注目のトピック

顎関節症

顎関節症が気になったら口腔外科を受診するべき理由と予防するポイント

顎関節症が気になったら口腔外科を受診するべき理由と予防するポイント

お口を動かすときに痛みがでたり、お口を開けにくくなったと感じたりした場合に、どこで相談したらよいのかがわからず、そのまま放置をしてしまっているという方もいるのではないでしょうか。
こうした症状は顎関節症という口腔トラブルの1つで、歯科口腔外科が専門的に治療を行っています。
この記事では、顎関節症の症状や口腔外科での治療について詳しく解説いたします。

顎関節症とは?

顎関節症とは?

顎関節症とは、お口の開きにくさやお口を動かしたときに痛みが生じるといった症状があり、ほかの明確な病名がつかない症状を指します。

また、顎関節症のなかでもその原因や症状によって分類があり、筋肉疲労などによって生じる筋肉痛やお口の動かしにくさによるものはⅠ型、お口を大きく開けすぎたり固い物をかみすぎたりして靱帯が炎症を起こしているものはⅡ型といったような分け方がされています。

一般的に、顎関節症は顎を動かしたときにガクガクやミシミシといったような音が聞こえる症状としても知られていますが、こうした関節雑音の症状が出るのはⅢ型の顎関節症で、これは顎を動かす際にクッションの役割を果たす関節円板という組織が変形したりズレたりしてしまうことによって引き起こされるもので、Ⅲ型はさらにAタイプとBタイプの二種類に分類されます。
Ⅲ型のAタイプは復位といって関節円板がお口を開けたときに正常な位置にくるもので、カクンという音とともにお口を大きく開くことができます。
一方のBタイプは復位しないため、ズレた関節円板がひっかかりとなってお口を大きくあけることそのものができなくなります。
Ⅲ型の顎関節症の場合、Aタイプのような音がする症状だけでお口を開く動作に問題がないのであれば日常生活での問題はないため治療が不要とされるケースも多いですが、症状を放置して悪化すると開口障害へとつながる場合もあるため、一度専門の歯科医師による診察を受けた方がよいといえるでしょう。

お口の開閉時に音がする可能性があるものにはⅣ型の顎関節症もあり、こちらは関節軟骨の破壊や減少などによる変形によって生じるものです。
この場合、お口を開ける際にジャリジャリというような音がしたり、痛みが出てきたりします。
Ⅳ型は骨の病気やⅢ型の顎関節症が悪化することによって骨が変形して生じるものとされていて、ほかの症状と異なり骨の変形は自然に治すことができないため、外科的な処置を行うか、変形した状態でお口を痛みなく開けるように訓練するといった対応が行われます。

以上のⅠ型からⅣ型に顎関節症は分類をされますが、そのどれにも当てはまらず、かつ顎関節症の症状である場合にはⅤ型とされます。
Ⅴ型の場合は実際に顎関節周囲に問題がないが、心理的に痛みを感じるといったようなケースも含まれ、顎関節症がさまざまな要因によって引き起こされる症状であることがわかります。

顎関節症を専門的に取り扱う口腔外科とは?

関節症を専門的に取り扱う口腔外科とは?

顎関節症は口腔外科という歯科の1つの分野で専門的に治療が行われます。
口腔外科についてご紹介します。

一般的な歯科医院との違い

一般的に歯科医院というと、むし歯の治療をはじめとした歯そのものの治療や、歯周病など歯茎の治療を行う医療機関と認識している方が多いのではないでしょうか。
口腔外科は歯科医のなかの専門分野ではありますが、歯や歯茎だけではなく、お口の中全般、つまり口腔領域全般の症状を、必要に応じて外科的な処置も含めて行いながら診察、治療する診療科目です。

口腔外科では一般的な歯の治療だけではなく、口腔内にできる悪性腫瘍(口腔がん)の治療なども行っており、場合によっては全身麻酔を伴うような大がかりな手術なども行うほか、一般歯科では抜歯が難しいような親知らずの治療も対応が可能であるなど、お口のなかの外科的な治療に関するスペシャリストといえるでしょう。

口腔外科の専門医資格とは

公益社団法人日本口腔外科学会では、一定のカリキュラムを履修し、筆記試験や手術実地審査に合格した歯科医師に対し、口腔外科に関する治療を十分に行う知識と技術を持つことの証明として、口腔外科専門医の資格を認定しています。

認定には3つの種類があり、初期臨床研修の修了後に6年以上の期間、学会が認定する研修施設に所属しながら十分な実績を得ることが条件となる口腔外科専門医と、専門医を取得するまでの中間地点として、初期臨床研修後に2年間、研修施設にて実績を積むことが条件となる口腔外科認定医。そして口腔外科医の指導医として、12年以上の実績や面接による指導医としての人格の審査などを合格することが条件となる口腔外科指導医となっています。

資格を所持するということは口腔外科治療の専門的な研修を受け、一定の実績を持つことが条件となるため、適切な診察や治療を受けたいときに、歯科医師選びの1つの目安にできるでしょう。

また、認定医、専門医、指導医の資格はいずれも一度取得すれば終わりではなく、5年毎の更新義務があり、この期間に一定の実績をあげることが必要となっています。

口腔外科医院の見つけ方

口腔外科医院は一般歯科よりも数が少ないため、身の回りであまり見かけたことがないかもしれません。
大がかりな治療を行うこともある口腔外科は、設備の揃った大きな病院のなかにある診療科として用意されているケースが多いですが、個人医院でもしっかりと設備を揃え、さまざまな治療に対応しているクリニックがあります。

口腔外科医院を探す場合、日本口腔外科学会のホームページから口腔外科専門医や口腔外科認定医の名簿を開き、歯科医師の名前で検索して医院を調べる方法があります。
勤務地の都道府県別に名簿が作られているため、ある程度近い医院を絞り込んで見つけることができるでしょう。
もしくは、近隣の地名と口腔外科のキーワードなどで検索をすれば、近くで口腔外科の対応を行っているクリニックを見つけることができます。
口腔外科を標榜していても専門医などが所属しない場合もありますので、担当の歯科医師の名前を口腔外科学会の名簿でチェックすると、口腔外科専門医や口腔外科認定医がいる医院を選ぶことができます。

顎関節症で口腔外科を受診するべき理由

顎関節症で口腔外科を受診するべき理由

顎関節症は顎の骨や関節部分のトラブルによって発生する症状です。そのため、適切な治療を行うためにはこの部分の解剖をしっかりと理解し、原因を正確に見極められる知識を持ち合わせている必要があります。
口腔外科は顎の関節における外科治療を専門的に行う分野であり、そのためこの領域における治療実績はほかのどの治療分野の医師や歯科医師よりも多く経験を積みやすいため、顎関節症の悩みには口腔外科に相談することが近道といえるでしょう。

口腔外科で行われる顎関節症治療について

口腔外科で行われる顎関節症治療について

実際に、口腔外科で行われる治療の内容についてご紹介します。

詳しい診断で原因を明確にする

顎関節症はさまざまな要因で引き起こされる症状のため、まずは原因を正確に診断することが大切です。
痛みの状態やお口の開き方、噛み合わせのチェックやレントゲンによる診察などを組み合わせて構造的な原因の診察を行うだけではなく、顎関節症を引き起こす要因である頬杖などの日常的な癖といった部分の問診などを行って、何が原因で症状につながっているのかを明らかにしていきます。

診断の結果、例えばうつ伏せなどの癖やTCHなどが原因として考えられる場合、生活指導によってこうした原因をなくしていくことで、顎関節症を改善させていくことができます。

痛みなどを軽減する治療を行う

顎関節症による痛みが強い場合は、痛み止めの処方などによって痛みを軽減する治療が行われます。
痛みをとめても顎関節症そのものが治療できるわけではありませんが、痛みによって変なお口の動かし方をしてしまうことを防いで症状の悪化を防止することにつながります。
また、筋肉の緊張が強い場合は専用の機器によるマッサージや、筋肉の緊張を和らげるボツリヌストキシン製剤の注射などが行われる場合もあります。

外科手術による矯正治療

噛み合わせが大きな要因の場合や、病状が進行して関節円板の損傷やズレが大きくなっている場合は外科手術が必要となるケースもあります。
顎関節症の治療はほとんどの場合で手術が不要な保存的治療で行われますが、症状が悪化してしまうと手術や入院が必要になることもありますので、なるべく早めに診察や治療を受けた方がよいといえるでしょう。

顎関節症の治療の変遷

顎関節症の治療は、古くは1920年代頃から研究と治療が進められてきた歴史があります。
初期の頃は顎関節症の症状は噛み合わせの悪さが原因と考えられ、噛み合わせを改善するために歯を削るなどの治療も行われてきました。
しかし、研究が進むにつれて顎関節症は筋肉や関節の状態、心理的な側面などさまざまな部分の不調によって引き起こされるものであることがわかり、不調を引き起こす要因も噛み合わせだけが原因ではなく、生活習慣やストレス、外部からの刺激など多岐に渡るものであるということが判明し、治療法もそれに合せて変化してきました。

初期の頃は歯を削るなどの治療法が行われていましたが、現在はこうした不可逆(もとに戻せない)治療はなるべく行わず、できる限り今ある歯や組織を保存しながら行う治療が主流となっています。
口腔外科というとすぐに手術をすすめられそうなイメージをするかもしれませんが、顎関節症で外科的な治療を行うのは病状が進行して保存的治療による改善が困難な場合となりますので、怖がらずにまずは一度相談してみることをおすすめします。

顎関節症を予防するためのポイント

顎関節症を予防するためのポイント

顎関節症にならない、悪化させないためのポイントをご紹介します。

頬杖やうつ伏せなどの癖を改善する

頬杖やうつ伏せ、机のうえで腕枕をして寝るといった動作は、顎関節に負担をかけて症状を引き起こしてしまう要因の1つです。
ついついやってしまう癖ではありますが、意識して改善することで顎関節症を予防、改善することにつながります。

固い物ばかり食べない

やわらかいものばかり食べると顎が発達しないのでよくないという話がありますが、固い物の食べ過ぎは咬筋や側頭筋といった顎を動かす筋肉の負担となります。
固い物を食べ過ぎると筋肉の疲労によるⅠ型の顎関節症や、靱帯のダメージとなってⅡ型の顎関節症につながりやすくなりますので、顎が疲れる程食べるのは避けた方がよいでしょう。
すでに顎関節症の痛みが出ているのであれば、なるべく固い物を噛まないように安静にして筋肉や靱帯の回復を待つことで症状が改善する場合もあります。

歯ぎしりや食いしばりを治す

寝ているときの歯ぎしりや、日常的な食いしばりも負担となるため顎関節症を引き起こす要因です。
特に、TCHといって何もしていないときも常に上下の歯が触れているような状態の方は、慢性的に歯を食いしばるように力が入ってしまっているため、顎関節症や噛み合わせのトラブルを引き起こしやすくなります。
平静時は上下の歯に隙間ができるのが正常ですので、ふとしたときに自身の歯がくっついていないかを確認して、少し離すように習慣づけるようにするとよいでしょう。
日常的によく目にするものに歯の位置をチェックするようにメモを書いておくのも効果的で、スマートフォンの待ち受けに表示させておくなどすると、意識づけが行いやすくなります。

寝ているときの歯ぎしりについては意識して改善することが難しいため、歯科医院でマウスピースを用いた治療などを受けるか、咬筋の働きを緩めるボツリヌストキシン製剤の注射を受けるなどの治療を受けると早く改善しやすいでしょう。

ストレスを溜めない

顎関節症は心理的な影響も受けやすく、ストレスによって痛みを感じやすくなり、顎関節症となることもあります。
また、強いストレスは食いしばりの原因などにもなるため、なるべくストレスを蓄積しないように生活をすることが、顎関節症の予防につながります。
とはいえストレスは避けようとしても向こうからやってくるものですので、適度な睡眠や食事をとってストレスの影響を受けにくい、心身ともに健康的な状態を作ることや、趣味などでストレスを発散させることが必要です。

まとめ

まとめ

顎関節症はさまざまな要因によって発症するものであり、適切に治療を行うためには適切な診察で原因を明らかにし、必要な治療を選択することが重要です。
口腔外科は顎の関節や骨格などを含めた口腔内の機能全般を専門的に診て治療を行っている診療科ですので、自分が顎関節症かな?と感じたらまずは近くの口腔外科を探して受診してみるとよいでしょう。
日本口腔外科学会のホームページには学会が認定する口腔外科専門医や口腔外科認定医の名簿も公開されていますので、こうした情報を参考にして信頼できる口腔外科医を探し、定期的に歯科検診などをうけることが口腔内の健康を保ち続けるためにとても有効です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

記事をもっと見る

RELATED

PAGE TOP