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お口のなかに潰瘍ができるのはなぜ?考えられる疾患やベーチェット病の可能性についても解説!

お口のなかに潰瘍ができるのはなぜ?考えられる疾患やベーチェット病の可能性についても解説!

お口のなかに潰瘍ができて痛みや不快感を覚えた経験はありませんか?これは単なる口内炎だけでなく、さまざまな疾患や体調不良が原因で起こることがあります。

本記事ではお口のなかに潰瘍ができる原因について以下の点を中心にご紹介します。

  • お口のなかに潰瘍ができる疾患
  • 口内炎と口腔がんの見分け方
  • ベーチェット病の口腔潰瘍とは

お口のなかに潰瘍ができる原因について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

お口のなかに潰瘍ができる疾患

お口のなかに潰瘍ができる疾患

お口のなかに潰瘍ができる疾患は以下のとおりです。

アフタ性口内炎

アフタ性口内炎は、口腔内にできる小さな潰瘍が特徴的な口内炎の一種です。この潰瘍は灰白色で平坦な形状をしており、周囲に赤みが生じることがあります。

発生部位は、唇の内側、頬粘膜、舌、歯茎、口蓋粘膜などさまざまで、一つだけでなく複数同時に現れることも少なくありません。痛みを伴うため、食事や会話が不快になることがあります。

【原因と特徴】
アフタ性口内炎の原因は解明されていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています。

1.ストレスや疲労
免疫力の低下が引き金となる場合があります。

2.栄養不足
特にビタミンB2の欠乏が関係すると言われています。

3.睡眠不足
身体の回復力が低下することで発症リスクが高まります。

3.咬傷や物理的刺激
誤ってお口の内側を噛んだり、歯科器具などで粘膜を傷つけた場合に発生する場合があります。直径2〜10mm程度の丸く白い潰瘍が形成される傾向があり、小さなものがまとまって発生することもあります。1〜2週間程で自然に治癒し、痕が残ることはありません。

【治療法】
アフタ性口内炎は軽度であれば自然治癒もあるようです。ただし、痛みが強い場合や食事が困難な場合は、次のような治療を行います。

1.軟膏の塗布
炎症を抑えるステロイド軟膏を潰瘍部分に塗布します。

2.口内炎用貼り薬
痛みを和らげ、潰瘍を保護するための貼り薬を使用することがあります。

3.ビタミン補給
ビタミンB群を意識的に摂取することで症状の改善を促します。

カタル性口内炎

カタル性口内炎は、物理的な刺激や外的要因によって引き起こされる口内炎の一種です。入れ歯や矯正器具の摩擦、頬の内側を誤って噛んでしまったり、熱湯や薬品による刺激などが主な原因です。

これらの要因が口腔内の粘膜を傷つけることで、炎症が生じるのが特徴です。

【原因と特徴】
カタル性口内炎では、お口の粘膜が赤く腫れたり、水疱やびらんができたりします。アフタ性口内炎とは異なり、炎症部分の境界が不明瞭で、粘膜全体が広がるように炎症することがあります。以下のような症状もみられることがあります。

●唾液の分泌量が増加し、口臭が発生する
●口内に熱感を感じる
●味覚が鈍くなり、食べ物の味がわかりにくくなる

原因には、入れ歯や矯正器具の不適合により、擦れることで粘膜が傷つきやすくなります。また、やけどや薬品の刺激、熱湯や化学物質の接触による粘膜のダメージも挙げられます。

【治療法】
カタル性口内炎の治療は、原因となる刺激を取り除くことが大切です。具体的には以下のような対処法が挙げられます。

1.薬の使用
炎症や痛みを抑えるために塗り薬や口内炎用の貼り薬を使用します。

2.入れ歯や矯正器具の調整
適切なフィット感になるよう調整し、擦れや圧迫を防ぎます。

3.外科的処置
傷が深い場合や治癒が遅い場合は、必要に応じて外科的な治療が行われます。

ウイルス性口内炎

【原因や特徴】
ウイルス性口内炎は、単純ヘルペスウイルスやカンジダ菌などの感染によって発生する口内炎です。このタイプの口内炎は、口腔内に小さな水疱が複数でき、それが破れて小さな潰瘍となるのが特徴です。潰瘍が複数ある場合、それらが徐々につながり、大きな潰瘍になることもあります。

【治療法】
抗ウイルス薬や鎮痛薬を使用する場合があります。

難治性(口腔)潰瘍

組織学的には悪性所見が認められないものの、長期間にわたり治療に反応しない潰瘍性病変が存在します。この病変は強い痛みを伴うことは少ないようですが、刺激物による違和感やしみる症状が生じることがあります。場合によっては、潰瘍部を切除する治療が選択されることもあります。

病因は、アレルギー、自己免疫疾患、感染症、遺伝的要因などが考えられますが、はっきりとした原因は解明されていません。また、回復が進むと瘢痕が形成されますが、再発が頻繁に起こるのが特徴です。病変が治癒した部位や別の部位に新たな潰瘍が発生することもあります。

尋常性天疱瘡

尋常性天疱瘡(じんじょうせいてんぽうそう)は、免疫系が誤作動を起こし、皮膚や粘膜に含まれるタンパク質を攻撃することで発症する自己免疫疾患です。この病気は主に中高年層にみられ、性別や年齢による発症の差は少ないとされています。

症状は主にお口のなかや舌の下に現れることが多く、水疱が破れて広範囲なびらんや潰瘍が形成されるため、患者さんは強い痛みを感じることがあります。

【症状】
尋常性天疱瘡では、皮膚や粘膜に水疱が形成され、破れると潰瘍やびらんを引き起こします。特に口腔内に発生することが多く、痛みのために食事や会話が困難になる場合があります。重症化すると広い範囲で皮膚が剥離することもあり、全身に影響を及ぼすことがあります。

【原因】
免疫系が表皮の細胞同士をつなぐ特定のタンパク質を誤って攻撃することで起こります。免疫系が生成する抗体が皮膚や粘膜に結合し、細胞間の結びつきを弱めることで、水疱が形成されます。この異常な免疫反応が原因で、皮膚の最外層が剥がれやすくなるのが特徴です。

【診断方法】
尋常性天疱瘡の診断には、皮膚のサンプルを採取して顕微鏡で調べる組織学的検査が行われます。また、抗体の存在を確認する血液検査や免疫蛍光検査が補助的に用いられることもあります。

【治療法】
治療の主な目的は、免疫系の過剰反応を抑えることです。以下のような方法が挙げられます。

1.コルチコステロイド
炎症を抑え、免疫反応を制御します。

2.免疫抑制剤
免疫系の過剰な働きを抑えるために使用されます。

3.血漿交換療法
体内から異常な抗体を除去するために行われることがあります。

【注意点】
尋常性天疱瘡は適切に治療を行わないと、治癒に長期間を要するだけでなく、病状が進行して深刻な合併症を引き起こす可能性があります。口腔内の潰瘍が長引く場合や皮膚全体に症状が広がる場合には、早急に専門的な診断と治療が必要です。

粘膜類天疱瘡

粘膜類天疱瘡(ねんまくるいてんぽうそう)は、自己免疫の異常によって発症する疾患で、主に口腔内や眼の粘膜に影響を及ぼします。ほかにも喉や鼻、性器、肛門などの粘膜、さらには皮膚にも症状が現れることがあります。この病気は高齢者に多く見られ、女性が男性よりも発症しやすいとされています。

【主な症状】
粘膜類天疱瘡では、水疱やびらんが主な症状として現れます。これらは粘膜が集中的に影響を受ける部位で発生しやすく、次のような特徴があります。

●口腔内
歯茎や頬の内側、口蓋などに水疱ができ、破れると痛みを伴うびらんや潰瘍を形成

●眼
結膜が赤く腫れ、瘢痕が形成されることがあり、重症化すると乾燥や失明につながる可能性もある

●そのほかの粘膜
喉、鼻、性器、肛門などにも症状が現れることがあり、これらの部位では潰瘍が瘢痕化することがよくある

●皮膚
まれに頭皮や体幹、四肢に水疱が見られることもあり、治癒後には瘢痕が残ることがある

【原因】
この疾患は自己免疫疾患の一種で、免疫系が誤って自身の粘膜や皮膚の組織を攻撃することで発症します。抗体が粘膜に作用し、その結果として水疱やびらんが形成されます。

【診断方法】
粘膜類天疱瘡の診断には、特徴的な症状の観察に加え、生検(組織のサンプルを採取して顕微鏡で観察する検査)が用いられます。蛍光抗体法などの特殊な染色技術を使い、抗体の沈着を確認することもあります。

【治療法】
粘膜類天疱瘡の治療は、症状の重症度に応じて以下のような方法が取られます。

1.コルチコステロイド
直接患部に塗布する、潰瘍部に注射する、または全身投与することで炎症を抑えます。

2.抗生物質とビタミン剤
ドキシサイクリンとニコチン酸アミドの併用が効果的な場合があります。

3.免疫抑制薬
重症例では、ジアフェニルスルホンやプレドニゾロンなどの薬剤が使用されます。さらに、アザチオプリンやミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブ、シクロホスファミドなどが用いられることもあります。

4.免疫グロブリン療法
静脈内投与により、免疫系の異常な反応を抑える方法です。

【注意点と予後】
粘膜類天疱瘡は慢性的に進行する病気で、治療しない場合、症状が悪化し続けることがあります。適切な治療を受けることで症状をコントロールすることは可能とされていますが、治癒することはまれです。

また、この疾患に罹患している一部の方は、がんを発症するリスクが高まる可能性があるため、継続的な経過観察が大切です。

褥瘡性潰瘍

褥瘡性潰瘍(じょくそうせいかいよう)は、以下のような状況で発生しやすいです。

●尖った歯
むし歯や割れた歯の鋭利な部分が粘膜を繰り返し刺激する

●入れ歯の不適合
入れ歯がしっかりフィットしておらず、粘膜に負担をかける

●詰め物やかぶせ物
形状が尖っていたり、適合が悪いもの

【治療方法】
褥瘡性潰瘍の治療には、尖った歯を丸く削ったり入れ歯を調整し、適切な形状に整えたりします。

【症状の緩和】
●潰瘍部分に刺激が加わらないようにする
●必要に応じてうがい薬を使用し、口腔内を清潔に保つ

上記の治療を行うことで1週間程で潰瘍は改善するようです。ただし、免疫力の低下や加齢などの要因によって治癒が遅れることもあります。

口腔がん

口腔がんは、お口のなかに発生する悪性腫瘍で、下顎や舌、頬の内側、歯茎、口底(舌の下の床部分)など、さまざまな場所に生じます。ほかのがんと異なり、目で直接観察できることが特徴です。しかし、初期段階では口内炎や潰瘍と区別がつきにくいため、見逃されることもあります。多くの場合、潰瘍の形状を伴い、痛みが少ないのも特徴です。

口腔がんの兆候として以下のようなものが挙げられます。

●白色や赤色の斑点を伴う腫瘍
●表面がざらついている腫瘤
●治りにくい口内炎や潰瘍
●出血やしこり、異常な腫れ
●痛みが少ない、または感じない場合がある

初期段階では痛みが少ないため、ほかの口腔疾患と間違えやすいことがあります。

口内炎と口腔がんの見分け方

口内炎と口腔がんの見分け方

舌や口内の粘膜にただれができると「口内炎だろう」と考えがちです。口内炎である場合がほとんどですが、これが口腔がんの初期症状である可能性も否定できないため、注意が必要です。

しかし、見た目だけでそれが口内炎か口腔がんかを判断するのは難しいです。確かなのは、治りにくい口内炎は口腔がんの可能性があるという点です。

2週間以上治らない口内炎や、口内の異常が見られる場合には、放置せずに耳鼻咽喉科などを受診しましょう。

お口の潰瘍はベーチェット病の可能性がある?

お口の潰瘍はベーチェット病の可能性がある?

口腔潰瘍は再発性アフタ性潰瘍と呼ばれる症状で、口内炎のようにみえるものです。しかしベーチェット病の場合、これらの潰瘍は強い痛みを伴い、一度に複数発生することもあります。

ベーチェット病の症状として最初に現れることがあり、患者さんが日常生活で悩む代表的な症状のひとつです。

また、診断される何年も前からこの症状が見られることがあります。潰瘍自体は1~2週間で治るようですが、ベーチェット病の経過のなかで何度も繰り返し発生する特徴があります。

ベーチェット病の口腔潰瘍について

ベーチェット病の口腔潰瘍について

ベーチェット病の口腔潰瘍について以下で詳しく解説します。

ベーチェット病とは

ベーチェット病は、口腔内のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍(がいいんぶかいよう)、皮膚の病変、眼の症状を主な特徴とする慢性的で再発性の全身性炎症疾患です。体内の免疫システムが正常なバランスを失うことで引き起こされます。

ベーチェット病の歴史はとても古く、紀元前5世紀の古代ギリシャの記録には、この病気と推測される症状が記載されており、古代からその存在が認識されていたと考えられています。

ベーチェット病の症状

ベーチェット病は、以下の4つの主な症状を特徴とする慢性的で再発性の全身性炎症疾患です。

●口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍
●皮膚の病変
●外陰部潰瘍
●眼症状

ベーチェット病の原因

ベーチェット病の正確な原因はまだ解明されていませんが、研究によれば、発症しやすい遺伝的要因(遺伝的素因)を持つ方が、感染症、食事、喫煙、ストレスといった外部の環境要因にさらされることで、免疫機能が過剰に働き、全身性の炎症を引き起こすと考えられています。

ベーチェット病の診断方法

ベーチェット病の診断に検査法は存在しませんが、医師は確立された診断基準をもとに判断を行います。この病気が疑われるのは、口内の潰瘍が1年間に3回以上発生し、以下の症状のうち2つ以上が見られる場合です。

●繰り返し発生する陰部潰瘍
●特有の眼の異常
●皮膚にできる隆起、ニキビ様病変、または潰瘍状の病変
●軽い外傷による皮膚の腫れや水疱の形成

ベーチェット病の治療方法

ベーチェット病には根本的に治す治療法は存在しませんが、症状に応じて適切な治療を行うことで、症状を緩和させることが可能とされています。

治療で使われる主な薬剤とその用途は以下のとおりです。

●コルチコステロイド
●アザチオプリン
●メトトレキサートインターフェロンアルファ
●TNF阻害薬

ベーチェット病の治療は患者ごとに異なるため、症状や病状の進行状況に応じた個別の治療計画が必要です。

ベーチェット病の予後

ベーチェット病の症状は予測が難しく、突然現れたり消えたりを繰り返しながら、深刻な影響を及ぼすことがあります。症状が続く期間や症状が現れない寛解の期間は、数週間~数年、さらには数十年に及ぶこともあります。

最終的には寛解に至ることもあるようですが、神経系、消化管、血管に深刻な障害が起こると、命に関わる場合もあります。

まとめ

まとめ

ここまでお口のなかに潰瘍ができる原因についてお伝えしてきました。お口のなかに潰瘍ができる原因の要点をまとめると以下のとおりです。

  • アフタ性口内炎は、口腔内にできる小さな潰瘍が特徴的な口内炎の一種である
  • カタル性口内炎は、物理的な刺激や外的要因によって引き起こされる口内炎の一種である
  • 口腔がんは、お口のなかに発生する悪性腫瘍のこと

お口のなかに潰瘍ができる原因はさまざまで、単なるストレスや疲労から、深刻な疾患のサインである場合もあります。潰瘍が治りにくい、繰り返し発生する、またはほかの症状を伴う場合は、早めに病院で受診をし、原因を知ることが大切です。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正 / 一般歯科全般もOK

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