舌に違和感を感じたり、口内炎がなかなか治らなかったりと、舌やその周辺に何らかの異変を感じた場合、「もしかして舌がんかも?」と不安になることと思います。
舌がんは早期発見と早期治療がとても大切ですので、気になったら早めに病院に相談するのがよいでしょう。
この記事では、舌がんの初期症状や、セルフチェック法、間違いやすい口内炎との違いなどについて詳しく解説します。早期発見のためのポイントを知り、もしもの場合に備えましょう。
舌がんとは
- 舌がんとはどのような病気ですか?
- 舌がんは、口腔がんの一つで、舌の前側2/3と、舌の裏面にできる腫瘍です。
口腔がんのなかでは舌がんが最も多く、舌の縁の部分に発生することが特に多いものとなっています。 舌という目に見えやすい場所にできる腫瘍のため、がんのなかでは発見されやすいこともありますが、初期段階でも痛みなどが起こらないと気付かずに悪化してしまうことがあります。 なお、同じ舌にできた腫瘍でも、舌の奥の方(舌根部)にできた場合は口峡咽頭がんや中咽頭がんに分類されます。 舌がんを放置すると、肺や気管など、ほかの器官に転移するリスクがあり、内臓に転移した場合身体的な不調が起こるだけでなく、治療には手術が必要となったり、状態によっては死亡のリスクが高まります。
- 舌がんと口腔がんの違いについて教えてください
- 口腔がんは、お口の中にできる悪性腫瘍の総称です。舌がんはこの口腔がんの一つで、口腔がん全体のうちおよそ60%を舌がんが占めるほど、口腔がんのなかでも特に多いがんとされています。 口腔がんには舌のほかに、歯茎やほっぺたの裏の粘膜、口底(舌と下の歯茎の間)、唇など、お口の中のどこにでもできます。 舌がんは、口腔がんのなかでは割合が高いですが、がん全体で見るとおよそ1%程度と頻度が低いがんです。
- 舌がんはどのような人がかかりやすいですか?
- 舌がんは誰にでもかかる可能性はありますが、特にかかりやすいのは、喫煙や飲酒をする男性や、50歳以上の方が発症しやすい傾向です。
なかでも、喫煙は口腔がんの大きな原因になりやすく、舌がんのリスク要因として一番大きいものが喫煙とされています。 喫煙のほかの舌がんの発症リスクを高める要因として、飲酒や、乱れた生活習慣、口腔内の不衛生などが挙げられます。
また、むし歯治療の詰め物が舌になんらかの影響を与えることが原因となることもあります。
舌がんの初期症状
- 舌がんの初期症状はどのように現れますか?
- 舌がんの初期症状は、痛みがなく感覚ではわかりにくいという特徴があります。
初期症状で変化が現れやすいのが見た目部分で、表面が白っぽくなったり、ざらざらしたり、赤くただれたり、硬いしこりなどが現れます。
舌がんは舌の側面に現れやすいので、舌の横側に上記のような変化が現れたら、注意しておくようにするとよいでしょう。
- 初期症状の舌がんをセルフチェックで見つける方法はありますか?
- 舌がんは、セルフチェックで見つけられる場合があります。
明るい場所で、鏡を使ってお口の中をみましょう。
主に舌の表面、裏側、舌の縁(側面)、舌と舌の歯茎の間、歯茎、頬の裏側の粘膜を見て、以下のような状態がないか確認します。- 舌や下の裏が白っぽい、またはざらざらする
- 舌や下の裏が赤く爛れている
- 硬いしこりがある
- 口内炎が2週間以上治らない
- なぜか歯がぐらつく、また歯が浮く感じがする
- 入れ歯をすると痛い、またはお口の中が腫れて合わない
- お口の中の傷がなかなか治らない
- 原因不明の腫れや出血がある
上記のような症状が一つでもあれば、歯医者さんまたは口腔外科へ相談するとよいでしょう。
- 舌がんと口内炎にはどのような違いがありますか?
- 舌がんと口内炎では、症状の出方や治り方に違いがあります。
治りのはやさ
口内炎であれば2週間以内には治ったり小さくなることがほとんどですが、舌がんの場合は2週間以上腫れや赤みが続きます。
痛み
口内炎は何もしなくても痛みがあったり、触るとしみるような痛みを感じることがありますが、舌がんの場合は初期症状では痛みはほとんどなく、よほど大きくならない限り痛みが出にくいといえます。
見た目
口内炎は局所的に赤く腫れるのに対して、舌がんは粘膜が白や赤などに変色したり、ただれやざらつき、しこりがあらわれます。
また、口内炎は白っぽくなっても赤い縁取りがあるなどで境目が明瞭ですが、舌がんの場合は変色箇所の境目が不明瞭です。
- 舌がんが進行するとどのような症状が現れますか?
- 舌がんが進行すると、潰瘍ができ、出血がおきたり、舌を動かしづらく食べ物が飲み込みにくくなったりしゃべりにくくなったり、お口を開けづらくなったりと、さまざまな症状が起きます。
その他にも、強い口臭がしたり、首のリンパ節が腫れたりといったことも起こる場合があります。
- 舌がんを疑う症状がある場合はどの病院にかかればよいでしょうか?
- 舌がんが疑われる場合は、口腔外科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。
舌がんの予防と治療法
- 舌がんの進行を予防する方法はありますか?
- 舌がんが進行してしまうことを防ぐためには、初期のうちに病気を見つけ、早めに治療を行うことが大切です。 また、舌がんはお口の中の衛生状態も影響しますので、お口の中を清潔に保つことは舌がんの進行や罹患を予防につながります。
- 舌がんはどのように治療しますか?
- 舌がんは、主に手術療法、放射線療法、化学(薬物)療法の3種類の方法で治療が行われます。
どの治療を行うかについては、病気の進行状態や身体の状態などによって選択されます。 手術療法は、がんの病巣を手術で取り除く外科的治療法です。がんが発生している範囲が大きいほど切除する範囲が大きくなり、がんの大きさ次第ですが舌を根元を含めた全体を切除する場合もあります。
舌がんが進行してリンパ節へ転移している場合は、リンパ節の周辺組織ごと切除する場合があり、その場合は頸部郭清術という術式で手術を行います。
切除したことで欠損した部位を補う再建手術を行うこともあります。 放射線治療は、手術で取りきれなかったがんや、手術での切除が難しい範囲、頸部のリンパ節に転移した場合などに選択されます。 化学(薬物)療法は、手術をした後に、放射線治療と併用されることが多い治療法です。主に再発のリスクを抑えることを目的とします。
また、手術や放射線での治療が難しい箇所の場合は、化学療法によってがんを小さくしたり、がんの進行を抑える目的で使用されることもあります。
- 舌がんは再発しますか?
- 舌がんは、手術で切除するなどして治療をした後でも再発する場合があります。 特に、そもそもの舌がんになったのが喫煙や生活習慣が要因となっている場合、舌がんになる要因が改善されていない限りは、また同じように舌がんを発症するリスクが高くなってしまいます。
また、舌がんの病巣を切除したとしても、ほかの器官に転移している場合、そこから進行して舌がんやリンパ節のがん、食道がんなど、舌がんに限らずほかの器官のがんを発症する可能性があります。
編集部まとめ
舌がんは、白や赤への変色、ただれ、硬いしこりなどの見た目の変化として現れることが多いといえます。
また、舌がんと間違いやすいトラブルに口内炎がありますが、口内炎との明らかな違いとして、口内炎は2週間程度あれば自然治癒する場合が多いため、2週間以上経っても治らなければ舌がんの疑いが高くなるといえます。
舌がんの大きな要因としては喫煙が指摘されていますので、喫煙の習慣がある方は注意しておくとよいでしょう。 もし舌がんの疑いがある場合は、早めに病院に相談することが大切です。
早めに病気を見つけて治療すれば、身体への負担を抑えて治療できる可能性がありますので、まずは歯科医院や歯科口腔外科を受診してみましょう。
参考文献