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口腔カンジダの原因は?罹患しやすい人の特徴や感染するのかも解説

口腔カンジダの原因は?罹患しやすい人の特徴や感染するのかも解説

口腔内の粘膜に白苔または紅班ができる、口腔カンジダ症という感染症をご存じでしょうか。

放置すると食事や会話といった日常生活に支障が出たり、内臓へ感染が広がり重症化したりする場合があります。

こちらの記事では口腔カンジダ症の原因について、罹患しやすい人の特徴・人から人への感染の可能性も併せて解説します。

口腔カンジダ症について知り、ご自身や身近な人の症状の早期発見・早期治療の一助となれば幸いです。

口腔カンジダ症の原因

両手を広げる医師

口腔カンジダ症はカンジダ属の真菌により口腔内に発症する感染症です。カンジダ属真菌はカビの一種に分類されますが、健康な人の口腔内に日常的に存在する常在菌のひとつです。

口腔内のカンジダ属真菌としては、7~8種類の菌種が存在します。口腔カンジダ症の原因の70~90%を占めるのがカンジダ・アルビカンスという菌種です。

通常時は菌の数が一定数以下に抑えられているため、カンジダ属真菌が口腔内に存在するからといって必ず発症するわけではありません。

口腔内の常在菌間のバランスが崩れ、カンジダ属真菌が異常増殖し粘膜に定着した状態が口腔カンジダ症です。

カンジダ属真菌は増殖・定着して病原性を持つ際に、仮性菌糸と呼ばれる糸状の構造をつくります。そのため、口腔内のカンジダ属真菌に仮性菌糸が確認された場合に口腔カンジダ症の診断が確定します。

常在菌であるカンジダ属真菌が病原性を持つ原因は、主に以下の4つです。

  • 免疫力の低下
  • 唾液量の減少
  • 抗生物質やステロイドなどの長期服用
  • 口腔ケアの不足

それぞれの原因に関連性があることも多く、口腔カンジダ症の発症には複数の原因が複合的に関わっていると考えられています。口腔カンジダ症の原因となる状態について、それぞれ解説します。

免疫力の低下

薬と体温計

口腔カンジダ症の原因のひとつが、体の免疫力の低下です。

口腔カンジダ症は日和見感染症として発症することが少なくない疾患のひとつです。日和見感染症とは、カンジダのように正常時は病原性を持たない菌が免疫力の低下によって病原性を持つことにより罹患する感染症を指します。

がん・糖尿病・AIDS(エイズ)といった疾患は体の免疫力を低下させるため、日和見感染症になりやすい状態です。

特にがんの治療中は、がんそのものや抗がん剤の副作用により骨髄の働きが低下します。この状態を骨髄抑制といい、免疫力を司る白血球をはじめとする血管細胞をつくる機能が低下します。

結果として体の免疫力が低下するため、口腔カンジダ症が発症する可能性が高くなるのです。

唾液量の減少

唾液分泌量が減少し口腔内が乾燥している状態は、口腔カンジダ症の原因のひとつとされています。

唾液には浄化・抗菌・緩衝作用があり、口腔内の常在菌のバランスを保っています。緩衝作用とは、口腔内のpHを酸性から中性に戻す仕組みです。

唾液量の減少は緩衝作用の働きを弱め、口腔内が酸性に傾き真菌による感染症が増加する原因となります。

唾液量減少の要因として挙げられるのは、加齢・ストレス・脱水・疾患・薬の副作用などです。

頭頸部がんの放射線治療など、唾液の分泌量の低下を伴う治療が口腔カンジダ症の原因となる場合もあります。

抗生物質やステロイドなどの長期服用

錠剤

抗生物質やステロイドなどの長期服用も口腔カンジダ症の原因となります。

抗生物質を含む抗菌薬を長期にわたって服用すると、菌交代現象により口腔カンジダ症を発症しやすくなります。

菌交代現象とは、抗菌薬の服用により対象の細菌が減少する一方で、薬に耐性のある菌が増加する現象です。

カンジダは真菌のため、細菌に効力のある抗菌薬は効果がありません。そのため細菌の減少と引き換えにカンジダ菌が増殖し、口腔カンジダ症の発症につながる場合があります。

またステロイド(副腎皮質ホルモン薬)に関しては、免疫力を下げる副作用があるため口腔カンジダ症の発生に注意が必要です。

COPDや喘息などの治療で吸入ステロイド剤が使用される場合がありますが、吸入薬があたる部分のみに口腔カンジダ症が発症したという症例報告があります。

口腔ケアの不足

口腔内の不衛生もカンジダ症発症要因のひとつです。特に入れ歯・インプラントなどの義歯はカンジダ属真菌が付着しやすいため、口腔ケアを怠るとカンジダ症の発症リスクが高まります。

ただし以下のような口腔ケアはカンジダ症の要因となるため控えましょう。

  • ブラシにより舌などの粘膜に過度に刺激を与える
  • 刺激の強すぎる洗口薬を過度に使う

上記の行為は粘膜の損傷や菌交代現象を引き起こす可能性があるためです。

また要介護者など自身で口腔ケアが難しい場合も口腔カンジダ症を発症しやすくなるため、介護をする人が要介護者の口腔ケアを意識することが必要です。

口腔カンジダ症に罹患しやすい人の特徴

入れ歯

口腔カンジダ症に罹患しやすい人の特徴として以下が挙げられます。

  • ドライマウスの人
  • 入れ歯の使用
  • 高齢者・新生児
  • がん治療を受けている人

上記に当てはまらず基礎疾患などがない健康な人では、口腔カンジダ症の発症はほとんどありません。ただし、稀に高熱や風邪により免疫力が落ちている状態で発症する場合があります。

ドライマウスの人

口の中が乾いた状態であるドライマウスの人は、唾液量が減少しており口腔カンジダ症に罹患しやすくなります。ドライマウスの原因には以下があります。

  • 加齢による口腔内水分の減少
  • 唾液腺組織の障害(シェーグレン症候群など)
  • 服薬・治療・疾患による唾液分泌の抑制
  • ストレス

ドライマウスは50歳代以降の中高年、特に女性の発症率が高いといわれていますが、疾患がある場合は年齢に関わらず発生します。

ドライマウスは口腔カンジダ症以外にも舌の痛み・味覚異常・むし歯などさまざまな疾患の要因となるため、予防・治療に努めましょう。

入れ歯の使用

入れ歯などの義歯を使用している人は口腔カンジダ症に罹患しやすいです。

義歯の使用自体が口腔カンジダ症の原因となるわけではなく、義歯の洗浄が不十分であることが発症につながります。

義歯を使用している人が口腔カンジダ症を発症した場合、義歯が触れる粘膜部分と一致する形で症状が現れるのが典型的です。

義歯の手入れの際に超音波洗浄やカンジダの除去が可能な洗浄剤を使用することにより、カンジダ症の予防が可能です。

高齢者・新生児

2人の手

高齢者は口腔カンジダ症を罹患しやすく、治療件数は増加傾向にあります。

さらに高齢者の場合、治療しても再発することが多くあります。加齢とともに以下のような口腔カンジダ症の発症リスクが増加するためです。

  • 体の免疫力の低化
  • 口腔内機能の低下や服薬による唾液量の減少
  • 認知機能の低下による口腔ケアの不足
  • 歯の欠損に伴う義歯の使用率の増加

再発予防を怠ると血管を通じて内臓へ感染したり、カンジダ真菌の誤嚥により真菌性肺炎を引き起こしたりするリスクがあります。そのため、再発の予防が重要となります。

一方で新生児の口腔カンジダ症は治療の必要がない場合が多く、後遺症などの影響もありません。

新生児口腔カンジダ症は、新生児が出産時に産道でカンジダ属真菌を吸い込むことにより発症します。

発症した場合は生後7日以内に新生児の口腔内に白い斑点が生じますが、自然治癒することが大半です。

がん治療を受けている人

がん治療を受けている患者さんも口腔カンジダ症に罹患しやすいです。

抗がん剤・放射線によるがん治療には、免疫力の低下・口腔内環境の悪化などの副作用があるためです。

症状を放置すると咽頭・食道粘膜から肺・血管内へと感染が広がることがあるため、早めの治療が重要です。

口腔カンジダ症は人に感染する?

診察をする医師

口腔カンジダ症を発症している人との接触によって、口腔カンジダ症が感染することはありません

カンジダ属真菌自体は人から人へ移ることが可能ですが、これは口腔カンジダ症の感染とは異なります。真菌は健康な人の口腔内にもともと存在する菌であるためです。

菌を所持している人自身に菌の増殖・定着を促す要因があって初めて、口腔カンジダ症が発症します。

口腔カンジダの種類と症状

口内を見る女性

口腔カンジダ症には次の3つの病型があり、それぞれ症状が異なります。

  • 偽膜性口腔カンジダ症
  • 肥厚性口腔カンジダ症
  • 萎縮性口腔カンジダ症

口腔カンジダの症状は舌・頬粘膜・口蓋(口腔内の天井にあたる部分)など、口腔内の粘膜部分であればどこにでも出現する可能性があります。

偽膜性口腔カンジダ症

口腔カンジダ症のなかでよく見られる症例が、偽膜性口腔カンジダ症です。お口の中の粘膜に白苔が発生するのが特徴です。

見た目は白っぽい斑点状の膜で覆われたような状態になります。免疫力の低下・ステロイドの長期服薬が原因の場合に発症しやすい症状です。

白苔はガーゼなどで拭い取ることが可能ですが、拭い取った後の粘膜は赤くただれたように見え、出血する場合があります。呼吸器や消化管への感染を防ぐため、白苔を無理にこすり取ることは避けましょう。

痛みがないことが多く自分では気付きにくい一方で、歯科医師の視診による診断がしやすい症状です。

肥厚性口腔カンジダ症

肥厚性口腔カンジダ症は症状が慢性化し、白色化した粘膜が厚くなった状態です。進行すると硬いしこり状になる場合もあります。

白色化した病変が拭っても取れない点で偽膜性口腔カンジダ症と異なります。

萎縮性口腔カンジダ症

萎縮性口腔カンジダ症は、紅班(赤い斑点)ができるため紅斑性口腔カンジダ症とも呼ばれます。

粘膜表面の突起が萎縮して平坦になるという特長があり、ヒリヒリとした痛みを伴うことが多いといわれています。食事や会話などの刺激で、より強い痛みとなる傾向があります。

赤い斑点が出現し、粘膜下で出血しているような見た目となります。

唾液量の減少・義歯の使用が原因の場合に発症しやすい症状です。義歯が接触する粘膜に発生する場合もあり、義歯性口内炎ともいわれます。

視診のみでは舌痛症などほかの口腔粘膜の疾患と見分けにくいため、診断には真菌検査が必要です。

真菌検査では拭い取った粘膜組織に対して顕微鏡検査・培養検査を行うことで、カンジダ真菌の病原性の有無を確認します。

口腔カンジダ症は何科を受診すればよい?

病院

口腔カンジダ症が疑われる症状がある場合は、歯科・歯科口腔外科・耳鼻咽喉科のいずれかで受診しましょう。

基礎疾患がない場合は、口腔カンジダ症の疑いによる医療機関での診察からHIVなど別の疾患が発見される場合もあります。

口腔内の見た目の異常や粘膜の痛みなどを感じた場合は、早めに医療機関で受診することをおすすめします。

歯科

口腔カンジダ症は歯科で診断・治療が可能です。義歯の周囲の粘膜に異常がある・義歯に違和感がある場合は、歯科に相談しましょう。

口腔カンジダ症は義歯との関連が深いため、義歯が合わないなどの理由で受診した際に口腔カンジダ症が見つかる場合もあります。

義歯のメンテナンスをはじめとする適切な口腔ケアを行うことで、口腔カンジダ症の予防や再発防止が可能です。

歯科口腔外科

歯科口腔外科では口の中・顎・顔面の疾患を扱っており、口腔カンジダ症の診断・治療が可能です。

口腔粘膜の疾患のなかには口腔カンジダ症と似た症状が出るものもあります。口腔カンジダ症かどうかわからなくても粘膜に異常がある場合は、まずは歯科口腔外科で受診しましょう。

また歯科口腔外科ではドライマウス外来を開設している病院もあり、口腔カンジダ症と併せて原因となるドライマウスの治療が可能です。

耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科でも口腔カンジダ症の診断・治療が可能です。かかりつけの耳鼻咽喉科がある場合は、口腔カンジダ症の疑いがある口腔内の異常について相談してみるとよいでしょう。

治療の際に内服薬の投与が必要となる場合などは、歯科よりも耳鼻咽喉科の方が対応しやすい場合もあります。

口腔カンジダ症が改善するまでの期間

時計とカレンダー

口腔カンジダ症は抗真菌薬を用いた治療により、1~2週間で改善します。

白苔や紅班の範囲が狭く症状が軽度な場合は、うがい液の使用や義歯の洗浄で改善する場合もあるでしょう。

抗真菌薬の投与方法には次のものがあり、症状・患者さんの体の状態に応じて適切な薬剤が選択されます。

  • 口腔内に含んで浸透させたうえで飲み込む
  • 患部の粘膜に塗布する
  • 内服

抗真菌薬により仮性菌糸を持つ(病原性のある)カンジダ真菌を除菌することで症状が改善します。

治療により症状がなくなった場合でも、カンジダ属真菌の増殖・定着の原因となっている疾患や状態(ドライマウスや口腔ケアの不足)を改善しない限り再発の可能性があるため注意が必要です。

抗真菌薬は長期間の服薬により副作用が発生することがあるため、継続的な使用は避けられる傾向にあります。

再発の可能性が高い場合は口腔保湿剤の利用により予防を行い、症状が再発した場合のみ抗真菌薬を使用するのが一般的な治療方法です。

まとめ

男性を診察する女性医療従事者

口腔カンジダ症は、口腔内に常在するカンジダ属真菌が異常増殖し、粘膜に定着した状態を指します。免疫力の低下・唾液量の減少・抗生物質やステロイドなどの長期服用・口腔ケアの不足が原因で発症します。

そのため、加齢・疾患・投薬により免疫力が落ちている人やドライマウスの人、義歯を使用している人は口腔カンジダ症に罹患しやすいです。

カンジダは健康な人の口腔内にも存在する菌のため、口腔カンジダ症の症状が人から人へ感染することはありません。

口腔内の粘膜に白苔や紅班ができるなどの異常を発見した場合は、歯科・口腔外科・耳鼻咽喉科のいずれかを受診しましょう。

口腔カンジダ症の症状は抗真菌薬により2週間程度で治癒が可能ですが、原因となる状態が続く限り再発の可能性があるため継続的な注意が必要です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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