口腔がんは、お口の中にできるがんです。舌・歯茎・頬の内側などが主に発生する部位があり、現れる症状は痛み・腫れ・出血・しこりなどです。喫煙や飲酒がリスクを高めるとされています。
早期に発見し、治療を行えば生存率は高いとされています。早期発見のポイントやセルフチェックが大切です。
本記事では、口腔がんの初期症状から、早期発見のポイント治療法まで詳しく解説します。ご自身や大切な方の健康を守るため、ぜひ最後までお読みください。
口腔がんの原因や初期症状
- 口腔がんとはどのような病気ですか?
- 口腔がんとは、お口の中(口腔)に発生するがんです。口腔がんにおける主な発生部位は以下のとおりです。
- 舌
- 歯肉(歯茎)
- 頬の内側(頬粘膜)
- 口底(舌の下)
- 硬口蓋(口の天井)
- 軟口蓋(口の奥のやわらかい部分)
特に舌がんが多く見られます。口腔がんは、全悪性腫瘍の約1~2%を占める希少がんとされています。
口腔がんは、初期には自覚症状が乏しいため、早期発見のためには定期的な歯科検診やセルフチェックが重要です。
- 口腔がんの種類を教えてください。
- 口腔がんは、いくつかの異なる種類があります。主な種類は以下のとおりです。
- 舌がん
- 歯肉がん
- 頬粘膜がん
- 口腔底がん
- 硬口蓋がん
- 軟口蓋がん
これらのほかにも、唾液腺がんや悪性黒色腫など、口腔内に発生するがんの種類はさまざまです。
口腔がんの5年生存率は60〜80%といわれており、早期発見の場合は90%以上とされています。
口腔がんは、喫煙者が罹患するリスクが高いことが報告されています。飲酒も口腔がんの原因の一つです。喫煙者は非喫煙者に比べて口腔がんの罹患リスクが約5.2倍、飲酒者は約3.8倍高いとされています。また、口腔内の不衛生や炎症もリスク要因として重要です。
- どのような初期症状が出ますか?
- 口腔がんの初期症状は、発生部位やがんの種類によって異なりますが、以下のような症状があげられます。
- しこり
- 治りにくい口内炎
- お口の中の粘膜が変化
- 出血や痛み
初期の口腔がんでは、痛みや出血がないことが多く、はっきりとした症状はあまり見られません。
特に、舌がんは舌の側面や裏側にできることが多く、初期段階では目に見える変化が少なく注意が必要です。口内炎だと思って様子を見ていたら、実は口腔がんだったということもあります。
これらの症状は、口腔がん以外にも、ほかの疾患でも見られることがあります。
- 進行するとどのような症状が出ますか?
- 初期症状に加え、以下の症状です。
- 激しい痛み
- 嚥下障害
- 発音障害
- 首のリンパ節の腫れ
口腔がんが進行すると、さまざまな症状が現れます。がんが周囲の神経に浸潤すると、激しい痛みを引き起こしたり食事や発語に支障がでてきたりします。さらに進行するとがん細胞が首のリンパ節に転移し、首の腫れやしこりが現れるのです。
ここまで進行すると、早急に医療機関を受診し、適切な治療を開始することが重要です。
口腔がんの早期発見のポイントやセルフチェック
- 口腔がんの早期発見のポイントを教えてください。
- 口腔がんを早期発見するためには、以下の3つポイントを意識するとよいでしょう。
- 定期的な歯科検診を受ける
- セルフチェックを習慣にする
- 気になる症状があれば放置しない
口腔がん予防には、定期的な歯科検診が大切です。定期受診で初期の口腔がんを発見できる可能性があります。年に1回以上の受診を推奨されています。
毎日のセルフチェックも重要で、鏡を使って、舌の表面・側面・口腔底・頬の内側・歯茎を観察しましょう。特に、舌を引っ張って裏側を確認することが大切です。
口内炎が2週間以上治らない、口腔内の粘膜が白くなっていたり赤くただれていたりする場合は、放置せず早めに歯科医師に相談しましょう。
喫煙や過度の飲酒はリスクを高めるため、習慣のある方は特に、注意が必要です。
- 口腔がんをセルフチェックする方法はありますか?
- 口腔がんのセルフチェックは、自宅で簡単に行うことができます。以下の手順を参考に、定期的にセルフチェックを行いましょう。
- 明るい場所で鏡を用意する
- お口の中を隅々まで観察する
- 指で触って異常がないか確認する
- 異常を見つけたら記録する
口腔内のセルフチェックを行う際は明るい場所で確認します。大きめの鏡を用意し、お口の中がよく見えるようにしましょう。
次に、唇の内側から始まり、歯茎・頬の内側・舌の表面と裏側・口の底・口の天井とお口の中全体を順番に観察します。
そして、指でお口の中を触り、異常な硬さやしこりがないかを確認します。もし腫れ・しこり・潰瘍・色の変化など、何か異常が見つかった場合は、その場所や大きさ・色などを記録しておきましょう。
自分のお口の健康を守るために、定期的なセルフチェックをおすすめします。毎月1回お口の中をセルフチェックするのがおすすめです。セルフチェックはあくまでも目安ですので、異常を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
口腔がんの診療科や治療方法
- 口腔がんが疑われる場合の診療科を教えてください
- 口腔がんが疑われる場合、適切な診療科を受診することです。かかりつけの歯科医院を受診しましょう。
歯科医師は口腔内の専門家であり、初期症状の発見が期待できます。必要に応じて、専門医を紹介してもらえます。
口腔外科は口腔がんを専門とする診療科です。口腔外科医は、診断・治療・手術を専門的に行います。口腔がんの疑いがある場合は、口腔外科を受診しましょう。
また、口腔がんは進行によっては耳鼻咽喉領域に広がる可能性があるため、耳鼻咽喉科も選択肢の一つです。
耳鼻咽喉科医は、この領域の疾患を専門としており、口腔がんの治療に関わることもあります。
初期段階では歯科、疑いが濃厚なら口腔外科、範囲が広がる場合は耳鼻咽喉科と症状に合わせて適切な診療科を選びましょう。
- どのような検査を行いますか?
- 口腔がんの診断には、複数の検査を組み合わせて慎重に行われ以下に主な検査があります。
- 視診・触診
- 画像検査
- 病理検査
- 内視鏡検査
口腔がんの検査では、専門医による視診・触診で、口腔内を直接観察し触れることで異常の有無を確認する基本的な検査をします。
画像検査では、レントゲン・CT・MRIなどを用いてがんの大きさや周囲への広がりを詳しく調べ、がんの正確な位置や範囲を把握することが可能です。PET検査が追加されることもあります。
より詳細な診断が必要な場合は、病理検査が必要です。疑わしい部分の細胞や組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べ、がんの種類や悪性度を確定します。
必要に応じて内視鏡検査が行われ、口腔内や咽頭をより詳細に観察します。これらの検査結果を総合的に評価し、最終的な診断と病気の進行度を判断となるのです。
- 治療方法を教えてください。
- 口腔がんの治療法は、がんの種類・進行度・患者さんの全身状態などを総合的に判断して決定されます。主な治療法は以下のとおりです。
- 手術療法
- 放射線治療
- 化学療法
- 分子標的薬治療
- 免疫チェックポイント阻害薬治療
口腔がんの治療として、手術療法はがんのある部分を切除する治療法で、早期発見であれば手術のみで完治を目指せます。進行がんの場合は、周囲のリンパ節も併せて切除することがあり広範囲になる場合があります。
放射線治療は、高エネルギーの放射線を照射し、がん細胞を破壊する治療法です。手術が難しい場合や、手術後の再発予防のために行われることがあります。
化学療法は、抗がん剤を使用しがん細胞の増殖をおさえる治療法です。分子標的薬治療は、がん細胞特有の遺伝子やタンパク質を標的とした薬を使う治療法です。免疫チェックポイント阻害薬治療は、免疫の働きを活性化することで、がん細胞を攻撃する治療法で、近年、新しい治療法として注目されています。
これらの治療法は、単独で行われることもあれば、組み合わせて行われることもあります。患者さん一人ひとりの状況に合わせて、医師と十分に相談し、適切な治療法を選択しましょう。
- 手術後のリハビリテーションについて教えてください。
- 口腔がんの手術後には、以下のようなリハビリテーションが必要になることがあります。
- 言語訓練
- 嚥下訓練
- 口腔ケア
- 運動療法
- 栄養指導
手術の影響で舌やお口の動きが悪くなると、発音が難しくなる場合があり、言語聴覚士による発音練習や嚥下(えんげ)訓練で改善を目指します。
また、飲み込む機能が低下すると、誤嚥(ごえん)を起こしやすくなり危険です。嚥下訓練によって安全性のある食事が摂れるようにリハビリテーションを行います。
手術後の口腔内は感染しやすいため、歯科医師や歯科衛生士の指導のもと適切な口腔ケアを行い、清潔に保つことが重要です。
手術により首や肩の動きが制限されることがあるため、理学療法士による運動療法で、関節の可動域を広げて筋力アップを図ります。
手術後や治療中は食事が摂りにくくなることがあるため、管理栄養士による栄養指導で、必要な栄養を摂取できるようサポートします。
リハビリテーションは、元の生活を取り戻すために大切な訓練です。積極的に取り組みましょう。
編集部まとめ
口腔がんは、早期発見・早期治療がとても重要な病気です。初期には自覚症状が乏しいこともありますが、定期的な歯科検診やセルフチェックを習慣にすることで、早期発見の可能性を高めることができます。
気になる症状があれば、自己判断せずに、早めに医療機関を受診しましょう。また、禁煙や節酒、バランスの取れた食生活など口腔がんのリスク要因を避けることも大切です。
参考文献