親知らずは、正常に生えていれば抜く必要はないとされていますが、横向きに生えてしまっていたり、親知らずがむし歯になっていたりすると、抜かなければいけなくなる可能性があります。
しかし、親知らずを抜いた後痛みはあるのか、いつまで痛いのか、気になりますよね。 本記事では親知らずの抜歯後の痛みについて以下の点を中心にご紹介します。
- 親知らずの抜歯後の痛みに対する対処法
- 親知らずの抜歯後はいつまで痛いのか
- 親知らずの抜歯後に注意すべきこと
親知らずの抜歯後の痛みの理由や痛みを悪化させない方法を理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
親知らずの抜歯後に痛みが出る理由
親知らずを抜歯した後は、抜歯部分が痛む可能性があります。なかでも骨を削った場合などは痛みが出やすく、痛みが強いとされています。
では、なぜ抜歯後に痛みが出るのでしょうか。以下で解説します。
麻酔が切れた
親知らずの抜歯後、麻酔が切れると痛みを感じるのは避けられません。手術中は麻酔が効いているため痛みはほとんど感じませんが、浸潤麻酔の場合、約2時間〜4時間で切れ始めます。抜歯は人工的に傷を作る手術であるため、麻酔が切れると、傷口の痛みが現れます。
麻酔の持続時間や痛みの感じ方には個人差がありますが、麻酔が切れてから数時間のうちに痛みのピークが訪れ、その後徐々に和らいでいくようです。
ドライソケットになっている
親知らずの抜歯後に痛みが強くなる理由の一つにドライソケットがあります。ドライソケットは、抜歯後に抜歯した穴が血液で覆われず、骨が直接口腔内に露出してしまう状態を指します。
通常、抜歯後は血液が凝固して血餅を形成し、血餅の上に新たな歯茎が再生されることで骨が保護されます。しかし、何らかの原因で血餅が形成されない場合や、形成された血餅が失われた場合、骨がむき出しになり、強い痛みを伴うことがあります。
ドライソケットになっている場合、抜歯後2〜3日あたりにズキズキとした激しい痛みが出現し、この痛みが2週間以上続くこともあります。なかでも飲食するときに刺激が加わると、痛みが一層強くなるようです。
ドライソケットの主な原因には、頻繁なうがい、喫煙、血行促進行動、そして舌で傷口を触ることが挙げられます。
ドライソケットの治療法は、痛み止めや抗生物質の投与、抜歯穴の洗浄と薬の充填、そして再出血を促すための処置が行われます。
細菌に感染している
親知らずの抜歯後に痛みが続く理由の1つに、抜歯箇所の細菌感染もあります。
抜歯後の傷口は、糸で縫合され、1週間程度で糸を取り除いて傷口の確認と洗浄を行いますが、この過程で一時的に残る穴に汚れが溜まりやすく、細菌が繁殖することで炎症と痛みが生じることがあります。
感染を防ぐためには、処方された抗生物質を痛みや腫れが治まった後もすべて飲み切ることが重要です。さらに、抜歯箇所のクリーニングだけでなく、口腔全体のクリーニングを行い、細菌の総数を減らすことも痛みを予防するのに欠かせません。
親知らずの抜歯後の痛みに対する対処法
次に、親知らずの抜歯後の痛みへの対処法を3つ紹介します。しかし、痛みが強い場合や長引いている場合は無理せず抜歯をした歯科医院に相談しましょう。
痛み止めの服用
親知らずの抜歯後の痛みを和らげるためには、痛み止めの適切な服用が重要です。抜歯するときには麻酔が使用されますが、麻酔が切れると痛みが現れることがあるため、痛み止めは麻酔の効果が切れる前、抜歯後約2〜3時間後に服用すると、麻酔が切れた直後の痛みを和らげる効果が期待できます。
また、歯科医院から処方された痛み止めを適切に服用しても、数日で痛みが和らがない場合は感染の可能性もあるため、和らがない場合は担当の医師に相談しましょう。
そして、市販の痛み止めも、歯科医院にすぐに行けない場合の応急処置として使用できます。市販薬を使用する際は、薬剤師に相談して適切な薬を選んでもらい、副作用のリスクがあるため用法・用量を守ることが大切です。
歯科医院で処方される痛み止めの種類には、カロナール、ロキソニン、ボルタレンが挙げられます。
カロナールはアセトアミノフェンを主成分とする解熱鎮痛剤で、作用が緩やかで副作用が少ないとされているため、妊婦や幼児にも使用されています。しかし、歯の痛みへの効果はほかの薬より他の薬より劣る場合があることがあります。
ロキソニンは、ロキソプロフェンを主成分とし、歯痛だけでなく手術後や神経痛、腰痛にも効果が期待できますが、胃腸障害を引き起こしやすいため、食事後に服用するのが望ましいとされています。
ボルタレンは、鎮痛効果が強く期待でき、即効性があるため、急な痛みを素早く抑えることが期待できますが、副作用も強く現れる可能性があります。
いずれの薬も、持病や体調によって使用できない場合があるため、事前に歯科医師や薬剤師に相談してから服用することが重要です。
冷やす
親知らずの抜歯後の痛みへの対処法として、顎を冷やす方法もあります。氷嚢や冷却ジェルシート、濡れタオルなどを使用して抜歯部位の周辺を冷やすことで、熱を吸収し痛みを軽減できる可能性があります。
ただし、冷やし過ぎると血液の循環が悪くなり、自然治癒が遅くなるため、抜歯部位の周辺を冷やすのは抜歯当日のみにしましょう。
やり方の具体例は、冷却シートや保冷剤をタオルに包んで頬に当て、5分冷やしたら30分放置することを繰り返すなどです。
患部の洗浄
親知らずの抜歯後に痛みが強い場合は、歯科医院で患部を洗浄してもらうことも適しているとされています。なかでもドライソケットの場合は、強い痛みが生じますが、歯科医院で患部を洗浄し、炎症や腫れを抑える薬を塗ることで治癒が促されます。
また、洗浄によって抜歯箇所に詰まった食べかすなどの異物を除去できるため、感染リスクも低減します。抜歯後は強いうがいや歯ブラシができず、食べかすが詰まりやすい状態になるため、定期的に歯科医院での洗浄を受けることが重要です。
歯科医師による定期的な経過観察を受けることで、炎症や化膿を未然に防ぎ、必要に応じて痛み止めの処方も受けられます。
親知らずの抜歯後はいつまで痛い?
親知らずの抜歯後の痛みは、通常数日〜1週間程度で徐々に引いていきます。前述したとおり、施術中は麻酔が効いているため痛みはほとんど感じませんが、麻酔が切れると痛みを感じ始めることがあります。
麻酔が切れる時間には個人差があり、早い人は1時間、遅い人では6時間かかることもあります。しかし、傷口が細菌感染を起こしている場合などは、痛みが1週間以上続くこともあります。
なかでも下の親知らずの抜歯後は腫れやすく、親知らずの生え方によっても痛みの持続期間が異なります。痛みが1週間以上続く場合はドライソケットなどを疑い、歯科医院を受診しましょう。
親知らずの抜歯後に注意すべき4つのこと
親知らずの抜歯後のトラブル、痛みを避けるためには、注意すべき点もいくつかあります。 今回は親知らずの抜歯後に注意すべきことを4つ紹介します。親知らずの抜歯の際は以下の注意点も留意し、抜歯後に快適に生活できるよう努めましょう。
飲酒・喫煙を避ける
親知らずの抜歯後に注意すべきことの1つに、飲酒・喫煙を避けることがあります。
アルコールを摂取すると血流が良くなり出血がひどくなる可能性があるほか、痛み止めとの併用は厳禁とされています。アルコールと薬の同時摂取で、蕁麻疹などの強い反応を引き起こすことがあるためです。
また、抜歯後1週間は禁煙することが推奨されています。タバコを吸うと血管が収縮し、歯茎の回復が遅れてしまうためです。さらに、喫煙すると免疫力が低下し細菌感染のリスクも高まるため、抜歯後1週間程度は喫煙は控えましょう。
激しい運動や入浴は避ける
親知らずの抜歯後は、激しい運動や入浴を避けることも大切です。激しい運動、入浴は血液の循環を良くするため、抜歯直後に激しい運動や入浴を行うと出血が止まりにくくなり、痛みや腫れを引き起こす可能性があります。
そのため、術後2〜3日程度は激しい活動を避け、安静に過ごすことが重要です。なかでも抜歯当日は入浴を控え、シャワーで済ませるようにしましょう。
患部に触らない
親知らずの抜歯後は、患部に触らないことも重要です。
抜歯後の傷口はとてもデリケートで、舌や指、歯ブラシで触れると出血や感染のリスクが高まります。なかでも、抜歯後の傷口を縫合している糸に触れると、糸が取れて傷口が開いてしまい、治癒が遅れる可能性があります。
さらに、触れることで血餅が剥がれ、ドライソケットを引き起こすこともあります。
繰り返しになりますが、ドライソケットはかなり痛みを伴い、通常の痛み止めが効かない場合もあり、ドライソケットの治療には10日〜1ヵ月程度かかることがあります。抜歯後の傷口が気になる場合でも、決して触らず、歯科医の指示にしたがって適切にケアを行うことが大切です。
ドライソケットを予防し、スムーズな回復を促すためにも、患部への過度な刺激を避けるよう心がけましょう。
かたいものや刺激物は避ける
親知らずの抜歯後の注意点の1つとして、かたいものや刺激物を避けることも挙げられます。かたい食べ物や香辛料が含まれている料理は傷口を刺激し、治癒を遅らせる可能性があります。抜歯後1週間程度は、かたい食べ物や刺激物を避けるのが望ましいとされています。
また、抜歯当日の麻酔が切れるまでの間も、熱い食べ物や刺激物を食べないようにしましょう。麻酔が切れていないと感覚が鈍くなっているため、火傷や新たな傷をつくりやすくなります。
親知らずの抜歯後は、おかゆ、ヨーグルト、ゼリー飲料、麺類などやわらかい食事を摂りましょう。かたい食べ物や大きく口を開ける動作は避け、患部に負担をかけないように抜歯をしていない反対側で噛む工夫も必要です。さらに、痛みが激しい場合は、より食べやすい流動食が中心の食事にしましょう。
親知らずの抜歯後におすすめの食事
親知らずの抜歯後、食事を再開する際には、やわらかくて刺激の少ない食べ物から始めしょう。抜歯当日は、ゼリーや雑炊、スムージーなどの流動食が適しています。しかし、吸う動作が必要なゼリーは避けた方がよいです。
翌日以降は、雑炊、麺類、ハンバーグなどのやわらかい食べ物が推奨されます。傷の治癒を促すために、大豆、緑黄色野菜、乳製品、卵などのビタミンやミネラルが豊富な食品もおすすめです。麻酔が残っているかもしれないので、食事の際は火傷に注意し、抜歯した側で噛まないように工夫しましょう。
親知らずの抜歯後の痛みを悪化させない方法
親知らずの抜歯後の痛みを悪化させないためには、まず安静に過ごすことが重要です。抜歯直後は無理をせず、リラックスして過ごすようにしましょう。さらに、口腔内を清潔に保つことも大切です。歯磨きは慎重に行い、抜歯部位を避けて歯を磨くことで、感染のリスクを低減できます。また、歯磨きの際にはやわらかい歯ブラシを使用し、優しく磨くことを心がけてください。
うがいも注意が必要です。強いうがいは血餅を取り除いてしまう可能性があるため、控えめに行うようにしましょう。歯科医院でうがい薬が処方された場合は、使用しましょう。
そして寝る際には、頭を少し高くして寝ることで、出血や腫れが防げる可能性があります。枕を重ねて頭を高く保つように工夫してください。
また、定期的に歯科医院で経過をチェックしてもらうことも忘れずに行いましょう。
まとめ
ここまで親知らずの抜歯後の痛みについてお伝えしてきました。親知らずの抜歯後の痛みの要点をまとめると以下のとおりです。
- 親知らずの抜歯後の痛みへの対処法として、処方された痛み止めをしっかり服用することや、患部を濡れタオルなどで冷やすこと、歯科医院で患部を洗浄してもらうことなどがある
- 親知らずの抜歯後の痛みは、通常数日~1週間程度で徐々に引いていくが、下の親知らずの抜歯後は腫れやすく、親知らずの生え方によっても痛みの持続期間が異なるため、痛みが1週間以上続く場合はドライソケットなどを疑って歯科医院を受診することが大切
- 親知らずの抜歯後は、飲酒や喫煙、激しい運動、入浴は避け、歯を磨く際なども患部に触らないよう心がけて、食事の際もかたいものや刺激物は避けるようにする
親知らずの抜歯後の痛みは、適切なケアと対処法により和らげることが可能とされます。抜歯後は安静に過ごし、口腔内を清潔に保ち、適切な食事を摂ることが重要です。また、痛みが長引く場合や症状が悪化した場合は、すぐに歯科医師に相談しましょう。
上記の情報が、親知らずの抜歯後の痛みに悩んでいる方のお役に立てば幸いです。
本記事を最後までご覧いただき、ありがとうございました。