顎関節症は、さまざまな方が経験する口腔の不調ですが、意外にも喉の痛みを引き起こすことがあります。大変稀な症状ではありますが、実は下顎のズレや筋肉の緊張が喉周辺にまで影響を及ぼすことがあります。なかなか原因がわからない喉の痛みでお悩みの方は、顎関節症の可能性を考えてみるといいかもしれません。
本記事では、顎関節症による喉の痛みについて以下の点を中心にご紹介します。
- 顎関節症になる仕組み
- 顎関節症で喉の痛みが出る原因
- 顎関節症による喉の痛みの治し方
顎関節症による喉の痛みについて理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
顎関節症で喉の痛みが出る原因
- 顎関節症になる仕組みを教えてください
- 顎関節症になる仕組みは、主に顎関節やそれを動かす筋肉に負担がかかることで発症します。
具体的には、関節内にある関節円板が前方にずれることで顎関節にカクンカクンと音が生じる状態や、お口を大きく開けられなくなる状態が典型的です。このずれが大きくなると、お口を開けたり食べ物を噛もうとするときに痛みが出ます。また、関節そのものには痛みがなくても、下顎を動かす筋肉がうまく働かなくなり、お口を開けると頬やこめかみの筋肉が痛むこともあります。顎関節症の原因は一つに限定できず、いくつかの要因が重なり合って症状を引き起こします。これを多因子病因説といい、関節や筋肉に負担がかかるさまざまな要因が組み合わさることで、その方の耐久力を超えると症状が出るという考え方です。
例えば、構造的な弱さや外傷、精神的ストレス、不良な噛み合わせ、そして生活習慣や悪癖などが寄与因子となります。上下の歯を常に接触させる癖があると、顎関節や筋肉に持続的な負担がかかり、症状が現れやすくなります。
- なぜ顎関節症になると喉の痛みが出るのですか?
- 顎関節症になると喉の痛みが出る理由は、下顎のズレや噛み合わせの悪さが原因です。顎周辺には、咀嚼筋や舌骨上筋群(オトガイ舌骨筋、顎舌骨筋、顎二腹筋、茎突舌骨筋)があり、これらの筋肉は下顎から首、さらに喉にかけて広がっています。下顎が歪むと、これらの筋肉に過度な負担がかかり、炎症や緊張が生じます。この影響で、喉の筋肉も硬直し、痛みを引き起こします。
さらに、舌骨はほかの骨と関節しておらず、筋肉にぶら下がるように位置しています。そのため、下顎の歪みが舌骨の位置をずらし、舌骨につながる筋肉のバランスを崩します。
これにより、喉の痛みや圧迫感、異物感が生じることがあります。
ただし、顎関節症による喉の痛みは実際はとても稀な症状であり、全員に必ずみられる症状という訳ではありません。ほかの病変が否定された場合のひとつの可能性として、覚えておくとよいかもしれません。
顎関節症による喉の痛みの治し方について
- 顎関節症の喉の痛みは治りますか?
- 顎関節症による喉の痛みは、適切な治療によって改善が見込めます。
顎関節症が原因で喉の痛みが生じるのは、下顎が歪むことで顎から喉にかけてつながる筋肉が影響を受けるためです。下顎が歪むと舌骨の位置もずれ、その結果、喉に付随する筋肉が無理に引っ張られ、痛みや違和感が生じます。症状を改善するためには、スプリント療法、理学療法、関節腔内洗浄などの治療が有効です。 スプリント療法では、マウスピース状の装置を装着し、関節の位置を正常に戻すことで筋肉への負担を軽減します。
理学療法では、電気マッサージなどで筋肉の緊張を緩和し、症状の改善を図ります。治療の継続により、顎関節症による喉の痛みの緩和が期待できます。医師の指導の下、適切な治療を受けることが重要です。
- 顎関節症を改善するために行えるセルフケアはありますか?
- まず、日常生活で無意識に行っている歯の食いしばりや頬杖、うつぶせ寝を避けることが重要です。
また、ストレスは顎関節症の悪化要因となるため、リラックスする時間を持ち、精神的な緊張の解放も大切です。食事面では、硬い食べ物やガムを避け、両側の奥歯でバランスよく咀嚼するよう心がけましょう。
睡眠時には、仰向けで寝ることを習慣づけ、うつぶせ寝を避けてください。
正しい姿勢を保ち、電話を肩と首で挟むような行動を避けることも有効です。
- 食生活で気を付けるべきことはありますか?
- まず、硬い食品や粘着性のある食品は避けましょう。顎に余計な負担をかけ、症状を悪化させる可能性があります。代わりに、やわらかくて咀嚼しやすい食品を選ぶことが推奨されます。例えば、お粥やシチュー、春雨などはよい選択です。お粥は具材を細かく切り、しっかりと煮込むことで顎への負担を軽減できます。シチューは野菜を煮込んでやわらかくすることで、栄養を補いつつ顎に負担をかけません。春雨も軽く噛むだけで飲み込めるため、顎関節症の方におすすめです。
また、食事の際には両側の奥歯を使って咀嚼するよう心がけ、一方の歯ばかりを使わないようにしましょう。
ストレスが顎関節症を悪化させることもあるため、リラックスできる環境で食事を摂ることも大切です。
以上の点に注意して顎関節症の症状を軽減し、生活の質を向上させることが重要です。
顎関節症による喉の痛み以外の諸症状
- 顎関節症の兆候として現れる症状を教えてください
- 顎を動かす際に痛みを感じることが多く、耳の前や頬、こめかみの筋肉に痛みが出ることがあります。また、顎を動かすとクリック音やゴリゴリとした音がすることもあります。顎が大きく開かなくなったり、急に噛み合わせが変化したりします。
さらに、顎が閉じにくくなることや、頭痛、耳鳴り、めまい、首や肩のこり、そしてときには耳の詰まった感じや難聴なども顎関節症のサインです。
これらの症状が現れた場合は、歯科医師や医師への相談をおすすめします。
- 喉の痛み以外に顎関節症による喉の症状はありますか?
- 喉のつまりや圧迫感が挙げられます。顎関節症により顎がずれることで、喉や首の筋肉に影響がおよび、喉が圧迫されるためです。また、嚥下障害も顎関節症による症状の一つです。嚥下時に食べ物が喉に引っかかる感じや、水分を飲む際にむせることがよくあります。
さらに、喉の異物感も顎関節症に関連しています。きついタートルネックを着たときのような首を締め付けられる感覚や、喉に飴玉が引っかかっているような感じが特徴です。
これらの症状は、顎関節症による顎の位置のズレが原因であり、治療を受けることで改善が期待できます。顎関節症の治療には、マウスピースや理学療法などが有効です。
- 顎関節症にかかりやすい方の特徴を教えてください
- 歯並びや噛み合わせの問題が大きな要因です。開咬や過蓋咬合、出っ歯などの不正咬合は顎関節に負担をかけやすく、顎関節症を引き起こしやすいです。加えて、日常的に食いしばりや歯ぎしりをするブラキシズムの習慣がある方もリスクが高いです。これらの行為は顎周囲の筋肉を過度に緊張させ、疲労や痛みを引き起こします。
また、頬杖や偏咀嚼、うつぶせ寝などの悪い生活習慣も顎関節症の原因となります。さらに、ストレスも重要な因子です。過度なストレスは食いしばりを誘発し、顎関節周囲の筋肉の緊張を引き起こします。外傷も顎関節症のリスクを高めます。
これらの特徴を持つ方は、顎関節に負担がかかりやすいため、顎関節症にかかるリスクが高いといえます。
編集部まとめ
ここまで顎関節症による喉の痛みについてお伝えしてきました。
顎関節症による喉の痛みの要点をまとめると以下のとおりです。
- 顎関節症は、関節内にある関節円板が前方にずれることで顎関節にカクンカクンと音が生じる状態や、お口を大きく開けられなくなる状態のことで、いくつかの要因が重なり合って症状を引き起こされる
- 顎関節症による喉の痛みが出る原因は、下顎のズレや噛み合わせの悪さであり、咀嚼筋や舌骨上筋群に過度な負担がかかり炎症や緊張が生じることに起因する
- 顎関節症による喉の痛みは、スプリント療法や理学療法、外科的治療により改善が期待できる
顎関節症による喉の痛みは、稀な症状ではあるものの、起きてしまったらとてもつらい症状となる可能性があります。しかしそれらも、適切な治療とケアで改善が見込めます。
この記事が、痛みの原因と対策を理解し、日々の不快感を軽減するための一助となることを願っています。健やかな日常生活への第一歩を踏み出しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。