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口腔乾燥症(こうくうかんそうしょう)の治療法は?口腔外科のドライマウス外来についても解説

口腔乾燥症(こうくうかんそうしょう)の治療法は?口腔外科のドライマウス外来についても解説

口腔乾燥症は、口腔内の唾液量が減ることで口腔内が乾燥する状態のことです。口腔乾燥症は、若い方で罹患される方は少なく、50歳以上に好発します。

口腔内の乾燥・舌の痛み・食物の食べづらさなど多岐に渡る症状が現れ、口腔内が乾燥するためむし歯や歯周病などが増加します。

全身疾患の影響を受けるため、適切な診断と治療が必要です。今回は、口腔乾燥症の治療法や原因、ドライマウス外来などを紹介します。

口腔内の乾燥が気になっている方は参考にしてください。

口腔乾燥症(こうくうかんそうしょう)の治療法

ガム

口腔乾燥症の治療法には、どのようなものがあるでしょうか。治療法を知っておくと、口腔内が乾燥した際にも対応が可能です。

口腔乾燥症の治療法を以下で、詳しく紹介します。

口の中の保湿

口腔内を保湿する方法には、主に以下の方法があります。

  • 保湿剤
  • 人工唾液
  • ガムなどの咀嚼
  • 唾液腺のマッサージ
  • うがい

口腔乾燥症は、さまざまな原因により唾液の分泌量が低下してしまい、口腔内が乾燥する症状です。

口腔内が乾燥すると、むし歯の増加・舌の痛み・口臭の悪化・摂食嚥下障害・味覚障害などの症状につながります。

唾液は自浄・粘膜保護・抗菌・潤滑などの作用を担っており、口腔内の衛生環境の保持や機能維持に努めています。

唾液の分泌量が減った際の対応法は2つです。唾液の代わりに保湿剤などで保湿を行うか、唾液腺を刺激して唾液の分泌を促すかです。

唾液の代わりとなる保湿剤や人工唾液は、粘膜の保護に効果的でしょう。

唾液腺を刺激する方法には、ガムなどを噛んで唾液を分泌させる方法・酸味のある食べ物を摂取する方法・唾液線をマッサージする方法などがあります。

ガムを噛んで唾液を分泌させる際には、シュガーレスガムがおすすめです。食事の際にもしっかりと噛むことを心がけると唾液は分泌されやすくなります。

加えて、唾液が分泌されやすい酸味のある食品を食べることも口腔内の保湿には効果的です。

原因となっている基礎疾患に対しての治療

歩く高齢女性

疾患が原因で口腔乾燥症となっている場合には、原因となる疾患の治療も大切です。

口腔内の乾燥が起きやすい疾患に、シェーグレン症候群・糖尿病・肝硬変・巨赤芽球性貧血・鉄欠乏性貧血などがあります。

糖尿病はインスリンの働きが悪くなり、血糖値が高い状態が続く病気です。血液中の血糖値が高いと、糖分を薄めるために細胞内の水分を血液中に引き込みます。

細胞内の水分が減ることで細胞内が脱水となり、唾液をつくるための水分も不足し、口腔内が乾燥するのが糖尿病で口渇になる流れです。

糖尿病の治療は、食事・運動・薬で症状の改善を図ります。

バランスのとれた食生活を意識し、適度な有酸素運動や筋力トレーニングを行って、血糖値のコントロールを目指します。

ほかの疾患も口腔乾燥の原因となっている疾患の治療を行うことで、口腔内の乾燥状態も和らぐでしょう。

生活習慣や服用している薬の見直し

口腔乾燥症の治療では、生活習慣の指導や薬の見直しを行う場合があります。高齢の方は、喉の渇きに気付きにくいため、こまめに水分摂取しましょう。

唾液の分泌を促すために、食事の際によく噛むことやレモン水などでのうがいが推奨されています。

砂糖・カフェイン・飲酒なども口渇につながるため、摂取を控えるように心がけてください。

ストレスも唾液分泌の機能に影響を及ぼすため、リラックスする時間・運動・睡眠時間を確保するのも大切です。

口呼吸により唾液の蒸発することも口腔乾燥につながるため、注意が必要です。

また、服薬している薬によっては口腔乾燥症の原因になる薬もあるため、医師と相談して副作用の少ない薬への変更や使用量の減量を行いましょう。

口腔乾燥症を起こしやすい薬には、抗ヒスタミン薬・制酸薬・降圧薬・向精神薬などがあります。口腔乾燥が気になる方は、医師に相談して薬の見直しを行いましょう。

口腔乾燥症の症状

痛がる高齢女性

口腔乾燥症は、口腔内が乾燥しやすいのが特徴です。乾燥しやすいため、食べ物が飲み込みづらくなります。以下で、口腔乾燥症の症状を詳しく紹介します。

口の中がカラカラに乾く

唾液は食べ物を食べるときだけではなく、何も食べていないときにも分泌され、口腔内の衛生状態を保っています。

しかし、加齢・薬剤・ストレスなどの原因で唾液の分泌機能が低下すると、口腔内がカラカラに渇きやすくなるでしょう。

唾液の分泌機能が低下することで、唾液の分泌を促す刺激の有無に関わらず分泌量が減るため、口腔内は乾燥した状態が続きます。

口腔内が乾きやすいため、口腔内の粘つきや舌の痛み、話しづらさや義歯が合わないなどの症状もでてくるでしょう。

また、口腔内が乾燥すると歯や歯肉を守る力も低下するため、むし歯や歯周病にも罹りやすくなります。

食物が飲み込みにくい

唾液が少ないと、食物を食べやすい状態にする力や飲み込むための力も低下するでしょう。

人間は食物を咀嚼して、飲み込みやすい食塊の状態にします。

食塊の形成には唾液が必要ですが、口腔乾燥症の方では唾液が分泌されづらいために食塊の形成が不十分になりやすいです。

加えて、口腔内に唾液が少ないため、飲み込む際にスムーズに飲み込めなかったり飲み込むために必要以上の力がかかったりします。

口腔乾燥症の原因

医師

口腔乾燥症の原因には、次の8点が考えられます。以下で詳しく紹介します。

全身的な疾患

糖尿病・慢性腎不全・貧血・高血圧症などの全身疾患も口腔乾燥症の原因の1つです。

慢性腎不全では、人工透析で血液中の水分や老廃物を除去するため、循環する血液量が減り口腔乾燥症が生じます。

貧血で唾液量が減少するメカニズムはよくわかっていませんが、血液中の電解質の変化に原因があると考えられています。

高血圧症は、薬剤の副作用が関与しているでしょう。

腫瘍による嚥下困難

腫瘍による治療の結果、嚥下困難になり口腔乾燥症につながる場合があります。

口腔がんに関わらず頭頸部がんで手術や放射線治療を行うと、嚥下機能に影響がでやすいです。

唾液腺や嚥下機能に関係する器官が治療の影響を受けることで、唾液分泌量が減ったり飲食物の摂取が困難になったりします。

飲食物を摂取する機会が減ると、嚥下器官を使うことも減るため、嚥下機能や筋力も低下し口腔内の乾燥も進むでしょう。

高熱による多量の発汗

罹患している女性

多量の発汗により、体内の水分量が減るため、唾液の分泌量も低下します。高熱を出した際に喉や口腔内が渇く状態です。

高熱の際にも発汗は起きますが、運動時や甲状腺機能亢進症などの疾患でも発汗は起きます。発汗すると、脱水傾向になり口腔内が乾燥しやすくなります。

糖尿病による多尿

糖尿病による多尿も口腔乾燥症の原因の1つでしょう。

高血糖状態では、インスリンの作用が低下し血液中のブドウ糖の量が増えるため、尿中のブドウ糖の量も増加します。

尿中のブドウ糖の量が増えると、再吸収されるはずであったナトリウムや水分が尿として排出されてしまいます。

そして、体は脱水傾向になり、皮膚や口腔内へと影響が及ぶ流れです。糖尿病の治療を行うことで、多尿は軽快します。

医師に相談しながら糖尿病の治療をすすめていきましょう。

抗ヒスタミン薬の服用

花粉症やアトピー性皮膚炎などの治療薬の抗ヒスタミン薬は、アレルギー症状を起こすヒスタミンの働きを抑えます。

この作用は唾液の分泌に必要な受容体にも効くため、口渇などの副作用が生じやすいでしょう。

抗ヒスタミン薬は、受容体とヒスタミンが合わさる前に受容体とくっついてヒスタミンをブロックすることで、ヒスタミンの働きを抑えます。

抗ヒスタミン薬のなかには、抗コリン作用が現れやすい薬もあります。抗コリン作用は、アセチルコリンの働きを抑える薬の作用のことです。

アセチルコリンの働きが抑えられることで、副交感神経の活動が改善されますが、口腔内の乾燥・便秘・尿閉などの副作用が出ます。

抗ヒスタミン薬には第1世代と第2世代があり、第1世代の抗ヒスタミン薬では、抗コリン作用が出やすいのが特徴です。

眠気などの副作用を改善した第2世代の抗ヒスタミン薬では、抗コリン作用はほとんどありません。

薬を変更することで、口腔乾燥症の症状が軽快する可能性もあります。

降圧剤の服用

薬

薬効によりさまざまな種類があるのが降圧剤です。降圧剤の1つに利尿剤があります。

利尿剤は尿の排出を促し、体液量を減らすことで血圧を下げる薬で、ループ利尿薬・α遮断薬・カルシウム拮抗薬などに分類されます。

利尿剤を服用すると、体内を循環する水分量が減少するため、唾液量も減少するでしょう。

また、カルシウム拮抗薬は、血管の筋肉に働くカルシウムの流入を阻害して血圧を下げています。

カルシウム拮抗薬の副作用には、口渇や歯肉炎などが知られています。

短期間での使用は唾液分泌にほとんど影響ありませんが、長期間服用すると口腔乾燥症が起きやすくなるため、症状が現れたら医師に相談しましょう。

口腔がんの放射線治療後

口腔がんの放射線治療後も口腔乾燥症の原因となるでしょう。口腔内に放射線が当たるため唾液腺・口腔粘膜が影響を受け、唾液腺障害・口腔粘膜炎が起こります。

唾液腺障害は、放射線の影響で口腔内の唾液の分泌量が減り、口腔内が乾いたり粘性が高くなったりします。

口腔内が乾燥するため、口腔内の違和感・むし歯・話しづらさ・味覚の変化などの症状が出るでしょう。

口腔粘膜炎では、口腔内の痛み・出血・しみなどの症状が現れます。治療が長期間におよぶと、口腔乾燥などの症状も持続しやすいため口腔ケアが大切になります。

シェーグレン症候群

涙腺や唾液腺の炎症で、口腔内や角膜の乾燥が起こる自己免疫疾患です。30~60代の女性に好発します。

症状は、口腔内の乾燥・目の乾燥・異物感などです。

重度になると、角膜や結膜が傷つくことによる視力の低下や口腔内の痛み、味覚異常などの症状が出てくるでしょう。

また、末梢神経症・間質性肺炎・自己免疫性肝炎・慢性膵炎・血液異常など、全身に及ぶさまざまな症状がみられるのもシェーグレン症候群の特徴です。

口腔乾燥症の検査・診断法

検査をする女性

口腔乾燥症の診断は、患者さんの訴えや自覚症状の程度を把握する問診から行い、実際の口腔内を確認する視診・唾液腺の腫れや痛みの有無を触診にてチェックします。

次に、唾液分泌量を測定し、CT検査やMRI検査で唾液腺の画像検査を行います。

シェーグレン症候群の診断のために血液検査や口唇の生検を行う場合もあるでしょう。唾液の分泌量の検査では、次のような検査を行います。

  • サクソンテスト
  • ガムテスト
  • 吐唾法
  • ワッテ法
  • 唾液湿潤度検査紙
  • 口腔水分計

サクソンテストやガムテストは、咀嚼刺激で排出される唾液量を測る検査です。

サクソンテストは、1回/秒でガーゼを噛み、2分間でガーゼにしみ込んだ唾液の重さを測ります。2分間の唾液量が2g以下の場合に口腔乾燥症と診断されます。

ガムテストは、ガム1枚を10分間咀嚼し、出てくる唾液を採取して量を測定する方法です。10分間で10ml以上で正常、10ml以下で陽性になります。

咀嚼などの刺激は行わずに安静にした状態で唾液量を測るテストもあります。

吐唾法は、椅子に座った安静な状態で、口腔内に溜まった唾液をコップなどに吐き出して測定する方法です。10分間行い、1ml以下の際に口腔乾燥症と診断されます。

唾液の吐き出しが難しい患者さんにはワッテ法で対応します。ワッテ法は、歯科で使うロールワッテを口腔底に30秒置き、置く前後の重量差を測る方法です。

ワッテに糸をつけて計測を行うと、要介護者にも適応できます。また、簡便な方法に唾液湿潤度検査紙があります。

舌の先から10mm程の舌の表面に測定用紙を垂直に10秒間あて評価する方法です。吸湿した幅が1mm未満の場合には、口腔乾燥も重度とされています。

最後に紹介するのは、口腔水分計です。口腔水分計は、口腔粘膜の水分量を評価する装置です。

舌の先から10mmの舌の表面や口角から10mmの頬粘膜に200g程の圧力を加えて測定します。3回測定を行い、26以下を口腔乾燥症とみなしています。

ドライマウス外来とは?

問診

口腔が乾燥する原因を問診・診察・検査などで探り、投薬や指導でドライマウスの改善を専門的に行うところです。

口腔乾燥症の患者さんは800万人程と推定され、疾患や食生活の乱れ・薬剤・年齢などが原因と考えられています。

治療は、食生活の改善などの生活指導・ジェル・スプレーによる口腔粘膜の保護・唾液腺マッサージなどの対症療法を中心に行っています。

治療費は原則保険適用ですが、医薬部外品や保湿剤が必要な際には、保険適用外での購入がおすすめです。

口腔乾燥症に関するよくある質問

問診をする歯科医

口腔乾燥症に関して、次のような疑問・質問を持たれる方は少なくないでしょう。

口腔内の乾燥が気になるときにかかる診療科
睡眠時の口腔内の乾燥対策

口腔内の乾燥が気になる際には、歯科口腔外科や耳鼻咽喉科で受診してください。

ドライマウス外来でも診察・治療は行っていますが、大学病院などの大きな病院にある場合が多いです。

口腔乾燥症の診察・治療は、ドライマウスの診察名で一般的な歯科医院でも行っています。

ドライマウスの診察・治療を行っている通いやすい歯科医院で受診してみてください。

また、基礎疾患の評価・内服薬の投与なども行っているため、耳鼻咽喉科でも口腔乾燥症の診察・治療が可能です。

睡眠時の口腔内の乾燥対策には、口腔内に無味無香の太白ごま油・オリーブオイルを塗って保湿しましょう。

睡眠中は唾液の分泌量も少なく口腔内が乾燥しやすくなるため、加湿器をつけたりマスクをつけたりして保湿状態を保てるようにするのもおすすめです。

加えて、枕元に保湿スプレーを常備しておくと、途中で目覚めた際にもすぐに保湿できます。

まとめ

飲み物を飲む女性

口腔乾燥症の治療法・原因・ドライマウス外来などを紹介しました。

口腔乾燥症は、糖尿病などの全身疾患・服薬・放射線治療・ストレスなどさまざまな原因で起こります。

原因に応じて治療法が異なるため、適切な診断と治療が必要です。

治療は、全身疾患の治療や唾液腺のマッサージなどの対症療法、生活指導による生活習慣の改善で症状が軽減します。

医師の指示に従い、日常生活で取り入れられることは取り入れ、再発しないように努めましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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