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口腔がんのセルフチェック|口腔がんの症状やなりやすい人の特徴、治療法について解説

口腔がんのセルフチェック|口腔がんの症状やなりやすい人の特徴、治療法について解説

口の中にできるガンの口腔がんをご存じですか?口腔がんは早い段階でリンパなどへの転移がおこりやすく、逆に早めに治療をすれば完治しやすい病変でもあるため、セルフチェックなどで早期発見を行うことが大切です。
この記事では口腔がんの症状や、その特徴、治療法などについて解説します。

口腔がんとは

口腔がんとは

口腔がんは、口の中にできる悪性腫瘍(癌)のうち、喉より前方側にできるものの総称です。 口腔がんは頭頚部(首から上)にできるがんの中で、もっとも割合が多いがんで、頭頚部がんの内27%が口腔がん、次いで22%が下咽頭がん、19%が咽頭がんとなっています。
なお、口腔がんと分類されるものは、90%以上を占める扁平上皮がんのほか、唾液腺がんや血液のがん、そして結合織のがん(肉腫)などもありますが、それぞれに分類や治療法も異なるため、この記事では主に扁平上皮がんについての解説を行います。

口腔がんは口腔内にできるがんの総称であるため、舌にできる舌癌も口腔がんの1つで、口腔がんの約半数が舌癌、そのほか、歯肉や下顎の歯茎と舌に囲まれた口腔底部分、上顎の天井部分である硬口蓋、頬の内側の頬粘膜などにできるものが含まれます。

口腔がんにかかる人は2016年で年間11000人程となっていて、がん全体の1%程度ですが、世界的に羅漢率や死亡率が高まっているといわれています。

口腔がんの症状

口腔がんの症状として、初期には口の中の粘膜が白く変色変化したり、赤くなったり、ザラザラしたり、しこりができるといったものが現れますが、口内炎などほかの口腔内疾患とも似ているため、見分けがつきにくいといった特徴があります。
また、初期の症状では痛みもない場合が多く、特に自覚症状がないため放置してしまいやすい疾患といえるでしょう。
症状が進行すると痛みを感じるようになったり、舌などを動かしにくくなったり、場合によってはリンパが腫れたり、硬いしこりに触れるようになったりといった状態になります。
口腔がんの特徴の1つとして、早い段階で顎の下のリンパに転移しやすいというものがあるため、口腔がんの治療はとにかく症状が進行するまえの早期発見、そして早期治療が重要であるといえます。

口腔がんになりやすい人の特徴

口腔がんにかかってしまう可能性が特に高い人は、喫煙の習慣がある人です。
タバコにはタールなどの発がん性の物質が含まれていることから、喫煙習慣がある人は口腔がんにかかる可能性が上昇します。
同様に、頻繁に飲酒の習慣がある方も、アルコールが口腔内を刺激してしまうため、口腔がんにかかりやすくなります。
また、口腔内への刺激という点では歯磨きなどが適切に行なえていない人や、合わない入れ歯などを使用している人も口腔がんの発症率が高くなり、歯磨きをしない人は、1日1回歯磨きをする人と比べ、口腔がんにかかる率が1.8倍になるという報告もあります。
歯科治療として作った入れ歯なども、合わなくなった状態で使い続けると口腔内での刺激になるため、入れ歯などはしっかりと口にフィットしているものを使うことが大切です。
そのほか、遺伝的にがんにかかりやすい家系の人や、ほかの部位でのがんにかかったことがある人なども口腔がんにかかる可能性が高まるといえるでしょう。

口腔がんの症状の進行について

口腔がんの症状の進行について

口腔がんの症状は、がんの大きさや転移の有無などによって4つのステージに分けられています。

初期症状

口腔がんの初期症状は、口の中にしこりを感じたり、白や赤色に変色したり、ざらざらとした状態になったりといった、細かい変化が発生することから始まります。
初期症状の状態では痛みを感じることもほとんど無いため、普通に生活をしていると口腔がんができてしまったことに気が付かないというケースがほとんどでしょう。
多少の違和感があったとしても、こういった変化は口腔がんではなく口内炎などの症状にも共通しているため、放置しておけば自然と治ると考えてしまう場合も多いといえます。

ステージⅠ

口腔がんのステージⅠは、がんのサイズが2㎝以下で深さが5㎜以下、そしてリンパ節への転移がないという状態です。
まだサイズが小さいため、痛みや出血などの症状も出にくく、口内炎によるできものなどと間違われやすい症状といえるでしょう。
ステージⅠの5年生存率は90%で、この時期に治療を行なえれば治癒できる可能性が高いといえます。

ステージⅡ

ステージⅡはがんの最大径が2㎝以下で深さが5㎜を超える、または最大径が2~4㎝で深さが10㎜以下であり、リンパ節への転移が無いものです。
がんが大きく、深くまで進行することで、痛みやしこりを感じやすくなります。
5年生存率は70%で、ステージⅠと比べると生存率が下がります。

ステージⅢ

ステージⅢは、リンパ節へ3㎝以下の転移が1個みられるか、がんの最大径が2~4cmかつ深さ10㎜を超えるものとなっている、または最大径が4㎝以上で、深さが10㎜以下といういずれかの要因を満たしているものです。
リンパ節への転移があると、首などにしこりを感じる場合があり、治療を行う際には口腔がんの除去だけではなく転移したリンパ節も手術が必要となるため、対象となる範囲が広くなります。
5年後生存率は60%程度です。

ステージⅣ

ステージⅣは、ステージⅢよりも更に進行した状態が全般的に対象となります。
なお、ステージⅣは更にA、B、Cという3段階に分かれ、AとBは口腔がんの大きさやリンパ節に転移したがんの大きさによる分類で、Cは遠くの臓器への転移がみられる場合に該当する形となります。
ステージⅣまで進行してしまうと、5年後生存率は40%程度と低くなり、治療が上手く進んでも広い部分の組織を切除する必要がでるなど、後遺症が残りやすくなります。

口腔がんのセルフチェック方法

口腔がんのセルフチェック方法

口腔がんは早めに見つけて治療を行うことが、生存率の向上や後遺症を残さないための重要なポイントとなります。
早期発見のためのセルフチェック方法をご紹介します。

目視によるセルフチェック

口腔がんのセルフチェックは、まず目視で症状の確認を行いましょう。
口腔がんはお口の中の目に見える範囲にできるがんなので、鏡に向かって舌や舌の裏、頬の内側や上顎といった全体を目視チェックし、粘膜の変色やただれ、腫れといった症状が出ていないかを確認します。
特に、口腔がんの半数は舌にできるもので、特に舌縁とよばれる舌の側面部に発生しやすいため、側面や裏側などをしっかりチェックするとよいでしょう。
目視で口腔内をチェックすることは、口腔がんのセルフチェックだけではなくむし歯などのトラブルが無いかを確認することにもつながりますので、歯磨きの後などに行う習慣をつけておくとよいでしょう。
目視チェックで異変がある場合、それが口内炎などによる症状なのかどうかを判断することは難しいですが、異変が少しでも大きくなっていっているなど変化が見える場合は、早めに歯科口腔外科などでの専門的な検査を受けるとよいでしょう。

口腔内の違和感によるセルフチェック

口内炎が2週間以上治らない場合や、噛んでしまった傷がなかなか治らない場合、歯が浮いたような間隔や、原因不明のグラつき、また、入れ歯が急に合わなくなったなど、口腔内での違和感がある場合、口腔がんの可能性も考えられます。
とくに、口内炎については通常であれば1~2週間程度で自然と治るものですので、長期にわたって改善しないようであれば早めに専門の検査を受けるようにしましょう。
代表的な口内炎であるアフタ性口内炎などは強い痛みがすぐに生じますが、口腔がんは痛みが少なく、腫れが大きくなる方が先という違いもありますので、痛みの無い大きな腫れがあるような場合も注意してみるとよいでしょう。

リスク要因によるセルフチェック

口腔がんにかかりやすいリスク要因である、喫煙や飲酒を日常的に行っている人や、歯磨きがしっかりできていない人、お口に合わず、痛みや違和感を感じるような入れ歯を使用している人などは、何かしらの症状が出たら早めに検査を受けるようにした方がよいでしょう。
また、口腔がんのリスク要因に該当している方は、口腔がんではなくてもお口の中にトラブルが生じやすいため、定期的に歯科検診を受けて歯科医師による専門的な検査や、歯のクリーニングなどのケアを受けることをおすすめします。

口腔がんの検査や治療について

口腔がんの検査や治療について

口腔がんが疑われる場合、どのような検査や治療が行われるのか、またどこに相談するべきかなどについて解説します。

口腔がんかもと思ったら口腔外科へ

セルフチェックなどによって口腔がんの心配があるという方は、歯科口腔外科の受診をおすすめします。
歯科口腔外科は口腔がんなどの口内における外科的な処置が必要となるトラブルに対して専門的に治療を行う診療科で、口腔がんのほかにも口内炎の治療や、難しい親知らずの抜歯、顎関節症の治療といった内容に対応します。
歯科口腔外科の診療経験が多い歯科医師であれば、口腔がんのさまざまな症例を経験しているため、がんと口内炎などほかの疾患との見極めを適切に行い、しっかりとした治療が受けやすいでしょう。 また、検査の結果口腔がんではなかった場合でも、症状に合わせた適切な治療が行えるため、例えば強い痛みを生じている口内炎に対し、すぐに痛みを抑えて早く完治するような治療が受けらえるなど、お悩みを早く解消することができるでしょう。

口腔外科で行われる検査

口腔がんの検査は、まずはじめに口腔外科医による視診(腫れなどの症状を見て確認する診断)と触診(しこりやリンパへの転移を指で触って行う診断)による検査が行われます。
口腔がんが疑われる場合には綿棒などで組織を取って顕微鏡でがん細胞かどうかを確認する細胞診や、麻酔をしたうえで病変組織を採取し、顕微鏡で確認する組織生検が行われ、がんかどうかの確定をします。
検査によって口腔がんが確認された場合には、レントゲンやCT、MRIによる画像検査や、超音波エコーによる検査、場合によってはPETや内視鏡(胃カメラ)を使用して、がんのサイズや転移状況を調べ、がんのステージを確認します。

編集部まとめ

編集部まとめ

口腔がんは口内炎などと見分けにくい症状ですが、日々のセルフチェックなどできちんと変化を確認していれば、早期に症状を見つけ、早めの治療でしっかりと治すことができる症状です。
まずは歯磨きの後などにセルフチェックを行うようにしてみて、異常を感じたら早めに歯科口腔外科での専門的な検査や治療を受けるようにしてみてはいかがでしょうか。

参考文献

この記事の監修歯科医師
柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

1979年東京歯科大学卒業、2004年東京歯科大学主任教授、2012年東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長、2020年東京歯科大学名誉教授

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