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口腔外科

舌がんの症状とは?前兆やステージごとの症状、受診の目安を解説

舌がんの症状とは?前兆やステージごとの症状、受診の目安を解説

舌がんは舌に発生するがんで、お口の中のがんのうち最もよくみられるがんです。初期には症状が口内炎と似ていて見分けがつきにくいため、気付かずに進行してしまうケースもあります。この記事では、舌がんの基礎知識から症状、治療法などについてわかりやすく解説します。

舌がんの基礎知識

舌がんの基礎知識

舌がんとはどのようながんなのか、その概要について説明します。舌がんの発生頻度や患者さんの特徴、舌がんが及ぼす生活への影響など、基本的な事項を解説します。

舌がんの概要

口腔(こうくう)とはお口の中を指します。口腔がんお口の中にできる悪性腫瘍のことで、舌、上下の歯肉(歯茎)、頬の内側の粘膜、お口の上の方の硬いところなどに発生します。舌(ぜつ)がんとは、舌にできる悪性腫瘍のことで、口腔がん全体の半数以上を占めるといわれています。

舌がんができる部位

舌は前方2/3の舌体(ぜったい)と後方1/3の舌根(ぜっこん)と呼ばれる部分に分けられます。舌がんは、特に舌体にできるがんのことを指します。

舌がんは舌の側面の部分にできやすいとされています。舌の先の方や中央のあたりにはあまりみられません。

舌がんになりやすい方の特徴

舌がんの患者さんの多くは50歳以上であり、特に60~70代の方が多いといわれています。ただし、20~30代の方でも発症することがあります。

舌がんの発症には、生活習慣やお口の中の衛生状態が深く関わっているとされています。特に以下のような要因は、がんのリスクを高めることがわかっています。

  • 喫煙
  • 飲酒
  • 合わない義歯や歯の尖りによる慢性的な刺激
  • 長期間にわたる口腔内の炎症や不衛生な環境

こういったリスクを複数抱えている方や、長期間にわたって口腔内に刺激や炎症が続いている方は、舌がんを発症しやすい傾向にあるといえます。

舌がんの前兆と初期症状

舌がんの前兆と初期症状

舌がんを含めた口腔がんは、初期にははっきりとした症状はないといわれています。多くの方が無症状であり、早期発見が難しくなります。ここではなかなか見つけることの難しい舌がんの前兆と初期症状について解説します。

舌がんの前兆

舌がんの前兆として重要なのが前がん病変と呼ばれる状態です。これらはがんの前段階にあたる病変で、気付くことができれば早期発見につながります。

白板症

お口の中の粘膜に生じた白色の板状の病変です。粘膜の外側の部分は上皮(上皮)といわれます。この部分が肥厚して、白く見える状態を白板症と呼びます。痛みなどはなく、前がん病変とされています。白板症はこすっても取れることがありません。

紅板症

お口の中の粘膜が赤くただれたようになっている状態のことを紅板症といいます。舌や歯茎などにみられ、白板症よりもがんになる確率が高いとされています。紅白板症といって混在する病変がみられることもあります。

舌がんの初期症状

舌がんの初期症状としては、舌にできた硬いしこりが挙げられます。ただし、初期の舌がんは通常の口内炎と見分けがつきにくいことが特徴です。見た目だけではそれが口内炎かがんかを判断するのは困難ですが、なかなか治らない口内炎は口腔がんの可能性があります。

そのほかの症状としては、ただれたような病変がみられたり、舌の違和感を感じたりします。病状が進行すると、舌がしびれ、動かしにくくなります。痛みや出血、口臭が強くなるなどの症状も現れます。

舌がんのステージ別症状

舌がんのステージ別症状

がんはその病変の大きさや進行の具合によってIからIVまでのステージに分類されます。これを病期分類と呼びます。舌がんもほかのがんと同様に病期分類があります。

病気分類は、腫瘍の大きさリンパ節に転移があるかどうかほかの臓器に転移があるかどうか(遠隔転移)の組み合わせで決定されます。ステージは数字が大きくなるにつれてがんが進行していることを表します。ここではそれぞれのステージと、そこでみられる症状について解説します。

Ⅰ期

早期の舌がんはⅠ期となります。腫瘍の大きさが2cm以下で、リンパ節転移や遠隔転移はありません。この時期の症状はとても軽微であることが多いです。小さな潰瘍やしこりが舌にできても、痛みや出血などの明らかな症状はほとんどありません。

舌がザラザラした感じ軽い違和感がある程度や、口内炎のような症状で、なかなか発見されることは少ないのが現状です。

Ⅱ期

Ⅱ期は、腫瘍の大きさが2~4cmとⅠ期より大きくなります。リンパ節転移はまだ認めない状態で、遠隔転移もありません。この頃になると症状が現れ始めます。

舌の潰瘍やしこりが大きくなり鈍い痛みを自覚することが増えてきます。例えば、食事の際や接触したときに痛みは強くなります。また、そのほかには次のような症状が見られます。

  • 軽く触れただけで出血する 
  • 舌の動きにくさをわずかに感じる(舌がもつれる感じなど)
  • 軽度のしゃべりにくさを感じる
  • 食べ物を噛んだときに軽微な違和感を感じる

Ⅲ期

さらに病状が進行し、Ⅲ期になると、腫瘍がさらに大きくなります。4cmを超える大きさになっているか、舌の深い場所や周囲の組織に広がっている、あるいは近くのリンパ節に転移がある段階です。

症状もとてもはっきりしてきます。まず、痛みが持続的になり、舌を安静にしていてもズキズキと強く痛みます。潰瘍は大きく深くなります。そのほかには以下のような症状が現れます。

  • しゃべりにくさがはっきりする
  • 食べ物を噛んだり飲み込んだりしにくくなる
  • 味覚障害がみられる 
  • 口臭が強くなる

リンパ節転移がある場合は頸部や下顎のあたりにしこりを触れます。

Ⅳ期

IV期は、舌がんが最も進行した段階です。がんが舌を超えて周囲の組織(例えば顎の骨など)に広がる、複数または大きなリンパ節転移がある、あるいは肺などほかの臓器への転移がみられる状態です。

この時期になると、症状もたいへん重くなります。舌の痛みはとても強く持続的で、痛み止めの薬が必要になることも少なくありません。また、以下のような症状もみられるようになります。

  • 頻繁に出血する
  • 悪臭がみられる 
  • 発話が著しく不明瞭となる 
  • 食事が飲み込めなくなる
  • お口が開けにくくなる

リンパ節への転移が広がると、首に硬いこぶがいくつも触れます。また、遠隔転移による症状も見られるようになります。肺に転移した場合は咳が続いたり、骨に転移した場合は痛みが出たり骨折したりすることもあります。ステージが進むにつれて症状も悪化し、日常生活への支障を来すようになります。

舌がんが疑われる場合の受診目安と検査内容

舌がんが疑われる場合の受診目安と検査内容

舌がんは早期発見が難しい病気ですが、早めに診断がつくことで、その後の治療の経過も変わってきます。もしかして舌がんかも?と思ったときに、受診すべき目安や、医療機関でどのような検査が行われるかを解説します。

受診の目安

舌がんかもしれない、と感じたら、できるだけ早く専門の医療機関を受診することが大切です。受診の目安としては以下のようなものが挙げられます。

  • 口内炎が2週間以上治らない
  • 舌に白っぽい部分(白板症)やまたは赤くなっている部分(紅板症)がある
  • 舌のしこりや腫れがある
  • 舌の側面に触れると出血する

上記のような症状があれば、医療機関の受診を検討してください。自己判断で様子を見過ぎないことが大切です。

口腔外科で行われる検査の内容

口腔外科や頭頸部外科を受診すると、舌がんかどうかを診断するためにいくつかの検査が行われます。その主な内容は以下のとおりです。

視診・触診

医師がお口の中を直接目で見て(視診)、舌や首のリンパ節のあたりを手で触れて(触診)調べます。

画像検査

腫瘍の大きさや広がり、ほかの臓器への転移などを調べるために、超音波検査やCT検査MRI検査などが行われます。

細胞診・組織診検査

診断を確定させるには、がんの部分から細胞や組織を一部採取して、顕微鏡で調べる検査が必要です。綿棒などで潰瘍の部分などを擦って細胞を取る細胞診や、病変の組織の一部を切り取る生検という検査が行われます。

PET-CT検査

必要に応じてPET-CT検査が行われます。これは全身にがんが広がっているかどうかを調べる検査です。

以上のような検査を行い、舌がんであるかどうか、またステージがどの程度か判断します。舌がんと診断された場合は、続いて適切な治療法の検討に入ります。

舌がんの治療法

舌がんの治療法

舌がんの治療法では、治療の柱となる手術・放射線治療・化学療法のほか、いくつかの治療法があります。ここでは、それぞれの治療の特徴を解説します。

外科的治療(手術)

外科的治療(手術)は舌がん治療の基本となる治療法です。舌がんにおいて多くのケースで第一選択となります。手術の内容は、がんの進行度によって異なります。

  • 舌部分切除術:小さい舌がんで選択されます
  • 舌半側切除術:腫瘍が大きかったり舌の中央に近い場合に行われます
  • 舌亜全摘・全摘術:腫瘍が大きく、病状が進行した場合に行われます

手術の際は、リンパ節郭清術といって首のリンパ節を摘出する処置を同時に行うことがあります。ただしどの手術を実際に選択するかは、それぞれの患者さんの状況によって異なります。

放射線治療

放射線治療は、がんの治療において、手術、薬物療法と並ぶ3大治療法の一つです。手術と同じように、局所(がんのある部分を狙う)治療です。腫瘍に対して放射線を当てがん細胞を破壊します。舌がんを含む口腔がんでは手術が基本の治療とされていますが、病状や全身状態に応じて放射線治療が行われることがあります。

組織内照射

早期がんに対して、組織内照射という治療が選択される場合があります。舌がんが小さく浅い場合(T1〜T2、T3で深さが10mm以下)に検討されます。

化学療法(抗がん剤治療)

化学療法とは、抗がん剤と呼ばれる薬を使ってがん細胞を攻撃する治療です。舌がんを含む口腔がんでは、化学療法のみで根治を目指すことは少なく、主にほかの治療と組み合わせて用いられます。

舌がんでは、手術の後に、抗がん剤と放射線を組み合わせた化学放射線治療を行い、再発の危険性を低くすることを目指します。

そのほかの治療法

舌がんに対しては、手術、放射線治療、化学療法のほかにも、症例に応じてほかの治療や新しい治療が行われることがあります。

分子標的薬

がん細胞に発現する特定の分子を狙う薬剤です。一般的な抗がん剤に比べて副作用が少ないといわれていますが、アレルギーに似たような症状や肺炎などの副作用があります。

免疫療法

免疫の力でがんを攻撃する治療です。免疫チェックポイント阻害薬という薬剤が使用されます。免疫チェックポイント阻害薬は、標準的な治療を尽くした後の選択肢として行われることがあります。

がん光免疫療法

新しい治療法で、切除不能な局所進行・再発症例に対して、2021年から条件付きで保険診療が認められています。治療を受けられる施設や適応条件が限られています。

治療後の生活と再発予防のポイント

治療後の生活と再発予防のポイント

舌がんの治療を終えた後も、口腔ケアやリハビリテーションが大切です。ここでは、定期検診や再発予防のために心がけるべきことなどを解説します。

術後の口腔ケアとリハビリテーション

舌がんの治療後、特に手術を受けた後は、お口の機能の回復と合併症予防のために口腔ケアとリハビリテーションが欠かせません。舌を切除した場合、飲み込みが困難となったり発音が不明瞭になったりします。これを少しでも改善し、日常生活に支障が出ないようにするためにリハビリテーションがとても大切です。

術後はできるだけ早期からリハビリを開始することが推奨されます。飲み込みや発語について専門とする言語聴覚士とともに、リハビリテーションを行い、お口の機能回復を目指します。

また、舌がんの治療の後は、口腔ケア(お口の清潔管理)もたいへん重要です。手術や放射線治療の影響で、お口の中はデリケートな状態になっています。治療後は特に細菌による感染症や粘膜の傷に注意が必要です。毎日の口腔ケアをこれまで以上に徹底しましょう。

定期検診と再発・転移の早期発見

舌がんの治療が一段落して退院した後も、定期的な通院(経過観察)が必要です。舌がんは治療後に再発(同じ場所にがんが再び現れる)したり、首のリンパ節や肺などに転移したりする場合があります。そのため、治療後少なくとも5年間は定期検診を受けて経過を追うことが推奨されています。

もし治療後に気になる症状(舌の痛みやしこりの再発、飲み込みにくさの悪化、首の腫れ、新たな咳や息苦しさなど)が出現した場合は、定期検診を待たずすぐに受診しましょう。自己判断せず、主治医に相談することが大切です。

禁煙・節酒の徹底

再発予防の観点で重要な生活習慣の改善は、禁煙と節酒です。喫煙や多量の飲酒は舌がんの発生リスクであると同時に、治療後の新たながん発生や再発のリスクでもあります。

したがって、舌がん治療後は禁煙が強く推奨されます。禁煙により、口腔や喉の粘膜が受けるダメージが減り、再発や新たながんの予防につながります。どうしてもやめられない場合は、主治医に相談して禁煙外来を紹介してもらうことも検討しましょう。

心のケア

舌がんと診断され治療を受けるという経験は、患者さんにとって大きな精神的ストレスとなります。治療後も、再発への不安や、手術で容姿や発語が変化したことへの落ち込みなど、心のケアが必要な場面が多々あります。必要であれば精神科や心療内科を受診することも検討してください。心のケアは身体の回復にも関わってきます。身体の異変だけでなく、心の異変を感じた場合も、主治医へ早めに相談しましょう。

まとめ

まとめ

舌がんは口腔がんのなかで最も発生頻度の高いがんです。初期症状は出にくいためわかりにくく、2週間以上続く口内炎などがある場合は注意が必要です。病状が進むにつれて症状は悪化し、日常生活への影響も大きくなります。早期発見、治療のためには、お口の中のセルフチェックを行い、異変を感じたら早めに医療機関を受診するようにしましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松浦 京之介歯科医師(歯科医)

松浦 京之介歯科医師(歯科医)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:2019年 福岡歯科大学卒業、2020年 広島大学病院研修修了、2020年 静岡県、神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務、2023年 医療法人高輪会にて勤務、2024年 合同会社House Call Agencyを起業 / 資格:歯科医師免許 / 所属学会:日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会

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