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その症状もしかしたら紅板症かも?初期症状や考えられる原因について詳しく解説!

その症状もしかしたら紅板症かも?初期症状や考えられる原因について詳しく解説!

紅板症という口腔内の病気をご存知でしょうか。口腔粘膜疾患のなかでも、がん化するリスクの高い病気といわれています。初期症状を見逃さず、早期発見と早期治療につなげられるよう、紅板症について理解しておきましょう。
本記事では紅板症の初期症状について以下の点を中心にご紹介します。

  • 紅板症とは
  • 紅板症の症状
  • 紅板症の類似疾患

紅板症の初期症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

紅板症ってどんな病気?

紅板症ってどんな病気?

紅板症(こうばんしょう)は、口腔粘膜疾患のひとつです。
紅板症の概要や悪性化するリスクなどについて、以下に詳しく解説します。

紅板症とは

紅板症は、舌や歯茎、頬の粘膜などの口腔内の粘膜が赤く変色し、潰瘍ができたり患部が盛り上がったりする病気です。鮮やかな赤色を帯びた粘膜が肥厚する特徴を持つことから、紅色肥厚症(こうしょくひこうしょう)とも呼ばれます。病変はビロード状で境界がはっきりとしており、表面は滑らかな傾向にあります。
触れると痛みを感じることもあり、辛い食べ物や酸味の強い食べ物などの刺激物が痛みを増強させ、食事の際の不快感や苦痛が強くなることがあります。

紅板症は稀な病気で、全体の患者さんの約80%が50歳以上の高齢者といわれています。また、類似する口腔粘膜疾患と間違われることもあります。放置すると、病変が広がったり重症化したりする可能性があるため、異常を感じたら早めに専門の診療科で診察を受けることが大切です。

紅板症などの口腔粘膜疾患は、似ている病気と鑑別する必要があるため、歯科や口腔外科、耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。

悪性化の可能性

紅板症の問題点は、その高い悪性化のリスクにあります。先述したように、紅板症と似ている病気に白板症がありますが、紅板症は白板症よりも悪性化率が高いとされています。白板症の悪性化率が約10%なのに対して、紅板症は約50%が悪性化するといわれています。そのため、発見したときにはすでにがん化している可能性も少なくない病気です。

紅板症が悪性化しやすい理由の一つには、病変部の粘膜が薄くなり、外部からの刺激に対して敏感になることが挙げられます。このため、食事や歯磨きなどの日常生活で頻繁に刺激を受けることで、細胞に対するストレスが増加し、細胞の異常増殖を引き起こしやすくなります。なかでも、舌や歯肉のがんとして発症するといわれています。

さらに、紅板症の発症は50歳以上の高齢者に多く見られるため、加齢に伴う免疫機能の低下や細胞修復機能の減退も、悪性化のリスクを高める要因となります。高齢者は、紅板症の早期発見と早期治療が口腔がん予防の観点からも重要です。

紅板症の考えられる原因

紅板症の考えられる原因

紅板症の原因は、明確には解明されていません。以下に、紅板症の発症に関連すると考えられているいくつかの要因を挙げます。

慢性的な口腔内の刺激:具体的には、アルコールやタバコの使用が挙げられます。アルコールは口腔内の粘膜を直接刺激し、タバコの煙や成分が口腔内の細胞に悪影響を及ぼすことがあります。飲酒や喫煙の習慣は、口腔内の環境を悪化させ、紅板症のリスクを高めると考えられています。

次に、不良補綴物(ふりょうほてつぶつ)、つまり適合していない義歯や歯の被せ物(クラウン)なども原因として挙げられます。不適合な補綴物が口腔内の粘膜に持続的な機械的刺激を与えることで、炎症や損傷が起こり、紅板症の発症リスクが高まります。なかでも、不適合な補綴物の鋭縁部が問題で、尖っている部分が慢性的に粘膜を刺激している場合があります。

また、ビタミンAおよびBの不足も紅板症の原因として考えられています。ビタミンAは粘膜の健康維持に重要な役割を果たし、ビタミンB群は細胞の代謝や修復に関与しています。これらのビタミンが不足すると、口腔内の粘膜が正常に機能しなくなり、紅板症のリスクが高まります。

加齢:高齢者は、紅板症の発症率が高いといわれています。年齢を重ねると、免疫機能や細胞の再生能力が低下し、口腔内の健康状態が悪化しやすくなります。

遺伝的要因や体質:体質や遺伝的背景が、紅板症の発症に影響を与える可能性があります。これらの要因は、環境要因と相互に作用し、発症リスクを高めることが考えられます。

以上のように、紅板症の原因には多くの要因が考えられますが、複数の要因が相互に影響し合っていると考えられます。そのため、紅板症の予防と管理には、リスク要因をできる限り排除することが重要です。

紅板症の初期症状

紅板症の初期症状

紅板症は、口腔内の粘膜が赤く変色し、触れると痛みを感じる病気です。その初期症状は多岐にわたりますが、早期に発見するための手がかりとなる症状を知っておくことが重要です。

紅板症の症状として、多くの患者さんが初期の時点で感じるのは刺激痛です。これは、口腔内の粘膜が炎症を起こし、外部からの刺激に対して過敏になるためです。辛い食べ物や熱い飲み物を摂取した際に痛みが増すことがあります。また、口内を清掃する際の歯ブラシの刺激でも痛みを感じます。ただし、痛みがない場合もあり、歯科医院で定期検診を受けた際に初めて発見されることもあります。

患部は鮮紅色で、ビロード状の滑らかな表面を持ち、境界が明瞭な病変が特徴です。これらの病変は、触ると硬く感じられることがあり、ときには潰瘍が形成されることもあります。

さらに、紅板症はほかの病変と見分けがつきにくい場合があります。例えば、白板症や単なる口内炎と見間違えられることがあります。白板症も口腔内に白い斑点が現れる病気ですが、紅板症はその名のとおり、赤い斑点やビロード状の病変が特徴です。注意すべきは、口内炎のような症状が2週間以上続く場合です。紅板症はがん化するリスクが高いため、口内炎に見た目が似ていても注意が必要です。

紅板症はがん化すると、病変部が硬くなり、潰瘍が深くなることがあります。また、リンパ節への転移も見られ、顎の下や首の腫れとして現れることがあります。

紅板症の初期症状は多様であり、ほかの口腔内の病気と区別が難しい場合があります。異常を感じた場合は、がん化のリスクを考慮して、早めに専門の診療科を受診し、適切な対応をとりましょう。

紅板症の診断と治療

紅板症の診断と治療

紅板症は、類似の病気との鑑別診断が重要となります。そして、診断の結果、紅板症と判明した場合は、早期治療が重要です。
ここでは、紅板症の診断と治療について詳しく解説します。

診断

紅板症の診断は、口腔粘膜の状態を詳細に観察することから始まります。紅板症は、境界が明瞭で鮮紅色のビロード状の病変が特徴で、その外観が診断の重要な手がかりとなります。

紅板症の診断では、類似した病気との鑑別が不可欠です。代表的な鑑別対象として、白板症、口腔カンジダ症の紅斑型、扁平苔癬、口内炎などが挙げられます。鑑別対象疾患の詳細については、後述する紅板症と間違えやすい病気の項目で詳しく解説します。

紅板症の確定診断には、視診と触診が基本となりますが、必要に応じて生検を行います。生検では、病変部の組織を採取し、顕微鏡下で詳細に分析します。これにより、病変の性質を確認し、悪性の可能性があるかどうかを評価します。また、血液検査や細菌培養などの追加検査を行うことで、ほかの感染症や全身性の病気との関連を調べることもあります。

定期的な経過観察も必要であり、再発や悪性化の兆候を早期に発見するために、定期的な歯科検診を受けることが推奨されます。このように、紅板症の診断には多角的なアプローチが求められます。

治療

紅板症は、がん化するリスクが高いため、早期の診断と適切な治療が重要です。

基本的な治療法は、外科的切除が推奨されています。これは、病変部分を適切に除去し、がん化のリスクを抑えるためです。紅板症は一部がすでにがん化していることもあるため、病変の広がりを正確に把握し、必要に応じて周囲の組織も含めて切除されます。
切除範囲が広範囲に及ぶ場合には、機能障害を抑えるための再建術が必要となる場合があります。

切除手術以外の治療法は、放射線照射、凍結療法、レーザー焼灼などが行われるケースもあります。しかし、紅板症の悪性化しやすい性質を考慮すると、術後の詳細な病理組織学的検索による悪性度の評価や切除断端の確認が重要であり、これらの治療法よりも外科的切除による治療が適切と判断される傾向にあります。

また、紅板症の再発防止には定期的な経過の観察が大切です。定期的に口腔内の検査を行い、再発や新たな病変の早期発見を行い、必要に応じて迅速に対応することが求められます。さらに、患者さんには合わない義歯を使用しないことや禁煙やアルコール摂取の制限など、生活習慣の改善も指導されます。

総じて、紅板症の治療では、早期の診断と適切な治療法の選択、術後の詳細な経過観察、生活習慣の改善が重要な要素となります。患者さん一人ひとりの状態に応じた個別の治療計画を立てることが、治療の成功と長期的な健康維持につながります。

紅板症と間違えやすい病気

紅板症と間違えやすい病気

口腔内の異常は多岐にわたり、紅板症と類似した症状を持つ病気も少なくありません。ここでは、紅板症と間違えやすい病気について詳しく説明します。

口内炎:一般的な口腔内の病変であり、誰しもが一度は経験したことがあるでしょう。口内炎は通常、2週間程度で自然に治癒するとされています。もし、口内炎のような症状が2週間以上続き、痛みがないままに拡大する場合は、紅板症の可能性も考慮する必要があります。

白板症(はくばんしょう):白板症は口腔粘膜が白色の板状に角化する病変で、摩擦や刺激によって引き起こされます。痛みはなく、口内炎や紅板症と間違えることがあります。紅板症とは色の違いが診断のポイントとなります。また、白板症も前がん病変とされており、紅板症と同様に注意が必要です。

口腔カンジダ症の紅斑型:カンジダ菌の感染によって起こるもので、口腔粘膜に紅斑が現れることがあり、紅板症と似た症状を呈します。抗真菌薬による治療が必要であり、紅板症とは治療法が異なるため、正確な診断が重要です。

扁平苔癬(へんぺいたいせん):かゆみを伴う発疹が特徴の病気で、口腔内にも白色の線状の病変が現れることがあります。この病気も紅板症と混同されることがあり、皮膚科的な診断と治療が必要です。病変は紅板症の滑らかなビロード状の表面とは異なり、より粗い質感を持ちます。

以上のように、紅板症と間違えやすい病気は多岐にわたります。口腔内の異常を感じた際には、自己判断せずに専門の医師の診察を受けることが重要です。

紅板症の早期発見と予防

紅板症の早期発見と予防

これまで述べてきたように、紅板症は早期発見と適切な予防が重要です。紅板症の早期発見と予防に関するポイントを以下にまとめます。

早期発見のポイント:紅板症は、刺激痛を伴う赤色の粘膜肥厚が特徴です。このような症状が見られた場合、紅板症の可能性があるため注意が必要です。日常的に口腔内を観察する習慣を持ちましょう。
歯磨きの際に鏡を使って口腔粘膜の状態をチェックし、異常を感じたらすぐに専門の医療機関を受診することが重要です。口腔内に赤すぎる、または白すぎる異常がある場合は、口腔がんのリスクが高まるため、早めの対応が求められます。

予防の基礎知識:紅板症の予防では、口腔内の清潔を保つことが基本です。日頃からしっかりと歯磨きを行い、口腔内の衛生状態を良好に保ちましょう。
また、尖った詰め物や不適合な歯科補綴物(歯の被せ物やブリッジなど)は、口腔粘膜に持続的な刺激を与えることで紅板症の原因となることがあります。歯科医院で適切に調整・研磨してもらいましょう。
加えて、喫煙や過度なアルコール摂取は口腔粘膜に悪影響を及ぼすため、習慣を見直すことも予防につながります。喫煙は口腔がんのリスクを高めることが知られており、禁煙は紅板症の予防にとっても重要です。

定期的な歯科検診の重要性:定期的な歯科検診は、紅板症の早期発見と予防に欠かせません。紅板症は症状が軽微なうちに発見することが難しいため、自分では気付かないことも少なくありません。専門の医療スタッフによる定期的なチェックが重要です。

まとめ

まとめ

ここまで紅板症の初期症状についてお伝えしてきました。紅板症の初期症状の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 紅板症は、舌や歯茎、頬の粘膜などの口腔内の粘膜が赤く変色し、潰瘍ができたり患部が盛り上がったりする病気で、約50%が悪性化するといわれている
  • 紅板症の初期症状は刺激痛で、患部は鮮紅色を呈したビロード状の滑らかな表面を持ち、境界が明瞭な病変が特徴
  • 紅板症と類似した病気は、口内炎、白板症、口腔カンジダ症の紅斑型、扁平苔癬などが挙げられる

紅板症の初期症状を見逃さず、早期発見と早期治療につなげられるよう、日頃から口腔内の状態をチェックしてみましょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。

この記事の監修歯科医師
酒向 誠医師(酒向歯科口腔外科クリニック院長 東京女子医科大学口腔外科 非常勤講師 聖路加国際病院歯科口腔外科 非常勤嘱託)

酒向 誠医師(酒向歯科口腔外科クリニック院長 東京女子医科大学口腔外科 非常勤講師 聖路加国際病院歯科口腔外科 非常勤嘱託)

1980年: 愛知学院大学歯学部入学 1986年: 愛知学院大学歯学部卒業 1986年: 愛知学院大学歯学部歯学研究科入学 1990年: 愛知学院大学歯学部歯学研究科卒業 1990年: 愛知学院大学歯学部第2口腔外科講座非常勤助手 1990年: 名古屋第一赤十字病院歯科口腔外科勤務 1993年: 東京女子医科大学歯科口腔外科学講座非常勤助手 1995年: 聖路加国際病院歯科口腔外科勤務 1998年: 東京女子医学大学歯科口腔外科学講座非常勤講師 2005年: 聖路加国際病院退職、酒向歯科口腔外科クリニック開業 2017年: 日本口腔科学会 認定医取得(5/31) 2020年: 日本口蓋裂学会 口腔外科 認定師取得(4/1) 2021年: 日本口腔ケア学会 評議員 2021年: 国際歯学会(ICD ) フェロー認定

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酒向 誠医師(酒向歯科口腔外科クリニック院長 東京女子医科大学口腔外科 非常勤講師 聖路加国際病院歯科口腔外科 非常勤嘱託)

1980年: 愛知学院大学歯学部入学 1986年: 愛知学院大学歯学部卒業 1986年: 愛知学院大学歯学部歯学研究科入学 1990年: 愛知学院大学歯学部歯学研究科卒業 1990年: 愛知学院大学歯学部第2口腔外科講座非常勤助手 1990年: 名古屋第一赤十字病院歯科口腔外科勤務 1993年: 東京女子医科大学歯科口腔外科学講座非常勤助手 1995年: 聖路加国際病院歯科口腔外科勤務 1998年: 東京女子医学大学歯科口腔外科学講座非常勤講師 2005年: 聖路加国際病院退職、酒向歯科口腔外科クリニック開業 2017年: 日本口腔科学会 認定医取得(5/31) 2020年: 日本口蓋裂学会 口腔外科 認定師取得(4/1) 2021年: 日本口腔ケア学会 評議員 2021年: 国際歯学会(ICD ) フェロー認定

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