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舌がんの症状は?舌がんの原因や口腔がんの種類も紹介します

舌がんの症状は?舌がんの原因や口腔がんの種類も紹介します

舌がんは、口腔がんのなかで発生頻度が高いがんです。口腔がんの40%程を占めるといわれています。

口腔がんには、舌がん・口唇がん・口底がん・歯肉がん・頬粘膜がん・硬口蓋がんがあり、がんの種類や発生箇所によって症状や進行度が異なります。

舌がんは、初期症状が乏しく、50歳以上の男性で発症しやすいのが特徴です。今回は、舌がんの症状や原因、口腔がんの種類などを紹介します。

舌がんの症状

歯が痛い男性

舌がんは、舌の縁側にできやすいがんです。まれに、舌の先や中央部にできる場合もあります。

初期の段階では、触ってもわからなかったり痛みがなかったりするため、気付きにくいでしょう。

歯科医院で治療を行った際に指摘されて気付くことも少なくないです。以下で、舌がんの気になる5つの症状を紹介します。

がんの表面が白く隆起している

舌が白くざらざらしている場合は、白板症の可能性があります。白板症は前がん病変であり、がん化率は5~10%です。

患部は平らなものや隆起しているものもあり、患部の範囲も口腔全体に及ぶものから舌の一部分の範囲までと症状が多彩です。

舌の縁や下などに症状がみられる際には、がん化している可能性もあります。

ぶつぶつしている

ぶつぶつしているのは、表在型とされる口腔がんの肉眼分類の1つの症状です。

口腔がんでは、肉眼的所見から3つの型に分類しており、表在型は組織の表面に症状が現れる型です。

表在型では、がん周囲の組織の異形成がほかの型よりも高い割合で認められるため、再発する可能性があります。

舌のぶつぶつなどに気付いたら、速やかに医療機関で診てもらいましょう。

がんの表面が深くえぐれている

舌がんには、舌がえぐれるケースもあります。舌の表面がえぐれるのは内向型といわれる分類で、内向型は舌組織内に浸潤していく方法で増殖します。

ほかの型に比べて転移しやすく、頸部リンパ節への転移率も高いのが特徴です。

また、放射線治療や化学療法への抵抗性もあるため、予後不良になりやすいでしょう。

しこりがある

歯の中をチェックしている男性

舌がんで現れる症状の1つがしこりです。硬結ともいわれ、硬いしこりや腫れが出ます。

初期の頃には、触ってもわかりづらく痛みも少ないため気付くのが遅くなりやすいです。

舌がんの進行に伴い患部が硬くなり、気付いた際には進行している場合も少なくありません。

出血を伴っている

がんが浸潤していくと病変部の周囲の血管を破壊するため、出血が起きやすくなります。

舌がんの症状が進行すると、出血が続くこともあります。早めに、耳鼻咽喉科や口腔外科で受診してください。

舌がんの原因

タバコを吸う男性

舌がんは、数ある口腔がんの1種で、口腔がんの40%程は舌がんです。舌がんの原因と考えられるのは、次の4つです。

  • 喫煙
  • 飲酒
  • むし歯
  • 慢性刺激

以下で詳しく紹介します。

喫煙

口腔内は、喫煙時に直接的に影響を受ける器官です。たばこの煙には5,000種類以上の化学物質が含まれ、70種類程に発がん性があるとされています。

喫煙で口腔内が発がん性物質に晒されている時間が長くなると、DNAの損傷が起きやすくなるでしょう。

喫煙年数や本数、煙草の煙への暴露量による影響が口腔内に現れた結果、舌がんが発症します。男性では、喫煙者で口腔がんに罹るリスクは非喫煙者より2.4倍高くなります。

また、10年間のがん全体の発生率を調べた調査では、煙草を吸っているグループは吸ったことがないグループに比べて男性で1.6倍、女性で1.5倍高い結果でした。

同じ調査で、煙草をやめたグループも吸っていないグループに比べて、男性で1.4倍、女性で1.5倍高いです。

煙草をやめても煙草の影響が残っていると考えられるため、喫煙される方は口腔がんに気を付けてください。

飲酒

酒を飲む人

飲酒は、口腔がんや食道がんなどの原因になるとWHOが認定している行為です。

アルコール飲料に含まれるエタノールもアルコールの分解で発生するアセトアルデヒドも発がん性物質です。

調査によると、男性では週に1回以上飲酒するグループは、お酒を飲まないグループより口腔・咽頭がんに罹るリスクが2.1倍高くなります。

また、喫煙もされ、週に150g以上のエタノールを摂取される方では、口腔・咽頭がんに罹るリスクが4.1倍に増加するため注意しましょう。

むし歯

むし歯も舌がんの一因と考えられるでしょう。歯の表面のプラークには細菌が存在し、食事で摂取した飲食物の糖分を栄養にして酸を出します。

酸によって歯が溶け、歯の表面に穴があき、むし歯となります。

歯磨きをしていない、むし歯を放置しているなど口腔内が汚染されていると口腔内の細菌で口腔がんがおきやすい状態です。

口腔がんの患者さんでは、歯周病の原因になる細菌が唾液などからも検出されており、口腔内の細菌と関係性が注目されています。

義歯などによる慢性刺激

歯列の悪さや歯の極端な傾き不適合な義歯や詰め物などの補綴物による慢性刺激も舌がんの原因と考えられるでしょう。

口腔粘膜への機械的な刺激が続くことで舌がんが生じる可能性があり、舌縁部に好発します。合っていない義歯や詰め物、歯列が悪い場合には歯科医院で治療を行いましょう。

舌がんの治療方法

治療中

舌がんで行われる治療は、主に以下の3つの方法です。

  • 外科治療
  • 放射線治療
  • 薬物療法

舌がんの進行状況や発生箇所、年齢や体の状態によって治療法はかわりますが、治療は手術が中心です。

手術の方法は、がんの大きさや切除する箇所で異なり、がんの大きさに合わせて舌の部分切除・半側切除・亜全摘手術・全摘出術となります。

亜全摘出術は、舌の半分以上を切除する手術です。舌の半分以上を切除する場合、舌が機能を果たせなくなるため、再建手術も行われます。

また、リンパ節への転移がある場合には、頸部郭清術も行います。頸部郭清術は、がんが転移したリンパ節を周囲組織ごと切除する方法です。

リンパ節に高い確率で転移すると判断された場合にも、予防の点から頸部郭清術が適応されます。

早期がんの場合、予防での頸部郭清術が不要な場合もあるため、生検などから必要性を判断するでしょう

がんが小さくリンパ節への転移がない場合には、機能温存のために組織内照射を行った後に残っているがんの手術を行います。

組織内照射は放射線治療の1つで、放射線を出す物質を舌がんの部位に直接挿入し、集中的にがんを攻撃する方法です。がんの大きさにより適用かどうかはかわります。

放射線治療には、組織内照射とは異なる外部照射もあり、体の外から放射線を照射する方法です。

外部照射は、組織内照射と併用する場合や手術後の再発を抑えるために薬物療法と併用して行われる場合があります。

放射線治療では、早期に出る副作用と晩期に出る副作用があり、適切な対応が必要です。

早期では、唾液量の減少・味覚障害・舌の運動機能の低下・摂食嚥下機能の低下などの副作用が出やすくなります。

晩期に出やすい副作用は、開口障害・むし歯の増加・下顎骨の壊死などです。歯科医院を受診する際には、放射線治療歴がある旨を伝えましょう。

薬物療法は、手術を行うのが難しい場合に用いられるほか、手術で取り切れなった場合や術後の再発リスクが高い場合などに術後補助療法として行われます。

術後補助療法では、薬物療法と放射線治療を併用した治療を行います。一般的に薬物療法で使われるのは、抗がん剤のシスプラチンです。

シスプラチンの服薬で吐き気・全身倦怠感・食欲不振・腎障害などの副作用が出ることがあります。異常を感じた場合は、すぐに担当の医師に相談しましょう。

舌がんの5年相対生存率は70%以上です。早期に治療を行うことで、5年相対生存率も上がるため、早期の治療を心がけましょう。

舌がんの進行スピード

喉が痛い高齢者

がん細胞の種類やがんができる場所、個人差などによって進行スピードが違うため、一概にはわかりません。

腫瘍が小さいうちに痛みや違和感などで自覚症状があれば、がんの早い段階で来院できます。

来院時にリンパ節への転移がなく腫瘍の大きさも4cm未満であれば、切除だけで治癒する場合もあるでしょう。

しかし、口腔内は飲食物・嗜好品・義歯・補綴物などで刺激を受けている時間が長いため症状に気付きにくい環境です。

仮に刺激や違和感を覚えた場合、大半の方が飲食物や嗜好品、体調のせいと思うでしょう。

がんの発育様式によっては、腫瘍が4cmを超える大きさになり転移がみられない場合でも自覚症状が乏しいこともあります。

口腔内は、鏡で見ることができますが、経験したことがない違和感を覚えないとなかなか受診にはつながりません。

がんの大きさが1cm程の早期がんの患者さんでも、2~3ヵ月後には手術が行えない程に進行しているケースもあります。

自分自身でのセルフチェックや歯科医院への定期検診、行政が行っている口腔がん検診なども活用して早期発見に努めましょう。

舌がん以外の口腔がんの種類

カウンセリングをする男性

舌がん以外の口腔がんには、次の5つがあります。

  • 口唇がん
  • 口底がん
  • 歯肉がん
  • 頬粘膜がん
  • 硬口蓋がん

以下で、特徴を詳しく紹介します。

口唇がん

口唇がんは、口腔がんのなかで発症頻度が極めて低いがんです。ほとんどが下唇にでき、所見が上唇がんと下唇がんで異なるのも特徴です。

上唇がんは、下唇がんと比べて、低分化でリンパ節への転移も起きやすいといわれています。早期に発見されれば、治癒の確率も上がります。

治療は、手術での病変部の部分切除です。口唇部の切除は、患者さんの容姿に大きな影響を与えるため、患者さんの立場にたった治療を行う必要があります。

口底がん

舌と歯茎の間の口底にできるがんです。発生頻度は少ないですが、男性に多く発症する傾向にあり、予後はあまりよくありません。

口底は、舌の神経や唾液腺が通過しており、唾液が貯まる場所でもあります。

口底がんは、周囲の組織に浸潤しやすく、口底がやわらかいために深くにまで進展しやすいのも特徴です。

手術で再建しても口底の形態を保持できないため、流涎が生じます。口底の手術部位や範囲にもよりますが、舌の動きなどに支障が出るでしょう。

歯肉がん

歯を気にする男性

口腔がんの2割弱を占めるのが、歯肉がんです。舌がんに次いで発症率が高いがんで、上顎と下顎に発症します。

上顎歯肉がんは、下顎歯肉がんに比べ発生頻度は低いです。

上顎・下顎歯肉がんともに早期に顎骨に浸潤し、下顎歯肉がんでは下顎骨内への浸潤が深い場合、放射線療法での治療は効果が期待できないでしょう。

抗がん剤との相性も悪いため、治療は手術で行われます。また、歯肉がんの初期には白斑を伴うこともあり、扁平苔癬からがん化する場合もあります。

出血が続く際には、早期に病院で受診しましょう。

頬粘膜がん

口腔がんの全体に占める頬粘膜がんの割合は10%弱です。初期には、頬粘膜が白斑や赤みのあるただれた状態からがん化する場合もあります。

がんが小さく、リンパ節への転移もない状態では、外科治療・放射線治療ともに予後は良好です。しかし、進行すると治療法に関係なく予後は不良とされています。

また、臼歯の後方にできる頬粘膜がんは、ほかの部位へも進展しやすく予後は不良です。頸部リンパ節への転移も高いため注意が必要です。

硬口蓋がん

硬口蓋がんは、口腔がんの3%程で発生頻度は低いです。罹患者の男女差はほとんどなく、発症平均年齢は70歳前後が多く、5年累積生存率は56~73%とされています。

患部が硬口蓋の後方にできる場合、リンパ節への転移率も高くなり鼻腔や上顎洞に進展する可能性もあるため、予後は不良です。

また、軟口蓋に進展した場合、切除により口腔機能面にも整容面にも大きな影響が及ぶでしょう。

影響を減らすためにも、外科的治療だけでなく放射線療法や化学療法を併用した治療も行われます。

舌がんに関するよくある質問

診察をする医師

舌がんに関して、次のような疑問・質問を持たれる方は少なくないでしょう。

  • 舌がんと口内炎を見分ける方法
  • 舌がんの疑いがあるときかかる診療科

見た目で舌がんと口内炎を見分けるのは難しいでしょう。舌がんと口内炎を区別する1つの判断材料が2週間以内に症状が治るかどうかです。

一般的な口内炎であれば2週間以内で治る場合が多いです。

もし2週間以上経っても潰瘍などの症状が残っている場合には、舌がんなどの可能性があるため早めに耳鼻咽喉科や口腔外科で受診しましょう。

舌がんの様な口腔にできる腫瘍は、歯科口腔外科と耳鼻咽喉科で診療範囲が重なります。歯科口腔外科は大学病院や市立病院など大きな病院にある場合が多いです。

なかには一般的な歯科医院でも口腔外科医が在籍し、口腔外科診療を行っている歯科医院もあるので、そのような歯科医院で受診するようにしてください。

まとめ口元が見える男性

今回は、舌がんの症状や原因、口腔がんの種類などを紹介してきました。舌がんは進行度によって症状に違いがあります。

また、舌がんの特性によって進行度も変わります。舌がんの原因は、喫煙・飲酒・むし歯・義歯などによる慢性刺激です。

舌がんの治療は手術が中心です。進行すると放射線治療や化学治療を併用した治療も選択肢に加わります。

がんの種類や発生箇所にもよりますが、舌がんの5年相対生存率は70%以上です。早期に治療を行うことで、ほとんどの症例が治癒します。

初期症状はわかりにくいですが、自分自身でのセルフチェックや歯科医院への定期健診、行政の口腔がん検診なども活用して早期発見に努めましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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