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顎関節症は放置しておくと手遅れになることもある?早めのチェック方法と治療について

顎関節症は放置しておくと手遅れになることもある?早めのチェック方法と治療について

お口を動かしたときに顎のあたりからカクカクと音がなったり、お口を開くときに痛みを感じて大きくお口が開けられないという場合は、顎関節症になっている可能性があります。
顎関節症は日本人の二人に一人が何かしらの症状を抱えていると言われますが、いつものこと放置しておくと症状が悪化して手遅れになってしまう可能性も。
この記事では、顎関節症が手遅れになるまえに取り入れたいケアや治療法について詳しくお届けします。

顎関節症とはどのような症状?

顎関節症とはどのような症状?

顎関節症とは、簡単にいえば顎に何かしらの症状が出ている状態で、ほかの明確な病名がつかない場合を指す言葉であり、なかでも特に多いものがお口を動かしたときに顎がカクカクと鳴ることや、お口を開けにくい状態、またはお口を動かしたときに痛みが出るといった症状を指します。
近年になって欧米諸国や日本などの先進国で症状の出ている人が増加しており、食事内容の変化などによる先進国病の1つとして考えられています。

なぜ顎関節症になるのか

顎関節症は大きくわけてⅠ型からⅤ型の5つのタイプがあり、それぞれに原因や治療法が異なります。

Ⅰ型は筋肉の異常によるもので、主に咬筋や側頭筋といった顎の筋肉を使いすぎることで生じる筋肉痛です。
頬やこめかみに痛みが生じ、こめかみの痛みを頭痛と感じる場合もあります。
筋肉痛なのでマッサージや安静状態の維持によって改善が可能です。

Ⅱ型は関節靱帯の異常で、お口を大きく開けすぎたり、硬いものを噛んだりすることなどによって生じる、顎のねんざです。あくびなどが要因となることもあります。
耳のあたりが痛くなるため、耳の異常と間違いやすい症状です。
靱帯を回復させるため、なるべくお口を動かさないように安静にするといった方法で治療を行います。

Ⅲ型の顎関節症の主な原因は、関節円板という顎の関節にあるクッションの役割を果たす軟骨のような組織が正常な位置からズレてしまうことで、お口を開けたときに関節部分でカクカクと音がなったり、お口の動きが滑らかに行えなくなったりするものです。
カクカクという関節雑音が鳴る程度であれば治療は不要ですが、関節円板のズレが大きくなると開口障害が出るため、マウスピースなどによる治療や、より専門的な治療が必要となる場合があります。

Ⅳ型は下顎骨の関節突起の変形という骨などの変形によるもので、レントゲンなどによって検査を行うことで確認ができます。
加齢による骨の形の変化や、Ⅲ型の顎関節症の影響などによって生じると考えられています。
骨の変形については元通りにすることが難しいため、マウスピースによる治療や開口訓練によって痛みなくお口を動かせるようになることを目指す形となります。

Ⅴ型は上記以外の原因によるもので、個別に原因を明確にして治療を行っていく必要があります。

なお、以前はこうした顎関節症の状態は主に噛み合わせの悪さによって引き起こされると考えられていましたが、現在は噛み合わせだけではなく頬杖や食事のときの噛み方のクセなど、さまざまな要因が重なって生じるものと考えられており、治療法もそうした要因をしっかり見極めて解消していくことが重要とされています。

顎関節症を引き起こすさまざまな要因

顎関節症を引き起こす要因は、主に顎関節へ強い負担をかける行為やクセが挙げられますが、それ以外にも精神的なストレスによって痛みを感じることなども要因とされています。
主な要因として挙げられる内容としては下記のようなものがあります。

  • 顎関節や筋肉の構造的な弱さ
  • 噛み合わせの悪さ
  • 精神的なストレス
  • 外傷などによる変形
  • 頬杖などのクセ
  • 常に歯をくっつけてしまうクセ(TCH)
  • 爪などを噛むクセ
  • スマートフォンなどの利用によって下顎を突き出すクセ
  • 硬いものの頻繁な咀嚼
  • 歯ぎしりや食いしばり
  • うつ伏せ寝や腕を枕にしての突っ伏し寝

どのような人が顎関節症になりやすいのか

顎関節症は老若男女関係なく多くの人がなりやすい症状ですが、特にリスクが大きいといえるのは人や物とぶつかって衝撃を受けることの多いスポーツを行っている方や、管楽器のように口元に負担がかかる楽器などを日常的に扱っている方です。
これ以外でも、顎関節周辺に負担がかかり続けると発症する確率が上がるため、口元に力を入れることが多い職業の方や、ストレスなどによって歯を食いしばるくせがあるような方などの場合はなりやすいといえるでしょう。

顎関節症は放置しておくと手遅れになることもある?

顎関節症は放置しておくと手遅れになることもある?

顎関節症の症状は放置しておくと悪化していってしまい、お口を動かしたときの痛みといったもの以外にもさまざまな症状を引き起こす可能性があります。
治療を行わず放置した場合の進行などについてご紹介します。

顎関節症の初期症状

顎関節症のタイプによっても初期症状は異なりますが、Ⅰ型やⅡ型の場合は軽度の筋肉痛のような痛みが持続する形で、場合によっては顎ではなく頭痛や耳のあたりが痛むような症状がでます。
Ⅲ型は初期症状ではまず顎を動かしたときにカクカクと雑音がなるような症状からはじまり、この状態では特に痛みなどが無く、音だけが気になるというケースもあります。
Ⅳ型も初期症状としては関節雑音などが生じやすく、こちらはジャリジャリというような音がします。

症状が進行してしまうケース

顎関節症は、どのタイプでも改善させるための手段をとらずに放置していつもどおりの生活や顎の使い方をしていると、負担が重なって症状が悪化していく可能性があります。

Ⅰ型やⅡ型の場合は痛みが強くなるにつれてお口の動きも減少するため、症状が大きく悪化していくということは考え難いですが、顎の痛みだけではなく、慢性的な頭痛や肩こりといった症状につながることは考えられます。

Ⅲ型の場合は関節円板のズレを生じさせてしまった原因を改善しないと徐々にズレが大きくなってしまう可能性があり、最初は音が気になる程度だったものから、お口を開けにくくなったり、お口を動かすと痛みが出てくるといった状態に進行するケースがあります。
関節円板のズレは初期であれば早めに改善が可能ですが、ズレが大きくなっていくと治療するまでに時間がかかったり、日常生活の改善などによる方法では治療が行えない、手遅れの状態になってしまうこともありますので、早期に検査と改善を行うことが大切です。

Ⅳ型の場合は加齢に伴う骨の変形なども要因となるため、放置することで進行してしまう可能性があります。
また、Ⅳ型とⅢ型は影響しあって同時に存在する場合もあり、治療せずにいると双方の症状が悪化していき重症になる可能性も考えられます。

顎関節症による全身症状

顎関節症の症状は、顎や口回りの痛み、ダルさだけではなく、症状が進行していくことによって全身のほかの部位に影響を及ぼすことがあります。

具体的には頭痛や肩回りの痛みであったり、めまいや慢性的な眼精疲労、耳鳴りや耳が聞こえにくくなるなどの症状、場合によっては手足のしびれなどにつながるといったものです。

また、慢性的な痛みなどから自律神経失調症やうつ病などの要因になることもあったり、痛みによって食事内容の変化が引き起こされ、さまざまな全身症状へと影響する可能性も考えられます。

顎関節症は早い内に適切な治療を行えば十分に改善が行える症状ですので、症状が気になる方はまず一度、近くの歯科口腔外科などに相談していてはいかがでしょうか。

手遅れになる前に必要な治療法

手遅れになる前に必要な治療法

実際に顎関節症になった場合に行われる治療についてご紹介します。

対症療法

顎関節症による痛みなどの症状を緩和する目的で、内服薬などによる対症療法が行われます。痛み止めの服用によって今ある痛みを軽減し、不快な状態を改善するものです。
ただし、薬の使用はあくまでも痛みを取り除くだけであるため、完全な治癒を目指すためにはほかの方法による治療を同時並行で行う必要があります。

対症療法としてはこのほかにも電気的な刺激を用いた筋肉のマッサージなどがあり、緊張をほぐすことで顎関節症の症状をやわらげます。
場合によってはボツリヌストキシン製剤という筋肉の働きを阻害する注射を使用して、過度な筋肉の緊張を和らげて症状を改善させることもあります。

生活指導による治療

顎関節症はほとんどの場合で日常生活におけるクセなどが原因となっているため、問診と検査で症状を引き起こしている要因を洗い出し、対策することで症状を改善させていくことができます。
そのため、専門の歯科医師による原因の洗い出しと生活指導は顎関節症の治療の主要な方法となります。
顎関節症の症状が進行している場合では、マウスピースの併用などによって治療を行う場合もあります。

手術(外科治療)

顎関節症はほとんどの場合において上記のような保存的治療で改善が可能ですが、関節円板の変形や転移が大きい場合や関節内で癒着を引き起こして可動性を失ってしまった場合、軟骨の退行性変形がみられる場合などについては、入院や手術が必要となるケースもあります。
最近では手術が内視鏡などを使って行われることが多く、皮膚の切開がないなど侵襲性が低い方法によって対応が可能になってきているようです。

顎関節症のセルフチェック

顎関節症のセルフチェック

自分自身が顎関節症かどうかについては、下記のようなセルフチェックポイントを確認してみてください。

まずは、お口を開けたときに痛みを感じるかどうかを確認してみましょう。
痛みが出やすい場所は顎と耳の間あたりだけではなく、こめかみや耳の中あたりに痛みを感じる場合も顎関節症の可能性が考えられます。

次にお口の可動範囲のチェックを行います。
お口の開き方は上下の前歯の間隔が4cm以上ある状態が正常とされていて、これはだいたい人差し指、中指、薬指の3本を足した大きさです。
セルフチェックではこの3本の指が縦に入る程度までお口を開くことができれば正常であり、それ以上開けようとすると痛みが出たり、開けられない場合は顎関節症の可能性があるといえます。
セルフチェックを行うために無理をしてお口を大きくあけたりはしないように注意しましょう。

また、お口を動かすとカクカクやミシミシといったような音がなる場合は、すでに顎関節症の症状がでています。
ただし、こうした関節雑音については顎関節が耳のすぐ近くにある影響で聞こえやすいため、音がしていてもお口の開きにくさや痛みがない場合は治療が不要とされています。

顎関節症が手遅れにならないために

顎関節症が手遅れにならないために<

顎関節症は、症状の程度によっては放置しておいても自然と回復していく場合もありますが、場合によっては症状が少しずつ悪化していき、治療のためには手術が必要になるなど保存的治療では手遅れとなってしまう可能性もある症状です。
そうならないためにも、下記のような対策を取り入れることをおすすめします。

口腔外科で定期検診を受ける

口腔外科は口内のさまざまなトラブルを専門的に診る診療科で、顎関節症や口内炎、口腔がんなどの治療を行うスペシャリストです。
口腔外科を標榜する歯科医院で定期的な歯科検診や歯のクリーニングを受けていると、顎関節症の症状を早期に見つけることができるため、素早く適切な治療が受けやすいといえるでしょう。
また、顎関節症だけではなく症状が進行すると命に関わるような病気である口腔がんなどについても、早期発見によって脅威が小さいうちに治療をできるというメリットがあります。

セルフケアの方法

顎関節症は日常生活における関節への負担が大きな要因になるため、要因となりうる行動をしないように心がけることは、予防や症状の改善に対して有効です。
具体的には、頬骨をつくような姿勢を避けることや、うつ伏せの状態で寝ないように気を付けること、固い物を食べ過ぎたり、お口を大きく開けすぎないようにすることなどが挙げられます。

また、お口を閉じた状態のときに上下の歯が触れてしまっている場合はTCHといって、常にお口を閉じるように力がかかり続けている状態になってしまっているので、これを改善すると顎関節症や噛み合わせのトラブルを軽減しやすいといえます。
なんとなく意識するだけでは改善が難しい場合、目に見えるところに”上下の歯の隙間を開ける”などと書いておくなどの方法をとると改善しやすくなります。

まとめ

まとめ

顎関節症は多くのケースで保存的治療による改善が可能な症状であり、大がかりな手術などをしなくても治療することができます。
しかし、症状が出ているのに放置をし続けてしまうと、頭痛や耳鳴り、手足のしびれといった全身症状へとつながってしまう可能性や、関節円板のズレなどが悪化していくことで、保存的治療では手遅れになって改善が難しくなる場合もありますので、気になるかたは早めに専門的な検査を受け、治療を行うようにしましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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