舌の裏にできる口内炎は、不意に現れ、日常生活に不快感を与えることがあります。小さな痛みが与える影響はときに大きな負担となり、食事や話すことが困難になることもあります。
では、なぜこのような口内炎が舌の裏にできるのでしょうか?
そして、できてしまった場合の対処法や、予防する方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
本記事では舌の裏にできる口内炎について以下の点を中心にご紹介します。
- 口内炎の種類
- 舌にできる口内炎の予防
- 舌の裏の口内炎で疑う病気
舌の裏にできる口内炎について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
舌の裏にできる口内炎(舌炎)とは
舌にできる口内炎(舌炎)とは、舌の粘膜に炎症が生じる状態を指します。 特に舌の裏側、付け根、または歯と接触する側面など、舌のさまざまな部分に発生する可能性があります。この炎症は、話す際や食事のたびに刺激が加わるため、継続して不快な痛みを伴います。
舌の付け根やその周辺に炎症がある場合、見えづらい位置にあるため、飲食物を飲み込む際の違和感や痛みで異常に気付くことがあります。長引く痛みがある場合、口内炎だけでなくほかの疾患の可能性も考えられるため、適切な診断と治療が必要です。
口内炎の種類
口内炎は、いくつかの種類に分類されます。
アフタ性、カタル性、ウイルス性、そのほかの分類で、以下に詳しく解説します。
アフタ性口内炎
アフタ性口内炎は、口内に発生する痛みを伴う潰瘍の一種で、円形または楕円形の白っぽい潰瘍が赤い縁で囲まれることが特徴です。潰瘍は2〜10mm程度の大きさで、しばしば群発します。痛みが強く、食事や会話時の不快感を伴うことも少なくありません。
発生要因として生活習慣の乱れが関与する場合が多いといわれており、ビタミンB類や鉄分などの欠乏はアフタ性口内炎のリスクを高めます。したがって、バランスの取れた食生活や十分な休息、ストレスの適切な管理が再発防止に重要です。
カタル性口内炎
カタル性口内炎、別名外傷性口内炎は、口腔内の物理的なダメージが原因で発生する炎症です。歯列矯正器具や入れ歯による機械的な刺激、熱すぎる食べ物や飲み物によるやけど、さらにはむし歯や割れた歯からの微細な傷が挙げられます。
この種の口内炎は、粘膜が赤く腫れ上がり、初期には水ぶくれが形成されることが特徴で、やがて潰れて潰瘍へと変化します。前述したアフタ性口内炎と異なり、潰瘍の境界が曖昧で、赤みを帯びた腫れが見られることもこの炎症の特徴です。治癒までの期間、痛みが続くことが多く、食事や飲み物を摂る際に不快感を感じることがあります。
ウイルス性口内炎
ウイルス性口内炎は、口腔内にウイルスの感染が原因で生じる炎症で、赤くただれた潰瘍が特徴的です。
代表的なものに、ヘルペスウイルスが原因のヘルペス性口内炎があり、口内に痛みを伴う多数の小さな水疱を形成します。これらの水疱が破れると潰瘍に変わり、食事や話すことが困難になることもあります。
また、カンジダ・アルビカンスというカビの一種が原因で起こるカンジダ性口内炎は、乳白色または灰色の苔状の斑点が粘膜に現れ、拭いた後に赤いただれが残ることがあります。
さらに、手足口病や性感染症による口内炎もウイルス性口内炎に分類され、体のほかの部位にも症状を引き起こすことがあります。
ウイルス性口内炎の治療は、基本的には原因ウイルスに合った抗ウイルス薬の使用や、症状の緩和を目指す対症療法が中心となります。
その他の口内炎
アレルギー性口内炎は、食品、薬品、または金属などの物質に対するアレルギー反応が原因で発生します。口内に赤みや腫れ、潰瘍が現れることが特徴で、治療にはアレルギー原因を特定し避けることが重要です。
ニコチン性口内炎は、主に喫煙によって引き起こされます。煙の熱やニコチンが直接口腔内に影響を与え、舌や頬、歯肉に潰瘍が発生します。
薬物性口内炎は、薬剤の副作用として現れることがあります。抗がん剤や市販の風邪薬などが原因となることが多く、口内に痛みを伴う潰瘍が現れることがあります。症状が出た場合は、医師に相談し、薬の調整が必要かもしれません。
舌にできる口内炎の原因
口内炎の原因には、いくつかの要素が複合的に関与しています。
以下に、代表的な原因を解説します。
免疫低下
免疫低下は、口内炎を引き起こす要因の一つです。
睡眠不足、過剰なストレス、慢性的な疲労は、体の免疫システムに大きな影響を与えます。免疫システムが正常に機能しないと、本来ならば容易に防げる感染症や炎症が発生しやすくなり、口内炎のような小さな症状が現れることもあります。
体の防御力が低下している状態では、微小な傷口からの細菌感染も招きやすくなり、日常的な活動が原因で起こるお口の中の小さな傷が、治りにくい口内炎へと進行するリスクが高まります。健康な生活を送るためには、質の高い睡眠を確保し、ストレス管理を行い、バランスの取れた栄養摂取が不可欠です。
栄養不足
偏った食生活により必要なビタミンやミネラルが充分に摂取されていない状態は、口内炎の発生を助長するといわれています。特にビタミンB群(B2、B6など)や亜鉛の不足は、皮膚や粘膜の健康に直接影響し、これらが不足すると、体の組織が正常に修復されにくくなり、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。
そのため、バランスの取れた食事を心がけ、ビタミンを適切に摂取することが重要です。
刺激
口内炎の発生要因の一つに、口腔粘膜への刺激が挙げられます。例えば、不適切な歯列、むし歯による欠けた歯、または合わない詰め物や被せ物、矯正器具が粘膜に接触し続けることで、物理的刺激が生じます。さらに、火傷も口内炎を誘発する一因です。
生活習慣の乱れ
睡眠不足や過度の疲労が続くと、体内の代謝プロセスが滞り、粘膜の再生力の低下を招きます。なかでも、お口の中の粘膜は常に新しい細胞に生まれ変わるため、回復力が弱まると、潰瘍や荒れが生じやすくなります。
生活習慣の乱れは、前述した免疫低下や栄養不足などの発生原因とも関与しており、不規則な生活はストレスの蓄積にもつながり、さらに免疫機能を低下させることがあります。ビタミンB群(B1、B2、B6)は、ストレスが増大すると消費量が増え、これらが不足すると粘膜の保護能力が低下し、口内炎を引き起こしやすくなります。
健康な口内環境を維持するためには、バランスの取れた食生活、十分な休息、そして効果的なストレス管理が不可欠です。定期的な食事と休息のリズムを整え、心身の健康を支える習慣を身につけることが、予防につながります。
口内の乾燥
唾液は、口内を清潔に保ち、粘膜を潤す重要な役割を果たしています。このため、唾液の分泌が減少し口内が乾燥すると、口内炎のリスクが高まるだけでなく、細菌が増殖しやすくなります。
唾液の減少にはさまざまな原因がありますが、そのなかでも加齢は重要な要因の一つです。年を取るにつれて、唾液腺の機能が低下し、それに伴い口内が乾燥しやすくなります。また、若い世代であっても、口呼吸、喫煙、ストレスが原因で同様の問題が起こることがあります。
さらに、薬剤の副作用や治療方法によっても唾液が減少するため、がん治療中の化学療法や放射線治療を受けている場合、副作用による影響が見られることが多いようです。
唾液減少に気付いた場合は、可能な限り早めに対策を講じることが重要です。水分をこまめに摂る、無糖のガムを噛む、あるいは専用の人工唾液を使用するなどが有効な方法とされています。
歯磨き粉
多くの歯磨き粉に含まれる界面活性剤は、口内炎を誘発する可能性があり、口内炎が頻繁に発生する場合は、成分ラベルに注意が必要です。
自然素材を使用した歯磨き粉や、低刺激性の製品を選ぶことで、口内の刺激を抑えることができます。また、歯磨きの際にはゴシゴシと強く磨くのではなく、粘膜を傷つけないように優しく丁寧に磨くことが重要です。敏感な口内状態には特に、成分を吟味し、口内炎の予防に努めましょう。
舌の裏の口内炎で疑う病気
舌の裏に口内炎ができた場合、どのような病気が疑われるのでしょうか。
以下に、可能性のある代表的な病気を解説します。
孤立性アフタ/再発性アフタ口内炎
孤立性アフタ/再発性アフタ性口内炎は、口腔内に発生する痛みを伴う潰瘍の一種です。
舌の裏側や頬の内側、お口の粘膜に円形または楕円形の潰瘍として現れ、周囲が赤く炎症を起こしています。潰瘍の中央部分は灰白色や黄白色の膜で覆われており、食事中や話している時に触れるだけで強い痛みが生じることが特徴です。
孤立性アフタは一度限りで発生し、約1〜2週間で自然治癒します。
対して、再発性アフタ性口内炎は名前のとおり繰り返し発生する傾向があり、20〜30代頃の女性に多く見られます。口内炎は、刺激性の食品やストレス、体調の変化によって引き起こされることがあります。
治療には、痛みを和らげ、潰瘍の治癒を助ける対症療法が行われます。処方薬には、副腎皮質ステロイド軟膏や口腔用の貼付錠などが使用されます。しかし、根治治療は存在せず、症状の管理が中心となります。繰り返し発生する場合や、2週間以上経過しても改善が見られない場合は、医師による診断を受けることが推奨されます。
舌がん
舌がんとは、口腔がんの一種であり、主に舌の前方2/3および舌の縁や下面に発生する悪性腫瘍です。このがんは口腔がん全体の約50〜60%を占める口腔がんの形態の一つです。
舌がんは、50〜70歳頃の年代に多く見られますが、若年層でも発症するケースがあります。
舌がんの原因は解明されていませんが、飲酒や喫煙といった化学物質の刺激、不適切な歯列や不合理な入れ歯による機械的な刺激が関与するとされています。
舌がんの大部分は扁平上皮癌であり、まれに肉腫も発生します。
口内炎と舌がん(口腔がん)の見分け方
口内炎は、2週間程度で自然に治癒する傾向にあります。これに対し、舌がんはしばしば2週間以上持続することがあり、しこりの存在や舌粘膜の色の変化(白や赤など)が見られる場合、舌がんの疑いがあります。
舌がんは初期段階では痛みを伴わないことが多いとされてますが、進行すると痛みやしびれ、味覚障害が生じることがあります。
また、舌が硬くなったり、動かしにくくなることも舌癌の特徴の一つです。口内炎と異なり、舌がんの病変は小さくなったり形が変わることが少ないとされています。
もし口内炎と思われる症状が2週間以上改善しない場合や、新たに異変を感じたときは、早めに口腔外科や耳鼻咽喉科などの専門の医療機関を訪れることが推奨されます。舌がんは初期に発見することで治療の成功率が高まるといわれています。
口内炎の対処法
ここまで、口内炎の概要や類似の病気について解説してきました。
最後に、口内炎の対処法をご紹介します。
生活習慣の改善
口内炎の原因には栄養不足、疲労、ストレス、免疫力の低下がありますが、改善することで、口内炎の発生頻度を減らし、早期回復を促すことが可能といわれています。
口内を清潔に保つために定期的な歯磨きを心がけ、口内炎の症状がある場合は、界面活性剤の含まれていない自然派の歯磨き粉の使用を検討します。
また、十分な休息を取り、バランスの取れた食事を心がけることで体の抵抗力を高めます。ビタミンやミネラルのサプリメンの補助的な利用や禁煙も、口内炎の予防効果が期待されます。
市販の治療薬を使う
口内炎用の軟膏やパッチは、薬局で容易に入手可能で、自宅で簡単に使用できます。 市販薬の使用法にはいくつかのポイントがあります。まず、お口の中を清潔に保ち、唾液や食べ物の残りを取り除いた後に薬を塗るか貼ることが重要です。
パッチは、貼り付け後にしっかりと圧をかけて固定し、しばらく飲食を控えることで薬剤がしっかりと患部に作用します。薬を塗る場合は清潔な手や綿棒を用いるようにしましょう。
薬剤は、アフタ性口内炎に対して有効といわれていますが、似ている症状を呈するその他の病気が隠れている可能性があるため、症状が長引いていたり、繰り返していたりする場合は、速やかに医療機関を受診することが大切です。
歯科医院、口腔外科、耳鼻科を受診する
口内炎に対する治療として、歯科医院、口腔外科、または耳鼻科の受診が推奨されます。
口内炎は多くの場合、約2週間で自然に治癒しますが、症状が長引く場合や再発を繰り返す場合は、専門の医師による診察が必要です。
歯科や口腔外科では、ほかの疾患との鑑別や原因となる尖った歯の治療や口腔衛生の指導を行い、必要に応じて塗り薬や貼り薬を処方します。また、レーザー治療を提供する病院もあり、痛みを迅速に軽減し、治癒を促します。耳鼻科では、口内炎以外の症状が伴う場合に広範囲な診断を行います。
まとめ
ここまで舌の裏にできる口内炎についてお伝えしてきました。舌の裏にできる口内炎の要点をまとめると以下のとおりです。
- 口内炎にはアフタ性、カタル性、ウイルス性、その他(アレルギー性・ニコチン性・薬物性)などの種類に分類される
- 舌に口内炎をつくらないためには、生活習慣や、免疫不全、不足の改善が必要
- 舌の裏の口内炎は孤立性アフタ/再発性アフタ口内炎や舌がんの可能性がある
舌の裏の口内炎は、孤立性アフタ/再発性アフタ口内炎や舌がんの可能性もあるため、注意が必要です。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。