顎が痛かったり、顎を動かすとカクンと音がしたりすることはありませんか? それは顎関節症の症状かもしれません。顎関節症になると、顎の関節や筋肉に痛みが出るだけでなく、肩こりを引き起こすこともあります。そこで、この記事では、顎関節症について、原因や症状などをQ&A形式でご紹介します。また、顎関節症が原因となって生じる肩こりについても解説しますので、顎の痛みや肩こりに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
顎関節症について
顎関節症はどのように起こるのか、原因は何なのか、気になりますよね。ここでは、その原因や代表的な症状について解説します。l
- 顎関節症になる原因は何ですか?
- 顎関節症の原因としては、下記のようなものが挙げられます。
- 噛み合わせ
- 歯ぎしり、くいしばり
- 頬杖や悪い姿勢
- 外傷
- 大きなお口を開けた、硬いものを噛んだ
- 左右片方ばかりで噛む癖がある
- ストレス、緊張、不眠
ほかにも、顎の関節や顎を動かす筋肉とのバランスによって、顎関節症が引き起こされる場合もあります。
- 顎関節症の代表的な症状を教えてください
- 顎関節症の代表的な症状は、顎が痛む、お口が開かない、顎を動かすと音がするの3つです。
・顎が痛む
顎には顎関節(がくかんせつ)と呼ばれる関節があり、咀嚼筋(そしゃくきん)と呼ばれる噛むときに機能する筋肉が存在します。顎に過度な負担がかかると、関節や筋肉に痛みを感じることがあります。
・お口が開かない
開口(かいこう)障害と呼ばれる症状です。顎の関節内にあるクッションがずれてスムーズに機能することができず、大きなお口が開けられなくなる状態です。
・顎を動かすと音がする
お口を開け閉めするときに、カクン、ミシミシといった音が鳴ることがあります。この症状は、ほとんどの場合、顎の関節にあるクッションのズレや変形が関係しています。
また、このほかにも顎関節症の患者さんには、肩こりの症状がよくみられるとの報告もあります。これは、歯ぎしりや食いしばりによって咀嚼筋の緊張が持続すると、その周囲にある顔や頭、首、肩などの筋肉が過度に収縮し、痛みにつながるためだと考えられています。
- 顎関節症を放置するリスクを教えてください
- 顎関節症を放置すると、下記のようなリスクがあります。
- 肩こりが悪化する
- お口の開閉がスムーズにいかなくなる
- 耳鳴りがするようになる
- めまいが起こるようになる
- 自律神経失調症の原因となる
- 五感に異常が出てくる
- うつ病の引き金となる
- 顎が痛くなる
このように、顎関節症は、放置をすると顎やお口だけでなく、全身症状にまで発展する恐れがあります。また、肩こりが悪化すると頭痛を引き起こす可能性があるなど、顎関節症の症状がさらに別の症状の原因となる場合もあります。そのため、顎関節症が疑われる場合は、放置をせずに早めに医療機関を受診することをおすすめします。
顎関節症と肩こりの関係
- 顎関節症で肩こりになることがありますか?
- 顎関節症になると、顎の筋肉が緊張状態になり、その周りの首や肩の筋肉にもその緊張が伝わるため、肩こりを引き起こしやすくなります。また、顎関節症の痛みによって体に力が入ってしまい、それが肩こりにつながる場合もあります。実際に、顎関節症の患者さんは平均よりも多く肩こりの症状がみられるとの報告もあります。
- 顎関節症を治すと肩こりが改善しますか?
- 顎関節症を治すと、ほとんどの場合、肩こりも改善します。顎関節症は顎の筋肉が緊張状態になっているため肩こりを引き起こしやすいのですが、顎関節症を治療すると、首や肩の緊張がゆるむため、肩こりも改善します。また、顎関節症の痛みで肩に余計な力が入って肩こりを起こしている場合も、顎関節症が治ることで改善につながります。
- 肩こりの原因が顎関節症かどうかの判別方法はありますか?
- 下記のような症状がある場合は、肩こりの原因が顎関節症の可能性があります。
- 片方の肩や首に強いこりがある
- 左右の目尻や口角の高さが違う
- ストレートネックになっている
- 歯ぎしりや食いしばりがある
- お口を開けたり、咀嚼したりすると痛みがある
上記で挙げた例以外でも、食べ物を左右のどちらかで噛む癖がある、食べ物や飲み物を飲み込みにくい、うまく表情を作れない、話しづらい、頭痛といった症状があれば、顎関節症が肩こりの原因になっている可能性があります。
顎関節症の治療法
- 顎関節症は何科を受診すればよいですか?
- 顎関節症は、お口の中や顎の関節の周りの組織が原因であるため、歯科医院での受診が必要です。また、歯科医院のなかでも、特に口腔外科や、顎関節症を専門としている医院の受診をおすすめします。
- 顎関節症の治療法を教えてください
- 歯科医院で行う顎関節症の治療には、下記のようなものが挙げられます。
- 薬物治療…消炎鎮痛薬を用いた痛みの改善
- 物理療法…筋肉のマッサージ、低周波治療、温湿布や冷湿布、レーザー照射など
- 運動療法…ストレッチ、下顎可動化訓練、筋肉増強訓練など
- マウスピース(ナイトガード)による治療…歯ぎしり、食いしばりの予防
- 対症療法…食いしばりがある方はボトックス打つと楽になる可能性もあります
特にナイトガードは、顎関節症の治療で、もっとも一般的に行われている治療です。ナイトガードは、就寝中に歯に装着するタイプのマウスピースで、これを装着すると、寝ている間も上下の歯があたらずに噛み合わせが高くなります。無意識の歯ぎしりや食いしばりを予防し、噛み合わせの不具合を調整することもできるため、将来の顎の関節にかかる負担を減らす効果も期待できます。
なお、顎関節症の治療で噛み合わせを調整するために歯を削ることは、推奨されていません。顎関節症の症状緩和を目的とした歯を削る噛み合わせの調整は、できるだけ避けるようにしましょう。
- 顎関節症の日常生活でのケア方法を教えてください
- 顎関節症は、日常生活での無意識の行動や癖が症状を引き起こしていることもあるため、日頃の癖を改善することがとても大切です。日常生活の行動に気をつけることで症状が軽くなる場合もあるため、以下のようなことに気をつけてみましょう。
- 頬杖をつかない
- 無意識にかみしめていないか気をつける
- 硬い食べ物を避ける
- お口を大きく開けないように気をつける
- ガムなど長い時間咀嚼する食べ物は控える
- 猫背を改善し姿勢をよくして座る
- 寝るときはうつ伏せを避ける
- リラックスを心がける
このほかにも、温湿布や冷湿布を貼ったり、マッサージをすることで痛みが緩和されることもあります。これらの方法は自己流に行うのではなく、医療機関の指示にしたがって取りいれることで、症状の改善が期待できます。また、歯科医院で処方されたナイトガードを就寝時に装着することはとても有効ですので、継続して使うようにしましょう。
編集部まとめ
顎に痛みを感じたり、お口が開けづらいと感じたりしたら、顎関節症の可能性があります。顎関節症は放置をすると肩こりが悪化するなどのさまざまなリスクが発生します。早めに、口腔外科や顎関節症を専門としている歯科医院を受診して、治療を行うようにしましょう。また、顎関節症は日常生活の行動や癖を意識するだけでも改善することがあります。歯の食いしばりを避けたり、硬い食べ物に気をつけたりして、顎関節症を悪化させないように努めましょう。
参考文献