注目のトピック

口腔外科

口腔粘膜疾患をケアするには?口腔ケアの有効性・方法についても解説

口腔粘膜疾患をケアするには?口腔ケアの有効性・方法についても解説

口腔粘膜疾患は、口腔内に白斑や紅斑、水疱や潰瘍などができる炎症性の疾患です。肉眼でわかるのも特徴です。

原因は、喫煙・アルコール・ウイルス・細菌・薬剤・機械的刺激などが関係するといわれています。

口腔粘膜疾患は、早期の回復を目指すためにも口腔内を清潔に保つことが重要です。

疾患によっては、治療に時間がかかる場合や何回も再発する場合もあるため、予防も治療後の口腔ケアも大切になります。

今回は、口腔粘膜疾患の予防方法や口腔ケアの有効性、口腔ケアの方法などを紹介します。お口のなかで気になる症状がある方は参考にしてください。

口腔粘膜疾患をケアするには?

歯ブラシ

口腔粘膜疾患をケアするには、個々の口腔粘膜疾患の特徴を知り、病状に応じた処置が必要です。

口腔内は、飲食物・入れ歯・煙草などによる刺激を受けやすく汚れやすい箇所です。

刺激を慢性的に受けることで口腔粘膜の防御機能が低下すると、口腔粘膜に炎症や障害が起きやすくなります。

口腔内の炎症につながらないよう口腔内を清潔に保つ必要があり、口腔ケアは口腔粘膜疾患の予防のためにも重要です。

口腔ケアには、器質的なケアと機能的なケアがあります。器質的なケアは、口腔内の清掃のことで、プラークや歯石の汚れの除去を行うケアのことです。

機能的ケアは、口腔機能の維持や回復を指します。両方のケアを行うことが、全身の健康に影響し患者さんのQOL向上にも貢献するでしょう。

口臭の改善や感染症の予防が目的の口腔ケアでは、舌クリーニングを行いましょう。舌専用のブラシや湿らせたガーゼなどで、やさしく拭き取ります。

力を入れて行うと舌に傷をつける可能性があります。傷口から細菌などが侵入して感染を起こすため、強さに注意しながら口腔ケアを行いましょう。

また、むし歯や歯周病の予防には、歯間ブラシなどがおすすめです。歯間ブラシで歯の隙間の食べかすなどの汚れを落とし、歯ブラシで歯全体を磨きます。

食べ物のかすや汚れが除去できるため、むし歯や歯周病の予防に適しているでしょう。

歯磨きなどに併せて、口腔内の炎症や感染予防のために消毒効果のあるうがい薬を使うのも口腔ケアの1つの方法です。

口腔内の乾燥が強い方には、口腔ケア用のジェルがおすすめです。ジェルが口腔内の潤いを保つため、口腔内の乾燥状態が緩和され、口臭も和らぎます。

口腔粘膜疾患は炎症性の疾患が大部分を占め、口腔ケアの際にも刺激を感じるため、口腔内の衛生状態が不十分になりやすいです。

病変部が眼で確認できる疾患では、刺激がある部分は避けて丁寧な歯磨きを心がけましょう。

口腔ケアの有効性

歯を磨く男性

口腔ケアの有効性には、次の4つが挙げられます。

  • 感染症の予防
  • むし歯や歯周病の予防
  • 味覚の改善
  • 口臭の改善

以下で、詳しく紹介します。

感染症の予防

口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎や感染性心内膜炎などの感染症を予防できます。

誤嚥性肺炎は、口腔内の細菌や食べかすなどが気管に入ることで起こる肺炎です。

口腔ケアで細菌を減らし口腔内を清潔に保つことで、誤嚥性肺炎の予防につながります。また、感染性心内膜炎は、心臓の弁の感染症です。

感染性心内膜炎では、口腔内常在菌が検出されており、抜歯や口腔内の傷口から侵入した細菌が遠隔の臓器に影響を与えます。

口腔ケアを行うことで細菌の影響は減るため、感染症の予防になるでしょう。

むし歯・歯周病の予防

歯を磨く男性

口腔ケアは、むし歯や歯周病の予防につながるでしょう。食事をすると、歯間や奥歯などに飲食物が残ります。

残った飲食物の糖分を歯の表面の細菌が食べて酸を出し、出された酸で歯が溶けます。唾液などによる歯の修復が間に合わずに崩壊した状態がむし歯です。

歯周病は、プラークに含まれる細菌により起きる病気です。細菌が歯肉の隙間から入り、歯肉の炎症を起こしたり歯槽骨を溶かしたりします。

歯磨きをしっかり行っていないと、歯と歯肉の境目にプラークが増えてしまいます。飲食物やプラークを除去するのが、口腔ケアの目的です。

味覚の改善

継続的に口腔ケアを行うことで、味覚の閾値が改善するでしょう。味覚は、舌の上にある味蕾細胞によって味を感じています。

口腔内が乾燥していたり汚れていたりすると、味蕾細胞の感受性が低下してしまい、味を感じづらくなるでしょう。

うがいや食後の歯磨き、舌のクリーニングなどの口腔ケアを行って口腔内を清潔に保つことで、食事がよりおいしく感じられるでしょう。

口臭の改善

口臭は、87%が口腔内の原因といわれています。原因のほとんどが舌苔のため、口臭の改善には舌の清掃が有効的な方法です。

舌苔以外にも、歯周病や副鼻腔炎で口臭が強くなることがあるため、注意してください。

口腔粘膜疾患の種類

歯の模型

口腔粘膜疾患と聞いて、何を思い浮かべますか。口内炎も口腔粘膜疾患です。以下で、10個の口腔粘膜疾患を紹介します。

白板症

白板症は、口腔前がん病変の1つです。4.4〜17.5%ががん化するとされています。

WHOは、摩擦によって除去できない白斑で、ほかの診療可能な疾患に分類できないものと定義しています。原因は不明です。

関与が考えられるのは、不適合義歯・飲酒・過度の喫煙・食の嗜好・カンジダ感染・ビタミンの欠乏などです。

病変部は白色や灰白色の板状や斑状で、病巣の範囲も口腔全体に広がっているものから部分的なものまであります。

一般的に痛みもなく自覚症状に乏しいのが特徴です。また、患者さんは50~70歳代の高齢の男性に好発する傾向にあります。

好発部位は、頬粘膜・舌の縁や下側・歯肉・歯の生えている顎堤粘膜(がくていねんまく)です。

紅板症

紅板症は白板症同様、口腔前がん病変の1つです。病変部が鮮紅色のビロード状で、周囲との境界がはっきりしています。

好発部位は、頬や口腔底の粘膜や舌で、病変部が少し陥没しているのも特徴です。

白板症に比べて発症頻度は低いですが、50%前後で悪性化します。また、患者さんの80%を50歳以上の高齢者が占めており、初期には刺激痛が生じます。

紅板症は、見つかった際にはすでにがん化している場合もあるため、違和感を覚えたら早期に病院で受診しましょう。

口腔カンジダ症

舌

カンジダ属の真菌によって引き起こされる口腔感染症です。カンジダ菌は、消化管の粘膜や皮膚の表面などにいる常在菌です。

身体の抵抗力が弱っている際に常在箇所に応じた症状が出ます。口腔カンジダ症は、口腔内の衛生不良や不適合な義歯、潰瘍などで発症します。

また、抗菌薬や抗アレルギー薬などの長期服用によって唾液量が減少し、口腔内が乾燥すると生じやすいです。

主な症状は、口腔内のピリピリ感や違和感、接触痛が挙げられます。特徴は、頬粘膜や舌などにガーゼなどで擦ると取れる白苔や広範囲の紅斑が現れます。

擦っても取りづらいものもあるため、無理に取らないようにしてください。抗真菌薬やうがいを行うことで、2週間程で症状が改善されるでしょう。

再発性アフタ

繰り返される炎症性の粘膜の潰瘍です。円形や卵形をしており、うすい黄白色や灰白色の偽膜に覆われ、エンドウ豆程の大きさになります。

年に数回繰り返される程に発現頻度が高いのも特徴です。潰瘍の周辺は赤くなっており、触ると痛みがあります。

また、刺激の強い食べ物や熱い物などでしみる場合もありますが、原因はわかっていません。

考えられるのは、疲労やストレス、偏った食生活や機械的刺激などです。軟膏やうがい薬、内服薬で治療を行います。

扁平苔癬

口腔粘膜の慢性炎症疾患です。患部の見た目によって細分類されており、発赤やびらんを伴います。症状は、口腔内の荒れや刺激痛です。

前がん状態でもあり、0.4~6.0%程の頻度で悪性化する可能性があります。好発部位は、頬粘膜・歯肉・舌で、両側に対称性をもって現れるのが特徴です。

原因は不明ですが、ウイルスや細菌の感染や服薬、機械的刺激や金属アレルギーなどが原因に挙げられます。

ステロイド軟膏を塗布して治療を行いますが、治りづらく再発する場合もあります。

口腔乾燥症

口内を見る男性

唾液の分泌量が減り、口腔内が乾燥する症状です。薬の副作用・ストレス・全身的な疾患・がんの放射線治療後の副作用などによって生じます。

唾液が減るため、口腔内の違和感やむし歯の増加、口臭の悪化や味覚障害なども起きやすいでしょう。また、パンなどの唾液が必要な食べ物が食べづらくなります。

唾液腺の機能が障害されるシェーグレン症候群でも口腔乾燥症が生じるため、口腔内の乾燥が気になる方は、病院で受診をおすすめします。

帯状疱疹

水痘帯状疱疹ウイルスが後根神経節に潜み、身体の抵抗力が低下した際に再活性化して起こる症状です。

体の左右の片側だけに現れ、刺すような強い痛みや発赤、水ぶくれが帯状に出ます。若い方で発症する場合もありますが、50〜70歳代で発症しやすいです。

発熱や頭痛、難聴や顔面神経麻痺などの症状も出てくる場合があります。重症化してしまうこともあるため、注意が必要です。

ヘルペス性口内炎

唇の病気

単純ヘルペスウイルスの感染後に潜伏していたウイルスが再活性して生じる水疱性の疾患です。口唇や口腔粘膜に多数の小水疱が作られます。

小水疱は破れやすく、破れるとびらんになり、激しい痛みを伴うのが特徴です。

症状の大半が子どもにみられますが、唾液の飛沫や接触により感染するため、大人でもみられるようになっています。抗ウイルス薬で治療を行います。

手足口病

コクサッキーA16型やエンテロウイルス71型などによるウイルス性感染症です。主に4歳くらいまでの乳幼児にみられ、夏場に流行します。

初期には、発熱や食欲不振などが現れた後に、手足や口腔内に小水疱が発生します。予後は良好ですが、まれに髄膜炎や脳炎を生じるため、注意が必要です。

ヘルパンギーナ

コクサッキーウイルスA群などのエンテロウイルス属による感染で起こる夏かぜの一種です。

口腔から咽頭へ通じる道となる口峡部に発赤や多数の小水疱が発生します。

主に乳幼児にみられ、38〜40度の急な発熱が3日程続き、咽頭痛や食欲不振などの症状が現れる場合もあるでしょう。

予後は良好ですが、まれに無菌性髄膜炎や急性心筋炎などを合併します。

口腔粘膜疾患の治療

レントゲンと男性医師

口腔がんになる可能性がある白板症や紅板症の治療は、外科的切除が望まれます。

ただし、白板症は、切除すべき病変かを見極めるために生検組織診断で細胞の状態を確認する必要があります。

白板症も紅板症も、悪性化する場合があるため、長期間の経過観察が必要です。

細菌感染による口腔カンジダ症では、日常の口腔ケアに加え抗真菌薬や含嗽薬、トローチなどが使われるでしょう。

また、口腔カンジダ症は口腔乾燥症が合併しやすいため、原因疾患への治療が行われます。

口腔乾燥症の治療は、シュガーレスガムの咀嚼・唾液分泌が促進される物の摂取・マッサージ・保湿ジェルやスプレー・人工唾液などの対症療法が中心です。

ウイルス感染によるヘルペス性口内炎・帯状疱疹・手足口病・ヘルパンギーナでは、抗ウイルス薬や消炎鎮痛薬、抗菌薬が投与されます。

うがい薬やトローチで局所治療が行われます。再発性のアフタや扁平苔癬の治療で使われるのは、ステロイド薬入り軟膏やうがい薬などです。

歯科用の金属アレルギーが原因と考えられる扁平苔癬では、金属アレルギーの検査を行い、詰め物や被せ物などを除去します。

オーラルフレイルの重要性

頬を抑える女性

オーラルフレイルは、身体能力の低下に先立つ症状です。オーラルフレイルの状態によっては、改善が可能な場合もあります。

オーラルフレイルは、年齢のせいと考えられてきた口腔機能の低下に警鐘を鳴らしている概念です。

加齢による機能低下を年齢のせいにして、固い物を避けたり食品の多様性を狭めたりします。

口腔機能の衰えを放置すると、口腔機能はさらに低下し、食欲や意欲の低下など心身機能の低下にまで陥ります。

オーラルフレイルは、衰えを年齢のせいにするのではなく、自分ごととして行動にまでつなげられる重要な考え方です。

まとめ

笑顔で歯を磨く女性

口腔粘膜疾患の予防方法や口腔ケアの有効性、口腔ケアの方法などを紹介しました。口腔内は、さまざまな刺激を受けるため、感染が起きやすい場所です。

感染が起きないように口腔ケアを行っていますが、何らかの原因で体の抵抗力が下がった際などに口腔器官を中心に症状が現れます。

口腔粘膜疾患は、同じ疾患でも多彩な症状を呈し、原因は不明なものや自然治癒するものがあります。

口腔ケアは必要ですが、症状により十分なケアが行えるともかぎりません。各疾患で行える口腔ケアの方法を知り、行える範囲で対応してください。

疾患により注意する点が異なるため、医師と相談しながら口腔ケアや治療を行っていきましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

記事をもっと見る

RELATED

PAGE TOP

電話コンシェルジュ専用番号

電話コンシェルジュで地域の名医を紹介します。

受付時間 平日:9時~18時
お電話でご案内できます!
0120-022-340