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舌が白いのは舌苔のせい?舌苔が増える原因や舌が白くなる他の疾患について解説!

舌が白いのは舌苔のせい?舌苔が増える原因や舌が白くなる他の疾患について解説!

口腔内に生じる汚れとしては、「歯垢」と「歯石」が第一に挙げられますが、どちらも白色で歯の周囲に付着する点で共通しています。そうした白色の汚れが舌に見られた場合は、歯垢・歯石ではなく「舌苔(ぜったい)」であると考えられます。

ここではそんな舌苔の特徴や増える原因に加え、治療や予防する方法について詳しく解説をします。後段では、舌苔以外で舌が白くなる疾患についても取り上げます。

舌苔(ぜったい)とは

舌苔(ぜったい)とは はじめに、舌苔の基本事項から確認していきましょう。

舌苔の概要

舌苔とは、文字通り舌の表面に現れる苔(こけ)のような汚れで、健全な口腔内でも見られます。そのため舌苔が見られるからといって、ただちに何らかの異常が疑われるわけではありませんので、その点は十分にご注意ください。 舌苔は、舌後縁の分界溝から前方1/3〜2/3の舌背中央に形成される白色の膜状物質です。生理的に産生される場合は、脱離上皮細胞や細菌塊、食渣(しょくさ)などが主な構成成分となりますが、歯周病にかかっている人の場合は、白血球の死骸なども含まれます。とはいえ、舌苔の実体はほぼ歯垢と同じものと考えて間違いはありません。

舌苔が増える原因

舌苔は、次のような原因があると増加する傾向にあります。

・舌の動きの低下
舌は筋肉の塊です。食事の時はもちろんのこと、会話をする時などでも大きく運動しますが、その動きが低下すると、汚れがたまりやすくなり舌苔も増えていきます。高齢者は、舌の筋力が衰えると同時に、あまり噛まずに飲み込めるものを好んで食べたり、人と会話する機会が少なかったりすることから、舌苔がたまりやすくなっているのです。

・唾液の分泌量の減少
口腔乾燥症や加齢などによる唾液分泌量の低下は、歯面だけでなく、舌背における自浄作用、殺菌作用、抗菌作用も弱めます。その結果として、食渣が堆積や細菌の繁殖を招いてしまうのです。

・口腔内の不衛生
口腔ケアが不十分で、口腔衛生状態が悪くなると舌苔は増加します。なぜなら舌苔は食渣と細菌の塊だからです。そのため歯磨きをしっかり行えていない人の多くは、歯垢や歯石だけでなく、舌苔の体積も認められます。ただし、歯磨きだけ行えていても舌苔がたまる可能性は十分にありますので、舌も含めた口腔全体のケアを徹底することが重要といえます。

・口呼吸の定着
口呼吸は、口腔乾燥を誘発します。口腔内が乾燥すると、唾液による自浄作用・殺菌作用が働きにくくなることから、食渣と細菌の塊である舌苔が増えていきます。口呼吸は、単なる習慣で行っていることもあれば、歯並びや噛み合わせ、骨格の異常で誘発されることもあるため、なかなか鼻呼吸に移行できないという人は、まず歯科医院に相談することをおすすめします。口呼吸の改善や治療は、歯科の専門領域でもあります。

舌苔は治療する必要があるのか

舌苔は治療する必要があるのか 上段で少し触れましたが、舌苔は生理的にも生じ得る汚れです。実際、健康な人にも舌苔はある程度認められるため、必ず治療しなければならないというものではありません。ただ、舌苔は食渣と細菌がたまったものであることから、口臭の原因にはなります。歯磨きはしっかりしているのになぜか口臭がなくならないなどの場合は、舌苔もケアした方が良いといえます。著しい量の舌苔が付着している場合は、積極的に除去するよう努めましょう。ちなみに、舌苔が原因で歯科医院での治療が必要となるケースはほとんどないといえます。

舌苔の予防方法

舌苔の予防方法 舌苔は、適切な方法でケアする必要があります。舌苔による口臭を改善したい人や舌苔の形成そのものを予防したい人は、次の方法を実践してみてください。

舌ブラシなどで除去する

舌苔の除去は、原則として「舌ブラシ」という専用の器具を用います。ヘッドの部分が舌の汚れを取りやすいような設計となっているため、標準的な歯ブラシとは見た目がまったく異なります。ブラシタイプやヘラタイプなど、さまざまな種類がありますが、自分にとって使いやすいものを選ぶことが大切です。

◎舌磨きの方法
舌磨きは、必ず舌の奥から舌ブラシを手前に引くような形で行ってください。それとは逆の動きでブラッシングすると、舌苔を喉の奥へと押し込んでしまうからです。舌苔にはさまざまな病原体が含まれているため、それが喉の奥へと押し込まれると咽頭や喉頭で感染を引き起こす原因になります。 また、舌はとてもデリケートな組織で構成されているため、強圧でブラッシングするのは厳禁です。歯磨きをする要領で舌を磨いてしまうと、舌の表面に分布している味蕾細胞が傷ついたり、上皮細胞が剥がれて新たな舌苔を作り出したりします。ですから、舌ブラシを使った舌磨きは優しく行うよう努めましょう。

口内洗浄液を使用する

舌苔の体積を予防する方法としては、口内洗浄液の使用が有効です。市販のマウスウォッシュには、舌苔の原因となる細菌を減らす作用が期待できますので、適宜、活用していくことをおすすめします。

舌苔以外の舌が白くなる原因

ここまでは、舌苔の特徴や原因、その形成を予防する方法について解説してきましたが、実は舌が白くなる原因としては、舌苔以外にもいくつかの病気が考えられます。具体的には、口腔カンジダ症、白板症(はくばんしょう)、舌がんといった病気です。いずれも口腔内における明らかな病気・異常であることから、舌苔とは根本的に異なるものと考える必要があります。つまり、専門の医療機関での診断および治療が必要となる病変なので、舌苔のようにセルフケアで対応したり、放置したりするという選択肢はありません。

◎舌苔と見分ける方法は?
舌苔と上述した3つの病気の見極めは、原則として歯科医師に任せるべきですが、簡易的にセルフチェックできる方法があります。まず、舌苔は当然ですが白い汚れが舌背に限局しています。さらに、その汚れは舌ブラシなどで取り除くことが可能です。それ以外の部位に何ら異常が見られず、痛みなども生じていないのであれば舌苔の可能性が高いといえます。 ただし、後段で解説する口腔カンジダ症の白色病変も綿棒などで容易に除去できるため、舌苔と勘違いしてしまう可能性も十分にあります。とはいえ口腔カンジダ症の白色病変は、舌背に限局して現れることは稀なので、専門家が診ればすぐに見分けることができます。白板症や舌がんの白色病変は機械的な刺激を加えても取り除くことができないことから、舌苔や口腔カンジダ症と混同することはないでしょう。

口腔カンジダ症の症状と治療法

口腔カンジダ症は、口腔内常在菌であるカンジダ・アルビカンスという真菌による感染症です。カンジダは、健康な人の口腔内にも常在している病原性の低い真菌なので、普段は悪さをすることがありませんが、体力や免疫力が減弱している乳幼児、高齢者、妊婦などは発症しやすくなっています。臨床の現場では、口腔乾燥症や入れ歯の衛生状態が悪い高齢者などによく見られます。

症状

口腔カンジダ症は、症状や経過によって「急性偽膜性カンジダ症(きゅうせいぎまくせいかんじだしょう)」と「慢性肥厚性カンジダ症(まんせいひこうせいかんじだしょう)」の2つに大きく分けられ、白色病変が容易に剥離する場合は前者に該当します。“偽膜”は偽物の膜なので簡単に剥がすことができるのです。後者は、粘膜上皮の過形成による肥厚が主な症状なので、舌苔や急性のカンジダ症とは見た目が大きく異なることから、鑑別は専門家に一任した方が良いです。

◎痛みや出血を伴う
急性の口腔カンジダ症では、白色病変を除去すると、痛みや出血を伴うことがあります。また、舌背だけでなく、頬の内側の粘膜や口蓋(こうがい)など、口腔内の広い範囲に渡って白色病変が認められるのが大きな特徴といえます。

治療法

急性の口腔カンジダ症には、含嗽剤(がんそうざい)や抗真菌薬(アムホテリシンB、ミコナゾール、フルコナゾールなど)の外用が有効です。適合が悪く、不衛生な入れ歯が原因となっている場合は、義歯調整や義歯の新製も必要になります。

白板症の症状と治療法

白板症は、口腔粘膜の角化亢進によって生じる白斑病変で、原因は明らかになっていません。誘因としては、タバコやアルコール、不良補綴物、刺激性食品の習慣的摂取などが挙げられます。白板症の好発部位は、舌、歯肉、頬粘膜、口腔底などです。50〜60歳代によく見られ、男性は女性の2倍、白板症の発症率が高くなっています。ちなみに、白板症は悪性腫瘍の一歩手前である「口腔潜在的悪性疾患(こうくうせんざいてきあくせいしっかん)」に分類されています。

症状

白板症では、粘膜面の白色病変の隆起の程度、白斑の濃度、均一性、びらんや潰瘍の混在の有無、単発性、多発性など、さまざまな症状・病態が見られます。舌苔とは明らかに異なる性状のものが多いため、患者さんも自覚しやすいことでしょう。

治療法

白板症の治療は、まず誘因となっている喫煙や飲酒の習慣の改善、不良補綴物の修理、週習慣の改善などから始めます。根治療法としては、患部の外科的切除が適応されます。とくに病理検査で上皮異形成(じょうひいけいせい)という悪性化しかけている症状が認められた場合は、将来のがん化を防ぐ意味でも確実な切除が求められます。白板症では、凍結療法やレーザー療法、ビタミンA誘導体の投与による薬物療法が行われることもありますが、十分な効果が得られないのが現実です。

舌がんの症状と治療法

舌がんの症状と治療法 舌の白色病変で最も深刻な病気は「舌がん」です。上段の白板症が悪性化して舌がんへと移行するケースも珍しくはありません。舌がんの誘因としては、タバコやアルコール、不良補綴物、刺激性食品の習慣的摂取などが挙げられ、この点も白板症と共通しています。口の中にできる悪性腫瘍を総称して「口腔がん」といいますが、その中で最も発生頻度が高いのが舌がんです。舌がんの好発部位は、臼歯部の舌縁が最も多く、舌下面に見られることもあります。舌背や舌尖の発生は極めて稀といえるでしょう。そのため舌の表面に白い汚れがあるからといって、舌がんを疑うことはまずありません。

症状

舌がんは、腫瘤(しゅりゅう)や潰瘍が多く、発症して間もない段階から疼痛を伴います。つまり、痛いという強い自覚症状が現れるので、医療機関を受診する動機にもつながりやすいといえます。舌がんの症状は、膨隆型・潰瘍型・肉芽型・白板型・乳頭型など、細かく分類できますが、いずれのタイプも進行する過程で腫瘤が形成され、中央部分が壊死脱落して陥没することから、噴火口のような形状となります。これは癌性潰瘍の特徴的な形状です。がん細胞の内向性増殖が起こると、舌筋に深く浸潤するようになることから、舌の運動に支障をきたしたり、舌の前方突出運動が困難となったりします。ケースによっては、嚥下障害や構音障害も現れます。

治療法

舌がんでは、外科的療法と放射線療法のいずれか、もしくは両方を組み合わせて治療を進めていきます。

◎外科的療法
外科的療法では、原発巣と頸部リンパ節転移巣の切除を行い、再建術を実施します。原発巣がある舌をどのくらいの範囲を切除するかは、がんの進行度(T1~4)によって変わりますT1の症例では、舌の部分切除、T2の症例では、舌半側切除、T3~4の症例では、舌亜全摘出あるいは舌全摘出が行われます。リンパ節転移が認められる場合は、頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)という首の部分のリンパ節とその周囲の組織を広範囲に切除する手術も必要となります。

◎放射線療法
舌の機能を温存することを優先するケースでは、放射線療法が選択されます。放射線だけで舌がんを治す「根治的放射線治療」は、小線源を用いた組織内照射が主体となります。適応症はT1〜2の舌がんで、治療が成功すれば舌の機能や形態を温存できます。外科的療法に放射線療法を併用する場合は、術前と術後に外照射を行います。これはあくまでがんを小さくしたり、再発を防止したりするために行う照射なので、舌がんを根治させることはできません。

まとめ

まとめ このように、舌に白い症状が見られたらまずは舌苔が疑われます。舌苔は食渣や細菌などの集合体で、プラークとほぼ同じ成分で構成されていることから、健康な人でも認められます。 舌の動きの低下や唾液分泌量の減少、口腔内の不衛生などがあると舌苔が増えることがあるため十分な注意が必要です。ただ、舌苔自体は病気ではなく、積極的な治療も必要ありません。

舌苔によって口臭が強くなったり、口腔疾患のリスクが上がったりすることはあることから、日頃から舌ブラシや口内洗浄液を使ってケアしておくことは大切です。 舌の白い汚れが舌ブラシで拭えない、もしくは痛みや出血などを伴う場合は、本文でも解説したような重篤な疾患が疑われるので、早急に歯科を受診するようにしてください。発見や対処が遅れると、取り返しのつかない事態を招くこともあります。

参考文献

この記事の監修歯科医師
酒向 誠医師(酒向歯科口腔外科クリニック院長 東京女子医科大学口腔外科 非常勤講師 聖路加国際病院歯科口腔外科 非常勤嘱託)

酒向 誠医師(酒向歯科口腔外科クリニック院長 東京女子医科大学口腔外科 非常勤講師 聖路加国際病院歯科口腔外科 非常勤嘱託)

1980年: 愛知学院大学歯学部入学 1986年: 愛知学院大学歯学部卒業 1986年: 愛知学院大学歯学部歯学研究科入学 1990年: 愛知学院大学歯学部歯学研究科卒業 1990年: 愛知学院大学歯学部第2口腔外科講座非常勤助手 1990年: 名古屋第一赤十字病院歯科口腔外科勤務 1993年: 東京女子医科大学歯科口腔外科学講座非常勤助手 1995年: 聖路加国際病院歯科口腔外科勤務 1998年: 東京女子医学大学歯科口腔外科学講座非常勤講師 2005年: 聖路加国際病院退職、酒向歯科口腔外科クリニック開業 2017年: 日本口腔科学会 認定医取得(5/31) 2020年: 日本口蓋裂学会 口腔外科 認定師取得(4/1) 2021年: 日本口腔ケア学会 評議員 2021年: 国際歯学会(ICD ) フェロー認定

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1980年: 愛知学院大学歯学部入学 1986年: 愛知学院大学歯学部卒業 1986年: 愛知学院大学歯学部歯学研究科入学 1990年: 愛知学院大学歯学部歯学研究科卒業 1990年: 愛知学院大学歯学部第2口腔外科講座非常勤助手 1990年: 名古屋第一赤十字病院歯科口腔外科勤務 1993年: 東京女子医科大学歯科口腔外科学講座非常勤助手 1995年: 聖路加国際病院歯科口腔外科勤務 1998年: 東京女子医学大学歯科口腔外科学講座非常勤講師 2005年: 聖路加国際病院退職、酒向歯科口腔外科クリニック開業 2017年: 日本口腔科学会 認定医取得(5/31) 2020年: 日本口蓋裂学会 口腔外科 認定師取得(4/1) 2021年: 日本口腔ケア学会 評議員 2021年: 国際歯学会(ICD ) フェロー認定

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