親知らずを抜くのに適したタイミングは、いつかご存知ですか?
親知らずはきれいに生えていれば抜く必要はありませんが、実際には抜歯した方がよいケースが大半です。
適切なタイミングで抜歯すれば、抜歯後の回復が早く口腔環境への悪影響を少なく抑えられるでしょう。
本記事では親知らずの抜歯のタイミングや必要性に関して以下の内容を解説します。
- 箇親知らずを抜く必要性と抜かないリスク
- 親知らずの抜歯に適したタイミング
- 親知らずの抜歯の流れと注意点
親知らずの抜歯を検討されている方が、抜歯をするタイミングや時期を適切に判断するための参考になれば幸いです。
親知らずを抜くタイミング
- 親知らずを抜くべきタイミングはありますか?
- 親知らずが生えてくる18〜20歳頃に、生え方に問題があると診断された場合は速やかに抜歯した方がよいでしょう。傾いて生えてくる親知らずは隣の歯を押し出して歯並びが乱れる可能性があり、一度乱れた歯並びは親知らずを抜歯しても戻りません。歯列矯正には長期間の治療が必要になるため、親知らずがほかの歯に影響を与える前に抜歯するのが無難です。歯はお口のなかに顔を出す歯冠の部分と、根っこにあたる歯根の部分に分かれています。歯根は歯冠の後に形成されていき、歯根が完成する前に抜歯してしまえばダメージは少なくなるでしょう。親知らずがまっすぐきれいに生えてこないとわかった時点で、問題を起こす前に抜いてしまうのがベストタイミングです。20歳頃であれば新陳代謝が旺盛で回復力も高いため、抜歯した後の歯肉や骨の回復が早いメリットもあります。
- 30代以降で親知らずを抜くリスクを教えてください。
- 30代以降は加齢によって回復力が低下し、骨が固くなるため抜歯の難易度は高くなります。だからこそ、それ以上状況が悪化する前に抜歯するのが無難です。ベストタイミングを過ぎていても、抜歯できないわけではありません。何歳であっても、抜くと決めたら早めに抜いた方がよいでしょう。高齢になると高血圧や糖尿病など生活習慣病を抱える方が多くなるため、麻酔の使用が制限されたり、止血しづらくなって手術ができない場合も少なくありません。早めに抜歯した方が、抜歯後の良好な口腔環境で食事できる期間が長くなるため、抜けるうちに速やかに抜くのがベストタイミングといえるでしょう。
親知らずの抜歯の必要性や抜かないリスク
- 親知らずの抜歯の必要性を教えてください。
- 親知らずは、ほかの歯が生え揃って骨格の成長も止まった18~20歳頃に生えてくるため、歪な生え方をしたり隣の歯を圧迫したりするケースが少なくありません。親知らずが傾いて生えていたり、隣の歯の根元に食い込んでいたりすると歯みがきがしづらく、歯垢がたまりやすいためむし歯や歯周病のリスクが上がります。特に親知らず周辺に汚れがたまって細菌が繁殖すると、智歯周囲炎という歯茎の炎症を起こします。智歯周囲炎になると歯茎が腫れて痛みや出血を生じ、ほかの歯に感染が広がることも少なくありません。また、横向きに生えた親知らずが隣の歯を押し出して、歯並びが乱れてしまうことがあります。このようなまっすぐ生えていない親知らずは、口腔内の状況を悪化させる可能性が高いため、早めに抜歯した方がよいでしょう。
- 親知らずを抜く判断基準を教えてください。
- 親知らずが横向きに傾いて生えている場合や、歯茎に埋まっていて炎症を起こしやすい場合には抜歯する必要があります。一方で、親知らずがまっすぐ生えていて噛み合わせにも問題ない場合には、抜歯する必要はありません。親知らずが歯として機能しているか・周りの歯に悪影響を与えていないか・歯みがきや治療に問題がないかなどを判断し、問題ない場合には貴重な自分の歯として保存した方がよいでしょう。
- 親知らずを抜かないことによるリスクを教えてください。
- 親知らずが傾いて隣の第二大臼歯と接触している場合、歯の隙間を掃除しづらくなってむし歯や歯周病のリスクが上がります。親知らずがむし歯になったら、治療するメリットが小さいため抜歯となるケースがほとんどです。一方で、親知らずの隣の第二大臼歯は咀嚼能力を維持するために極めて大事な歯であるため、失わないようにしなければいけません。親知らずが原因で第二大臼歯がむし歯になるケースは少なくないため、早めに抜歯して歯みがきしやすくしておいた方がよいでしょう。また、親知らずが横向きに生えて第二大臼歯の根元に食い込んでいる場合は、第二大臼歯の根元が溶かされる危険があるため、速やかな抜歯が必要です。
- 抜歯の難易度が高いのはどのようなケースですか?
- 親知らずが横向きに生えて第二大臼歯の根元に食い込んでいたり、大部分が歯肉に埋まっている場合には抜歯の難易度が高くなります。また、下の親知らずが下顎骨神経という太い神経管に近接している場合は、神経を刺激しないよう慎重に手術しなければいけません。難易度の高い抜歯は口腔外科で行われ、親知らずを割りながら少しずつ除去していきます。麻酔によって手術中は痛みを感じにくいですが、手術後には傷口の痛みが数日間続くこともあります。
親知らずの抜歯について
- 親知らずの抜歯の流れを教えてください。
- 親知らずの抜歯は一般の歯科医院でも可能ですが、症例によっては口腔外科に紹介されるケースも少なくありません。まずはレントゲンやCT撮影などで、親知らずの生え方を正確に確認してから、適切な抜歯方法を検討します。親知らずの抜歯は局所麻酔で行われるのが一般的で、歯肉に埋まっている場合はメスで歯肉を切開してから抜歯していきます。横向きや傾きで一度に抜けない場合は、ドリルで歯を割りながら少しづつ除去し、歯を取り終えたら傷口を縫合して抜歯は終了です。3日〜1週間後に傷口の状態をチェックして、抜糸します。傷口は数週間で完全にふさがります。
- 親知らず抜歯後の注意点を教えてください。
- 抜歯直後は傷口が開く可能性があるため、食事の際に抜歯した側ではなるべく噛まないようにしましょう。飲酒・喫煙・辛いものや固いものは傷口の回復を遅らせるため、親知らずの抜歯後数日間は控えてください。傷口は血餅と呼ばれる血の塊でふさがっており、過度にうがいをすると取れてしまうこともあります。傷口は清潔に保つ必要がありますが、過度なうがいは傷口が開く可能性があるため、うがい薬を使用してうがいの回数は食後1回程度にしましょう。
親知らず抜歯後の痛みや対処法
- 親知らず抜歯後の痛みや腫れはいつまで続きますか?
- 親知らずの抜歯後直後から2日後にかけて、頬が大きく腫れることがあります。1週間以内に腫れと痛みは治まり、食事も通常どおりにできるようになるのが一般的です。抜歯直後の麻酔が切れたタイミングではズキズキとした強い痛みがありますが、通常は数時間で治まります。その後は熱いものや刺激性の食べものがしみて痛みがありますが、3日程度で傷口がふさがり、痛みは治まるでしょう。抜歯後の痛みや腫れが1週間過ぎても治まらない場合は、細菌感染を生じている可能性があるため、早めに歯科医院で受診してください。
- 抜歯箇所が痛い場合の対処法を教えてください。
- 抜歯当日に麻酔が切れてきたタイミングで、傷口の痛みが強くなってきます。抜歯した歯科医院で痛み止めを処方されるため、痛みが強い場合には痛み止めを飲んでください。痛みが強いと痛み止めを乱用してしまう方も少なくありませんが、決められた量以上を飲んでも効果は上がりません。痛み止めの乱用は胃痛など副作用のリスクが上がるため、歯科医師や薬剤師の説明をよく聞いて、決められた量以上は使わないようにしましょう。氷を口に含んだり、氷嚢を頬に当てて患部を冷やすことでも、痛みは軽減できます。また、血流が良くなりすぎると痛みが増すため、抜歯当日は長時間の入浴や運動は避けた方が無難です。抜歯箇所の痛みが耐えられない程強くなった場合は、細菌感染や炎症を生じている可能性があるため、速やかに歯科医院に連絡して診察を受けましょう。
編集部まとめ
親知らずを抜くタイミングや、抜歯の必要性などを解説してきました。
親知らずは、きれいにまっすぐ生えている場合は貴重な自分の歯として保存した方がよいですが、そのようなケースは多くはありません。
ほとんどの場合は隣の歯を圧迫してむし歯になりやすかったり、歯並びが乱れたりする原因となるため、抜歯した方がよいでしょう。
抜歯手術は歯肉や骨を切開して大きな傷口を開けるため、回復力の高い若いうちにした方が無難です。
親知らずの歯根が完成する前で、口腔環境に悪影響を与え始めないうちに抜歯してしまうのがベストタイミングといえるでしょう。
もちろんベストタイミングを逃しても、抜歯できないわけではありません。
まずはお近くの歯科医院で、親知らずを抜歯するかどうか相談してみてください。
参考文献