活習慣を教えてください。
- 顎関節症になりやすい生活習慣には、以下のようなものがあります。
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- 片噛み:常に同じ側で噛む癖が顎のバランスを崩し、症状を引き起こすことがあります。
- 頬杖:手で顎を支える癖が顎に不自然な圧力を加えることがあります。
- うつぶせ寝:顔に圧力がかかり、顎関節に負担を与える可能性があります。うつぶせ寝の癖を治すためには、寝るときに枕の位置を調整して、横向きや仰向けで寝るのを心がけましょう。また、体を横向きに保つために、背中や腰にクッションを置くのも一つの方法です。寝る前のルーティンを整え、リラックスすることも睡眠姿勢に影響します。万が一、変更が難しい場合は、医師に相談するのも一つの選択肢です。
- 歯ぎしりや食いしばり:これらの行為は顎関節に過剰なストレスを与え、症状を悪化させる可能性があります。歯を守り、顎への圧力を軽減するための対策として、夜間に装着するマウスピースを作成してもらうのがよいでしょう。
これらの習慣を意識して改善することで、顎関節症のリスクを減らします。
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- ストレスは顎関節症と関係がありますか?
- ストレスが顎関節症の発症や悪化につながることがあります。 これは、ストレスが歯ぎしりや食いしばりのような顎に負担をかける行動を引き起こすからです。
その結果、顎関節に過剰なストレスが加わり、症状が現れやすくなります。ストレス管理を適切に行うことが、顎関節症の予防と管理に役立ちます。
編集部まとめ
ここまで、顎関節症はどのような治療をするのか、手術になる場合や予防法について解説しました。要点をまとめると、以下のとおりです。
- 顎関節症が軽度の場合、自宅でのセルフケアが中心になりますが、より進行した症状の場合は医療機関での治療が推奨される
- 自宅で顎関節症の痛みを和らげるには、顎関節のストレッチ、顎周りの筋肉のマッサージ、生活習慣の見直しや精神的ストレスなどの方法がある
- 顎関節症は、歯科口腔外科や顎顔面外科に相談するとよい
顎関節症は、適切な治療を受けることで、症状を改善し、日常生活の質を高められます。顎関節症にお悩みの方は、早めに歯科医院を受診し、適切な治療を受けることをおすすめします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。