舌に違和感がある場合、さまざまな原因が考えられます。熱いものや辛いものを口にしてそれらの刺激が舌に残っていたり、舌を誤って噛んだり、矯正器具が当たったりなどです。
しかし、それらに心当たりがないのに舌に違和感や痛みが生じている場合は、舌痛症(ぜっつうしょう)を始めとした何らかの病気や異常が疑われるため、専門の医療機関への受診が推奨されます。ここではそんな舌の違和感の原因や症状、対処法について詳しく解説をします。
舌痛症とは
- 舌痛症はどのような症状を伴いますか?
- 舌痛症とは、舌に炎症や潰瘍といった病変がなく、舌の色調や機能も正常であるにも関わらず、ヒリヒリ感や灼熱感などが生じる病気です。専門的には、心因性疼痛疾患(しんいんせいとうつうしっかん)に分類されます。
- 舌痛症の原因について教えてください。
- 舌痛症の根本的な原因は、いまのところ不明です。上述したように、舌痛症は心因性疼痛疾患に分類されることから、過剰ストレスが誘因となりやすいといわれています。その他、ホルモン異常や神経痛との関連も指摘されています。
- 舌痛症になりやすい人はどんな人ですか?
- 舌痛症は、精神の状態との関連が深いため、真面目で几帳面な性格の人に起こりやすいといえます。また、うつ病を患っている人も舌痛症になりやすいことがわかっているため、該当する人は舌の症状にも十分に注意しましょう。その他、口腔内が乾燥しやすい人、口腔衛生状態が不良な人、適合の悪い補綴物を装着している人も舌痛症になるリスクが比較的高くなっています。
- 舌痛症の対処法にはどのようなものがありますか?
- 舌痛症の症状が現れたら、次のような方法で対処することになります。
・抗うつ剤の投与
うつ病の症状として、舌痛症が現れている場合は、抗うつ剤を投与することで舌の違和感や痛みの改善が期待できます。抗うつ剤の投与は、必ず主治医の指示通りに行うことが大切です。・ストレスの発散
ストレスが原因で舌の違和感が生じている場合は、それを溜め込まないようにする必要があります。仕事でストレスを受けている人は、週末に趣味の時間を作るなどして上手に発散しましょう。学校の勉強などで強いストレスを受けている人は、自分のキャパシティーを越えない程度にすることが大切です。ストレスを上手に発散することが難しい場合は、辛いと感じた時は周りの友達や家族に相談するようにしてください。・十分な休息と睡眠
慢性的な疲労や睡眠不足も舌痛症の誘因となり得ますので、日頃から十分な休息と睡眠をとることを心がけてください。 ・唾液腺マッサージ 舌痛症に口腔乾燥が関係していると考えられる場合は、唾液の分泌を促すために唾液マッサージを行いましょう。唾液の分泌量が正常になれば、舌を始めとした口腔粘膜も適度に湿ってピリピリ感や灼熱感が軽減されることがあります。・口腔内を清潔に保つ
口腔衛生状態が不良であると、細菌や真菌による働きによって舌の違和感が強くなる場合があります。食べかすや歯垢・歯石がたまっていることが気になって、何となく舌にも違和感が生じてしまうという人もいますので、日頃から口腔ケアを徹底するよう心がけましょう。
舌痛症以外の舌の違和感の原因
- 舌痛症以外の舌の違和感の原因にはどのようなものが考えられますか?
- 次に挙げるような病気でも舌の違和感や痛みが生じる場合があります。
- アフタ性口内炎
- 口腔カンジダ症
- 口腔乾燥症
- 地図状舌(ちずじょうぜつ)
- 溝状舌(こうじょうぜつ)
- 白板症(はくばんしょう)
- 舌がん
- アフタ性口内炎の症状と治療法について教えてください。
- アフタ性口内炎とは、ストレスや疲れで免疫力が下がった時に現れやすい口腔粘膜の炎症です。歯肉や頬粘膜、舌などに炎症反応が生じます。アフタ性口内炎では、2〜10mm程度の白っぽい病変が現れることから、舌の違和感の原因も突き止めやすいことでしょう。アフタ性口内炎は、10〜14日ほどで自然治癒するのが一般的ですが、舌の違和感や痛みが強い場合は、うがい薬による口腔内の洗浄、ビタミン剤の服用、ステロイド剤の塗布などで治療します。
- 口腔カンジダ症の症状と治療法について教えてください。
- 口腔カンジダ症とは、カンジダ・アルビカンスという真菌への感染によって引き起こされる病気で、口腔内の広い範囲に白いカビが生えます。舌に生えた白いカビは舌苔(ぜったい)と見間違えることもあるかもしれませんが、口腔カンジダ症ではほとんどのケースで接触痛を伴うことから、比較的自覚しやすい病気といえます。そんな口腔カンジダ症の治療では、抗真菌薬が含まれた軟膏や内服薬、うがい薬などが用いられます。
- 口腔乾燥症の症状と治療法について教えてください。
- 口腔乾燥症とは、文字通り口腔内が乾燥する病気で、加齢や薬剤による唾液分泌量の減少、水分喪失による脱水、精神的緊張などが原因として挙げられます。口腔内が乾燥していることから、口の中の粘つきや渇きが主な症状として現れます。舌のざらつきや痛みを訴える人も少なくありません。口腔乾燥症の治療では保湿ジェルや保湿力の高い洗口液、保湿性薬剤などが用いられます。
- 地図状舌・溝状舌の症状と治療法について教えてください。
- 地図状舌とは、舌表面の乳頭が委縮して、地図上の紋様が現れる病気で、その形態は経時的に変化します。そのため専門的には良性遊走性舌炎(りょうせいゆうそうせいぜつえん)と呼ばれることもあります。地図状舌は若い女性に好発しますが、原因は不明で遺伝的な因子が関係しているものと考えられています。特別な治療法はなく、炎症反応が強い場合は消炎剤の投与を行います。 溝状舌とは、舌表面に多数の溝が見られる病気です。味覚障害や疼痛などの自覚症状は乏しいのですが、舌に違和感が生じることはあります。地図状舌と同様、特別な治療法はなく、炎症や痛みに対しては対症療法で対応することになります。
- 白板症の症状と治療法について教えてください。
- 白板症は、口腔粘膜の角化異常によって生じる白色病変が認められる病気です。がん化する手前の状態である口腔潜在的悪性疾患であることから、早期に対処することが求められます。白板症の治療ではまず誘因となっている喫煙や飲酒の習慣を改善し、適合の悪い入れ歯などによる刺激が関係している場合は、装置の修理が必要となります。その上で、病変部を外科的に切除します。場合によっては、ビタミンA誘導体を投与する薬物療法やレーザーによる蒸散なども行われます。
- 舌がんの症状と治療法について教えてください。
- 舌に生じる悪性腫瘍を舌がんといいます。臼歯部の舌縁に好発し、腫瘤や潰瘍などの症状が認められます。重症例では、舌全体が硬くなり、舌が動かしにくくなることもあります。 舌がんの治療法は、外科手術による患部の摘出が原則となります。進行度に応じて切除する範囲が変わってくるため、予後にも大きな違いが見られますので、できるだけ早期に治療を受けるのが望ましいです。進行度が低い舌がんであれば、放射線療法で根治できる場合もあります。
舌に違和感を生じたら
- 舌に違和感が生じたら何科を受診したらいいですか?
- 舌に違和感が生じたら、皮膚科や耳鼻咽喉科、歯科口腔外科を受診しましょう。その背景にある病気によって対応する診療科も変わってきますが、一般の人が診断や鑑別することは不可能ですので、まずは前述した診療科のいずれかに相談してください。
- 舌の違和感に対する検査にはどのようなものがありますか?
- 舌に違和感がある場合は、専門の医療機関で次のような検査が行われます。
- 視診
- 触診
- 唾液分泌量の測定
- 画像検査
- 直接鏡検
編集部まとめ
このように、舌に違和感が生じる病気というのは、いろいろな種類があります。舌に明らかな異常が見られず、何となく違和感が生じている場合は「舌痛症」である可能性が高いですが、口内炎や腫瘤、白線の紋様などが見られるケースでは、重篤な疾患が背景にあることも珍しくはないため、十分にご注意ください。いずれにしても舌の違和感が長く続き、痛みや腫れ、これまで見たことのないような病変などが現れた場合は、皮膚科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科などを早期に受診しましょう。
参考文献